2026年9月17日

(院長の徒然コラム)

はじめに
VITA Classicalの広い歯色域を1色でカバーすることを狙ったコンポジットレジン(CR)が、日常臨床でも珍しくなくなった。
従来の審美修復では、歯の色相、彩度、明度を見ながらシェードを選び、前歯では象牙質色、エナメル質色、透明色などを積層する。天然歯は一色ではなく、内部構造も光学特性も部位ごとに異なるため、複数の色調と透明度を重ねる方法には明確な合理性がある。
一方、現在は一種類のシェードだけで広い歯色域になじむことを目的とした材料が存在する。小さな修復では、実際に境界がほとんど分からないほど自然に見えることもある。
では、その1色は本当に周囲の歯に合わせて「色そのものを変えている」のだろうか。
現在の研究から見えてくる像は、もっと複雑である。
単一シェードCRの見え方は、材料固有の色だけでは決まらない。CR内部で起こる光の反射・透過・散乱、下地となる象牙質、周囲に残るエナメル質、修復物の厚みと大きさ、表面性状、照明、さらに人間の視覚が重なって、最終的な色が成立する。
2026年8月にオンライン公開されたBarbosaらのスコーピングレビューでは、194報から51研究が採択され、そのうち41研究が実験室研究、臨床研究は10研究だった。またOmnichromaは51研究中46研究で調べられており、研究対象が特定製品へ大きく偏っていることも分かる。実験室での機器測色では多色システムが有利になりやすい一方、実際の臨床研究では単一シェードCRも良好な結果を示すという興味深い乖離がみられている。1)
この現象を理解するには、まず「色が合う」という言葉そのものを分解する必要がある。
「1色で合う」の“合う”とは何を意味するのか
歯科の色合わせでは、少なくとも4種類の異なる現象が「合う」という一語で扱われている。
- CRと天然歯を機器で測定したときの色差が小さい。
- 修復物の辺縁が周囲歯質になじみ、境界が分かりにくい。
- 歯を削る前に存在した天然歯の色そのものを、修復後に再現できる。
- 数値上の色差が残っていても、歯科医師や患者が見たときに臨床的に十分自然だと判断できる。
この4つは同義ではない。
CRの色調調整能(color adjustment potential:CAP)は、CR単体で観察した場合と、周囲歯質や下地と組み合わせて観察した場合の色差の変化を扱う概念である。Paravinaらは2008年にCAPを定量的に評価しており、現在の単一シェードCRが普及する以前から、CRと周囲色との相互作用は研究されてきた。5)
つまり、「周囲の歯になじんで見える」という現象そのものは、現在の単一シェードCRが登場して初めて生じたものではない。
現在の単一シェードCRは、従来から存在した色調調整という現象を、材料設計によってより積極的に利用する材料群と捉える方が正確である。

「ユニバーサル」と「単一シェード」は同じ意味ではない
「ユニバーサル」という用語の使われ方は、文献や製品間で統一されていない。
1本のシリンジだけで広い歯色域への適応を狙う材料だけでなく、数種類のシェードで広い範囲をカバーする製品まで「ユニバーサル」と呼ばれることがある。
そのため本稿では、原則として1種類のシェードで広い歯色域への適応を狙う材料を「単一シェードCR」と表記し、数種類に簡略化した少数シェード型や、従来の多色システムとは区別する。
さらに重要なのは、単一シェードという名称は発色機構を意味しないことである。
単一シェードCRの中には、均一な球状フィラーによる構造色を利用するもの、高い透光性によって下地色を強く反映させるもの、光拡散特性を調整するもの、顔料と透過特性を組み合わせるものなどが存在する。
2025年にPerdigãoらが複数のユニバーサルCRを走査電子顕微鏡と熱重量分析で解析した研究でも、各製品のフィラー形態と粒径分布は大きく異なった。Omnichromaでは約200〜300 nmの準球状粒子が観察され、その粒子自体が約15〜35 nmのナノ粒子から構成されていた。15)
したがって、単一シェード=構造色ではない。
シェード数の分類と、色を作る物理機構の分類は別の軸である。

構造色型CRでは何が起きているのか
構造色とは、色素だけで色を作るのではなく、可視光と同程度の大きさを持つ微細構造によって特定波長の光を選択的に反射・散乱させる現象である。
歯科用CRでは、均一な球状フィラーの粒径を制御することで、この現象を利用する研究が行われている。
Yamaguchiらは、粒径の異なる均一球状SiO₂-ZrO₂フィラーを用いた実験CRを比較し、約260 nmの球状フィラーを用いた系で黄〜赤色側の構造色が生じ、色合わせ能が高くなることを示した。7)
Kobayashiらはさらにヒト歯を用い、構造色を利用する単一シェードCRの色調調整を検討し、構造色がさまざまな歯色への適応に関与することを報告している。8)
構造色が単なる製品説明のための概念ではなく、実験的に観察可能な現象であることは支持されている。
ただし、構造色が存在することと、1種類のCRであらゆる天然歯色を完全再現できることは別問題である。
260 nm前後の球状フィラーと黄〜赤色域の反射
Yamashitaらは30本のヒト中切歯を用い、Omnichroma、Omnichroma Flow、Clearfil Majesty ES Flow Universalなどについて、色差だけでなく透光性、光の直進透過、光拡散、総透過光量、分光反射を評価した。9)
1〜3 mm厚の修復物について色調調整を比較すると、ユニバーサルシェードCRは従来A2シェードCRより色相と彩度の調整で良好だった一方、明度には明瞭な優位性がみられなかった。9)
分光反射では、一部の比較材料が約450 nm付近、つまり青色側に反射ピークを示したのに対し、OmnichromaとOmnichroma Flowでは430〜680 nmに比較的広い反射があり、約660 nm付近の黄〜赤色域にも反射がみられた。9)
黄色味を持つ象牙質との関係を考えると、この長波長側の反射が色相調整へ寄与するという解釈には合理性がある。
しかし、色相、彩度、明度をすべて一つの「色」にまとめると、材料の限界が見えなくなる。
この研究でユニバーサルシェードCRが優位だったのは主として色相と彩度であり、明度では明確な優位性がなかった。9)
つまり、色相は合わせやすくても、明度まで自動的に一致するわけではない。
歯科審美では、「わずかに色相が違う」よりも「そこだけ白い」「そこだけ暗い」といった明度差の方が目につく場合もある。単一シェードCRの限界を考えるうえで、明度は重要な変数である。

メーカー公称値と独立した材料分析は分けて評価する
構造色型CRでは、「260 nmの均一球状フィラー」「フィラー79 wt%」といった数値がしばしば引用される。
これらは重要な材料情報だが、多くの場合はメーカー資料を起点としている。
Perdigãoらの独立分析では、Omnichromaに約200〜300 nmの準球状粒子が確認された一方、熱重量分析による無機フィラー重量比は69.29 wt%で、文献上広く記載される79 wt%とは差がみられた。15)
ただし、この差をそのまま「公称値が誤っている」と解釈することはできない。
熱重量分析では、シランカップリング材などをどの成分として扱うか、どの温度域を無機成分として計算するかといった分析条件によって数値が変化し得る。Perdigãoらも、分析法やフィラー量の定義が公称値との差へ関与する可能性を指摘している。15)
新しい歯科材料では、メーカー資料による組成説明と、独立した材料分析を分けて評価する必要がある。
歯の色を「借りる」仕組み――下地色と周囲色は同じではない
以下では、CR直下に存在する歯質や材料の色を「下地色」、口蓋側歯質を失った前歯で背後に見える暗い口腔内空間などまで含む広い概念を「背景」と表記する。
単一シェードCRでは、「周囲の歯の色を拾う」という説明がよく使われる。
しかし、CRへ入射した光の一部は表面で反射し、一部は内部で散乱し、一部は材料を透過して窩洞底や側壁まで到達する。そこで反射した光が、もう一度CR内部を通って観察者へ戻る。
Yamashitaらは先行研究を踏まえ、側壁からの反射光は辺縁を目立ちにくくする方向に、窩洞底からの反射光は修復物本体の見かけの色に寄与すると整理している。9)
したがって、「周囲色」と「下地色」は同じ意味ではない。
Barrosらが薄い単一シェードCRについて周囲色と下地色を分けて検討した研究では、条件によっては周囲色よりも下地色の影響が大きくなることが示されている。10)
同じCRを使用していても、健全象牙質の上に置く場合、変色象牙質の上に置く場合、既存CRの上に置く場合、金属修復物に近接する場合、あるいは背後が暗い口腔内空間となる場合では、最終的な見え方が変わり得る。

「透光性が高い」だけでは十分に説明できない
下地の色を利用するのであれば、透光性の高い材料ほど有利に思える。
透光性が重要であることは間違いないが、「透光性」という一個の指標だけでは単一シェードCRの挙動を十分には説明できない。
Yamashitaらは一般的な透光性指標に加えて、直進透過光、光拡散、総透過光量を分けて評価した。Omnichromaは直進透過光と総透過光量が非常に大きい一方、光拡散は小さいという特徴を示している。9)
「光を多く通すこと」と「光を強く散らすこと」は別の性質である。
光拡散が大きければ、修復物と周囲との境界をぼかす方向には働く。一方、下地象牙質で反射した光をどの程度表面まで伝えられるかという点では、単純に光拡散が大きいほど有利とは言えない。
Omnichromaの高い透光性、直進透過光、総透過光量は、下地象牙質からの反射光を利用しやすい理由の一つと考察されている。9)
なお、直進透過光、光拡散、総透過光量および分光反射の測定には0.5 mm厚の円板試料が用いられており、1〜3 mm厚の修復物について同じ値を直接測定したものではない。色調調整と透光性の厚み依存性を評価した試験系とは分けて読む必要がある。9)
「透明だから歯の色が透けて合う」という説明だけでは、この現象を十分には説明できない。
修復物が厚くなるほど下地の影響は小さくなる
光がCRを通って象牙質まで到達し、反射して戻るのであれば、CRの厚みは重要である。
Yamashitaらの研究では、Omnichromaの透光性指標は1 mmで22.5、2 mmで14.4、3 mmで9.8と、厚みの増加に伴って低下した。Omnichroma Flowでも1 mmで27.1、2 mmで17.7、3 mmで10.4と同じ傾向だった。9)
CRが厚くなれば、光が象牙質まで到達する途中と、象牙質から戻ってくる途中の双方で吸収や散乱を受ける。
その結果、下地から受ける色の影響が小さくなり、材料自身の色と光学特性の寄与が大きくなると考えられる。
同研究では、1〜3 mmへ厚くなるにつれて全体として色調調整能は低下した。ただしOmnichroma系では、厚みによる影響が比較的小さい評価項目もあった。9)
一方、文献によっては深い窩洞の方が色調調整能を示す指標が高くなる結果も存在する。これは必ずしも矛盾ではない。
研究によって、最終的な色差そのものを測っているのか、それとも周囲歯質に囲まれることによって単独試料よりどれだけ色差が縮小したかを指標にしているのかが異なるからである。
ŞahinとKorkutの2025年の研究でも、1 mmと2 mmの窩洞深さによる影響は材料ごとに異なり、窩洞深さの効果は材料依存と結論されている。18)
したがって、「単一シェードCRは○mmまでなら合う」という固定的な数値を、現在の文献から臨床基準として設定することはできない。

修復物の大きさも色調適応を左右する
厚みと同時に考える必要があるのが、修復物の面積である。
Paravinaらは2006年、修復物の大きさと周囲色へのなじみの関係を検討し、修復サイズが大きくなるほど周囲色による色調同化が小さくなることを示した。6)
小さな臼歯咬合面修復であれば、CRのほぼ全周が天然歯質に囲まれる。
一方、大きな前歯Class IVやダイレクトベニアでは、修復材料そのものが視野の大きな割合を占める。切縁や口蓋側壁まで失われていれば、背後に象牙質が存在せず、暗い口腔内空間が背景になることもある。
同じ材料を使用していても、利用できる周囲歯質の光学情報量はまったく異なる。
小さなClass Vで良好な色調適応が得られたという結果を、そのまま大きなClass IVへ適用することはできない。
「周囲になじむ」と「元の歯色を再現する」は別である
大きな修復を対象としたRosaらの2024年の研究は、この違いを明瞭に示している。11)
抜去大臼歯に直径6 mm、深さ2 mmの窩洞を形成し、Omnichroma、Vittra APS Unique、Charisma Diamond One、Filtek Universalで修復した。
この研究の特徴は、修復物が周囲エナメル質になじんでいるかだけでなく、窩洞形成前の天然歯の色を修復後に回復できたかを評価した点にある。
色差ΔE00は、Omnichroma 7.2、Vittra APS Unique 11.6、Charisma Diamond One 9.3、Filtek Universal 6.2だった。11)
一方、40人の観察者が修復物と周囲エナメル質との色のなじみを評価すると、各材料の平均は概ね「良好〜非常に良好」の範囲だった。11)
すなわち、境界はなじんでいる。しかし元の歯の色には戻っていないという状態が起こり得る。
Rosaらは、約2 mmのCR層によって下地色を反映する能力が弱くなり、材料自身の比較的明るい色が最終色へ強く影響した可能性を論じている。11)
また、いずれの材料も修復前の天然歯色を完全には回復できなかった。11)
ただし、この研究は各材料5試料という小規模な抜去歯研究である。ここに示されたΔE00を、臨床での一般的な色差や失敗率として直接解釈することはできない。
それでも、「周囲へのなじみ」と「天然歯色の再現」は別の評価項目であるという点は重要である。

暗い歯では単一シェードの限界が現れやすい
歯の明度によっても色調適応は変化する。
Iyerらは、単一シェードのOmnichroma、少数シェードシステムのTPH Spectra ST、多色システムのTetric EvoCeramを、A2、B1、B2、C2、D3の人工歯で比較した。13)
OmnichromaのΔE00はB1で4.08、B2で7.19、A2で8.02、C2で9.30、D3で10.34だった。一方、多色システムのTetric EvoCeramは3.58〜5.30の比較的狭い範囲に収まっていた。13)
Omnichromaでは、B1からD3へ歯の明度が低下するにつれて色差が増える傾向があり、著者らも、低明度歯で高い審美性を求める場合には多色システムが有利になり得ると考察している。13)
人工歯を用いた実験室研究であり、この数値を臨床へそのまま当てはめることはできない。
しかし、暗い下地、広い修復、厚いCR、周囲歯質の不足という条件が重なるほど、単一シェードのみでの色再現が難しくなるという光学的説明とは整合する。
前歯の大きなClass III・IVでは、口蓋側歯質が失われることで背景自体が暗い口腔内空間になることもある。
一部製品では、下地歯質が欠損している場合や強い変色に対応する遮蔽材料が設定されている。こうした製品設計からも、背景条件によって単一材料のみでは対応しにくい症例が想定されていることが分かる。
前歯修復で複数色のCRを積層する理由については、前歯の白い詰め物でレジンを何色も重ねる理由でも詳しく解説している。
研磨は色調調整の一部である
CRの仕上げ研磨は、形態を整えて表面を滑沢にするためだけの工程ではない。
表面性状そのものが色調調整へ影響する。
Hayashiらは、構造色型のOmnichromaと顔料を用いるBeautifil Unishadeを人工前歯の窩洞へ充填し、表面粗さを変えて色差を比較した。12)
Omnichromaでは1.5 mm深さ・A2条件でΔEabが3.9から2.6へ、A4条件で3.8から2.5へ変化した。Beautifil Unishadeでは条件による差がさらに大きく、3 mm深さ・A4・粗い表面ではΔEab 8.7が記録されている。12)
表面粗さも、Omnichromaで0.47 μmから0.34 μm、Beautifil Unishadeで0.78 μmから0.58 μmへ低下した。12)
表面が変われば、鏡面反射、拡散反射、光沢、CR内部へ入射する光量、内部から出てくる光の方向も変化する。
したがって、最終色はシリンジから出した材料そのものだけで決まるわけではない。
研磨後の表面まで含めて、修復物の光学系が完成する。
なお、この研究は#800、#2000のSiC研磨紙によって表面粗さを規格化した実験であり、特定の臨床用研磨システム同士の優劣を比較したものではない。
仕上げ研磨の臨床的役割については、白い詰め物を硬化後に仕上げ・研磨する理由で詳しく扱っている。
ΔE00=1.8を絶対的な合否ラインにしない
歯科色彩研究では、CIEDE2000による色差ΔE00が広く使われている。
50%の観察者が色差を認識できる知覚閾値として約0.8、50%が臨床的に許容できる許容閾値として約1.8という数値が頻繁に参照される。
研究間を比較するうえで有用な基準だが、1.79なら成功、1.81なら失敗という意味ではない。
Tejada-CasadoらがCR試料を用いて行った観察者研究では、CIEDE2000による50%許容閾値が低彩度で2.84、中彩度で2.31、高彩度で1.80と、彩度域によって異なる結果が報告されている。17)
さらに、実際に測定されるΔEは、測定機器、測定範囲、背景、試料厚、水分状態、照明、測定方法によっても変化する。
ΔE00は修復物を自動的に「成功」「失敗」へ分類するための数字ではない。
色差を数量化するための物差しとして解釈する必要がある。
機器では色差があっても、人の眼には自然に見えることがある
Cruz da Silvaらは、抜去天然歯へ単一シェードCRと多色CRを修復し、分光光度計による測色と視覚評価を比較した。14)
機器測色では多色CRの方が小さな色差を示した。
一方、視覚評価では単一シェードCRでも「許容できる」以上と判断される割合が高く、機器による評価と人間の視覚評価は完全には一致しなかった。14)
これは測色器と人間のどちらかが間違っているという意味ではない。
両者が異なるものを評価している。
測色器は、規定された領域の色座標差を高感度に検出する。
人間は、色座標だけを切り出して修復物を見ているわけではない。周囲の歯色、形態、陰影、光沢、表面性状、辺縁、透明感などを一つの像として統合して認識する。
色調調整には、CR内部で起きる物理的な光学現象だけでなく、周囲色によって実際の色差より差が小さく感じられる視覚的な同化も関与する。
したがって、機器上では完全一致していないが、臨床では自然に見えるという結果は十分に起こり得る。
18か月RCTでは「数値」と「臨床評価」が一致しなかった
実際の患者を対象としたFavoretoらの無作為化比較試験では、この違いが明瞭に現れた。4)
60人、120本の非う蝕性頸部歯質欠損を対象に、単一シェードのVittra Uniqueと多色システムのVittra APSを同一患者内で比較している。
客観的な測色では、治療前後の頸部ΔE00は、単一シェード3.9±1.8、多色システム4.5±2.3で、群間に有意差はなかった。4)
どちらも一般に参照される1.8という許容閾値を超えている。
それだけを見れば、「両群とも色合わせが不十分」と判断したくなる数字である。
しかし臨床評価は異なった。
7日、6か月、12か月、18か月まで追跡した結果、18か月時点でも両材料は全体として「臨床的に非常に良好」と評価された。辺縁適合や辺縁着色にごく軽微な変化がみられた修復物はあったものの、群間差は認められなかった。4)
機器では閾値を超える色差が測定されているにもかかわらず、臨床的には十分自然と評価される。
色差の数値と臨床的な審美評価を同一視できないことを示す一例である。
ただし、この試験は非う蝕性頸部歯質欠損を対象としている。周囲に天然歯質が多く残る修復であり、大きなClass IVやダイレクトベニアへ結果をそのまま外挿することはできない。
実験室では多色システムが優位、臨床では差が縮まる
2025年のForaboscoらの系統的レビュー・メタ解析では、15件の実験室研究と4件の無作為化比較試験が採択された。2)
実験室研究の機器測色では、単一シェードCRは多色CRより有意に大きな色差を示した。
つまり、測色値として天然歯へ可能な限り近づけるという条件では、多色システムに分がある。
一方、臨床RCTでは単一シェードCRも概ね良好な結果を示していた。2)
ただし、同レビューでは4件のRCTは方法論的な異質性が大きく、定量的なメタ解析には統合されていない。定量統合されたのは8件の実験室研究だった。2)
RCTのみを対象としたLealらの2024年の系統的レビュー・メタ解析でも、12か月までの色合わせと色安定性について単一シェードCRと多色CRの明確な差は確認されなかった。3)
ただし、研究数とイベント数が少なく、エビデンスの確実性は低いと評価されている。3)
2026年8月にオンライン公開されたBarbosaらのスコーピングレビューでも、51研究中41研究が実験室研究、臨床研究は10研究にとどまっている。1)
実験室では多色システムが優位になりやすい。
臨床では単一シェードCRも十分な審美結果を示すことがある。
この二つは矛盾ではなく、評価している対象が異なると理解した方がよい。

可視光でなじんでも、天然歯と同じ光学特性ではない
天然歯の見え方には、明度・彩度・色相だけでなく、透光性、乳光性、蛍光性なども関与する。
2026年のKaralarらの研究では、45本の抜去上顎中切歯に規格化した頸部窩洞を形成し、単一シェード5種類を含む9種類のCRを比較した。16)
通常の可視光条件では、分光光度計による平均色差は3.34±1.52、偏光写真では3.55±1.35だった。
これに対し、紫外線下で蛍光を評価すると、平均色差は23.01±7.04まで大きくなった。16)
可視光で周囲歯質によくなじむ材料が、天然歯の蛍光特性まで同じように再現しているとは限らない。
ただし、この研究は各群5試料の抜去歯を用いた実験室研究であり、紫外線照明下という特殊な評価条件でもある。
したがって、「日常生活で単一シェードCRが不自然に発光する」という意味ではない。
示されているのは、可視光下の色差が小さいことと、天然歯と同じ光学特性を持つことは別であるという点である。
光源が変われば、見える色差も変わる
CRと天然歯は異なる材料である。
ある照明条件で同じように見えても、分光反射スペクトルそのものまで一致しているとは限らない。
異なる物体が一つの光源では同じ色に見え、別の光源では異なって見える現象を条件等色(metamerism)と呼ぶ。
Brokosらは8ブランドのA3シェードCR、計64試料をD65、F2、A光源下で比較し、光源によってブランド内・ブランド間の色差が変化することを報告している。20)
これは単一シェードCR固有の欠点ではなく、歯科審美修復全般に関わる問題である。
ある診療室の照明で同じ色に見えたことと、物理的に同じ分光特性を持つことは同義ではない。
最終的な色の知覚には、何で照らしたか、何と並べたか、どの範囲を見たか、誰が見たかまで関係する。
修復直後の色調調整は永久に固定されるわけではない
色調適応が良好でも、その状態が永久に維持されるとは限らない。
- 吸水
- 着色
- 表面摩耗
- 研磨面の変化
- 温度変化
- 材料内部の経時変化
などが口腔内では生じる。
2025年のTepeらは、5種類の単一シェードCRと1種類の多色CRについて、着色、ブラッシング、温度サイクルを組み合わせた模擬経時試験を行った。19)
すべての材料で有意な色変化がみられ、さらに同じ試料であっても、分光光度計と偏光写真では算出される色差の大きさに違いがあった。19)
一方、単一シェードCR全体を「着色しやすい材料群」と一括りにすることもできない。
材料ごとにレジンマトリックス、フィラー、シラン、重合開始系、吸水性が異なるからである。
初期の色調調整が似ていても、長期の色安定性まで同じとは限らない。
コンポジットレジンの着色と経時変化については、コンポジットレジンの着色安定性で詳しく扱っている。
単一シェードCRが生きやすい条件と、限界が出やすい条件
現在の研究から、厳密な適応・禁忌の境界を定めることはできない。
ただし、色調調整が働きやすい方向と、難しくなりやすい方向は整理できる。

なじみやすい方向
- 修復面積が比較的小さい
- 周囲に健全な天然歯質が十分残る
- 下地に健全象牙質が存在する
- 極端に暗い歯ではない
- CRが過度に厚くならない
- 表面研磨が十分である
- 「元の歯色の完全再現」より周囲との自然な調和を求める
難しくなりやすい方向
- 大きなClass III・Class IV
- 切縁や口蓋側壁を大きく失っている
- 背後が暗い口腔内空間
- 強い変色象牙質
- 金属や既存修復物など特殊な下地
- 低明度の歯
- 広範囲のダイレクトベニア
- 内部構造や明度まで厳密に再現したい症例
- 非常に高い審美要求がある症例
このような条件では、多色システム、遮蔽性の高い材料、ブロッカー、透明度の異なるCRを組み合わせる意味が大きくなる。
単一シェードと多色システムのどちらが「優れた材料」かという比較ではない。
どの光学条件を再現しなければならない症例なのかが違う。
小さな臼歯修復と、上顎中切歯の半分を失ったClass IVでは、同じ「CR修復」であっても必要な色調設計はまったく異なる。
単一シェードCRは色合わせを不要にしたのか
単一シェードCRの臨床的利点の一つは、従来のシェード選択を簡略化できることである。
小さな修復では、複雑なシェード選択や積層を行わなくても十分自然な結果を得られる可能性がある。
しかし、歯の色を考える仕事そのものが消えたわけではない。
従来は「A2かA3か」というシェード選択が大きな比重を占めていた。
単一シェードCRでは、それに代わって、下地は何色か、周囲歯質はどれだけ残っているか、修復物はどの程度厚くなるか、明度差は大きくないか、背後に歯質が存在するか、遮蔽層は必要か、最終的な光沢をどう仕上げるか、といった判断の重要性が増す。
材料操作は簡略化されても、光学的な診断と症例選択まで不要になったわけではない。
「1色で合う」の正体
ユニバーサルシェードCRは、材料そのものが自在に別のシェードへ変色するCRではない。
構造色型材料では、微細なフィラー構造による波長選択的な反射が存在する。
別の材料では、透光性、光拡散、顔料設計が色調調整へ関与する。
さらに、下地象牙質から戻る光、周囲エナメル質から戻る光、CRの厚み、修復面積、残存歯質量、表面粗さと光沢、照明条件、観察者の視覚が重なり、臨床で見える修復物の色が成立する。
CR単体の色だけを見ても、口腔内で最終的に見える色を完全には予測できない。

そのため、小さな修復では驚くほど自然に境界が消える一方、同じ材料を広い修復へ使用すると明度差が目立つことがある。
また、分光光度計では色差が検出されていても、歯科医師や患者には十分自然に見えることもある。
現時点でユニバーサルシェードCRをどう位置づけるか
現在の研究からは、二つの事実が並立している。
第一に、厳密な機器測色では、多色システムの方が天然歯の色へ正確に近づけやすい。
Foraboscoらの2025年の系統的レビュー・メタ解析でも、実験室条件では単一シェードCRより多色システムの方が小さな色差を示した。2)
第二に、実際の臨床では、単一シェードCRでも十分良好な審美結果を得られる症例がある。
非う蝕性頸部歯質欠損の無作為化比較試験では18か月まで臨床的に良好な成績が得られており、RCTをまとめた系統的レビューでも12か月まで単一シェードと多色システムの明瞭な差は示されていない。ただし、研究数は少なく、エビデンスの確実性は低い。3,4)
また、2026年8月にオンライン公開されたスコーピングレビューでも、51研究中41研究が実験室研究であり、長期の臨床データはまだ十分ではない。1)
したがって、「多色システムはもう不要」とも、「単一シェードCRは色が合わない」とも結論できない。
現在の研究に最も整合する表現は、次のようになる。
ユニバーサルシェードCRは「1色で全シェードを完全再現する材料」ではない。
「1色のままでも、臨床的に許容できる範囲まで色差を小さくできる条件が広い材料」である。
その強みは、シェード選択を簡略化できることにある。
その限界は、材料が周囲歯質や下地から利用できる光学情報が少なくなったときに現れやすい。
どこまで天然歯側の光学情報を利用できるのか。
どこから先は、遮蔽、積層、異なる透明度やシェードによって材料側から補う必要があるのか。
その境界を見極めることが、ユニバーサルシェードCRを「1色だから簡単な材料」ではなく、光学的特性を理解して使う材料として扱うことにつながる。
主要参考文献
- Barbosa LDN, et al. Single-shade resin composites in direct restorations: A scoping review of clinical and laboratory evidence. J Dent. 2026 Aug 24:106999. Online ahead of print. doi:10.1016/j.jdent.2026.106999.
- Forabosco E, Josic U, Consolo U, et al. Color Match of Single-Shade Versus Multi-Shade Resin Composites: A Systematic Review With Meta-Analysis. J Esthet Restor Dent. 2025;37:1443–1451. doi:10.1111/jerd.13444.
- Leal CFC, Miranda SB, Alves Neto ELD, et al. Color Stability of Single-Shade Resin Composites in Direct Restorations: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Polymers. 2024;16:2172. doi:10.3390/polym16152172.
- Favoreto MW, de Oliveira de Miranda A, Matos TP, et al. Color evaluation of a one-shade used for restoration of non-carious cervical lesions: an equivalence randomized clinical trial. BMC Oral Health. 2024;24:1464. doi:10.1186/s12903-024-05108-6.
- Paravina RD, Westland S, Johnston WM, Powers JM. Color adjustment potential of resin composites. J Dent Res. 2008;87:499–503. doi:10.1177/154405910808700515.
- Paravina RD, Westland S, Imai FH, Kimura M, Powers JM. Evaluation of blending effect of composites related to restoration size. Dent Mater. 2006;22:299–307. doi:10.1016/j.dental.2005.04.022.
- Yamaguchi S, Karaer O, Lee C, Sakai T, Imazato S. Color matching ability of resin composites incorporating supra-nano spherical filler producing structural color. Dent Mater. 2021;37:e269–e275. doi:10.1016/j.dental.2021.02.012.
- Kobayashi S, Nakajima M, Furusawa K, et al. Color adjustment potential of single-shade resin composite to various-shade human teeth: Effect of structural color phenomenon. Dent Mater J. 2021;40:1033–1040. doi:10.4012/dmj.2020-364.
- Yamashita A, Kobayashi S, Furusawa K, et al. Does the thickness of universal-shade composites affect the ability to reflect the color of background dentin? Dent Mater J. 2023;42:255–265. doi:10.4012/dmj.2022-197.
- Barros MS, Silva PFD, Santana MLC, Bragança RMF, Faria-E-Silva AL. Effects of surrounding and underlying shades on the color adjustment potential of a single-shade composite used in a thin layer. Restor Dent Endod. 2023;48:e7. doi:10.5395/rde.2023.48.e7.
- Rosa EDAR, Silva LFVD, Silva PFD, Faria-E-Silva AL. Color matching and color recovery in large composite restorations using single-shade or universal composites. Braz Dent J. 2024;35:e24-5665. doi:10.1590/0103-6440202405665.
- Hayashi K, Kurokawa H, Saegusa M, et al. Influence of surface roughness of universal shade resin composites on color adjustment potential. Dent Mater J. 2023;42:676–682. doi:10.4012/dmj.2023-007.
- Iyer RS, Babani VR, Yaman P, Dennison J. Color match using instrumental and visual methods for single, group, and multi-shade composite resins. J Esthet Restor Dent. 2021;33:394–400. doi:10.1111/jerd.12621.
- Cruz da Silva ET, Charamba Leal CF, Miranda SB, et al. Evaluation of Single-Shade Composite Resin Color Matching on Extracted Human Teeth. ScientificWorldJournal. 2023;2023:4376545. doi:10.1155/2023/4376545.
- Perdigão J, Zatt FP, Lopes GC, Caon NB, Chen R. Characterization of Universal Composite Resin Filler Particles. J Esthet Restor Dent. 2025;37:2472–2480. doi:10.1111/jerd.70009.
- Karalar B, Yılmaz MN, Dur Sarıgüzel MP. Color Adjustment and Fluorescence Matching of Single-Shade Composites: Spectrophotometric and Photographic Analysis Techniques. Polymers. 2026;18:1819. doi:10.3390/polym18151819.
- Tejada-Casado M, Pérez MM, Della Bona A, Lübbe H, Ghinea R, Herrera LJ. Chroma-dependence of CIEDE2000 acceptability thresholds for dentistry. J Esthet Restor Dent. 2024;36:469–476. doi:10.1111/jerd.13153.
- Şahin HC, Korkut B. Color adjustment of single-shade composites following staining, repolishing, and bleaching procedures. BMC Oral Health. 2025;25:248. doi:10.1186/s12903-025-05653-8.
- Tepe H, Celiksoz O, Yaman BC. Evaluation of color stability in single-shade composite resins using spectrophotometer and cross-polarized mobile photography. BMC Oral Health. 2025;25:280. doi:10.1186/s12903-025-05651-w.
- Brokos I, et al. Illuminant metameric effects on interbrand and intrabrand color differences of direct composite resins. J Prosthet Dent. 2022;128:1342–1349. doi:10.1016/j.prosdent.2021.04.006.
