2026年9月18日

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに
「昨日ワイヤーを調整してもらったんですが、今日はパンを噛むだけでも歯が痛くて……」
矯正治療中の患者さんから、こんなお話を聞くことがあります。
食事で噛むと痛い。
上下の歯を軽く合わせただけでも、歯が浮いたように感じる。
そうなると、
「こんな日に歯ブラシを当てても大丈夫?」
「今日は磨かない方がいい?」
と心配になりますよね。
結論からいうと、ワイヤー調整後に噛むと痛い日でも、基本的には歯磨きを全部休む必要はありません。
ただし、いつもと同じ力で、いつもと同じペースで無理に磨く必要もありません。
こんな日は、
「力を抜く」のと「手を抜く」のを分けて考える
のがポイントです。
力は弱くする。
一度に磨く範囲も小さくする。
普通の歯ブラシだけではつらい場所は、ワンタフトブラシや歯間ブラシへ仕事を分担する。
今回は、ワイヤー矯正の調整後に「噛むと痛い」「歯ブラシを当てるのも怖い」という日に、どのように口の中を清潔に保てばよいのかを、歯科衛生士の視点から整理します。
ワイヤー調整後は、なぜ「噛むと」痛くなるの?
ワイヤー矯正では、ブラケットとワイヤーなどを介して歯へ力を加え、少しずつ歯を動かしていきます。
ワイヤーを交換したり、調整したりすると、それまでとは異なる大きさや方向の力が歯とその周囲へ加わることがあります。
その影響は歯の表面だけではありません。
歯の根の周囲には、歯と骨の間にある「歯根膜」という組織があります。
矯正力が加わると、歯根膜やその周囲でさまざまな生物学的反応が起こり、それに伴って圧痛や「歯が浮くような感じ」、噛んだときの痛みを感じることがあります。
初期のワイヤー装着後は、1日目あたりに痛みが強くなる研究が多い
固定式矯正装置の初期のlevelling・alignmentに伴う疼痛について、37件のランダム化比較試験、計2,277人をまとめた2023年のsystematic reviewでは、疼痛は装置・ワイヤー装着後早期から増え、平均的には1日目で強くなり、その後1週間にかけて低下していく傾向が示されています。
また、何もしていない安静時よりも、噛んだときの方が痛みが強い傾向も報告されています。
ただし、このレビューは主として矯正治療初期のワイヤー装着後の疼痛を対象としたもので、「毎回の調整後も必ず同じ経過になる」と証明した研究ではありません。
「調整後」の痛みを追った研究でも、最初の数日に強くなりやすい
成人58人を対象に、最初の装置装着時だけでなく、1回目・2回目の調整後まで追跡した研究では、調整後にも疼痛がみられ、24時間〜3日ほどの期間に強くなりやすいことが報告されています。
つまり、
「ワイヤーを調整した翌日から数日は、噛むと響く」
という状態そのものは、矯正治療中に起こり得る経過です。
もちろん全員が同じではありません。
ほとんど気にならない方もいれば、食事がつらいほど痛む方もいます。
ですから、
「24時間後が必ずピーク」
「3日経てば必ず治る」
という意味ではありません。
大切なのは、調整後しばらくは、噛んだときに歯が敏感になること自体は珍しくないということです。
「噛むと痛い」と「歯ブラシを当ててはいけない」は同じではありません

ここが、今回いちばんお伝えしたいポイントの一つです。
食事では、上下の歯を合わせて食べ物を噛みます。
一方、歯磨きでは、少し口を開けた状態で歯の表面やブラケット周囲へ歯ブラシの毛先を当てます。
つまり、
噛んだときに歯へ加わる刺激と、歯ブラシの毛先を軽く当てる刺激は同じものではありません。
「噛むと痛いから、歯ブラシも絶対に触れてはいけない」
と考える必要はありません。
ただし、
「矯正の痛みだから、どれだけ痛くても我慢して磨く」
という意味でもありません。
軽く毛先を当てただけでも非常に強く痛む場合や、特定の1本だけ鋭く痛む場合には、無理をしないことも大切です。
同じ「痛い」でも、まずは3つを分けて考えてみましょう
調整後に「口の中が痛い」と感じても、すべて同じ原因とは限りません。

① 歯そのものが押され、噛むと響く
今回の記事で中心に扱っているのがこの痛みです。
複数の歯が浮いたように感じたり、食事で噛むと響いたりするタイプです。
矯正力が歯と歯周組織へ加わった後に起こることがあります。
② ブラケットやワイヤーが頬・唇に擦れて痛い
これは歯そのものの咬合痛とは別です。
ブラケットやワイヤーの端が頬や唇の粘膜へ繰り返し触れ、擦れたり傷になったりしている場合があります。
矯正用ワックスなどで一時的に保護できることもありますが、ワイヤーの飛び出しや装置の破損がある場合には、矯正治療を受けている歯科医院へ相談してください。
③ 歯ぐきが赤く腫れて痛い
ブラケット周囲や歯と歯ぐきの境目にプラークが残り、歯肉に炎症が起きている場合もあります。
この場合は、
「ワイヤー調整後だから痛い」
だけでは説明できません。
出血、強い腫れ、膿などを伴う場合には確認が必要です。
「歯が押されて痛い」のか、「装置が粘膜に当たって痛い」のか、「歯ぐきが腫れて痛い」のか。
まず、この3つを分けて考えるだけでも対処が変わります。
痛いから「今日は歯磨きなし」でいい?

「1日くらいなら磨かなくてもいいのでは?」
と思うかもしれません。
調整後に一度十分に磨けなかっただけで、その1回を原因としてすぐ虫歯になったり、歯の表面が白く濁ったりするわけではありません。
ですから、
「昨日は痛くて十分磨けなかった」
というだけで必要以上に不安になる必要はありません。
一方、ワイヤー矯正には、もともと汚れが残りやすい場所があります。
東京歯科大学水道橋病院で、マルチブラケット装置による矯正治療を1年〜1年6か月行っていた95人へ行ったアンケートでは、「磨きづらい」と回答した場所は、ブラケットまわり57%、ワイヤーの下56%でした。
また、清掃器具として歯間ブラシを使用していた人は56%、タフトブラシは51%でした。
つまり、ただでさえ磨きにくい場所があるところへ、
「調整後は痛いから、毎回2〜3日は磨かない」
という期間が繰り返されると、長い矯正治療期間の中では磨き残しが積み重なってしまいます。
そこでおすすめしたい考え方が、
「今日は磨かない」ではなく「今日は省エネ清掃に切り替える」
です。
痛い日は「力を抜く」のと「手を抜く」を分けます

歯ブラシは、強く押しつければ押しつけるほどよく磨けるわけではありません。
過剰なブラッシング圧では、歯肉の痛みや出血、擦過傷などにつながることがあります。
また、歯ブラシの種類によっては、強く押しつけることで毛先が大きく開いたり、はねたりして、かえって狙った場所へ毛先が届きにくくなることもあります。
ですから、ワイヤー調整後の痛い日に、
「早く終わらせたいから、短時間で強くゴシゴシ磨く」
のはおすすめしません。
「弱く磨く」は、歯に触れないという意味ではありません
毛先は歯やブラケット周囲へきちんと触れさせます。
ただし、毛先が大きく倒れたり、歯ぐきへ強く押し込まれたりするほど力を加えない。
そして、大きなストロークで何本もの歯を一気に往復するのではなく、狙う範囲を小さくする。
これが痛い日の基本です。
普段から歯ブラシを強く当ててしまう方は、「歯磨きのしすぎで歯ぐきが下がる?歯肉退縮と知覚過敏を防ぐ歯ブラシの力・硬さ・動かし方」も参考にしてください。

実際どう磨く?調整後の「省エネ清掃」7ステップ
ここからは実際の磨き方です。
ただし、最初に一つ大切なことがあります。
ここから紹介する7ステップそのものを「ワイヤー調整後に痛みがある患者さん」で直接比較した臨床試験があるわけではありません。
矯正治療後の疼痛研究、固定式矯正装置患者の清掃研究、一般的なブラッシングの基本原則を組み合わせて、痛い日に実践しやすい形へ組み替えた方法です。
「7つ全部を完璧にやらなければいけない」と考える必要もありません。
痛みを増やさない範囲で、できる工程から行ってください。
① 歯を噛みしめずに磨く
意外と見落としやすいポイントです。
歯磨き中、無意識に奥歯を噛みしめていませんか?
頬側を磨くときに口を強く閉じたり、歯ブラシを動かすたびに上下の歯を接触させたりすると、
「歯ブラシが当たって痛い」
のではなく、
「上下の歯を噛み合わせた刺激が痛い」
ことがあります。
調整後は少し口を開けて、上下の歯をできるだけ接触させずに磨いてみてください。
② いちばん痛いところから始めなくていい
ワイヤーを調整した部位が気になって、
「ここをちゃんと磨かなくちゃ」
と最初から痛い場所へ歯ブラシを当てたくなるかもしれません。
でも、そこで痛みが強いと、そのまま歯磨き自体をやめてしまうことがあります。
まずは比較的痛みの少ない場所から始めてもかまいません。
磨けるところを先に進め、最後に痛い部分へ戻る。
それだけでも、「今日は何も磨けなかった」という状態にしにくくなります。
③ 1〜2歯ずつ、小さく動かす
痛い日は、大きく横へゴシゴシ動かすより、
毛先を置く → 小さく動かす → 隣へ移る
と考えてみてください。
ブラッシングに関する既存資料でも、毛先を目的の位置へ当て、細かく動かす方法や、1歯ずつ清掃する考え方が紹介されています。
「調整後専用の特殊なブラッシング法」があるという意味ではありません。
普段の磨き方を、痛い日だけ小さな単位へ分解するイメージです。
④ ブラケットの「上」と「下」を別々に考える
ブラケットの周りを一度に全部きれいにしようとすると、歯ブラシをさまざまな角度へ大きく動かすことになります。
痛い日は、
ブラケットの上側 → ブラケットの下側
と、別の場所として考えてみてください。
「1個のブラケットを一周しよう」と思うより、動きを小さくできます。
ワイヤー矯正中に普段どの場所へ歯ブラシを当てればよいかについては、「矯正中の歯磨きはどこが難しい?ワイヤー・マウスピース別の清掃ポイントを歯科衛生士が解説」で詳しく解説しています。
今回はその「普段編」ではなく、調整後に痛い日のアレンジ編です。
⑤ ブラケットばかり見ず、歯と歯ぐきの境目も磨く
ワイヤー矯正中はブラケットが目立つため、どうしても装置周囲ばかり意識しやすくなります。
しかし、プラークはブラケット周囲だけでなく、歯と歯ぐきの境目にも残ります。
痛い日も、歯ぐきへ毛先を力任せに押し込む必要はありません。
歯と歯ぐきの境目へ毛先が触れていることを確認し、小さく動かします。
⑥ ワイヤーの下は「別工程」にする
通常の歯ブラシ1本で、歯面も、ブラケットも、歯ぐきの境目も、ワイヤーの下も、全部一度に完璧にしようとしなくて大丈夫です。
ワイヤーの下は、もともと磨きにくい場所です。
通常の歯ブラシを無理にねじ込もうとするより、普段から使っている歯間ブラシやワンタフトブラシがあるなら、ワイヤー下だけを別工程にしてもかまいません。

⑦ 一度に全部できなければ、少し休んで続きをする
調整後は、歯の痛みだけでなく、長時間口を開けていた疲れを感じることもあります。
普段なら問題なくできる歯磨きが、どうしてもつらい日もあります。
そんなときは、「一度で全部終わらせないと意味がない」と考えなくて大丈夫です。
痛みの少ないところを磨き、必要なら少し休み、残ったところへ戻る。
ただし、「何度も何度も磨き直す」という意味ではありません。
一回の長い清掃を、負担の少ない工程へ分けるという考え方です。
大きな歯ブラシがつらい日は、ワンタフトブラシという選択肢も
ワンタフトブラシは、毛束が小さく、狙った場所へ当てやすいブラシです。
固定式矯正装置を装着した歯肉炎患者36人を対象とした2024年のランダム化比較試験では、通常の歯ブラシ、矯正用歯ブラシ、single-tufted toothbrushを比較しています。
6週時点では矯正用ブラシ群とsingle-tufted群で通常ブラシ群よりプラークやBOPの改善が大きく、3か月ではsingle-tufted群が良好な値を維持しました。
ただし、1群12人という小規模研究です。
この結果だけから、「ワンタフトブラシが一番優れている」とまでは言えません。
今回のテーマで大切なのは、「ワンタフトブラシへ全部置き換える」ことではないということです。
大きな歯ブラシを数本まとめて当てると響く場所や、ブラケットの上、ブラケットの下、最後方の奥歯、普通の歯ブラシでは毛先を置きにくい一点だけ、ワンタフトブラシに担当してもらう。
そんな「仕事の分担」に向いています。

歯間ブラシは「入るところへ、無理なく」
固定式矯正患者を対象とした2026年のsystematic reviewでは、6研究、計442人が検討されました。
歯間ブラシを追加することで、歯ブラシ単独やフロスと比較してプラークや歯肉炎を減らせる可能性が示された一方、研究数が少ない、研究方法にばらつきがある、追跡期間が短い、安全性の報告が十分ではないなどの理由から、エビデンスの確実性は低いと評価されています。
また、ワンタフトブラシや口腔洗浄器に対して一貫して優れているという結果でもありません。
ですから、「矯正中なら必ず歯間ブラシ」ではありません。
ただ、すでに歯科医院でサイズや使う場所を確認し、普段から使っている方なら、ワイヤー周囲の補助清掃として役立つことがあります。
痛い日に無理に押し込まない
痛い日は特に、次のような使い方は避けましょう。
- 強く押さないと入らない
- 歯肉へ突き刺さる
- 歯間ブラシがすぐ大きく曲がる
- ワイヤーを強く押してしまう
「入らないから、もっと力を加える」ではありません。
サイズや挿入する方向が合っているか分からない場合は、歯科衛生士に確認してください。
電動歯ブラシなら、痛い日でも楽?
「手を動かさなくていい電動歯ブラシの方が、調整後には向いていますか?」
これもよくある疑問です。
2026年のsystematic review・meta-analysisでは、固定式矯正装置患者について23論文、39比較が検討され、電動歯ブラシは手用歯ブラシよりプラークや歯肉の指標を改善する可能性が示されました。
一方で研究間のばらつきは大きく、エビデンスの確実性にも限界があります。
ですから、電動歯ブラシ=必ずきれいになるでも、手磨き=必ず痛みに優しいでもありません。
普段から電動歯ブラシを使い慣れていて、強く押しつけず必要な場所へ毛先を当てられるなら、急に使用を中止する必要はありません。
逆に、「調整後は電動歯ブラシを買わないと磨けない」と考える必要もありません。
大切なのは道具の名前ではなく、痛みを増やさず毛先を必要な場所へ届けられるかです。
口腔洗浄器なら、歯ブラシを当てなくてもいい?
水流式の口腔洗浄器なら、歯へ毛先を直接当てないため、調整後には楽に感じることがあります。
食べ物の残りを流したり、補助的な口腔清掃へ使ったりする選択肢にはなります。
固定式矯正患者について、口腔洗浄器とデンタルフロスを比較した2026年のsystematic review・meta-analysisでは4研究が対象となり、プラーク指数や出血指数について口腔洗浄器がフロスより明確に優れる結果にはなりませんでした。
ただし、このレビューは、「口腔洗浄器だけ」対「歯ブラシ」を比較した研究ではありません。
したがって、この結果を根拠に、「水流だけ使えば歯ブラシを省いてよい」とは言えません。
水流で食片を流すことと、歯面やブラケット周囲に付着したバイオフィルムへ歯ブラシの毛先を当てることは同じではありません。
口腔洗浄器を使う場合も、歯ブラシの代わりではなく、補助として組み合わせると考えてください。
どうしても昼に磨けないなら、まずうがいでもいい?
学校、仕事、外出中などでは、調整後の痛みだけでなく、時間や場所の問題で歯磨きができないこともあります。
日本矯正歯科学会も、矯正装置が入ると歯磨きが難しくなること、装置周囲では矯正用歯ブラシや歯間ブラシなどを併用することを患者向けに案内しています。
また、学校などで歯磨きが難しい場合には、少なくともうがいをするという考え方も紹介されています。
ですから、
「今すぐ完璧に磨けないから、何もしない」
より、まず水ですすいで大きな食片を流し、磨ける環境になったら歯ブラシで清掃すると考えましょう。
ただし、うがいをしたから、その日の歯磨きが不要になるという意味ではありません。
日中できなかった日は、就寝前の清掃を諦めない
特に、
「昼は痛くてほとんど磨けなかった」
という日は、夜まで全部諦めないことが大切です。
就寝前は、できる範囲で丁寧に清掃する時間として優先してください。
一度に全部が難しければ、先ほどの「省エネ清掃」に切り替えてかまいません。
フッ化物配合歯磨剤も、痛い日だからといって休まなくて大丈夫
調整後に歯が痛いからといって、歯磨剤そのものをやめる必要はありません。
普段使用しているフッ化物配合歯磨剤を使って清掃してください。
固定式矯正装置が入ると清掃が複雑になり、プラークや食渣が停滞しやすくなるため、長期的にはう蝕や歯肉炎の予防管理が大切です。
大事なのは、「調整後の痛み対策」と「虫歯予防」を別々のものとして考えないこと。
痛みに合わせて磨き方を弱く・細かく変えながら、いつもの予防習慣はできる範囲で続けます。
1日うまく磨けなかったら、すぐ虫歯になる?
ここは心配しすぎなくても大丈夫です。
調整後に痛くて、一度いつも通り磨けなかったからといって、その一回だけを原因としてすぐ虫歯やホワイトスポットができるわけではありません。
問題にしたいのは、「調整のたびに、痛い日は何日も磨かない」という状態が習慣になることです。
矯正治療は短い治療ではありません。
長期間装置と付き合っていくからこそ、100点の歯磨きが難しい日には、0点にするのではなく、30点、50点、70点でも清掃をつなぐ。
そんな考え方も大切です。
「調整後だから仕方ない」で済ませない方がいい痛みもあります
ワイヤー調整後に歯が浮いたように感じたり、複数の歯が噛むと痛かったりするのは珍しくありません。
ただし、「調整後」という理由だけで、すべての痛みを同じものとして扱うことはできません。
調整後によくみられる経過
- 調整後から始まった
- 複数の歯が押される・浮くように感じる
- 何もしない時より噛むと気になる
- 最初の数日に強く、その後少しずつ軽くなっている
という経過は、矯正力に伴う疼痛としてみられるパターンと合います。
一度、矯正治療を受けている歯科医院へ相談したい場合
- 特定の1本だけ非常に強く痛む
- 時間がたつほど痛みが強くなる
- 数日たっても軽くなる感じがない
- 何もしていなくても強い痛みが続く
- 歯ぐきや顔が強く腫れてきた
- 膿が出る
- 発熱を伴う
- ブラケットが外れている
- ワイヤーが飛び出して頬や歯ぐきへ刺さる
- 装置が明らかに変形している
- 痛くてほとんど食事ができない
といった場合は、「矯正中だから普通」と自己判断せず、矯正治療を受けている歯科医院へ相談してください。
「何日までは絶対に大丈夫」と機械的に線を引くのではなく、痛みが軽くなる方向へ向かっているかを見ることも大切です。
歯科衛生士として伝えたい「痛い日の最低ライン」
ここまでいろいろ書きましたが、ワイヤーを調整した日の夜に全部思い出す必要はありません。
まず、この6つだけ覚えてください。
1.歯を噛みしめながら磨かない
少し口を開け、上下の歯をできるだけ当てないようにします。
2.歯ブラシを強く押しつけない
毛先をつぶさず、目的の場所へ当てます。
3.1〜2歯ずつ、小さく磨く
大きくゴシゴシ動かさず、磨く範囲を小さくします。
4.難しい一点は別の道具へ任せる
ワンタフトブラシや、普段から使っている適切な歯間ブラシなどへ仕事を分担します。
5.完璧にできなくても、清掃をゼロにしない
「今日は100%できなかった」より、「痛みに合わせた方法で続けられた」と考えてください。
6.日中できなかった日は、就寝前まで諦めない
昼に十分磨けなくても、そのまま1日全部を諦める必要はありません。
夜は痛みに合わせて工程を分けながら、できる範囲で清掃します。
力を抜いても、清掃までなくす必要はありません。
よくある質問
Q1.ワイヤー調整当日は歯磨きを休んでもいいですか?
基本的には、歯磨きをすべて休む必要はありません。
ただし痛みがある日に、いつも通りの強さや速さで無理に磨く必要もありません。
歯を噛みしめず、力を弱め、1〜2歯ずつ小さな範囲へ分けて清掃してみてください。
Q2.痛い歯には歯ブラシを当てない方がいいですか?
一般的な調整後の圧痛であれば、軽く毛先を当てて清掃することまで避ける必要はありません。
ただし、軽く触れただけでも非常に強く痛む、1本だけ鋭く痛む、痛みが悪化している場合などは無理をせず相談してください。
Q3.やわらかい歯ブラシへ替えた方がいいですか?
やわらかめのブラシが使いやすく感じる方はいますが、「やわらかければ必ず正解」というわけではありません。
毛の硬さだけでなく、どのくらい押しているか、毛先が目的の場所へ届いているか、どのくらい大きく動かしているかも重要です。
Q4.ワンタフトブラシだけで全部磨いてもいいですか?
ワンタフトブラシは狙った一点を磨くのに便利ですが、普通の歯ブラシを完全に置き換えるためのものと考える必要はありません。
「普通の歯ブラシではつらい場所だけ担当してもらう」という使い方が現実的です。
Q5.歯間ブラシを入れると痛いのですが、我慢して通した方がいいですか?
無理に押し込まないでください。
サイズが大きすぎる、挿入方向が合っていない、歯肉に炎症があるなど、いろいろな理由が考えられます。
普段から使用しているものでも急に強く痛む場合は、使う位置やサイズを歯科医院で確認してください。
Q6.口腔洗浄器だけなら痛くありません。それだけでもいいですか?
食片を流す補助にはなりますが、口腔洗浄器だけで歯ブラシによる清掃を省いてよいとする十分な根拠はありません。
できる範囲でブラッシングと組み合わせてください。
Q7.痛み止めを飲んで痛くなくなったら、普段通り強く磨いていいですか?
鎮痛薬で痛みが軽くなったことと、強いブラッシング圧が必要になることは別問題です。
痛みが軽くなっていても、毛先を強く押しつける必要はありません。
Q8.調整後の痛みは何日くらい続きますか?
初期のワイヤー装着後では1日目あたりに強くなり、その後低下していく研究が多く、調整後を追った研究でも最初の1〜3日に強くなる傾向が報告されています。
ただし個人差があります。
「○日までは絶対に正常」と一律に決めることはできません。
強い痛みが続く、悪化している、腫れや装置の異常がある場合は相談してください。
まとめ|痛い日は「頑張って磨く」より「磨き方を組み替える」
ワイヤー調整後は、歯が浮いたように感じたり、噛んだときに痛みを感じたりすることがあります。
そんな日は、
「痛いから今日はまったく磨かない」
でも、
「早く終わらせたいから強くゴシゴシ磨く」
でもありません。
意識したいのは、
- 歯を噛みしめない
- 歯ブラシを押しつけない
- 磨く範囲を小さくする
- 難しい場所は道具に分担させる
- 日中できなくても、夜まで全部諦めない
この5つです。
調整後の数日は、“いつも通り頑張る日”ではなく、“痛みに合わせて磨き方を組み替える日”です。
「力を抜く」のと「手を抜く」のは、同じではありません。
無理なく続けられる清掃方法を一緒に探していきましょう。
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