2026年7月01日

(院長の徒然コラム)

はじめに
矯正治療中の患者さんから、よく聞かれる質問があります。
「矯正中は、どこを特に磨けばいいですか?」
「ワイヤーがあると、歯ブラシが当たりにくいです」
「マウスピースは、どのくらい洗えばいいですか?」
矯正中の歯磨きは、装置の種類によって難しいポイントが変わります。
ワイヤー矯正では、ブラケットやワイヤーのまわりに汚れが残りやすくなります。
マウスピース矯正では、外して歯を磨ける反面、歯を磨かずに戻すと、汚れや糖分をマウスピースの内側に閉じ込めやすくなります。
矯正中の歯磨きは、ただ強く磨くことが大切なのではありません。
装置ごとに汚れが残りやすい場所を知って磨くことが大切です。

矯正中は、歯磨きが下手になるのではなく「磨く場所」が増えます
矯正を始めると、歯の表面に装置がついたり、歯の形に沿ってマウスピースを装着したりします。
そのため、矯正前と同じように磨いているつもりでも、歯ブラシの毛先が届きにくい場所が出てきます。
ワイヤー矯正では、ブラケットの上下、ワイヤーの下、奥歯の装置まわり、歯と歯の間、歯ぐきとの境目に汚れが残りやすくなります。
マウスピース矯正では、食後にマウスピースを戻す前の歯の表面、アタッチメントの周囲、歯と歯の間、そしてマウスピースそのものが清掃のポイントになります。
矯正中の清掃は、歯だけを見るのではなく、歯・装置・歯ぐきの境目をセットで見ることが大切です。

ワイヤー矯正で汚れが残りやすい場所
ワイヤー矯正では、歯の表面にブラケットという小さな装置がつき、そこにワイヤーが通ります。
この装置のまわりには、食べかすやプラークが残りやすくなります。
特に磨き残しが出やすいのは、ブラケットの上側と下側です。歯ブラシを正面から当てるだけでは、装置のきわに毛先が入りにくいことがあります。
ワイヤーの下も汚れが残りやすい場所です。普通の歯ブラシだけでは届きにくいことがあるため、タフトブラシや歯間ブラシを使うと確認しやすくなります。
奥歯の装置まわりも注意が必要です。奥歯はもともと歯ブラシが届きにくい場所ですが、矯正装置がつくとさらに見えにくくなります。
ワイヤー矯正中は、歯の表面を一気に磨くのではなく、「装置の上」「装置の下」「ワイヤーの下」「歯ぐきとの境目」というように、場所を分けて磨くと確認しやすくなります。


ワイヤー矯正中は、道具を使い分けると磨きやすくなります
ワイヤー矯正中の歯磨きは、普通の歯ブラシだけで全部を済ませようとすると難しく感じることがあります。
まず、普通の歯ブラシで全体を磨きます。ブラケットの上から斜めに当てる、下から斜めに当てる、というように角度を変えながら磨きます。
そのあと、細かい部分にはタフトブラシを使います。タフトブラシは、ブラケットのまわりや奥歯の装置まわりを確認しやすい道具です。
歯と歯の間には、歯間ブラシやフロスを使うことがあります。ただし、歯間ブラシはサイズが合っていないと歯ぐきを傷つけることがあるため、無理に太いものを入れないようにしましょう。
ワイヤーがある場合、通常のフロスをそのまま通しにくいことがあります。そのようなときは、フロススレッダーやスーパーフロスを使う方法もあります。
大切なのは、道具をたくさん使うことではありません。
自分の口の中で、どこに汚れが残りやすいかを知り、その場所に合った道具を選ぶことです。
歯ブラシの毛先が開いていると、矯正装置のまわりに毛先が届きにくくなります。毛先が広がってきたら、早めに交換しましょう。
【ブラシの交換時期はいつ?毛先の開きと磨き残しの関係を歯科衛生士が解説】


マウスピース矯正は、外せるからこそ「戻す前」が大切
マウスピース矯正は、食事や歯磨きのときに装置を外せることが大きな特徴です。
そのため、ワイヤー矯正と比べると、歯の表面は磨きやすいと感じる方も多いと思います。
しかし、外せるからといって清掃が簡単になるだけではありません。
食事の後に歯を磨かず、そのままマウスピースを戻すと、歯の表面に残った食べかす、糖分、酸、プラークをマウスピースの内側に閉じ込める形になります。
マウスピースは歯にぴったり沿って長時間装着するものです。歯が汚れた状態で装着すると、汚れが唾液で流れにくくなり、虫歯やにおい、着色の原因になることがあります。
マウスピース矯正では、外せることよりも、戻す前にきれいにすることが大切です。


マウスピースは、毎食後に洗うのが基本です
マウスピースは、外すたびに流水で軽く洗いましょう。
食事の後は、歯を磨き、マウスピースも洗ってから戻すのが基本です。外出先ですぐに歯磨きができない場合でも、まず口をよくゆすぎ、マウスピースも流水で洗ってから戻し、できるだけ早めに歯磨きをしましょう。
「1日1回洗えばいいですか?」と聞かれることがありますが、実際には毎食後に確認するのが安心です。
朝食後、昼食後、夕食後、間食後など、外して食べたあとは、歯とマウスピースの両方をきれいにしてから戻します。
そのうえで、1日1回は、やわらかいブラシやマウスピース用洗浄剤を使って、少し丁寧に清掃するとよいでしょう。
マウスピースは透明なので、きれいに見えることがあります。ですが、唾液やプラークは表面につきます。見た目が透明でも、清掃しなくてよいわけではありません。
また、交換する前日だから洗わなくていい、というものでもありません。数日から1〜2週間程度で交換するタイプでも、その期間中に汚れやにおいはつきます。使っているあいだは毎日清掃しましょう。
マウスピースを洗うときの注意点
マウスピースを洗うときは、基本的には流水で洗います。水、またはぬるめの水で洗うようにしましょう。
熱いお湯は避けてください。熱いお湯を使うと、マウスピースが変形する可能性があります。少し形が変わるだけでも、歯に合わなくなることがあります。
ブラシで洗う場合は、やわらかい歯ブラシを使い、軽い力で洗います。強くこすりすぎると、細かな傷やくもりの原因になることがあります。
歯磨き粉については注意が必要です。歯磨き粉の種類によっては研磨剤が含まれており、マウスピースの表面に細かな傷がつくことがあります。マウスピースには、基本的に歯磨き粉をつけてゴシゴシ磨く方法は避けた方が安心です。
汚れやにおいが気になる場合は、市販のマウスピース用洗浄剤や、矯正用リテーナー対応の洗浄剤を使う方法もあります。入れ歯用洗浄剤を使う場合も、マウスピースや矯正用リテーナーに対応しているかを確認しましょう。
洗浄剤を使う場合は、製品ごとの使用方法を守ることが大切です。長くつければよいというものではありません。指定された時間で使い、使用後は流水でよくすすいでから装着しましょう。
アルコール入りの洗口液、漂白剤、強い薬剤などに自己判断で長時間つけ置きすることは避けてください。素材の劣化や変色につながることがあります。


食事中に外したマウスピースは、ケースに入れましょう
食事のときに外したマウスピースを、ティッシュに包んで置いてしまう方がいます。
これは、できれば避けたい習慣です。
ティッシュに包むと、うっかり捨ててしまうことがあります。また、テーブルの上やカバンの中にそのまま置くと、ほこりや細菌がつくことがあります。
食事中に外す場合は、流水で軽く洗い、水気を切って、清潔なケースに入れましょう。
食事のあいだの短時間であれば、洗って水気を切り、ケースに入れる流れで十分です。長時間外して保管する場合は、洗ってから水気を切り、清潔な状態で保管します。
ただし、マウスピース矯正は基本的に長時間装着する装置です。外したまま長く置きすぎると、必要な装着時間が足りなくなることがあります。
外すときはケースへ。
戻す前には歯とマウスピースを清掃。
この2つを習慣にしておくと、紛失や汚れを防ぎやすくなります。

マウスピースのケースも清潔にしましょう
マウスピース本体を洗っていても、ケースが汚れていると、保管中に汚れがつきやすくなります。
ケースの内側には、唾液や水分が残ることがあります。毎日使うものなので、ケースも定期的に洗い、清潔な状態で乾かしておきましょう。
ケースににおいがある、汚れが取れない、ひび割れがある場合は、交換を考えてもよいでしょう。
マウスピースを持ち運ぶときは、専用ケースを使うことが基本です。ポケットに直接入れる、カバンにそのまま入れる、ティッシュに包む、という置き方は避けましょう。

装着したまま飲むなら、基本は水です
マウスピースをつけたまま飲み物を飲む場合、基本は水にしましょう。
甘い飲み物、スポーツドリンク、ジュース、カフェラテ、炭酸飲料などを装着したまま飲むと、糖分や酸がマウスピースの内側に入り込むことがあります。
マウスピースは歯に密着しているため、飲み物が入り込むと、その液体が歯の表面にとどまりやすくなります。これが虫歯、着色、においの原因になることがあります。
アルコール類も、装着したまま飲むことは避けた方がよいでしょう。アルコールそのものによる素材への影響だけでなく、口の中が乾きやすくなったり、清掃が不十分なまま装着時間が長くなったりすることがあります。
水以外を飲むときは、できればマウスピースを外します。飲んだ後は、口をゆすぎ、できれば歯を磨いてから戻しましょう。
スポーツドリンクや炭酸飲料、酸性飲料と歯の関係については、こちらでも詳しく解説しています。
【スポーツドリンク・炭酸飲料で歯が溶ける?虫歯と酸蝕の違いを歯科衛生士が解説】
仕事中の飴、カフェラテ、夜食など、口の中が休みにくい習慣についてはこちらも参考になります。
【仕事中の飴・カフェラテ・夜食はなぜ虫歯リスクになる?間食の回数と“口の中が休めない習慣”を歯科衛生士が解説】

マウスピース矯正でも、アタッチメント周囲は磨き残しに注意します
マウスピース矯正では、歯の表面にアタッチメントという小さな突起のようなものをつけることがあります。
アタッチメントは、マウスピースが歯を動かすための補助になるものですが、その周囲には汚れが残りやすいことがあります。
マウスピースを外せば歯磨きはしやすくなりますが、アタッチメントのきわ、歯ぐきとの境目、歯と歯の間は、いつも通り丁寧に確認しましょう。
特に、前歯の重なりがまだ残っている時期や、奥歯の歯と歯の間は、見た目よりも汚れが残りやすいことがあります。
マウスピース矯正だからといって、歯間清掃が不要になるわけではありません。フロスや歯間ブラシが必要な場所は、人によって違います。使い方やサイズは、歯科医院で確認しましょう。

矯正中はフッ素入り歯磨き粉も上手に使いましょう
矯正中は、磨き残しが続くと、歯の表面が白く濁ったように見えることがあります。これは、虫歯になる前の変化として見られることがあります。
そのため、毎日の歯磨きでは、フッ素入り歯磨き粉を上手に使うことも大切です。
歯磨き粉を使った後に何度も強くうがいをすると、口の中に残したいフッ素まで流れやすくなります。歯磨き後は、泡を吐き出し、少量の水で軽くゆすぐ程度にする方法もあります。
ただし、マウスピース自体を歯磨き粉で磨くかどうかは別の話です。歯にはフッ素入り歯磨き粉を使い、マウスピースは流水や専用洗浄剤で清掃する、というように分けて考えると分かりやすいです。
フッ素入り歯磨き粉の量や、うがいの仕方についてはこちらで詳しく解説しています。
【歯磨き粉はどのくらいつける?うがいをしすぎるとフッ素は残らない?歯科衛生士が解説】

歯ぐきが腫れる・血が出るときは、磨き方を確認しましょう
矯正中に、歯ぐきが腫れる、歯磨きで血が出る、口臭が気になる、という相談を受けることがあります。
血が出ると、怖くなってその場所を避けて磨いてしまう方もいます。ですが、プラークが残って炎症が起きている場合、避けて磨かないことでさらに汚れが残ることがあります。
もちろん、強くこすりすぎて歯ぐきが傷ついている場合もあります。大切なのは、自分で判断して磨くのをやめることではなく、歯科医院でどこに汚れが残っているのか、どのくらいの力で磨けばよいのかを確認することです。
矯正中は、歯が動くことで歯と歯のすき間や重なり方が変わります。以前は磨きやすかった場所が、途中から磨きにくくなることもあります。
そのため、矯正中の歯磨きは一度覚えたら終わりではありません。治療の段階に合わせて、磨き方を少しずつ調整していくことが大切です。
におい・白い沈着・変形があるときは相談しましょう
マウスピースににおいが残る、白い沈着がつく、洗ってもぬめりが取れない、着色が目立つ、という場合は、清掃方法を見直すタイミングです。
また、熱いお湯や強い薬剤を使ったあとに、マウスピースの形が変わった気がする、浮く感じがある、はまりにくい、割れやひびがある、という場合は、そのまま使い続けずに歯科医院へ相談してください。
マウスピースは、歯を動かすために細かく設計されています。少しの変形でも、予定通りに力がかからなくなることがあります。

歯科医院でのクリーニングは、磨き残しの答え合わせです
矯正中は、自分ではしっかり磨いているつもりでも、毎回同じ場所に汚れが残っていることがあります。
歯科医院では、ブラケットまわり、ワイヤーの下、アタッチメント周囲、奥歯、歯ぐきとの境目などを確認できます。
そのうえで、普通の歯ブラシでよいのか、タフトブラシを足した方がよいのか、歯間ブラシのサイズを変えた方がよいのかを一緒に確認できます。
矯正治療は、歯並びを整えるだけでなく、歯磨きの習慣を見直す機会にもなります。
きれいな歯並びを目指している途中で、虫歯や歯ぐきの炎症が起きてしまうのはもったいないことです。
ワイヤー矯正では「装置のまわり」。
マウスピース矯正では「戻す前」と「マウスピースそのもの」。
この違いを意識して、毎日の清掃を続けていきましょう。
ブランデンタルクリニックでは、矯正中の歯磨きやマウスピースの管理についても、患者さんのお口の状態に合わせて確認しています。広島市中区、紙屋町・八丁堀周辺で、矯正中の磨き残しやマウスピースのお手入れに不安がある方は、定期的なチェックの際にご相談ください。

よくある質問
Q. マウスピースはどのくらいの頻度で洗えばいいですか?
外すたびに流水で軽く洗い、毎食後は歯を磨いてから戻すのが基本です。
朝・昼・夜の食後、間食後など、外して食べたあとは、歯とマウスピースの両方を清掃してから戻しましょう。1日1回は、やわらかいブラシやマウスピース用洗浄剤で丁寧に清掃すると安心です。
Q. マウスピースは歯磨き粉で磨いてもいいですか?
歯磨き粉の種類によっては、研磨剤でマウスピースの表面に細かな傷がつくことがあります。
基本は流水で洗い、必要に応じてやわらかいブラシやマウスピース用洗浄剤を使いましょう。歯磨き粉を使う場合は、自己判断で強くこすらず、歯科医院で確認してください。
Q. マウスピース用洗浄剤は使ってもいいですか?
マウスピース用、矯正用リテーナー対応と表示されている洗浄剤を使う方法があります。
使用する場合は、製品ごとの使用時間やすすぎ方を守りましょう。長くつけ置きすればよいというものではありません。漂白剤やアルコール入り洗口液などに自己判断でつけることは避けてください。
Q. マウスピースをつけたまま飲み物を飲んでもいいですか?
基本は水にしましょう。
甘い飲み物、スポーツドリンク、ジュース、カフェラテ、炭酸飲料などを装着したまま飲むと、糖分や酸がマウスピースの内側に入り込み、虫歯や着色、においの原因になることがあります。水以外を飲むときは、できれば外して、飲んだ後に口をゆすぎ、歯を磨いてから戻しましょう。
Q. 外出先で歯磨きができないときはどうすればいいですか?
まず口をよくゆすぎ、マウスピースも流水で洗ってから戻しましょう。
ただし、それだけで十分という意味ではありません。できるだけ早めに歯磨きをしてください。外出時は、歯ブラシ、マウスピースケース、必要に応じてフロスや洗浄用品を持っておくと安心です。
Q. マウスピースをティッシュに包んで置いてもいいですか?
できれば避けましょう。
ティッシュに包むと、間違って捨ててしまうことがあります。また、清潔に保ちにくくなります。外したマウスピースは、流水で洗って水気を切り、専用のケースに入れましょう。
Q. ケースも洗った方がいいですか?
はい。ケースも定期的に洗い、清潔にしておきましょう。
マウスピース本体をきれいにしていても、ケースの内側が汚れていると、保管中に汚れがつきやすくなります。におい、汚れ、ひび割れがある場合は交換を考えてもよいでしょう。
Q. ワイヤー矯正とマウスピース矯正で、歯磨きの注意点は違いますか?
違います。
ワイヤー矯正では、ブラケットまわり、ワイヤーの下、奥歯の装置まわりに汚れが残りやすくなります。マウスピース矯正では、外して磨ける一方で、食後に歯を磨かず戻すと汚れを閉じ込めやすくなります。
ワイヤー矯正は「装置のまわり」、マウスピース矯正は「戻す前と装置そのもの」が清掃ポイントです。
