歯をぶつけてグラグラする歯はどう固定する?外傷歯の整復とワイヤー・レジン固定|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

〒730-0032 広島県広島市中区立町2-1 立町中央ビル4F

082-258-6411

ネット予約はこちらから
受付

歯をぶつけてグラグラする歯はどう固定する?外傷歯の整復とワイヤー・レジン固定

歯をぶつけてグラグラする歯はどう固定する?外傷歯の整復とワイヤー・レジン固定|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

2026年7月28日

歯をぶつけてグラグラする歯はどう固定する?外傷歯の整復とワイヤー・レジン固定

(歯科助手さんの治療見学ノート)

はじめに

転んで顔を打った、スポーツ中に相手とぶつかった、硬い物が前歯に当たった――。

そのあと歯がグラグラしていることに気づくと、「このまま抜けてしまうのではないか」「早く接着剤で固めてもらわなければ」と不安になると思います。

外傷で動くようになった歯に対して、歯科医院では周囲の歯とつなぐ「固定」を行うことがあります。前歯の表面に細いワイヤーを沿わせ、白い歯科用レジンで何か所かを留める処置です。

ただし、外傷歯の固定は、単にグラグラする歯を硬く固める処置ではありません。

まず、歯が本来の位置からずれていないか、歯根が折れていないか、歯を支える歯槽骨まで骨折していないかを調べます。歯がずれていれば、必要に応じて正しい位置へ戻します。その位置を治癒するまで支えるのが、外傷歯の固定です。

歯科助手として治療を見学していると、先生がすぐにワイヤーを付けるのではなく、外傷を受けた歯とその周囲を何度も確認している理由が分かります。

今回は、歯をぶつけて動くようになったとき、歯科医院ではどのような診査を行い、どのように歯を整復・固定するのかをご紹介します。

歯をぶつけると、なぜグラグラするの?

歯は、顎の骨へ直接くっついているわけではありません。

歯根と歯槽骨の間には、「歯根膜」という薄い組織があります。歯根膜は、噛んだときに歯へ加わる力を和らげるクッションのような役割を持っています。

健康な歯にも、生理的な範囲でわずかな動きがあります。私たちが普段それをほとんど感じないのは、歯根膜が歯を安定して支えているからです。

ところが、転倒や衝突によって強い力が加わると、歯根膜が押しつぶされたり、引き伸ばされたり、一部が断裂したりします。

衝撃が大きければ、歯が歯槽から少し抜け出すこともあれば、横方向や骨の中へ押し込まれることもあります。さらに、歯根そのものが折れる「歯根破折」や、歯を支える歯槽骨が骨折する「歯槽骨骨折」が起きることもあります。

つまり、同じように「歯が動く」という症状があっても、傷ついている場所は同じではありません。

歯根膜が主に傷ついているのか、歯根が折れているのか、歯槽骨の一部が歯と一緒に動いているのかによって、必要な固定方法や固定期間は変わります。

グラグラする歯を、すぐに固定しないのはなぜ?

外傷で歯が動いていると、患者さんは「早くワイヤーを付けてほしい」と思われるかもしれません。

しかし、歯が本来の位置からずれている場合、そのまま固定すると、正しくない位置で治癒してしまう可能性があります。

また、歯根破折や歯槽骨骨折を見逃したまま通常の方法で固定しても、必要な安定性が得られないことがあります。

そのため先生は、ワイヤーを付ける前に、歯がどのような外傷を受けているのかを調べます。

最初に確認するのは、いつ、どこで、どのように歯をぶつけたかです。

転倒したのか、スポーツ中の衝突なのか、交通事故なのかによって、歯へ加わった力の方向や大きさが異なります。受傷からどのくらい時間がたっているかも、今後の治療方針を考えるうえで重要です。

意識を失った、吐き気や強い頭痛がある、受傷前後の記憶がない、顎を動かしにくい、鼻や耳から出血しているといった症状がある場合は、歯より先に頭部や顎顔面の外傷を確認しなければなりません。

状況によっては、歯科治療よりも医科での緊急対応が優先されます。

歯の位置と咬み合わせを確認する

口の中では、まず歯の位置を確認します。

外傷を受けた歯が隣の歯より長く見えていないか、反対に骨の中へ押し込まれて短く見えていないか、唇側や口蓋側へ傾いていないかを見ます。

歯が数ミリずれただけでも、上下の歯を噛んだときに、その歯だけが先に当たることがあります。

患者さんが「歯が高くなった気がする」「口を閉じると一か所だけ当たる」「いつもの位置で噛めない」と感じている場合は、歯の位置が変わっている可能性があります。

外傷を受けた直後は、出血や腫れ、痛みのため、ご自身で歯の位置を正確に判断できないこともあります。

受傷前の歯並びが分かる写真があれば、元の位置と比較する手掛かりになる場合があります。

一本だけでなく、隣の歯まで調べる理由

外傷歯の動きを確認するとき、先生はグラグラしている歯だけを触るわけではありません。

隣の歯を一本ずつ支えながら、どの範囲が動いているのかを確認します。

一本だけが動いている場合は、その歯の歯根膜や歯根を中心とした損傷が考えられます。

一方、ある歯を動かしたときに、隣の歯まで一つの塊として動く場合は、複数の歯を支えている歯槽骨の一部が骨折している可能性があります。

歯槽骨骨折では、歯肉が裂けていたり、歯肉の下に血腫ができていたり、複数の歯を含む骨片全体がずれたりします。咬み合わせが大きく変わることもあります。

エックス線写真に骨折線がはっきり写らない場合もあるため、実際に歯と骨の動きを確認する触診や動揺度検査が重要です。

先生が外傷歯だけでなく周囲の歯まで何度も確認していたのは、「どの歯が悪いか」を探しているだけではありません。

歯だけが動いているのか、それとも骨の一部が歯と一緒に動いているのかを調べていたのです。

【歯医者で歯をたたく・歯ぐきを押す・歯を揺らすのはなぜ?打診・触診・動揺度検査で分かること】

エックス線写真では何を見ているの?

外傷歯の診査では、エックス線写真を撮影します。

確認するのは、歯根破折の有無、歯が歯槽からどの方向へずれたか、歯根膜の幅が変化していないか、歯槽骨が骨折していないかといった点です。

歯根破折の線は、エックス線を当てる角度によって見え方が変わります。そのため、一枚の写真で異常が分からなくても、撮影方向を変えると破折線が確認できることがあります。

外傷の状態を立体的に把握する必要がある場合には、歯科用CTを検討することもあります。

ただし、すべての外傷歯でCTが必要になるわけではありません。

通常のエックス線写真と口の中の診査で判断できる症例もあれば、歯根破折、側方への大きな転位、歯槽骨骨折などが疑われ、三次元的な確認が治療方針に影響する症例もあります。

【歯科用CTとレントゲンの違い】

また、歯が欠けているのに破片が見つからず、唇や頬に傷がある場合は、歯の破片が軟組織の中へ入り込んでいないかも確認します。

必要に応じて、歯だけではなく、唇や頬の部分をエックス線撮影することがあります。

グラグラしていても、固定しないことがある

外傷で歯が動いているからといって、すべての歯を固定するわけではありません。

歯の位置は変わっていないものの、歯根膜の一部が損傷して動揺している状態を「亜脱臼」といいます。

歯肉の境目から出血することもありますが、動揺が軽く、噛んだときの痛みも強くなければ、固定せずに経過を見る場合があります。

反対に、歯があまり動かないから軽い外傷とも限りません。

歯が横方向へずれた「側方性脱臼」では、歯根の一部が歯槽骨へ食い込み、歯が骨の中でロックされることがあります。

この場合、歯は本来の位置からずれているのに、指で触ってもほとんど動かないことがあります。歯を軽くたたいたときに硬い音がしたり、咬み合わせが変わったりすることが診断の手掛かりになります。

「動いているから重症」「動いていないから大丈夫」と、動揺の有無だけで判断することはできません。

歯の位置、動く方向、咬み合わせ、歯根や歯槽骨の状態を合わせて、固定が必要かどうかを判断します。

ずれた歯は、固定する前に正しい位置へ戻す

外傷で歯が本来の位置からずれている場合、その位置のままワイヤーで留めるわけではありません。

必要に応じて局所麻酔を行い、歯や周囲の骨の状態を確認しながら、歯を元の位置へ戻します。この操作を「整復」といいます。

歯が歯槽から少し抜け出す「挺出性脱臼」では、外傷歯が隣の歯より長く見え、大きく動くことがあります。この場合は、歯をゆっくりと元の位置へ戻します。

横方向へずれた側方性脱臼では、歯根が骨へ食い込んでいることがあります。そのため、骨に引っ掛かっている状態を慎重に解除してから、正しい位置へ整復します。

歯槽骨骨折では、一本の歯だけではなく、複数の歯を含む骨片全体を元の位置へ戻します。歯肉が裂けている場合には、必要に応じて縫合も行います。

外傷歯の整復で大切なのは、強い力で一気に押し戻すのではなく、周囲の組織へできるだけ追加の損傷を与えないよう、慎重に行うことです。

固定装置が、ずれた歯を少しずつ元の位置へ動かしているのではありません。

先生が整復した位置を、傷ついた組織が治るまで保つことが固定装置の役割です。

ワイヤーとレジンで、どのように固定するの?

外傷歯の固定には複数の方法がありますが、代表的なのが、細いワイヤーと歯科用の接着性レジンを使う方法です。

見た目は矯正治療のワイヤーに少し似ていますが、目的は異なります。

矯正装置は、歯を目的の位置へ移動させるために力を加えます。外傷歯の固定では、歯を移動させる力が加わらないよう、整復後の歯列へ受動的にワイヤーを沿わせます。

歯の表面を清掃して、水分を防ぐ

レジンを歯へ接着させるには、歯の表面に血液や唾液が付着していない状態をつくる必要があります。

外傷直後は、歯肉から出血していることも少なくありません。

処置を見学していると、ワイヤーを付ける操作だけでなく、歯の表面を清掃し、唾液や出血をコントロールすることに時間をかけていることが分かります。

接着面に水分が入ると、固定装置が外れやすくなる可能性があるためです。

安定した周囲の歯へワイヤーを沿わせる

外傷を受けた歯だけにワイヤーを付けても、固定することはできません。

外傷歯の両隣や、その周囲にある安定した歯を支えとして使い、歯列に沿って細いワイヤーを合わせます。

このとき、ワイヤーを強く引っ張って歯を移動させるのではなく、整復した歯の位置へ自然に沿うよう調整します。

固定に使う周囲の歯にも外傷が及んでいないかを先に確認しているのは、そのためです。

レジンで一点ずつ固定する

ワイヤーの位置が決まったら、歯の表面へ歯科用レジンで留めます。

一般的な接着固定では、歯へ大きな溝を削ってワイヤーを埋め込むわけではありません。歯の表面に接着処理を行い、必要な範囲へレジンを置いて固定します。

ただし、レジンを大量に付ければ強くなるというものでもありません。

歯と歯の間や歯肉に近い部分までレジンが広がると、歯ブラシが届きにくくなり、プラークがたまりやすくなります。歯肉の治癒を妨げる原因にもなるため、固定に必要な範囲へ留め、清掃しやすい形に整えます。

唇や歯肉に当たらないように整える

ワイヤーの端や、硬化したレジンの角が残っていると、唇や歯肉へ当たることがあります。

そのため固定後には、ワイヤーの端が飛び出していないか、レジン表面に鋭い部分がないかを確認し、必要に応じて研磨します。

最後に咬み合わせを確認する

レジンを固めたあと、先生は患者さんに何度かゆっくり噛んでもらいます。

固定装置が外れていないかを見るだけではありません。上下の歯を噛み合わせたときに、外傷歯やレジンの部分へ強い力が集中していないかを確認しています。

整復した歯が正しい位置に見えても、咬んだときにその歯だけが先に当たれば、治癒途中の組織へ繰り返し負担が加わります。

外傷歯を安静に保つためには、固定装置の強さだけでなく、咬み合わせの確認も重要です。

なぜ完全に硬く固めないの?

「グラグラしているなら、できるだけ硬く、まったく動かないようにした方が治りそう」と思われるかもしれません。

しかし、一般的な脱臼性外傷では、歯を完全に動かなくするのではなく、生理的な範囲のわずかな動きを許す「柔軟な固定」が選ばれることがあります。

歯根膜は、噛む力を受け止める生きた組織です。

整復した位置がずれない程度に支えながら、歯根膜の治癒を妨げない固定が求められます。

外傷歯に適した固定装置には、歯を移動させる矯正力が加わらないこと、必要な範囲で生理的な動揺を許すこと、歯肉や唇を傷つけないこと、咬み合わせを邪魔しないこと、清掃しやすいことが求められます。

さらに、固定中に根管治療が必要になった場合でも治療を行えることや、適切な時期に無理なく除去できることも大切です。

固定後に「ほんの少し動くような気がする」と感じても、それだけで固定が失敗しているとは限りません。

ただし、患者さん自身が指や舌で繰り返し動かして確認するのは避けてください。

ワイヤーが浮いている、レジンが取れている、歯の位置が変わった、固定直後にはなかった大きな動揺を感じる場合は、早めに歯科医院へ連絡しましょう。

柔軟な固定と、より高い安定性が必要な固定

すべての外傷で、同じ固定方法を使うわけではありません。

外傷の中心が歯根膜の損傷である場合は、比較的柔軟な固定が選ばれます。

一方、歯根が横方向に折れている歯根破折では、歯冠側の破折片が動かないよう、より安定した固定が必要になることがあります。

歯槽骨骨折でも、歯だけではなく骨片を正しい位置に保つ必要があるため、一般的な脱臼よりも高い安定性が得られる固定方法が選ばれることがあります。

患者さんから見ると同じようなワイヤーに見えても、傷ついた組織によって目的が違います。

歯根膜の外傷では、歯根膜が治癒しやすい環境をつくることが中心です。

歯根破折では、歯根の破折片同士の位置を安定させる必要があります。

歯槽骨骨折では、複数の歯を含む骨片全体を安定させなければなりません。

「どれくらいグラグラしているか」だけではなく、「何が傷つき、何が動いているのか」によって、固定の硬さと期間が決まります。

固定期間はどのくらい?

固定期間は、すべての外傷歯で同じではありません。

日本外傷歯学会の令和5年改訂ガイドラインでは、外傷の種類ごとに標準的な固定期間が示されています。

ただし、国内外のガイドラインで一部の推奨期間が異なるほか、実際には歯の転位量、歯根や歯槽骨の骨折、整復後の安定性、歯根の完成度、治癒経過などを考慮して決めます。

歯の位置が変わっていない亜脱臼では、通常は固定を行わず、噛んだときの痛みや動揺が強い場合に10~14日程度の固定が検討されます。

歯が歯槽から少し抜け出した挺出性脱臼では、整復後に10~14日程度が目安です。

側方性脱臼では、歯根膜だけでなく周囲の骨への損傷を考慮し、6週間程度の固定が示されています。

歯槽骨骨折でも、骨片を整復して6週間程度固定することが標準的な目安です。

水平歯根破折では、隣の歯を固定源として、2か月以上の固定が必要になることがあります。

ただし、同じ診断名でも、歯のずれ方や骨折の位置、整復後の安定性によって対応は変わります。

患者さんにとって重要なのは、「この日数がたてば必ず外せる」と考えないことです。

固定期間は、外傷の名称だけで機械的に決まるものではありません。歯と周囲組織の治癒状態を確認しながら、必要に応じて調整されます。

予定日になれば必ず固定を外せる?

固定期間の目安を迎えたからといって、必ずその日に外せるとは限りません。

固定を外す前には、歯が正しい位置に保たれているか、動揺が減っているか、噛んだときや軽くたたいたときに痛みがないか、歯肉の傷が治っているか、咬み合わせに問題がないかを確認します。

必要に応じてエックス線写真も撮影し、歯根や歯槽骨の状態を確認します。

まだ大きな動揺が残っている、歯根や骨の治癒が十分ではない、整復した位置が安定していないと判断された場合は、固定期間を延長することがあります。

反対に、固定装置の周囲に汚れがたまり、歯肉が強く腫れている場合には、装置の形を修正したり、清掃方法を見直したりする必要があります。

外傷歯の固定を外す日は、カレンダーだけで決まるのではありません。

歯、歯根膜、歯槽骨、歯肉がどこまで治っているかを確認して決めます。

固定を外すときは歯を削るの?

固定を外すときは、ワイヤーを切断または取り外し、歯の表面に残ったレジンを慎重に除去します。

一般的なワイヤー・レジン固定は、歯を大きく削って装置を埋め込む処置ではありません。

固定を外すときは、接着に使ったレジンと歯質を見分けながら、歯の表面への影響をできるだけ抑えてレジンを除去・研磨します。

レジンと歯の色は似ているため、どこまでがレジンで、どこからが歯なのかを確認しながら少しずつ取り除きます。

また、ワイヤーが外れた瞬間に処置が終わるわけではありません。

固定を外したあとに、一本ずつ歯の動揺、咬み合わせ、打診反応、歯肉の状態を確認します。

必要に応じて、固定除去後の食事や運動についても説明があります。

固定中の食事はどうすればいい?

固定した歯へ強い力が加わると、整復した位置がずれたり、ワイヤーやレジンが外れたりする可能性があります。

固定中は、前歯で硬い食べ物を噛み切ることを避け、食べ物を小さく切って、無理のない場所で噛むようにします。

硬いせんべい、氷、ナッツ、硬いパン、骨付き肉などを前歯で強く噛むことは控えましょう。

りんごやフランスパンのように、普段は前歯で噛み切る物も、小さく切って奥歯へ運ぶと負担を減らせます。

ただし、「固定している間は歯をまったく使ってはいけない」という意味ではありません。

外傷の種類や固定方法によって、許容される食事内容は異なります。担当の先生から個別の指示があれば、そちらを優先してください。

舌や指で固定装置を繰り返し触ることも避けましょう。

装置の状態を確かめるつもりでも、何度も力を加えることでレジンが外れる原因になることがあります。

固定中も歯磨きをやめないでください

「触ると痛そうだから」「ワイヤーが外れそうだから」と、固定部分の歯磨きを完全にやめてしまう患者さんがいます。

しかし、ワイヤーやレジンの周囲には、食べかすやプラークがたまりやすくなります。

清掃できていない状態が続くと、歯肉が赤く腫れ、出血しやすくなります。傷ついた歯周組織の治癒を妨げる可能性もあります。

固定部分は、軟らかめの歯ブラシを使い、強くこすらず丁寧に磨きます。

歯と歯の間の清掃方法は、ワイヤーの位置や固定範囲によって異なります。普段使っているフロスが通らない場合もあるため、無理に引き抜こうとせず、歯科医院で清掃方法を確認してください。

洗口剤が処方された場合は、説明された回数と期間を守って使用します。

固定装置が付いているから歯磨きができないのではなく、固定中だからこそ、装置の周囲を清潔に保つことが大切です。

ワイヤーやレジンが外れたらどうする?

固定中には、次の診察日を待たず、早めに連絡していただきたい変化があります。

ワイヤーが歯から浮いている、レジンが取れた、ワイヤーの端が唇や歯肉へ刺さる、歯の位置が変わった、急に咬み合わせがおかしくなったという場合です。

痛みや腫れが強くなった、膿が出た、歯肉にできものが現れた、歯の色が大きく変わった場合にも確認が必要です。

外れかけたワイヤーを自分で強く曲げたり、市販の接着剤で付け直したりしないでください。

市販の接着剤は口の中で使うことを前提としておらず、歯肉や粘膜へ付着したり、その後の治療を難しくしたりする可能性があります。

ブランデンタルクリニックへ通院中に固定装置の異常を感じた場合は、予約日を待たず、電話または公式LINEで状態をお知らせください。

必要に応じて、こちらから写真の送付をお願いすることがあります。

ただし、写真だけでは歯根や歯槽骨の状態、歯の位置、固定の安定性までは確認できません。来院して診査やエックス線検査が必要になる場合があります。

固定したら痛みはすぐになくなる?

歯を正しい位置へ戻して固定すると、動いたときの痛みは軽くなることがあります。

しかし、固定した直後からすべての痛みが消えるとは限りません。

歯根膜や歯槽骨には、外傷による炎症が残っています。噛んだときの違和感や、歯へ軽く触れたときの痛みが、しばらく続くことがあります。

また、口唇や歯肉を一緒に傷つけている場合は、歯とは別に軟組織の痛みも残ります。

大切なのは、時間の経過とともに痛みが少しずつ軽くなっているかどうかです。

痛みが急に強くなった、何もしていなくてもズキズキする、歯肉や顔が腫れてきた、発熱があるという場合は、予定より早く確認が必要です。

固定したら抗菌薬は必要?

外傷歯を固定したすべての患者さんに、必ず抗菌薬が処方されるわけではありません。

歯の脱臼や歯根破折に対する固定だけで、全身的な抗菌薬が一律に必要とは限らないためです。

一方、歯肉や口唇の傷が大きい、傷の汚染が強い、外科的な整復や縫合を行った、患者さんの全身状態から感染への配慮が必要といった場合には、抗菌薬が処方されることがあります。

薬が必要かどうかは、外傷の種類だけでなく、軟組織の傷や患者さんの全身状態を含めて判断されます。

処方された場合は、自己判断で服用を中断せず、説明された方法で使用してください。

土や砂などで口唇や歯肉の傷が強く汚染されている場合は、破傷風ワクチンの接種歴を確認し、必要に応じて医科への相談をお願いすることがあります。

固定した歯の神経はどうなる?

固定した歯は、必ず根管治療になるの?

固定したという理由だけで、歯の神経を取る根管治療が決まるわけではありません。

外傷によって歯が大きく動くと、歯根の先から歯髄へ入る血管も引き伸ばされたり、断裂したりすることがあります。

血流が回復すれば、歯髄が生きた状態を保てることがあります。

特に、歯根がまだ完成していない若い永久歯では、根の先が広く、血流が再び戻る可能性があります。

歯髄が生きていれば、その後も歯根の成長を続けられる可能性があるため、できる限り歯髄を保存することが重要です。

一方、歯髄の血流が回復せず、歯髄壊死や感染が起きたと判断された場合には、根管治療が必要になります。

つまり、「固定したから神経を取る」のではありません。

外傷によって歯髄が回復できなかった、または感染が起きたと判断された場合に、根管治療を検討します。

外傷直後は歯髄検査に反応しないことがある

外傷を受けた歯では、冷たい刺激や電気を使って歯髄の反応を調べることがあります。

ただし、受傷直後に反応がなかったからといって、その一回の検査だけで歯髄壊死と断定することはできません。

外傷直後は、歯髄が生きていても、神経の反応が一時的に低下していることがあります。

そのため、初診時の結果だけで判断せず、後日の症状、歯の色、打診反応、歯髄検査、エックス線所見を比較します。

反対に、受傷直後には反応があっても、その後に血流が失われ、歯髄壊死が明らかになることもあります。

外傷歯では、一回の検査結果よりも、時間を追ってどのように変化しているかを見ることが重要です。

歯の変色だけで歯髄壊死とは断定できない

外傷後に歯の色が変わることがあります。

歯の内部で一時的な出血が起こると、歯が赤みを帯びたり、灰色っぽく見えたりする場合があります。

変色は歯髄の状態を考える重要な手掛かりですが、色だけで直ちに歯髄壊死と決めることはできません。

痛み、腫れ、歯髄検査、エックス線写真、歯根の成長状態などを合わせて判断します。

歯の色が戻る場合もあれば、変色が続き、後から歯髄壊死が確認される場合もあります。

外傷後に色の変化へ気づいたときは、自己判断で様子を見続けず、歯科医院で確認してもらいましょう。

固定を外したら治療は終わり?

固定を外せるほど歯が安定しても、歯の中や歯根の周囲まで完全に治ったとは限りません。

固定は、主に歯根膜や歯槽骨が治癒するための機械的な安定を与える処置です。

歯髄の血流が回復しているか、感染が起きていないか、歯根吸収が始まっていないかは、その後も確認する必要があります。

外傷後の変化には、受傷直後ではなく、数週間、数か月、場合によってはさらに時間がたってから現れるものがあります。

経過観察では、痛みや動揺だけでなく、歯の色、歯肉の腫れ、打診反応、歯髄検査、エックス線画像などを確認します。

痛みがなく、普通に噛めているからといって、自己判断で通院を中断しないことが大切です。

固定が外れた日は、外傷治療の終了日というより、長期的な経過観察へ移る一つの区切りです。

【歯をぶつけた後、痛くなくても経過観察が必要な理由】

外傷後の歯根吸収は、痛みなく進むことがある

外傷で歯根膜や歯根の表面が傷つくと、時間がたってから歯根吸収が起こることがあります。

感染を伴って進行する歯根吸収や、歯根が徐々に骨へ置き換わっていくタイプなどがあり、初期には痛みを感じないこともあります。

そのため、固定が外れたあとも、定期的なエックス線検査が必要です。

外傷後に起こる歯根吸収の種類や治療については、院長の徒然コラム「外傷後歯根吸収」で詳しく解説しています。

【外傷後の歯根吸収はなぜ起こる?】

子どもの生えたばかりの永久歯では、歯髄を残す意味が大きい

子どもの前歯は、口の中へ生えた時点で、歯根が完全に出来上がっているとは限りません。

生えたばかりの永久歯では、歯根がまだ短く、根の先が開いています。

歯髄が生きていれば、その後も歯根が長くなり、根の壁が厚くなっていきます。

外傷によって早い時期に歯髄を失うと、歯根が薄く、短い状態で成長が止まる可能性があります。将来的に歯根が折れやすくなることもあるため、歯髄を保存できるかどうかは重要です。

そのため、根未完成の永久歯では、外傷直後の歯髄検査へ反応しないという理由だけで、すぐに根管治療を始めるのではなく、歯髄が回復する可能性を考えながら慎重に経過を確認します。

もちろん、感染や歯根吸収が確認された場合には、歯根の状態に合わせた治療が必要です。

乳歯の外傷も同じように固定するの?

乳歯では、永久歯と同じ方針をそのまま当てはめることはできません。

乳歯の根の近くでは、後から生えてくる永久歯が成長しています。治療による負担、乳歯の交換時期、後継永久歯への影響を考えて対応を決めます。

乳歯でも、歯根破折や歯槽骨骨折などで固定が必要になる場合はありますが、外傷の種類によっては、処置をせず自然な位置の回復を待つこともあります。

なお、完全に抜けた乳歯は、後から生えてくる永久歯を傷つける可能性があるため、原則として元の位置へ戻しません。

抜けた歯が乳歯か永久歯か分からない場合もあるため、自己判断せず、できるだけ早く歯科医院へ連絡してください。

口の中に残っている歯を、自分で押し戻さないでください

歯がずれていることに気づいても、口の中に残っている歯を自分で何度も押したり、強い力で元の位置へ戻そうとしたりしないでください。

歯根が骨へ食い込んでいる場合や、歯根・歯槽骨が折れている場合があります。

無理に動かすと、歯根膜や歯髄の血管、周囲の骨へ追加の損傷を与える可能性があります。

ティッシュやテープ、市販の接着剤などを使って固定することも避けてください。

歯が抜け落ちそうに見えても、完全には抜けていない歯は、その位置と組織の損傷を確認してから整復する必要があります。

歯をぶつけて位置が変わった、グラグラする、咬み合わせがおかしい、歯肉から出血しているという場合は、痛みが弱くても早めに受診しましょう。

歯が完全に抜けている場合は対応が異なります

完全に抜けた永久歯は、口の中に残っている脱臼歯とは対応が異なります。

永久歯の完全脱臼では、歯が口の外に出てからの時間と、歯根膜を乾燥させないことが予後に大きく関係します。

抜けた歯は、歯根ではなく白い部分である歯冠を持ってください。

汚れている場合は、歯根をこすらず、流水で短時間やさしくすすぎます。受傷直後に正しい向きで元の位置へ戻せる状況であれば、早期の再植が望ましいこともあります。

ただし、無理に押し込んだり、向きが分からないまま戻したりする必要はありません。

すぐに戻せない場合は、歯の保存液や冷たい牛乳などに入れて乾燥を防ぎ、直ちに歯科医院へ連絡してください。

小さなお子さんでは、歯を口の中へ含ませる方法は誤飲・誤嚥の危険があるため避けます。

完全に抜けた乳歯は、原則として再植しません。

よくあるご質問

固定処置は痛いですか?

歯を正しい位置へ戻す整復が必要な場合には、局所麻酔を行うことがあります。

ワイヤーを歯の表面へレジンで接着する操作そのものは、歯の神経を削る処置とは異なります。

ただし、外傷を受けた歯や歯肉にはすでに炎症があるため、触れたときに痛みや違和感を感じる場合があります。

ワイヤーは矯正装置と同じですか?

見た目は似ていますが、目的が違います。

矯正装置は歯を移動させるために力を加えます。外傷歯の固定は、整復した位置を治癒するまで保つためのもので、歯を移動させる矯正力が加わらないように設置します。

固定したまま学校や仕事へ行けますか?

歯以外に大きな外傷がなく、全身状態に問題がなければ、学校や仕事へ戻れることが多いです。

ただし、接触を伴うスポーツ、転倒の危険が高い活動、前歯へ衝撃が加わる可能性のある運動は、一定期間控える必要があります。

再開時期は外傷の程度によって異なるため、担当の先生へ確認してください。

装置が付いたまま話せますか?

前歯の表面へ細いワイヤーを付ける固定では、最初は唇に違和感を覚えることがあります。

多くの場合は徐々に慣れていきますが、ワイヤーの端が当たって傷ができる、話すたびに強く痛むという場合は、装置の調整が必要なことがあります。

装置が少し動く気がします

柔軟な固定では、わずかな生理的動揺が残る場合があります。

ただし、ワイヤーが浮いている、レジンが取れている、歯の位置や咬み合わせが変わった場合は、固定装置の確認が必要です。

指や舌で繰り返し動かして確かめず、歯科医院へご連絡ください。

固定すれば、必ず歯を残せますか?

固定は、歯根膜や骨が治るための環境を整える重要な処置です。

しかし、歯の長期保存を保証するものではありません。

外傷の強さ、受診までの時間、歯根や歯槽骨の損傷、歯髄の回復、感染や歯根吸収の有無などによって予後は変わります。

初期の整復・固定処置と、その後の経過観察の両方が重要です。

まとめ――外傷歯の固定は、治るまで隣の歯に支えてもらう処置です

歯をぶつけてグラグラしていても、すぐワイヤーで硬く固めればよいわけではありません。

歯科医院では、まず歯の位置、動揺の範囲、咬み合わせ、歯根、歯根膜、歯槽骨の状態を調べます。

歯が本来の位置からずれていれば、周囲の組織へ負担をかけないよう慎重に整復します。そのあと、整復した位置を保つために、細いワイヤーとレジンなどを使って周囲の安定した歯へ固定します。

一般的な脱臼性外傷では、歯根膜の治癒を妨げないよう、生理的な動揺をある程度許す柔軟な固定が選ばれます。

歯根破折や歯槽骨骨折を伴う場合は、より高い安定性が得られる固定方法や、長期間の固定が必要になることがあります。

固定中は、前歯で硬い物を噛まず、装置の周囲を清潔に保ちます。ワイヤーやレジンが外れた場合は、自分で直そうとせず、早めに歯科医院へ連絡してください。

そして、歯が動かなくなったことと、歯の中まで完全に治ったことは同じではありません。

固定を外したあとも、歯髄壊死、感染、歯の変色、歯根吸収などが遅れて現れる可能性があります。

痛みがなくなっても、指定された時期の経過観察を続けることが、外傷を受けた歯を長く残すために大切です。

広島市中区立町のブランデンタルクリニックでは、歯をぶつけて位置が変わった、グラグラする、咬み合わせがおかしい、歯肉から出血しているといった場合のご相談を受け付けています。

痛みが弱い場合でも、外傷の程度が軽いとは限りません。受診方法に迷う場合は、電話または公式LINEで現在の状態をお知らせください。

TOP