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奥歯で噛み合う場所が少ない人ほど“咬筋”も薄い?108人を超音波で比較

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2026年9月15日

奥歯で噛み合う場所が少ない人ほど“咬筋”も薄い?108人を超音波で比較

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに

「奥歯が1本なくなったけれど、反対側で噛めるから大丈夫」

そう思って、抜けたままになっている方もいらっしゃるかもしれません。

奥歯を失ったとき、私たちはつい「歯が何本なくなったか」に目を向けます。でも、食事をするときに大切なのは歯の本数だけではありません。左右の奥歯で、上下の歯が実際に噛み合っている場所がどれくらい残っているかも重要です。

2026年9月11日、BMC Oral Healthに、そんな「奥歯の噛み合わせ」と「噛む筋肉」の関係を調べた研究が公開されました。研究条件を満たした成人108人を、奥歯の咬合支持の状態によって3群に分け、頬にある「咬筋」という筋肉を超音波で調べています。

結果は興味深いものでした。

後方の咬合支持が十分なA群、支持が少ないB群、上下の歯の咬合接触がないC群の順に、安静時にも、噛みしめたときにも咬筋が薄くなっていました。

ただし、最初に大切なことをお伝えしておきます。

この研究は「奥歯を失ったから咬筋が萎縮した」と証明した研究ではありません。

また、「咬筋が薄い人は噛む力も弱い」と証明した研究でもありません。

数字がとても分かりやすい研究だからこそ、「何が分かったのか」と「まだ分からないこと」を分けて見ていきましょう。

そもそも「咬筋」ってどこの筋肉?

咬筋(こうきん)は、頬の外側にある大きな筋肉です。

奥歯をぐっと噛みしめながら頬の後ろ側に指を当てると、硬く盛り上がる部分があります。そこにあるのが咬筋です。

咬筋は下顎を持ち上げる主要な筋肉の一つで、食べ物を噛むこと、咬合力を生み出すこと、顎を安定させることなどに関わっています。

これまでにも、咬筋の厚さと咬合力、筋肉の活動、顔の形態、口腔機能などとの関連は研究されてきました。

ただし、「咬筋の厚さ」そのものが「噛む能力」ではありません。

筋肉の厚さは機能に関係する可能性のある一つの情報ですが、厚いから必ずよく噛める、薄いから噛めない、と一つの数字だけで判断することはできません。

今回の研究でも、咬筋厚を実際の咀嚼機能そのものとして扱わないよう慎重に解釈されています。

今回比べたのは「残っている歯の本数」ではありません

今回の研究を理解するうえで、一番大切なポイントの一つです。

研究者たちは参加者を、「歯が28本ある人」「20本しかない人」といった残存歯数だけでは分類していません。

「奥歯で噛み合う場所」を見るEichner分類

使われたのは、Eichner(アイヒナー)分類という考え方です。

Eichner分類では、左右の小臼歯部と大臼歯部にある4つの後方支持域を見ます。

つまり、「何本歯が残っているか」だけではなく、上下の奥歯がどこで実際に接触しているかを評価します。

同じくらいの本数の歯が残っている2人でも、左右の奥歯でしっかり噛める人と、歯は残っているけれど奥歯同士の接触が少ない人では、機能的な後方支持は同じとは限りません。

奥歯の咬合支持については、当院の奥歯の噛み合わせと歯の喪失について解説したコラムでも詳しく取り上げています。

108人をA・B・Cの3群に分けた

今回の研究では、最終的に108人が解析されました。

グループ咬合支持の状態人数
A群4つすべての後方支持域に咬合接触あり44人
B群後方支持域が1〜3か所、または前歯部だけで接触43人
C群上下の歯の咬合接触なし21人

ここで注意したいのが、C群を単純に「奥歯をほとんど失った人」と読み替えないことです。

原著での定義は、「上下の歯の咬合接触がない群」です。

またB群も、後方支持域が3つ残っている人から、前歯部だけで接触している人まで含みます。

そのためA・B・Cを、「筋肉への負荷がきれいに3段階で減っていく均一な集団」と考えることはできません。あくまで後方咬合支持の大きな違いで分けた3群です。

108人の咬筋を超音波で調べた

研究には112人が登録されましたが、4人が超音波検査を完遂できなかったため、最終解析は108人でした。

  • 女性56人
  • 男性52人
  • 平均年齢51.12歳
  • 年齢範囲23〜79歳

研究では、左右両側の咬筋を超音波で調べています。

測定したのは、何も噛んでいない安静時と、参加者に最大限噛みしめてもらった最大随意噛みしめ時です。

評価項目には、咬筋の厚さ、超音波画像から推定した咬筋体積、圧を加えたときの組織の変形を比較するストレインエラストグラフィの指標、超音波画像の模様の複雑さを数値化したフラクタル次元などが含まれていました。

このうち、最も一貫していた結果が咬筋の厚さです。

「最大限噛んでください」でも、噛む力は一定ではない

ここにも研究の読み方で大切な点があります。

参加者には最大限噛みしめるよう指示していますが、咬合力計や筋電図を使って、一人ひとりが同じ強さで噛んでいることまでは確認していません。

そのため、安静時から噛みしめ時に起こった超音波上の変化を、そのまま「筋肉の収縮能力」や「筋力」とみなすことはできません。

結果① 安静時の咬筋は11.84→10.38→7.39mm

まず、何も噛んでいない安静時の左右平均咬筋厚を見てみます。

  • A群 11.84mm
  • B群 10.38mm
  • C群 7.39mm

A群>B群>C群となり、群間差は統計学的に有意でした。

つまり今回の108人では、奥歯の後方咬合支持が少ない群ほど、安静時の咬筋が薄いという関連がみられました。

結果② 噛みしめたときも14.83→12.38→8.56mm

最大限噛みしめるよう指示したときも、同じ方向の結果でした。

  • A群 14.83mm
  • B群 12.38mm
  • C群 8.56mm

こちらもA群>B群>C群でした。

安静時だけではなく、噛みしめたときにも同じ方向の差がみられたことが、今回の研究で興味深い点です。

「群の平均値の差」を「一人の変化」と読まない

A群とC群の平均値には大きな差があります。

しかし、今回比較しているのは同じ人が奥歯を失う前と後ではありません。

異なる人たちからなるA・B・C群を同じ時期に比較した研究です。

したがって、「奥歯の支持を失うと咬筋が○%薄くなる」「この人も今後同じ割合で薄くなる」といった読み方はできません。

群の平均値の差と、一人の患者さんに時間とともに起こる変化は別のものです。

C群の方が高齢だった――年齢の違いだけでは?

「C群の咬筋が薄かったのは、単に年齢が高かったからでは?」という疑問も出てきます。

実際、平均年齢は次のように異なっていました。

  • A群 47.43歳
  • B群 52.26歳
  • C群 56.52歳

そこで研究者は、年齢や性別、左右、安静時か噛みしめ時かといった条件を考慮した統計解析を行っています。

A群を基準にすると、調整後の咬筋厚は、

  • B群 −1.912mm
  • C群 −5.161mm

となり、どちらもA群より小さいままでした。

つまり、年齢や性別などを統計的に考慮しても、後方咬合支持が少ない群ほど咬筋が薄いという関連は残ったといえます。

ただし、「年齢は関係ない」という意味ではありません。

統計学的に調整しても、研究で測っていない要因まで完全に取り除けるわけではありません。

噛みしめたときに「厚くなる量」にも差があった

研究では、安静時から噛みしめ時に咬筋厚がどれだけ変化したかも解析しています。

調整後の変化量は、

  • A群 +2.991mm
  • B群 +1.996mm
  • C群 +1.168mm

でした。

一見すると、「C群では筋肉が十分に収縮できていないのでは?」と考えたくなります。

しかし、今回の噛みしめは実際の咬合力や筋電図で標準化されていません。

そのため、この変化量の違いを「筋力低下」や「筋肉の収縮障害」と言い換えることはできません。

「咬筋が薄い=噛む力が弱い」ではない

ここは今回の研究を読むうえで、とても重要です。

研究では咬筋の超音波画像を詳しく調べていますが、実際の咬合力そのものは測っていません。

さらに、次のような臨床的な機能も評価していません。

  • 咀嚼能率
  • 食べ物をどの程度細かくできるか
  • 本人が感じる噛みにくさ
  • 栄養状態
  • 口腔関連QOL
  • 治療による改善

ですから、

咬筋厚=咬合力=咀嚼機能

と一続きに考えることはできません。

これらは互いに関連する可能性はありますが、同じ指標ではありません。

歯科では、咬合力、咀嚼能力、舌圧、舌口唇運動、嚥下機能などを、それぞれ別の機能として評価する考え方があります。当院の口腔機能低下症についての解説でも、複数の口腔機能を分けて見る意味を詳しく説明しています。

「推定筋体積」もA→B→Cで小さかった

今回の研究では、咬筋の厚さだけでなく、超音波画像から推定した咬筋体積も計算されています。

安静時は、

  • A群 18.41cm³
  • B群 14.91cm³
  • C群 7.06cm³

噛みしめ時は、

  • A群 21.85cm³
  • B群 17.22cm³
  • C群 7.82cm³

でした。

ただし、これはMRIなどで咬筋全体の解剖学的な三次元体積を直接測定した値ではありません。

超音波で咬筋を複数の断面に分けて撮影し、基本的に14mm間隔の断面積を積み重ねる方法で算出した推定値です。

この推定方法は、MRIで測定した真の解剖学的筋体積との妥当性検証も行われていません。

そのため、「C群では筋肉量そのものが半分以下になった」といった言い換えはできません。

また、噛みしめ時には推定体積が大きくなっていますが、筋肉そのものの量が数秒で増えたわけでもありません。噛みしめによる筋肉の形の変化、プローブの位置や圧、断面の取り方などが推定値に影響する可能性があります。

筋肉の「硬さ」や「質」まで悪くなった研究でもない

今回の研究では、ストレインエラストグラフィという超音波法も使われています。

これは、圧を加えたときに組織がどの程度変形するかを、参照する組織と比較して評価する方法です。

今回の研究では耳下腺を参照として咬筋との相対的な変形の違いを調べています。

しかし、この数値は咬筋そのものの絶対的な硬さを直接測ったものではありません。

さらに、使用機器で表示された比率の方向についてメーカーから直接確認できていないことや、別の基準的な方法との外部検証が行われていないことも原著では注意されています。

したがって、今回の結果から「奥歯の支持が少ないと咬筋が硬くなる」「柔らかくなる」と結論づけることはできません。

もう一つ、超音波画像の模様の複雑さを数値化した「フラクタル次元」にも群間差がみられました。

ただし、この指標は撮影条件や画像処理の影響を受けます。

そのため、

  • 筋肉が脂肪化した
  • 筋肉の質が悪くなった
  • 筋線維が壊れた

といった組織学的な変化の証拠として扱うことはできません。

では、「奥歯を失ったから咬筋が薄くなった」のでしょうか?

答えは、今回の研究だけでは分かりません。

この研究では参加者を前向きに募集して超音波撮影を行っていますが、奥歯の咬合支持と咬筋の状態は同じ研究期間内に評価されています。

つまり、一人ひとりについて、

「奥歯がしっかり噛み合っていた時期」

から、

「奥歯の咬合支持を失った後」

まで長期間追跡した研究ではありません。

そのため、今回確認できたのは「関連」であり、原因と結果の順番までは証明できません。

咬合支持以外にも、咬筋に関係しそうなものはたくさんある

今回の研究では、すべての影響因子を測定できているわけではありません。

原著で未測定の要因として挙げられているものには、次のようなものがあります。

  • BMIや体組成
  • 歯を失ってからの期間
  • 補綴物の種類や状態
  • 義歯の安定性
  • 普段どちら側で噛むか
  • 普段食べている食品の硬さ
  • 栄養状態
  • 身体活動
  • サルコペニアに関係する因子
  • 歯周状態
  • 実際の噛みしめ力

つまり、「奥歯の咬合支持だけが咬筋の厚さを決める」わけではありません。

今回の研究はトルコの単一施設で行われた観察研究で、正式な事前サンプルサイズ計算も行われていません。108人で得られた結果を、年齢や生活背景、全身状態の異なるすべての人にそのまま当てはめることもできません。

口の筋肉と全身の筋肉を完全に切り離すこともできない

「筋肉」という視点から考えると、口だけを見ればよいわけでもありません。

2024年に日本の高齢者を対象として行われた横断研究では、サルコペニア群と非サルコペニア群を比較したところ、舌圧などには違いがみられましたが、咬合力には明確な群間差が認められませんでした。

同じ研究では、舌圧、栄養状態、サルコペニアとの関連も検討されています。

この結果からも、歯の状態、口の筋機能、栄養、全身の筋量や筋力を単純な一本道として考えられないことが分かります。

年齢、食事、栄養、身体活動、全身の筋肉、口腔機能などは互いに関連しながら変化する可能性があります。

舌圧と全身の筋肉との関係については、当院の舌圧についての解説も参考にしてください。

この研究で言えること・まだ言えないこと

言えること

今回の108人研究から比較的しっかり言えるのは、後方咬合支持が少ない群ほど、咬筋厚が小さいという関連が認められたということです。

特に咬筋厚については、安静時でも、噛みしめ時でも、年齢や性別などを考慮した解析でも、一貫した方向の結果がみられました。

まだ言えないこと

  • 奥歯を失った結果として咬筋が萎縮した
  • 咬筋が薄いから噛む力が弱い
  • 咬筋が薄いからオーラルフレイルである
  • 入れ歯やインプラントで奥歯を補えば咬筋が元に戻る
  • 硬い物を噛めば咬筋が元に戻る

この線引きは、とても大切です。

奥歯を補えば、咬筋は元に戻るのでしょうか?

ここは患者さんにとって一番気になるところかもしれません。

結論からいうと、今回の108人研究では分かりません。

原著でも、後方咬合支持を回復した後に咬筋の超音波所見が変化するのか、その変化が咬合力や咀嚼能力、患者さん自身が感じる改善と一致するのかは、今後の縦断研究で確認する必要があるとしています。

別の研究では「補った後」を調べた報告もある

一方、補綴治療後の変化を調べた別研究はあります。

Gonçalvesらは部分欠損患者を対象に、補綴方法と最大咬合力、食物の粉砕能力、最大噛みしめ時の咬筋厚などを比較しています。

また、日本からは、大臼歯欠損を含む口腔機能低下症患者5人にインプラントを含む補綴治療を行い、治療前後で口腔機能と口腔関連QOLを比較した症例報告があります。

その5症例では、治療後に口腔機能低下症の該当項目数や口腔関連QOLが改善し、咬合力も増加していました。

ただし、5人だけの症例報告であり、歯周治療、抜歯、さまざまな補綴処置も組み合わされています。

したがって、「インプラントを入れれば薄くなった咬筋が元通りになる」と一般化することはできません。

入れ歯・ブリッジ・インプラントの目的は「咬筋を太くすること」ではありません

奥歯を失った場合には、状態によって、入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの治療方法を検討します。

しかし、治療の目的を「咬筋を太くするため」と考えるのは違います。

大切なのは、

  • どこで噛めるようにするか
  • 食事をしやすくできるか
  • 残っている歯にどのような負担がかかるか
  • 咬合を安定させられるか
  • 清掃しやすい状態を作れるか
  • 患者さんが無理なく継続して使用できるか

といった点を総合して考えることです。

なお、奥歯を1本失ったからといって、すべての方に同じ補綴治療が必要になるわけではありません。

欠損した場所、反対側の歯、残っている咬合支持、歯周状態、噛みにくさ、清掃性、全身状態、患者さんの希望などを確認して、治療するかどうか、治療するならどの方法を選ぶかを個別に判断します。

今回の研究結果だけを理由に、特定の補綴治療を勧めることはできません。

入れ歯についても、作った時点で終わりではありません。適合や安定性、噛み合わせは時間とともに変化します。当院の入れ歯を長く使うための管理についての解説も参考にしてください。

「咬筋が薄い=オーラルフレイル」でもありません

最近よく聞く「オーラルフレイル」とも区別しておきましょう。

現在のOF-5では、

  • 残存歯数の減少
  • 咀嚼困難感
  • 嚥下困難感
  • 口腔乾燥感
  • 滑舌低下

の5項目を評価します。

咬筋の厚さはOF-5の評価項目ではありません。

したがって、「超音波で咬筋が薄かったからオーラルフレイル」と判断することはできません。

一方で、今回の研究は興味深い視点を加えてくれます。

口の健康を見るとき、「何本歯が残っているか」だけではなく、どこで噛み合っているか、実際に噛めているか、さらにその動きに関わる筋肉がどうなっているかという見方もあるということです。

オーラルフレイルについては、当院の口の加齢変化とオーラルフレイルについての解説もご覧ください。

歯科衛生士として気になるのは、「歯を残す」のその先です

私たち歯科衛生士は、毎日の診療で、

  • 歯周病を進ませないこと
  • むし歯を防ぐこと
  • 歯と歯の間まで清潔に保つこと
  • 残せる歯をできるだけ長く残すこと

を大切にしています。

もちろん、歯そのものを残すことは重要です。

でも今回の研究を読むと、その先にある意味も見えてきます。

歯を残すことは、将来も奥歯で噛み合える場所を残すことにつながります。

歯周病やむし歯で歯を失わないようにする。

もし歯を失ったなら、残っている歯や口腔全体の状態を見ながら、咬合支持をどう考えるか検討する。

そして補綴治療を行った後も、「入っている」だけではなく、実際に噛めているか、痛みなく使えているか、清掃できているかを確認していく。

「歯があるか、ないか」で終わらず、その歯や補綴物が“噛む場所”として機能しているかを見ることも大切です。

ただし、「歯周病を予防すれば咬筋の萎縮を防げる」と今回の研究から結論づけることはできません。

こんな変化があれば、歯の本数だけでなく「噛み方」も相談してください

次のような変化がある場合は、歯の本数だけでなく、咬合支持や咀嚼機能も確認してみる価値があります。

  • 奥歯を失ったままになっている
  • 最近、片側だけで噛むことが増えた
  • 入れ歯が動くので食事中に使わなくなった
  • 以前より硬い食品を避けるようになった
  • 食事に以前より時間がかかる
  • 「前より噛みにくい」と感じる
  • 奥歯でしっかり噛めている感じがしない

これらは「咬筋が薄くなったサイン」という意味ではありません。

歯、歯周組織、入れ歯や被せ物、噛み合わせ、痛み、咀嚼機能などを確認するきっかけです。

ブランデンタルクリニックは立町駅徒歩1分、立町中央ビル4階にあり、エレベーターをご利用いただけます。WEB・LINE・電話でご予約いただけます。

当日電話受付可で、診療状況によっては急患同日可です。歯が抜けた、入れ歯や被せ物が壊れて急に噛めなくなった、強い痛みや腫れがあるなど急ぐ症状では、WEB予約だけで空きを探すより、お電話で症状をお伝えください。

よくある質問

Q1.奥歯を1本失っただけでも咬筋は薄くなりますか?

今回の研究からは分かりません。

研究では「奥歯を何本失ったか」ではなく、左右の小臼歯・大臼歯部にどれくらい後方咬合支持域があるかというEichner分類で比較しています。

そのため、「奥歯を1本失うと咬筋が何mm薄くなる」という読み方はできません。

Q2.咬筋が薄ければ、噛む力も弱いのでしょうか?

咬筋厚だけでは判断できません。

咬筋厚と咬合力の関連を示した研究はありますが、今回の研究では実際の咬合力を測定していません。咀嚼機能や本人の噛みにくさも別に評価する必要があります。

Q3.咬筋が薄いか、歯科医院で超音波検査を受けた方がいいですか?

今回の研究から、一般の患者さん全員に咬筋の超音波検査を日常診療で一律に行うべきとは言えません。

今回の超音波所見は研究上の画像指標であり、咬筋厚が一般歯科診療の診断や治療効果判定に使える確立した臨床バイオマーカーになったわけではありません。

Q4.インプラントを入れれば咬筋は元の厚さに戻りますか?

今回の108人研究では調べていません。

補綴治療後に咬筋や咀嚼機能の変化を調べた別研究はありますが、治療方法や患者さんの状態はさまざまです。「インプラントを入れれば咬筋が元に戻る」と一般化することはできません。

Q5.入れ歯でも奥歯の咬合支持を回復できますか?

入れ歯は失った歯の機能を補う治療方法の一つです。

ただし、入れ歯の種類や設計、残っている歯、顎の骨や粘膜、適合、安定性などによって実際の使いやすさや咬合支持の状態は異なります。

また、今回のBMC Oral Health研究では、義歯の種類や安定性、超音波撮影時に可撤式義歯を装着していたかどうかまで系統的に記録されていません。

Q6.ガムを噛んだり、硬い物を食べたりすれば咬筋を太くできますか?

今回の研究は、咬筋トレーニングの効果を調べた研究ではありません。

「後方咬合支持が少ない群ほど咬筋が薄かった」という結果から、「硬いものをたくさん噛めば元に戻る」とは言えません。

歯周病、歯の破折、顎関節、入れ歯や被せ物の状態によっては、強い力を繰り返しかけることが適切でない場合もあります。

自己流で強く噛み続けるより、まず「なぜ噛みにくいのか」を歯科で確認することが大切です。

まとめ|奥歯を見るとき、歯だけを見ない

今回の研究では、安静時の咬筋厚は、

  • A群 11.84mm
  • B群 10.38mm
  • C群 7.39mm

でした。

噛みしめ時も、

  • A群 14.83mm
  • B群 12.38mm
  • C群 8.56mm

と、後方咬合支持が少ない群ほど咬筋が薄いという関連がみられました。

年齢や性別などを考慮した解析でも、この関連は残っています。

これはとても興味深い結果です。

ただし、

  • 奥歯を失ったから咬筋が萎縮した、と証明したわけではありません。
  • 咬筋が薄いから噛む力が弱い、と証明したわけでもありません。
  • 入れ歯やインプラントで奥歯を補えば咬筋が元に戻る、と証明した研究でもありません。

今回分かったのは、「奥歯でどのくらい噛み合えているか」と「咬筋の形態」には関連があるということです。

奥歯を失ったときに考えたいのは、「空いた場所をどう埋めるか」だけではありません。

  • 左右の奥歯で噛めているか
  • 食べられる食品が減っていないか
  • 入れ歯や補綴物を実際に使えているか
  • 残っている歯に無理がかかっていないか
  • 清掃しやすい状態を保てているか

今回の研究は、そこからさらに一歩進んで、その奥にある「噛む筋肉」にも目を向けるきっかけを与えてくれました。

歯を守ること。

噛み合う場所を守ること。

そして、口全体の機能を守ること。

歯科衛生士としては、この3つを別々ではなく、つながったものとして見ていきたいと思います。

参考文献

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  3. 篠田智生,納田英二郎,尾立哲郎,澤瀬隆.インプラント治療を施した口腔機能低下症患者5例の口腔機能および口腔関連QOL変化.日本口腔インプラント学会誌.2023;36(2):49-56.
  4. 竜正大,上田貴之.口腔機能低下症の管理とオーラルフレイルに関する最新知見.歯科学報.2026;125(4):277-284.
  5. 稲田さくら.口腔状態とサルコペニアとの関連についての横断研究.口腔衛生会誌.2024;74:21-28.

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