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歯内‐歯周病変をどう分類し、治療順序を決めるか:2018年分類、根損傷の鑑別、感染源制御、再評価、再生療法まで

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2026年8月04日

歯内‐歯周病変をどう分類し、治療順序を決めるか:2018年分類、根損傷の鑑別、感染源制御、再評価、再生療法まで

(院長の徒然コラム)

はじめに

根管治療済みの大臼歯に、一歯面だけ10mmを超える歯周ポケットがある。デンタルX線写真では、根尖部から歯槽頂へ連続するようなJ字状の透過像を認める。この病変は、根管内感染が歯根膜腔に沿って排膿した結果なのか。辺縁性歯周炎が根尖方向へ進行した結果なのか。それとも、垂直性歯根破折によって形成された骨欠損なのか。

あるいは、全顎的に重度歯周炎を認める患者の一歯で、根尖部まで及ぶ骨吸収と歯髄感覚検査への反応消失が確認されたとする。この歯では根管治療を先行すべきなのか。スケーリング・ルートプレーニング(scaling and root planing:SRP)を並行すべきなのか。歯周外科を判断するまで、本当に3か月待つ必要があるのか。

歯内‐歯周病変、すなわちendodontic-periodontal lesion(EPL)は、歯内療法と歯周治療の境界で、診断にも治療計画にも迷いが生じやすい病態である。

かつてEPLは、主として「歯内病変が先か、歯周病変が先か」によって分類されてきた。しかし、初診時に病変の発症順序を完全に再構成できる症例は、それほど多くない。すでに根管治療が行われている歯、長期間無症状だった歯、複数の治療歴を有する歯では、なおさらである。

現在のEPL診療で重要なのは、病変の過去を無理に言い当てることではない。

まず、歯根破折、穿孔、外部歯根吸収などの根損傷を評価する。その歯が感染制御後に修復可能か、清掃可能か、咬合機能を担えるかを考える。次に、患者単位の歯周炎診断と、対象歯単位の局所的なEPL分類を分ける。歯髄壊死または根管内感染が確認されれば感染源を制御し、歯周基本治療をどこまで並行するかを病変ごとに決める。そして治療後のプロービングデプス、クリニカルアタッチメントレベル、排膿、根尖部画像の変化を、診断情報として再び読み取る。

分類は診断の終点ではない。

どの感染源を、どの順番で制御し、どの時点で次の治療へ進むかを考えるための出発点である。

歯内‐歯周病変は一つの病態ではない

EPLとは、単に「根尖病変と歯周ポケットが同時に存在する歯」を意味するわけではない。

根管内感染が歯根膜腔へ波及し、歯肉溝方向へ排膿している症例がある。辺縁性歯周炎が根尖方向へ進行し、歯髄へ影響している症例もある。独立して進行した根尖性歯周炎と辺縁性歯周炎が連続することもあれば、穿孔や歯根破折によって、根管系と歯周組織の間に病的な交通路が形成されていることもある。

臨床所見が似ていても、病態は同じではない。

一歯面だけに存在する狭い10mmのプロービングデプス(probing pocket depth:PPD)は、歯内由来の排膿路かもしれない。垂直性歯根破折の破折線に沿って形成された炎症性組織かもしれない。セメント質剝離、口蓋歯根溝、根管穿孔、外部歯根吸収、局所的な垂直性骨欠損でも、類似した所見を呈し得る。

J字状あるいはhalo状の透過像も、垂直性歯根破折に特異的な所見ではない。歯内由来の排膿路、穿孔、歯根溝、セメント質剝離、局所的な歯周組織破壊でも似た画像が生じる。

したがって、EPLの診断は、単一の検査結果から病名を選ぶ作業ではない。

歯髄、根管、歯根、セメント質、歯根膜、歯槽骨、歯周ポケット、咬合、修復物、そして患者単位の歯周炎を一つの系として評価し、保存可能性と治療順序を組み立てる過程である。

歯髄と歯周組織を結ぶ交通路

歯髄と歯周組織は、発生学的にも解剖学的にも無関係な二つの組織ではない。

根尖孔、側枝・副根管、象牙細管を介して連続しており、さらに歯根破折、穿孔、歯根吸収、発育異常などの病的交通路が加わることで、感染や炎症が双方向へ影響し得る。

根尖孔

根尖孔は、根管系と歯周組織を結ぶ最も大きく、直接的な交通路である。

歯髄壊死と根管内感染が成立すると、細菌そのもの、細菌由来成分、炎症性メディエーターが根尖孔から根尖歯周組織へ到達する。それによって、歯根膜腔の拡大、根尖部骨吸収、根尖性歯周炎が生じる。

反対方向では、辺縁性歯周炎による組織破壊が根尖部まで進行し、根尖孔周囲の神経血管束が障害されると、歯髄に炎症、変性、部分壊死、完全壊死が生じる可能性がある。

ただし、深い歯周ポケットが存在することと、歯髄が完全壊死していることは同義ではない。

歯周組織破壊が根尖方向へ近づく途中では、歯髄は感覚反応を残しながら、線維化、石灰化、修復象牙質形成、局所的炎症などを示すことがある。歯周炎が深いという理由だけで、歯髄壊死と断定して根管治療へ進むことはできない。

側枝・副根管

側枝・副根管は、とくに根尖側1/3や多根歯の根分岐部に認められる。

根管内感染が側枝を通じて歯根側方へ波及すれば、根尖ではなく根中央部や根分岐部に限局した透過像を形成することがある。逆に、歯周組織破壊が側枝開口部へ到達すれば、歯髄への影響が疑われる。

しかし、解剖学的な交通路が存在することと、感染が実際に自由に通過することは同じではない。

微細構造学的観察では、側枝開口部周囲にセメント質吸収が及んでいても、側枝内部に結合組織や血管が残存し、歯周側の炎症が根管内へ直接波及していなかった症例も報告されている。

側枝は模式図では一本の管として描かれるが、生体内では径、開存性、内部組織の状態、血流、感染量によって挙動が異なる。

「側枝が存在するから歯周炎が歯髄へ侵入した」と単純には説明できない。

象牙細管

根面象牙質は通常、セメント質によって歯周環境から隔離されている。

しかし、セメント質の発育的欠損、歯周炎、外傷、摩耗、根面処置などによって象牙細管が歯周側へ露出すると、歯髄と歯周組織の間の交通経路になり得る。

ここで臨床上重要になるのが、根面への過剰な器械的介入である。

歯内由来の排膿路を一次性歯周病変と誤認し、早期に強いルートプレーニングを行えば、残存するセメント質や歯根膜由来組織を損傷し、治癒環境を変える可能性がある。

一方、真正のプラーク関連歯周炎で、歯石やバイオフィルムが残存しているなら、適切な縁下デブライドメントが必要である。

問題は、SRPを行うか否かではない。

どの根面に、いつ、どの程度の器械的処置を行うかである。

病的・医原的交通路と、根管感染を持続させる因子

生理的交通路に加えて、垂直性歯根破折やクラック、根管壁・髄床底穿孔、外部歯根吸収による根面欠損、穿孔性内部歯根吸収、口蓋歯根溝などの発育異常は、根管系と歯周組織の間に直接的な交通を形成し得る。

これらは、単に炎症が広がる経路というだけではない。構造的欠損そのものを封鎖、切除、修復できるかが、保存可能性を左右する。

一方、深いう蝕、不適合修復物、歯冠側漏洩、未処置根管、不十分な根管形成・洗浄、根管充填不良、不十分な歯冠側封鎖は、根管系と歯周組織を直接つなぐ交通路ではない。それらは、根管内感染を成立、持続、再燃させる因子である。

交通路と感染持続因子を混同すると、治療目標が曖昧になる。

穿孔や歯根破折では、構造的交通そのものへの対応が必要になる。未処置根管や歯冠側漏洩では、根管内感染源と再感染経路の除去が必要になる。

歯内感染は歯周組織へどのように現れるのか

根管内感染が歯周組織へ波及すると、病変は必ずしも根尖部だけに現れるわけではない。

感染産物が根尖孔から放出されれば、根尖性歯周炎として認識される。側枝から放出されれば、歯根側方の透過像や限局した骨吸収として現れる。根分岐部副根管を介すれば、多根歯の根分岐部に透過像が生じることもある。

根尖部の炎症性病変が歯根膜腔に沿って歯冠側へ拡大し、歯肉溝へ排膿すれば、臨床的には狭く深い歯周ポケットとして測定される。

このとき、プローブが進入する空間は、成熟したプラーク関連歯周ポケットとは限らない。

炎症性組織の中へプローブが侵入し、排膿路に沿って深く到達している可能性がある。そのため、根管内感染が制御されれば、数週間から数か月で急速にPPDが減少する症例がある。

歯内由来病変に伴う動揺も、すべてが支持組織の不可逆的喪失を示すわけではない。歯根膜の急性炎症、浮腫、咬合時痛によって一時的に増加した動揺は、感染と炎症が制御されることで軽減することがある。

歯周炎は歯髄をどこまで障害するのか

歯周炎が歯髄へ及ぼす影響については、長年議論が続いてきた。

一部の組織学的研究では、歯周組織破壊が根尖孔へ到達するまでは、歯髄全体の壊死は起こりにくいとされてきた。一方、高度歯周炎を伴う歯では、歯髄内に線維化、石灰化、象牙質形成、炎症細胞浸潤、局所的壊死などの変化が認められることも報告されている。

ここで、「生活歯髄」と「健全歯髄」を同一視してはいけない。

感覚反応が残っている歯髄にも、組織学的変性が存在する場合がある。反対に、冷刺激や電気歯髄診に反応しないからといって、すべての根管内組織が完全壊死しているとは限らない。

とくに多根歯では、歯髄の状態が根ごとに異なる可能性がある。

一根では根尖部の神経血管束が破壊され、歯髄壊死が成立している一方、別の根には生活組織が残っていることがある。その場合、歯全体としては電気歯髄診陽性を示しながら、一部根管に感染が存在するという、一見矛盾した所見が生じる。

EPLにおいて、歯髄感覚検査の結果を歯単位だけで解釈する危険性はここにある。

Simon分類から2018年分類へ

Simon分類はなぜ現在も使われるのか

1972年にSimonらが提唱した分類は、一次性歯内病変、一次性歯内病変に二次性歯周病変を伴うもの、一次性歯周病変、一次性歯周病変に二次性歯内病変を伴うもの、真性複合病変の五つに分ける。

この分類の利点は、病変の成立過程を理解しやすいことである。

根管内感染が根尖孔や側枝から歯周組織へ広がったのか。辺縁性歯周炎が根尖方向へ進み、歯髄へ影響したのか。それぞれ独立して進んだ二つの病変が連続したのか。病態を時間軸で考えるための教育的枠組みとして、Simon分類は現在も価値を失っていない。

また、治療順序の生物学的理由も説明しやすい。

一次性歯内病変であれば、根管内感染を除去することで歯周所見が改善する可能性が高い。一次性歯周病変で健全な生活歯髄が保たれていれば、歯周治療のみで管理できる可能性がある。歯内・歯周双方の感染が成立していれば、両者への介入が必要になる。

しかし、Simon分類には大きな弱点がある。

それは、病変の発症順序を初診時に確定できることを前提としている点である。

根管治療済み歯、長期間経過した病変、過去の症状が曖昧な症例、すでに歯周治療が行われた症例では、一次病変と二次病変を区別できないことがある。

一次性歯内病変に二次性歯周病変を伴う状態と、真性複合病変を、初診時の画像とポケット形態だけで正確に区別することも難しい。

Simon分類は「どのように成立したか」を考えるには優れている。

しかし、「今日、その歯をどの順番で治療するか」を決めるには、それだけでは足りない。

2018年分類は何を変えたのか

2017 World Workshopの成果として2018年に公表されたEPL分類では、完全には再構成できない発症順序よりも、現在確認できる根損傷、全顎的歯周炎の有無、対象歯の歯周組織破壊範囲が重視された。

これは、単純な「病因分類から予後分類への変更」ではない。

病変の時間的な発症順序を中心に据える分類から、予後や治療可能性に関係する現在所見を重視する分類への転換である。

最初に評価するのは、歯根破折、クラック、根管壁・髄床底穿孔、外部歯根吸収などの根損傷である。根損傷がある症例とない症例を最初に分けるのは、根損傷が治療方法と保存可能性を大きく変えるからである。

ただし、根損傷があるから直ちに抜歯というわけではない。

病変が一根に限局し、その根を切除して残存根を清掃・修復できる症例、修復可能な穿孔、早期の外部歯根吸収などは、症例によって保存できる可能性がある。反対に、根中央部から歯槽骨頂付近へ連続する垂直性歯根破折、広範な穿孔、清掃不能な吸収、軟組織封鎖を得られない根面欠損では、保存可能性が大きく低下する。

根損傷がなければ、次に患者単位の歯周炎診断を行う。

見るべきなのは、対象歯の一つの深いポケットではない。全顎的なクリニカルアタッチメントレベル(clinical attachment level:CAL)、PPD、プロービング時出血(bleeding on probing:BOP)、骨吸収分布、欠損歯、歯周炎Stage、Grade、喫煙、糖尿病などを評価し、その患者がプラーク関連歯周炎を有するかを判断する。

2018年の歯周炎症例定義では、歯内病変の排膿路、垂直性歯根破折、その他の非歯周炎性原因によるアタッチメントロスを、歯周炎の症例定義から除外して考える。

したがって、対象歯の一歯面に10mmのポケットがあるという理由だけで、その患者を歯周炎患者と診断してはならない。

全顎的に歯周組織が健全で、一歯面だけに狭い深部ポケットがあるなら、まず局所的原因を疑うべきである。

根損傷のないEPLは、歯周炎患者か非歯周炎患者かを分けたうえで、対象歯の歯周組織破壊をGrade 1~3に分類する。

Grade 1は一歯面に限局した狭く深いポケット、Grade 2は一歯面に限局した広く深いポケット、Grade 3は複数歯面に及ぶ深いポケットである。

ここでいう「狭い」「広い」には、普遍的なmm基準が設定されていない。

EPL Grade 1~3は、PPDの数値だけで決める重症度分類ではなく、プロービング形態と分布を用いた記述的分類である。ポケット入口部の幅、根面に沿った広がり、複数点の測定値、骨欠損形態、根分岐部病変を統合して判断する。

また、EPL Grade 1~3と、歯周炎Grade A~Cを混同してはならない。

EPL Gradeは、対象歯における局所破壊の形態と広がりを表す。歯周炎Grade A~Cは、疾患進行速度、リスク因子、将来の進行リスクを評価する患者単位の概念である。

同じ患者について、「Stage III・Grade C歯周炎患者に生じたEPL Grade 2」という診断は成立する。

最新の議論――V/ICフレームワークは治療順序を個別化できるか

2018年分類は、診断を標準化し、予後と治療可能性を考えるうえで非常に有用である。

しかし、分類名を決めただけでは、歯髄を保存できるのか、多根歯で根ごとに異なる歯髄状態をどう扱うのか、縁下デブライドメントを直ちに行うのか、根管治療後にどの程度の期間を置くのか、歯内外科と歯周再生療法を段階的に行うのかといった問いには、完全には答えられない。

2026年には、残存する生活歯髄と、歯冠側からの感染経路を疑う所見を組み合わせたV/ICフレームワークが提案された。

ただし、V/ICフレームワークは、2018年分類に代わる正式分類ではない。歯髄保存と歯周処置の時期を考えるために提案された、仮説的な臨床推論モデルである。

Vは少なくとも一部に生活歯髄が残っている可能性、NVは生活歯髄が残っていないと推定される状態を示す。ただし、このモデルでもV/NVの初期判断に電気歯髄診が用いられており、電気歯髄診は血流を直接測定する検査ではない。したがって、V/NVは確定した組織学的診断ではなく、暫定的な臨床分類として理解する必要がある。

ICはcoronal-originating infection、すなわち歯冠側から根管へ侵入した感染が、現在の病変形成に寄与している可能性を表す臨床的概念である。深いう蝕、不適合修復物、クラック、歯冠側漏洩などが、その判断材料になる。

歯冠側感染が現在の歯周所見へ寄与していると考えられる症例では、根管内感染を制御した後にポケットを再評価する意味がある。

一方、歯冠側感染の根拠がなく、プラーク関連歯周炎が主体と考えられる症例では、歯周処置を遅らせる生物学的利点は乏しい可能性がある。

多根歯では、一根に壊死歯髄が存在し、別の根に生活組織が残っている可能性がある。歯全体の電気歯髄診陽性だけでは、すべての根管の歯髄が健全とは判断できない。

V/ICフレームワークは、このような生物学的な不均一性を治療順序へ取り込もうとする点で興味深い。ただし、前向きに検証された診療ガイドラインではなく、現時点で標準的な治療選択を規定するものではない。

分類より先に根損傷と修復可能性を評価する

EPLの診断に集中しすぎると、もっと根本的な問題を見落とすことがある。

その歯は、感染を制御した後に修復できるのか。

根管治療、歯周基本治療、歯周外科、再生療法をすべて完遂しても、最終補綴が成立しなければ保存治療の価値は低い。

治療開始前には、残存歯質量、深いう蝕や歯根面う蝕、フェルールの確保、歯冠歯根比、根分岐部形態、動揺度、支台歯として受ける負担、清掃可能性、補綴設計、隣在歯と対合歯の状態まで確認する必要がある。

加えて、患者が長期治療とメンテナンスを継続できるか、術者が必要な歯内・歯周処置を予知性高く実施できるかも、保存可能性を左右する。

修復不能な歯に対して、分類を精密化し、根管治療や再生外科を開始しても意味がない。

保存可能性とは、単に「抜歯せず口腔内へ残せるか」ではない。

感染を制御し、清掃可能な形態を作り、咬合力に耐え、再感染を防ぐ歯冠修復を行い、患者が維持管理できる状態まで到達できるかという問いである。

最初に除外すべき垂直性歯根破折

孤立した深いポケットとJ字状透過像を認めたとき、根管治療から始める前に考えるべき代表的病変が垂直性歯根破折である。

根管治療歴やポスト・コアがあり、咬合時に限局した一点痛を訴え、一歯面だけに狭く深いポケットが存在する場合には、歯根破折を疑う必要がある。歯肉辺縁付近に瘻孔が開口する、根側方から根尖を取り囲むJ字状・halo状透過像がある、短期間で局所骨吸収が進行した、再根管治療後も排膿が改善しないといった所見も、疑いを強める。

ただし、J字状透過像は垂直性歯根破折に特異的ではない。

セメント質剝離、口蓋歯根溝、穿孔、根面吸収、歯内由来の排膿路、局所的な歯周骨欠損でも似た像を呈することがある。

コーンビームCT(cone-beam computed tomography:CBCT)は、根周囲骨欠損の三次元的分布を把握するうえで有用だが、破折線を必ず描出できるわけではない。ガッタパーチャや金属ポストによるビームハードニング、ボクセルサイズ、破折線の方向によって、偽陽性・偽陰性が生じる。

したがって、CBCTで破折線が見えないことと、歯根破折が存在しないことは同義ではない。

必要に応じて、補綴物除去、拡大視野、透照、染色、咬合試験、根管内の直接観察、歯周外科時の根面確認まで考える。

穿孔は部位と封鎖可能性で予後が変わる

根管壁や髄床底の穿孔を伴うEPLは、2018年分類では根損傷を伴うEPLに分類される。

しかし、穿孔のすべてが抜歯適応ではない。

穿孔の位置と大きさ、歯槽骨頂との距離、歯周ポケットとの交通、発生から封鎖までの時間、周囲組織の汚染、根管内感染の有無、使用する封鎖材、歯冠修復後の清掃性によって予後は変わる。

一般に、歯槽骨頂に近く、口腔内と交通し、プラーク汚染を受けやすい穿孔ほど管理が難しい。

根尖側あるいは骨縁下で、早期に封鎖され、軟組織封鎖を得られる穿孔は、保存できる可能性がある。

穿孔症例では、「根管治療か歯周治療か」という二者択一ではなく、根管内感染制御、穿孔封鎖、歯周炎症管理、最終修復を一体として考える必要がある。

外部歯根吸収

外部歯根吸収は、進行範囲、穿孔の有無、歯周組織との交通、外科的アクセスによって保存可能性が変わる。

とくに外部頸部吸収は、歯周側から根面へ進行し、象牙質を破壊して根管へ近づく。二次元画像では病変の広がりを過小評価しやすく、CBCTが治療計画に役立つことがある。

既往歴として、外傷、矯正治療、歯周外科、失活歯の内部漂白などを確認する。

早期で根管腔へ穿孔しておらず、病変へのアクセスと封鎖が可能であれば保存を検討できる。広範囲に及び、根管腔と歯周組織の双方へ交通し、修復後の清掃性も得られない場合は予後不良となる。

セメント質剝離

セメント質剝離は比較的見逃されやすい。

歯髄感覚反応を保ちながら、一歯面の深いポケット、膿瘍、瘻孔、根面に沿う透過像を呈し、歯内病変や歯根破折と誤診されることがある。

画像上、根面に沿う小さな不透過物を認める場合もある。根管治療を行っても、原因である剝離セメント質が残れば病変は改善しない。

歯髄感覚反応が保たれている難治性の孤立ポケットでは、必ずしも頻度の高い病変ではないとしても、鑑別へ入れておく必要がある。

口蓋歯根溝

上顎側切歯などにみられる口蓋歯根溝は、プラークが深部へ侵入する構造的経路となる。

根管治療によって歯髄・根尖部感染を制御しても、根面の溝が残れば歯周感染経路は維持される。

溝の浅い症例では形成修正や封鎖、深い症例では歯周外科、再生療法、歯内外科を組み合わせる。症例によっては意図的再植が検討されることもあるが、一般的な第一選択ではない。

EPL診断のための臨床検査

問診では現在の痛みより時間軸を聞く

EPLでは、現在の所見だけでなく、どのように経過したかが重要である。

痛みが急に始まったのか、慢性的に続いていたのか。自発痛、咬合痛、温熱刺激痛があったのか。腫脹や排膿を繰り返していたのか。過去に根管治療や再根管治療を受けたのか。補綴物の緩みや脱離があったのか。外傷、矯正、内部漂白の既往があるのか。歯周治療後に症状が出たのか。短期間でポケットが深くなったのか。ブラキシズムや咬合性外傷の可能性があるのか。喫煙、糖尿病、服薬、全身状態はどうか。

こうした時間軸の情報を、一つずつ確認する。

数年間かけて全顎的な歯周組織破壊とともに深くなったポケットと、根管治療歯の一歯面に短期間で出現した10mmポケットでは、意味が異なる。

「いつから深いか」が不明でも、「いつ症状が変わったか」「補綴物がいつ緩んだか」「根管治療後に改善した時期があったか」という情報は、診断仮説を絞る助けになる。

歯周プロービングは最大値ではなく形を読む

EPL診断では、ポケットの深さだけを記録して終わってはならない。

同じ10mmでも、入口部が狭く、一点だけ根尖方向へ落ち込むポケットと、頬側全体に広がる10mmポケットでは病態が異なる。

最大PPDだけではなく、ポケット入口部の幅、根面に沿う形、一歯面か複数歯面か、隣在歯との違いを確認する。BOP、排膿、CAL、動揺度、根分岐部病変、歯石、プラーク、歯肉退縮も同時に記録する。

一歯面だけの狭いポケットは、歯内由来の排膿路、歯根破折、穿孔、セメント質剝離、発育溝を疑わせる。

複数歯面にわたる広い深部ポケットは、真正の歯周組織破壊を強く示唆する。

ただし、狭いから歯内由来、広いから歯周由来と機械的に決めることはできない。ポケット形態は診断確率を動かす所見の一つであり、確定診断ではない。

歯髄感覚検査は歯髄血流を直接見ていない

冷刺激試験や電気歯髄診(electric pulp testing:EPT)は、日常臨床で不可欠な検査である。

しかし、これらは歯髄血流を直接測定する検査ではなく、主として感覚神経反応を評価している。

したがって、「反応あり=健康歯髄」「反応なし=完全壊死」という単純な対応にはならない。

冷刺激への反応を評価するときは、対照歯と比較しながら、反応閾値、反応の強さ、刺激除去後の持続時間を評価する。

EPTでも、歯面の乾燥、電極位置、修復物、隣接歯への電流漏洩、患者の理解などが結果へ影響する。

多根歯では、さらに解釈が難しくなる。

一根の歯髄が壊死していても、別の根に生活歯髄が残っていれば、歯全体として陽性反応を示し得る。

反対に、石灰化、厚い修復物、高齢歯、外傷直後などでは、生活歯髄があっても反応が得られないことがある。

歯髄感覚検査は単独で解釈せず、問診、冷刺激試験、EPT、対照歯、う蝕・修復物、打診・触診、ポケット形態、画像所見、必要に応じた再検査を統合する。

冷刺激やEPTの意味については、[歯医者で歯に冷たいものや電気を当てるのはなぜ?冷温度診・電気歯髄診で「歯の神経」をどう調べる?]でも詳しく解説している。

打診、触診、咬合試験、動揺度を混同しない

打診反応は、主として歯根膜の炎症や機械的感受性を反映する。歯髄生活性を直接示す検査ではない。

垂直打診、水平打診、根尖部触診、歯肉腫脹、咬合試験、動揺度は、それぞれ異なる情報を与える。

咬合時の限局した一点痛は、クラックや歯根破折を疑わせる。動揺は、歯槽骨支持の喪失だけでなく、急性炎症や咬合性外傷によって一時的に増加することもある。

根管治療後に炎症が消退し、動揺が軽減した場合、初診時の動揺の一部は炎症性だったと考えられる。

一方、広範な支持骨喪失があれば、感染制御後も動揺は残る。

[歯医者で歯をたたく・歯ぐきを押す・歯を揺らすのはなぜ?]で扱ったように、それぞれの検査が評価している組織を分けて考える必要がある。

瘻孔追跡で分かること、分からないこと

瘻孔が存在する場合、ガッタパーチャポイントを挿入してデンタルX線写真を撮影することで、排膿路がどこへ向かっているかを確認できる。

根尖方向へ到達すれば歯内由来病変を疑う。根側方や根分岐部へ向かう場合には、側枝、穿孔、歯根破折、歯周膿瘍などを鑑別する。

ただし、瘻孔の出口と感染源は必ずしも直線的に一致しない。

炎症性滲出液は抵抗の少ない方向へ進むため、原因歯から離れた位置へ開口することもある。追跡結果は有用な情報ではあるが、単独で病因を確定するものではない。

デンタルX線写真とCBCT

EPLの画像評価では、デンタルX線写真が基本になる。

根尖透過像だけでなく、歯根側方や根分岐部の透過像、歯槽骨頂から根尖への連続性、骨欠損の幅、根管充填の長さと密度、未処置根管、ポスト、穿孔、吸収、歯根膜腔、根面に沿う不透過物まで確認する。

撮影角度が変われば、根面と骨欠損の重なり方も変わる。必要に応じて偏心投影を追加し、一枚の画像だけで結論を出さない。

CBCTは、歯根破折、穿孔、吸収が疑われる場合、二次元画像と臨床所見が一致しない場合、未処置根管や複雑な根管形態を疑う場合、骨欠損の三次元的広がりや頬舌側骨壁の状態を把握する場合、歯内外科・歯周外科の範囲を決める場合に有用となる。

一方、EPL全例にCBCTを撮影する必要はない。

撮影によって診断または治療計画が変わるかを考え、小照射野を原則として被曝との利益を評価する。

また、CBCTで歯根破折を完全に除外できないことを理解する必要がある。

[歯科用CTとレントゲンの違い]を知るだけでなく、何が見え、何が見えないかを症例ごとに判断することが重要である。

初診から治療順序を決める診断アルゴリズム

2024年には、2018年分類を臨床へ落とし込むためのエキスパートコンセンサスが発表されている。根損傷、歯周炎患者か否か、局所破壊範囲を順番に評価し、歯内・歯周治療を組み立てるうえで有用な文書である。

ただし、これはEPL診療を体系化したエキスパートコンセンサスであり、個々の推奨がすべて同じ水準の比較試験に裏づけられた正式な診療ガイドラインではない。

実際の診療では、以下の順序で整理するとよい。

  1. 急性症状への対応が必要かを判断する。
    疼痛、膿瘍、腫脹、発熱、開口障害、蜂窩織炎などがあれば、排膿路の確保、切開排膿、咬合負担の軽減、歯内処置の可否を判断する。抗菌薬の必要性は、局所膿瘍の存在だけでなく、全身症状、感染拡大、宿主因子を踏まえて判断する。
  2. その歯が修復・保存可能かを評価する。
    広範なう蝕、確保不能なフェルール、切除不能な歯根破折、封鎖不能な穿孔、進行した吸収、清掃不能な根分岐部病変、補綴設計不能などがあれば、複雑な保存治療へ進む前に治療目標を再検討する。
  3. 根損傷の有無を確認する。
    歯根破折、穿孔、外部歯根吸収を評価し、疑いが残る場合には、診断を保留したまま不可逆的な処置へ進まない。
  4. 患者単位の歯周炎診断を行う。
    対象歯の一ポケットではなく、全顎所見から歯周炎の有無、Stage、Gradeを決める。
  5. 対象歯のEPL Gradeを決める。
    根損傷がなければ、局所ポケットの幅と広がりからGrade 1~3へ分類する。
  6. 歯髄・根管感染が存在するかを評価する。
    未処置歯では歯髄感覚反応、う蝕、修復物、症状、画像を評価する。根管治療済み歯では、歯冠側漏洩、未処置根管、根管充填不良、器具破折、穿孔、再感染を評価する。
  7. 治療可能な予後因子を整理し、治療順序を決める。
    プラーク、喫煙、糖尿病、咬合負担、不良補綴物、根管内感染、穿孔、動揺、メンテナンス中断などを整理し、根管治療、歯周基本治療、外科治療、修復処置の順序を決定する。

根管治療と歯周治療の順序

歯髄壊死・根管内感染が確認されたら、なぜ歯内治療を優先するのか

歯髄壊死と根管内感染が成立している場合、重大な根損傷や修復不能性がなければ、原則として根管内感染の制御を優先する。

根管系が感染供給源として残っていれば、根尖部、側枝、根分岐部へ細菌由来成分が供給され続ける。

根管感染を残したまま歯周再生療法を行っても、創傷治癒を阻害する要因を除去できていない。

また、歯内治療への反応そのものが診断情報になる。

根管治療後に孤立ポケット、排膿、瘻孔、打診痛が短期間で改善すれば、初診時の歯周所見に歯内因子が大きく寄与していた可能性が高い。

反対に、根尖像が改善しても広いポケットが残れば、独立した歯周欠損の存在が明確になる。

近年のシステマティックレビューおよびメタ解析は、歯髄壊死または根管内感染が確認された保存対象歯では、歯内感染制御を優先する方向を支持している。

一方で、病変の定義、歯周治療内容、治療間隔は研究間で統一されていない。全症例へ同一の待機期間を適用する根拠にはならない。

したがって、現時点で妥当な原則は、歯髄壊死または根管内感染が確認された保存対象歯では、歯内感染制御を治療の優先課題とする、というものである。

根管治療優先と歯周治療全面延期は同じではない

歯内治療を優先すると決めても、その間、口腔衛生指導や全顎的な歯周炎管理を止める理由はない。

歯周炎患者であれば、早期から口腔衛生指導、歯肉縁上プラーク・歯石除去、喫煙や糖尿病などのリスク因子管理、全顎的な非外科的歯周治療、必要に応じた咬合管理を進める。

2024年のエキスパートコンセンサスでも、歯周炎患者の根損傷を伴わないEPLについて、非外科的歯周治療は歯内治療と並行でき、歯周外科は歯内治療完了後に検討するという整理が示されている。

つまり、延期する中心は、歯周外科や再生療法などの不可逆的処置である。

対象歯の深部縁下デブライドメントについては、病変の性格に応じて判断する。

全顎的な歯周炎があり、対象根面に広い歯周ポケットと歯石を認めるなら、感染源を放置する利益は乏しい。

一方、非歯周炎患者で、狭い孤立ポケットが歯内由来排膿路と考えられるなら、早期に根尖付近まで強い根面処置を行う理由は乏しい。

治療時期に関するシステマティックレビューでは、根管治療優先を支持する研究と、同時治療で改善を示した研究が混在している。さらに、即時歯周治療の有効性を示した臨床試験には、辺縁性歯周炎の寄与が大きく、根管治療のみでは歯周ポケットの改善を期待しにくい症例が多く含まれていた。

したがって、「根管治療後は必ず3か月間、対象歯のSRPをしてはいけない」とも、「EPLはすべて同時治療がよい」ともいえない。

歯髄感覚反応が残る歯に予防的根管治療を行うべきか

重度歯周炎の歯で骨吸収が根尖近くまで進んでいると、将来的な歯髄壊死を懸念し、歯周外科前に根管治療を行いたくなることがある。

しかし、歯髄感覚反応が保たれ、歯冠側からの感染経路がなく、画像・プロービング所見から根尖孔周囲に付着組織の残存が推定される歯に、予防的に根管治療を行うことには慎重であるべきだ。

歯周炎が高度であっても、歯髄は生活性を維持している場合がある。

組織学的には変性や石灰化を伴う可能性があるとしても、それは直ちに感染根管を意味しない。

一方、多根歯では部分壊死を見逃す可能性がある。歯全体の陽性反応だけで、すべての根管が健全とは限らない。

したがって、感覚反応を示すEPLでは、冷刺激反応の質、EPT、根ごとの画像所見、根尖部付着の残存可能性、歯冠側う蝕や漏洩、自発痛や持続痛、歯周治療後の反応変化を統合し、定期的に再検査する。

生活歯髄療法(vital pulp therapy:VPT)や根単位の歯髄保存は、生物学的には魅力的な選択肢であるが、EPLに対する適応と長期成績はまだ十分に確立していない。

現時点では、一律に推奨する段階ではなく、慎重な症例選択と綿密な経過観察を要する。

根管治療済み歯では「再治療すればよい」と決めない

根管治療済み歯に孤立ポケットと根尖・側方透過像を認めた場合、再根管治療を考える前に原因を再検討する。

歯冠側漏洩、二次う蝕、未処置根管、根管充填不良、破折器具、レッジ、穿孔、外部歯根吸収、垂直性歯根破折、セメント質剝離、真正の歯周炎などが鑑別に挙がる。

不良根管治療と垂直性歯根破折は、同じ歯に併存することもある。

再根管治療後に歯根破折が判明すれば、患者は時間、費用、侵襲を負った後に抜歯へ移行することになる。

疑わしい症例では、再治療前の破折評価、補綴物除去後の拡大観察、CBCT、必要に応じた診断的外科を検討する。

再評価をいつ、どのように行うか

EPLの再評価を、「根管治療3か月後の一回」と考えるべきではない。

症状、軟組織、歯周ポケット、根尖部骨治癒では、変化が現れる時間が異なる。

実務上の早期確認として、治療後2~6週には、自発痛、咬合痛、腫脹、排膿、瘻孔、打診痛、動揺度、仮封や歯冠側封鎖の状態を確認する。

根管治療のみで歯内由来の排膿路が消退する症例では、数週間でポケットが大きく縮小することがある。

症例報告では、10mmの孤立ポケットが再根管治療後約40日で4mmへ減少し、歯周治療を行わずに長期安定した例も報告されている。

ただし、これは歯内由来が強い選択症例であり、すべての深いポケットに当てはまるものではない。

約3か月は、次の治療段階を決めるための初回総合評価として妥当な目安である。

この時期には、症状、PPD、CAL、BOP、排膿、動揺度、根分岐部病変、プラークコントロール、根管治療の質、初期的な画像変化、修復物の封鎖、外科の必要性を再評価する。

しかし、3か月時点で根尖病変の完全消失を要求するものではない。

根尖性歯周炎では、画像上の骨梁形成や病変縮小に時間を要する。6~12か月では、病変が縮小傾向にあるか、停滞しているか、拡大しているかを評価する。

完全な画像治癒を待ってから次の判断をするのではなく、治癒傾向を読む。

さらに長期的には、再発、歯根破折、補綴物の破損・漏洩、歯周ポケットの再深化、根分岐部清掃、咬合変化、歯周病継続支援治療(旧SPT)の継続を確認する。

3か月は治癒の締切ではない。

診断と次の治療を考える節目である。

治療反応を初診時診断の検証に使う

治療後の変化は、単なる結果ではない。

初診時には確定できなかった病態を推測するための追加情報になる。

根管治療後、孤立ポケットや排膿が短期間で大きく改善したなら、歯内因子がポケット形成に強く寄与していた可能性が高い。不可逆的な歯周外科を回避できることもある。

根尖像は改善するがポケットが残る場合には、根管内感染は制御されつつあるものの、真正の歯周欠損が残っている可能性を考える。残存歯石、広い骨欠損、根分岐部病変、清掃困難性を再評価する。

ポケットも根尖像も改善しない場合には、不十分な根管治療、未処置根管、再感染、垂直性歯根破折、穿孔、外部歯根吸収、セメント質剝離、発育溝、難治性歯周炎、非歯原性病変まで診断を戻して考える。

ポケットは改善したが根尖像が残る場合には、臨床的治癒が先行し、画像治癒が遅れている可能性がある。症状がなく、病変が縮小傾向なら、早すぎる歯内外科を避ける。

残存病変に対する外科・再生療法

残存ポケットに非外科的歯周治療を追加する

根管内感染を制御しても歯周ポケットが残る場合には、歯周病変として再評価する。

全顎的な歯周炎患者では、段階的歯周治療に沿い、リスク因子管理、口腔衛生指導、縁上・縁下の原因除去を行う。

再評価後に、4mm以上でBOP陽性のポケット、あるいは6mm以上の深い残存ポケットがあれば、歯周外科を検討する目安になる。

ただし、これはEPLにおける自動的な外科基準でも、抜歯基準でもない。

対象歯の根面形態、骨欠損、根分岐部、動揺、歯冠歯根比、清掃可能性、根管治療の質を合わせて判断する。

歯周外科は治療であると同時に診断でもある

フラップを開けることで、非外科的検査では分からなかった根面歯石、垂直性歯根破折、セメント質剝離、穿孔、外部歯根吸収、口蓋歯根溝、骨壁数、根分岐部形態、根面の汚染範囲が明らかになることがある。

したがって、歯周外科には診断的意義もある。

ただし、診断目的だけで安易に外科を行うのではなく、術前検査で得られる情報、外科による利益、歯肉退縮、付着喪失、将来の補綴への影響を考える必要がある。

歯周再生療法の適応はEPLという病名では決まらない

EPLに骨補填材、遮断膜、エナメルマトリックスデリバティブ、成長因子、PRFなどを用いた症例報告は多い。

しかし、「EPLだから再生材料を使用する」という判断は適切ではない。

再生療法の成否に影響するのは、骨壁数、欠損角度、欠損深さ、根面の健全性、根分岐部病変、創傷安定性、一次閉鎖、プラークコントロール、喫煙、糖尿病、咬合負担、根管内感染の制御、歯冠側封鎖である。

2023年のシステマティックレビューでは、現代的歯内外科と組織再生誘導法(guided tissue regeneration:GTR)を併用したEPLの臨床研究として、3件のランダム化比較試験と1件の前向き研究、計125歯が解析された。

完全治癒は58.4%、瘢痕治癒・不完全治癒は24.0%、判定不確実は12.8%、失敗は4.8%だった。

完全治癒と不完全・瘢痕治癒を合計した82.4%は、「良好な転帰」として集計された数字である。

82.4%に歯周組織の完全再生が生じたという意味ではない。

さらに、研究間で病変、術式、材料、観察期間が大きく異なり、適切な比較メタ解析はできなかった。EPLに限定してGTRありとGTRなしを比較した研究も不足している。PRF膜を対照群と比較した試験でも、明確な上乗せ効果は示されなかった。

したがって、症例報告を根拠に、PRFを使用したから治癒した、骨補填材を入れれば成功率が上がる、EPLには必ず遮断膜が必要である、と結論づけることはできない。

GTRは、非包含性欠損、大きなapicomarginal defect、創傷安定性を確保できる症例などで合理的な選択肢になり得る。

しかし、材料選択はEPLという病名ではなく、欠損形態と手術目標から決めるべきである。

段階的手術か、歯内・歯周同時手術か

非外科的治療後も病変が残る場合、歯内外科と歯周再生療法をどの順序で行うかが問題になる。

難治性根尖性歯周炎の寄与が強く疑われる場合には、まず歯内外科を行い、根尖側感染源を制御した後に歯周組織の反応を評価する方法が合理的である。

この方法には、不要な再生療法を避けられる可能性がある。一方、辺縁性歯周炎も強く関与していた場合、治療期間が長くなり、複数回の手術が必要になる。最初の歯内外科によって歯肉退縮が生じれば、その後の再生療法に不利になる可能性もある。

根尖側病変と辺縁側病変の寄与を分けられず、双方の処置が必要と判断される場合には、歯内外科と歯周再生療法を同時に行うことがある。

同時手術には、手術回数と治療期間を減らせる利点がある。一方、術式は複雑になり、術者の技能、費用、創傷安定性への要求は高くなる。

現時点で、すべての難治性EPLにおいて、段階的手術と同時手術のどちらかが一律に優れているとはいえない。

残存病変が根尖中心なのか、辺縁中心なのか、根面歯石が存在するのか、患者の全顎歯周状態、治療負担、費用、術者の技術的実現可能性を統合して判断する。

歯内外科、歯根切除、ヘミセクション

非外科的再根管治療が困難、あるいは予知性に乏しく、根尖側の感染源が持続している場合には、歯内外科を検討する。

EPLでは単純な根尖病変と異なり、辺縁歯周組織との交通、頬側骨壁の欠損、根面汚染が存在することがある。

歯根端切除と逆根管充填のみで十分なのか、歯周再生療法を併用するのかを症例ごとに判断する。

病変が多根歯の一根に限局し、他根の歯周支持、根管治療、補綴設計が良好なら、歯根切除やヘミセクションが保存手段になることがある。

ただし、一根を除去できるという理由だけで適応を決めてはならない。残存根の歯周支持、根の離開、根管形態、清掃性、フェルール、支台歯設計、咬合面形態、患者のメンテナンス能力まで評価する。

残した歯を長期的に清掃・修復できることが条件である。

意図的再植

通常の根管治療や外科でアクセスできない穿孔、発育異常、根面欠損などに対して、意図的再植が検討されることがある。

ただし、抜去時の歯根破折、歯根膜損傷、口腔外時間、置換性吸収、アンキローシスなどのリスクがあり、術者依存性も高い。

一般的な第一選択ではなく、代替手段が乏しい保存希望症例における最終選択肢の一つである。

Grade 3を含む重度EPLの保存可能性

Grade 3は、複数歯面に深いポケットが及ぶ状態であり、Grade 1やGrade 2より不利なことは確かである。

しかし、Grade 3という分類だけでは抜歯適応を意味しない。

根損傷がなく、根管治療が適切に行え、欠損形態が再生療法に適し、プラークコントロールが良好で、患者が継続管理できるなら、保存できる症例がある。

重度Grade 3病変に歯内療法と歯周再生療法を組み合わせ、長期保存を得た臨床研究も報告されている。

39歯を対象とした研究では、長期観察中に4歯が失われ、その喪失原因はいずれも歯根破折だった。

ただし、この研究は、重度喫煙者、根損傷、吸収、プラークコントロール不良などを除外した、専門治療下の選択症例である。

したがって、Grade 3でも約9割保存できる、と一般化してはならない。

Grade 3は予後不良因子であるが、根損傷がなく、症例選択、感染制御、再生療法、維持管理の条件が整えば、長期保存できる症例が存在する、と理解すべきである。

EPLの予後をどう説明するか

EPLの予後は、分類名だけでは決まらない。

歯の側では、根損傷の有無、EPL Grade、最大PPD、CAL、骨吸収が根尖側まで及ぶか、根分岐部病変、動揺度、歯冠歯根比、根管数と根管形態、根管治療難易度、残存歯質、最終補綴可能性が影響する。

患者側では、歯周炎患者か、プラークコントロール、喫煙、糖尿病、咬合習癖、通院可能性、メンテナンス継続、治療への理解、費用負担、保存に対する希望が関係する。

治療側では、根管治療の質、未処置根管、歯冠側封鎖、歯周基本治療の質、外科時の創傷安定性、術者の経験、拡大視野や設備、補綴設計、歯周病継続支援治療(旧SPT)の継続が予後を左右する。

2024年に88歯を対象として行われた後ろ向き研究では、厳格な成功が46.6%、歯は残存しているものの完全治癒ではないsurvivalが21.6%、抜歯に至ったfailureが31.8%だった。

骨吸収が根尖側1/3まで及ぶこと、5~7mmまたは8~10mmの深いPPD、歯周病既往が不利な因子として関連していた。

ただし、この数値は大学病院で治療された異質な88症例の後ろ向き解析であり、EPLのタイプ、術者、治療法は統一されていない。10mmを超えるPPD群は症例数が極めて少なく、最低1年以上の追跡を得られた症例だけが対象である。

したがって、46.6%をEPL全体の一般的成功率として、患者説明へ直接用いるべきではない。

一方、専門施設で選択された外科症例では、5年生存率が約90%前後と報告されることもある。

この数字の違いは矛盾ではない。

症例選択、治療者、病変の重症度、外科処置の有無、successとsurvivalの定義、観察期間、追跡脱落が異なるからである。

Success、survival、tooth retentionを分ける

EPLの論文を読むとき、最初に確認すべきなのは「成功」の定義である。

Successは、症状がなく、瘻孔や膿瘍がなく、深いポケットが解消し、根尖部画像も改善あるいは治癒している状態を意味する。

Survivalは、歯が口腔内に残り機能しているものの、深いポケット、BOP、動揺、画像病変、再治療などが残る状態を含むことがある。

Tooth retentionは、単に抜歯されず残っていることを指す。病変が完全に制御されているとは限らない。

患者にとっては、痛みがなくなり、数年間自分の歯で咬めることが成功かもしれない。

研究者にとっては、画像上の完全治癒とPPD正常化が成功かもしれない。

治療前説明では、完全治癒の可能性、機能的に保存できる可能性、再治療の可能性、将来抜歯へ移行する可能性を分けて説明する必要がある。

代表的な臨床シナリオ

非歯周炎患者、一歯面の狭い10mmポケット、歯髄感覚反応なし

最初に歯根破折、穿孔、外部歯根吸収を除外する。

根損傷がなく、歯冠側う蝕または漏洩、根尖・側方透過像があり、根管内感染が疑われるなら、根管治療を優先する。

対象根面への強い器械処置は急がず、数週間から約3か月でポケット、排膿、瘻孔の変化を見る。

Stage III歯周炎患者、複数歯面の深いポケット、歯髄壊死

根損傷がなければ、歯周炎患者のEPL Grade 3となる。

根管治療と全顎的歯周基本治療を並行し、外科・再生療法は再評価後に判断する。

保存可能性は、根分岐部、動揺、骨欠損、補綴設計、プラークコントロールで決める。

根管治療歯、孤立ポケット、J字状透過像

再根管治療の前に垂直性歯根破折を評価する。

CBCT陰性だけでは除外しない。セメント質剝離、穿孔、歯根溝、外部歯根吸収も鑑別する。

原因が不明なら、補綴物除去や診断的外科を含めて検討する。

根分岐部穿孔を伴うEPL

穿孔の位置、大きさ、歯槽骨頂との関係、歯周交通、封鎖可能性を評価する。

封鎖後に清掃可能な形態を作れるなら保存を検討する。

歯周炎症を制御できず、軟組織封鎖を得られない場合は予後不良となる。

重度歯周炎だが歯髄感覚反応が正常

予防的根管治療を自動的に行わない。

冷刺激試験とEPTを対照歯と比較し、根尖孔周囲の付着組織が残存する可能性、根尖像、歯冠側感染、根別の状態を確認する。

歯周治療を行いながら、歯髄感覚反応と画像を継続評価する。

患者への説明では不確実性を隠さない

EPLでは、初診時に病変の発症順序を完全に確定できないことがある。

これは診断能力が不足しているという意味ではない。

臨床検査で得られる情報には限界があり、治療反応を見て初めて明らかになる病態があるからである。

患者には、根管治療だけで改善する可能性、歯周治療を追加する可能性、歯周外科・再生療法が必要になる可能性、歯根破折や穿孔が後から判明する可能性、保存治療後も抜歯へ移行する可能性を説明する。

治療期間、費用、維持管理、抜歯と欠損補綴という代替案も、治療開始前に共有する必要がある。

保存可能性が不確実な歯では、「残せるか、残せないか」を早い段階で断定するのではなく、どの段階まで治療を行い、何が確認できたら次へ進み、どの所見が出たら保存を断念するかを共有する。

専門医への紹介も、治療を放棄することではない。

垂直性歯根破折が疑われる症例、複雑な再根管治療、未処置根管や器具破折、穿孔、外部歯根吸収、歯内外科、Grade 3 EPL、高度根分岐部病変、歯周再生療法、口蓋歯根溝、修復可能性が境界領域の症例では、歯内療法、歯周病、補綴の連携を検討する。

診断精度、治療選択肢、予測可能性を高めるための治療計画の一部として、専門医紹介を位置づけるべきである。

歯内‐歯周病変を診るための10原則

  1. 発症順序を無理に断定しない。
    Simon分類は病態理解に有用だが、初診時に過去を完全に再現できるとは限らない。
  2. 根損傷と修復可能性を最初に確認する。
    歯根破折、穿孔、吸収、修復不能う蝕を見落としたまま治療を開始しない。
  3. 患者単位の歯周炎診断と、対象歯単位のEPL Gradeを分ける。
    一つの孤立ポケットだけで歯周炎患者と診断しない。
  4. プロービング値ではなく、形態と分布を読む。
    深さ、幅、面数、BOP、排膿、根分岐部を統合する。
  5. 歯髄感覚検査を単独で解釈しない。
    反応ありは健康歯髄を、反応なしは完全壊死を必ず意味するわけではない。
  6. 歯内感染が確認されれば、感染源制御を優先する。
    ただし、根管治療優先と歯周治療全面延期を混同しない。
  7. 歯周基本治療と歯周外科を分けて考える。
    歯周炎患者では非外科的治療を並行し、不可逆的外科は再評価後に決める。
  8. 再評価を診断の一部として用いる。
    根管治療後のPPD、CAL、排膿、根尖像の変化から、歯内・歯周因子の寄与を読み直す。
  9. 再生療法は病名ではなく、欠損形態と創傷条件で選ぶ。
    PRFや骨補填材の効果を症例報告から一般化しない。
  10. success、survival、患者が望む結果を分けて説明する。
    歯が残っていることと、病変が完全治癒していることは同じではない。

分類は診断の終点ではなく、治療を始めるための出発点である

EPLの治療順序は、分類表の名称だけでは決まらない。

根損傷、修復可能性、全顎的歯周炎、局所ポケット形態、歯髄・根管感染、最終補綴計画を統合し、治療後の変化を診断へ戻す。

そうすることで、不要な根管治療、過剰な根面処置、早すぎる歯周外科、安易な抜歯を減らすことができる。

歯内由来か、歯周由来かという問いは重要である。

しかし、それ以上に重要なのは、今この歯に存在する感染源は何か、どの組織がまだ保存できるのか、どの治療を先に行えば次の判断が正確になるのかという問いである。

分類は、その歯の過去を説明するためだけにあるのではない。

その歯の未来を、より合理的に選択するためにある。

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