2026年9月26日

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに
こんにちは。ブランデンタルクリニックの歯科衛生士です。
今日は、見た瞬間から少し気になっていた歯磨き粉を調べてみます。
手元にあるのは、EUTHYMOL(ユーシモール)ホワイトパープル歯みがき。
チューブには大きく、WHITENING PURPLE CORRECTORと書かれています。
中身も名前の通り、かなり鮮やかな紫色です。
「黄色の反対色が紫だから、歯の黄ばみを打ち消して白く見せるタイプですよね?」
最初は私も、そのくらいの理解でした。
以前、この「歯科衛生士さんのある日の日誌」では、同じように紫色を使って歯を白く見せる製品として、Hismile V34を60人RCTや独立研究まで11段階で検証しました。
今回のEUTHYMOLも、ぱっと見た印象だけなら似ています。
ところが成分表示を読んでみると、話はそんなに単純ではありませんでした。
- 赤色227号
- 青色1号
- メタリン酸ナトリウム(SHMP)
- 無水ケイ酸
- フッ化ナトリウム
- 塩化セチルピリジニウム(CPC)
- 酢酸DL-α-トコフェロール
などが入っています。
「これ、“紫色を歯にのせるだけ”の歯磨き粉じゃないな……」

ということで今回は、日本で販売されているEUTHYMOLホワイトパープルについて、製品そのもの、紫色による見え方の補正、SHMP、シリカ、フッ素、CPC、そしてメーカーが示している「2.9倍」「1.9段階」といった数字の出どころまで、10段階に分けて調べてみました。
最初に:「白くなる」を一つの意味で考えない
今回の記事で最も大切なのは、「歯が白くなる」という言葉の中に、違う現象が混ざっていることです。
EUTHYMOLについて考えるとき、少なくとも次の3つを分ける必要があります。
- 光学的色補正:青~紫系の色によって、黄みを一時的に目立ちにくく見せる。
- 外因性ステインの除去・再付着抑制:SHMPやシリカによって、歯表面の着色汚れへ働きかける。
- 漂白:過酸化物などによって、歯質内部の色調そのものを変化させる。
この3つは同じ「ホワイトニング」という言葉で呼ばれることがありますが、作用は別物です。

この区別を最初に置いたうえで、EUTHYMOLを一つずつほどいていきます。
第1段階 そもそも、今回調べるEUTHYMOLはどの製品?
今回対象にするのは、日本で正規販売されている、
EUTHYMOL ホワイトパープル歯みがき
ピーチフローラルミントの香り
です。
販売名は「ユーシモール歯磨(WPP)」、容量106g、医薬部外品です。日本公式では、黄ばみの補色である紫色のペースト、SHMPによる着色ケア、CPCによる口臭ケアなどが特徴として紹介されています。[1]
EUTHYMOL自体は歴史の長いオーラルケアブランドで、現在の日本公式ブランド史では1898年創業の英国ブランドとして紹介されています。[2]
現在はLG H&Hがブランドを展開し、日本では日本向けの商品が販売されています。
日本版と韓国版を同じものとして扱わない
ここが今回の検証で最初から重要でした。
EUTHYMOLを検索すると、韓国のWhitening Purple Correctorについて、かなり詳しい情報が出てきます。
しかし日本公式FAQでは、日本で取り扱われているものについて、日本の規格に合わせて日本向けに改良された日本エディションであり、韓国で販売されている製品とは異なると説明されています。香味も、日本版のピーチフローラルミントは日本限定です。[3]
さらに日本公式は、日本版ホワイトパープルについて、韓国版のホワイトニング機能やパープルカラーという特徴に加え、CPCによる口臭ケア機能を追加した日本向け商品と説明しています。[4]
したがって、この記事では最後まで、
- 日本版「ユーシモール歯磨(WPP)」
- 韓国版Purple Corrector
- 海外のEUTHYMOL Purple製品
- LGが以前から研究してきたSHMP・高洗浄シリカ・Purple系の共通技術
を分けて扱います。
韓国版に書いてある数字を、そのまま日本版の数字として使うことはしません。
第2段階 日本版では何を「効く成分」としている?
日本公式の商品説明では、ホワイトパープルについて、
- 黄ばみの補色である紫色のペースト
- SHMPによる着色汚れの除去と再付着予防
- CPCによる口内殺菌と口臭防止
などが紹介されています。着色汚れの除去については「ブラッシングによる」と明記されています。[1]
SHMPとはSodium Hexametaphosphate、日本語ではメタリン酸ナトリウムです。
ただし、成分表示をよく見ると「ホワイトニング成分」と「医薬部外品の有効成分」は同じ意味ではありません。
日本版WPPの有効成分は3つ
今回、手元の日本版「ユーシモール歯磨(WPP)」の現物パッケージ表示も確認しました。有効成分欄には「フッ化ナトリウム、酢酸DL-α-トコフェロール、塩化セチルピリジニウム」と明記されています。したがって、今回検証している日本版WPPがフッ素無配合ということはありません。
一方、
- メタリン酸ナトリウム(SHMP)=清掃助剤
- 無水ケイ酸=研磨剤
- 赤色227号・青色1号=着色剤
という位置づけです。

ここで誤解したくないことが二つあります。
「ホワイトニング成分」と呼ばれている=医薬部外品の有効成分ではありません。
一方で、有効成分に分類されていない=科学的な作用がないでもありません。
SHMPには外因性ステインの研究がありますし、シリカは歯磨剤の清掃を考えるうえで重要です。
法制度上の分類と、科学的にどのような作用を持つのかは分けて読みます。
医薬部外品の「歯を白くする」と、歯科の漂白は同じではない
厚生労働省の薬用歯みがき類製造販売承認基準には、ブラッシングを行う薬用歯磨剤の効能として「歯を白くする」が含まれています。[5]
しかし、これだけを見て「歯科医院のホワイトニングと同じように歯質内部を漂白する」と考えるのは違います。
歯磨剤では、表面の着色汚れをブラッシングで除去し、その人の歯が本来持つ色に近づけるという作用も「白くする」に含まれます。
一方、オフィスホワイトニングやホームホワイトニングでは、過酸化物などが歯質内部の発色構造へ作用します。
今回のEUTHYMOLを読むときは、最後まで光学的色補正・表面着色の除去・漂白を混同しないようにします。
第3段階 成分表を役割別にほどいてみる
長い成分表を役割で整理すると、この製品の設計がかなり分かりやすくなります。
むし歯予防
フッ化ナトリウム。
口臭・歯肉関連
CPCと酢酸DL-α-トコフェロール。
外因性ステイン関連
SHMPと無水ケイ酸。
紫色を作る成分
赤色227号と青色1号。
歯磨剤そのものを成立させる成分
湿潤剤、発泡剤、粘度調整剤、pH調整剤、香料、甘味剤、清涼剤などがあります。
成分名がたくさん並んでいるからといって、すべてが薬効成分というわけではありません。
一本のチューブの中に、薬用成分・清掃成分・光学的な色に関係する成分・製剤を成立させる基剤が同居していると考えると理解しやすくなります。
第4段階 紫色で本当に歯は白く「見える」のか?
いよいよPurple Correctorの中心です。
「黄色の補色は紫だから、黄色い歯に紫色を重ねれば白く見える」
という説明は、とても分かりやすいものです。
ただ、歯科で色を科学的に評価するときには、もう少し細かく考えます。
歯の色をL*・a*・b*で考える
歯の色評価でよく使われるのがCIELABです。
- L*=明るさ
- a*=緑~赤方向
- b*=青~黄方向
歯の「黄み」を考えるとき、特に重要なのがb*です。
b*が高いほど黄色方向、低くなるほど青方向へ寄ります。
そのため、歯の明るさであるL*が大きく変わらなくても、b*が下がることで「黄みが減った」「白く見える」ということはあり得ます。

「紫を塗って白くする」というより、反射する光を変える
光学的なColor Correctionは、歯質内部の色素を漂白する仕組みではありません。
口腔内の歯面は、唾液由来の獲得被膜(acquired pellicle)に覆われています。
青~紫系の色素が歯面や獲得被膜へ少量取り込まれれば、歯から戻ってくる光のバランスが変わり、黄色方向の知覚を弱める可能性があります。
つまり、歯そのものの色を大きく変えていなくても、見た目の白さを変えるという考え方です。

EUTHYMOLの赤227+青1は、Hismile V34と同じ色素の組み合わせ
日本版EUTHYMOLには赤色227号と青色1号が入っています。
赤色227号はCI 17200/Red 33、青色1号はCI 42090/Blue 1。
そして、Hismile V34の60人RCTで使用された2色素もCI 17200/Red 33+CI 42090/Blue 1でした。[6]
色素の組み合わせそのものは同じです。
ただし、これは「同じ製品」という意味ではありません。
色素濃度、赤と青の比率、基剤、粘度、歯面への残留、使用方法、すすぎ方などが違います。
V34の60人RCTでは何が起こった?
V34の臨床試験では60人を1:1に割り付け、Red 33+Blue 1を含むV34と、色素だけを除いたplacebo vehicleを比較しました。[6]
試験製品は前歯へ30秒直接塗布され、軽くすすがれました。
VITA Bleachedguideでは、V34群で直後に平均3.07 shade guide units白い方向への変化が報告され、30分後、60分後にも変化が残りました。
さらに興味深いのが測色値です。
明るさのL*は60分後には統計学的に明確な変化ではなくなった一方、黄みを表すb*は60分後まで低下していました。
つまりこの研究では、「明るさが上がり続けた」というより、「黄み方向が弱くなった」というColor Correctionらしい変化が見られています。

ただし、この研究はEUTHYMOLを調べたものではありません。
また、著者にはHismile社員およびconsultantが含まれ、研究資金もHismileから提供されています。[6]
さらに、歯ブラシで普通に歯磨きする条件ではなく、前歯へ直接30秒塗布する方法です。
したがって、
「同じRed 33+Blue 1だから、EUTHYMOLでも3段階白くなる」
とは言えません。
ここから使えるのは、同じ2色素を用いた別製品で、短時間の黄み低下を示した人RCTが存在するという機序上の情報までです。
Blue Covarine研究を見ると、色補正はいつでも成功するわけではない
青系の光学ホワイトニング成分として研究されてきたBlue Covarineでも、結果は一枚岩ではありません。
肯定的な臨床研究がある一方、通常歯磨剤との差を確認できなかったRCTもあります。
2025年には66人を対象とした無作為化二重盲検4期クロスオーバー試験が行われ、Blue Covarine配合歯磨剤は、シリカ系対照歯磨剤と比較して一回使用直後の白さ指数WIOを改善し、黄色度YIOを低下させました。高濃度Blue Covarine製剤では変化がより大きい結果でした。[7]
一方、この研究の著者はUnilever Oral Care所属です。
つまり、色素の種類だけでなく、濃度・配合量・基剤・歯面への吸着・すすぎ条件などで結果が変わる可能性があります。
2026年のメタ解析は「2026年までの研究全部」ではない
2026年にはBlue Covarine歯磨剤についてsystematic review / meta-analysisも発表されました。
全体として光学的な白さ改善を支持する方向で、RCT統合ではL*よりもb*の変化が目立つ結果でした。一方、b*の解析には大きな研究間異質性もありました。[8]
さらに重要なのが検索日です。
論文の掲載は2026年ですが、文献検索は2023年3月25日まで。[8]
そのため、2024年のV34 RCTや2025年のBlue Covarine 66人RCTは含まれていません。
発表年が最新でも、文献検索範囲まで最新とは限らない。
これはsystematic reviewを読むときに意外と大切です。
「VITAで1.9段階」はΔE 1.9ではない
後ほどメーカーの「1週間で1.4段階、2週間で1.9段階」という数字が出てきます。
ここで先に注意しておきたいのが、シェードガイドの「段階」の意味です。
VITA Classicalなどのシェードタブは、数学の物差しのような完全な等間隔尺度ではありません。視覚的シェード評価自体にも観察者や照明条件によるばらつきがあります。[9]
したがって、
- 1.9段階=色差ΔE 1.9
- 1.9段階=1段階の1.9倍の変化
- 1.9段階=歯が1.9倍白くなった
のどれでもありません。
第5段階 SHMPは本当にステインを落とす?
ここで紫色の話はいったん横に置きます。
次の主役はSHMP(メタリン酸ナトリウム)です。
日本版では清掃助剤として表示されています。
SHMPは研磨剤ではなく、歯面の化学へ働く
SHMPはポリリン酸系の物質です。
ハイドロキシアパタイト、カルシウム、歯面の獲得被膜などと相互作用します。
基礎研究では、SHMPによる表面処理後に茶由来の着色色素の吸着が減ったり、すでに吸着した色素が脱離しやすくなったりすることが報告されています。
つまり、
- 今付いている外因性ステインを取りやすくする
- 新しい着色を付きにくくする
という二方向の作用が考えられます。
7%SHMPのヒトRCTでは6週間後に差が出た
SHMP研究でよく引用されるのが、0.243%NaF+7%SHMP歯磨剤と0.243%NaF対照歯磨剤を比較した無作為化試験です。[10]
6週間後、SHMP群では対照群と比較して、
- composite stain:29%低下
- stain intensity:24%低下
- stain area:25%低下
が報告されました。[10]

したがって、SHMPという成分には、人で外因性ステインを減らしたRCTが存在するとは言えます。
一方、この研究の著者はP&G Health Care Research Center所属でした。[10]
また、研究製品は7%SHMP。
日本版EUTHYMOLのSHMP濃度は公開情報から確認できません。
ですから、
「EUTHYMOLを6週間使えばステインが29%減る」
とは言えません。
2025年の独立研究では5%HMPが通常歯磨剤を上回らなかった
ここで重要なのが、メーカー外の研究です。
2025年に大学研究グループが、同一系統の実験歯磨剤へ5%HMP、5%sodium pyrophosphate、linear polyphosphate、chitosanなどを配合し、外因性着色の予防・除去を比較しました。[11]
その結果、5%HMP歯磨剤は通常歯磨剤を明確には上回らず、通常歯磨剤やブラッシングなしの対照より明確に良好だったのは5%sodium pyrophosphate群でした。[11]
つまり、
「SHMPを入れれば、自動的に普通の歯磨剤より強いホワイトニング効果が出る」
わけではありません。
SHMPは多ければ多いほど良いわけでもない
フッ素との組み合わせを調べた研究でも、興味深い結果があります。
12人のdouble-blind crossover in situ研究では、1100ppmF+1%HMPは1100ppmF単独よりエナメル質の脱灰を抑えました。[12]
ところが0.5%、1%、2%HMPを比較したin vitro研究では、1%HMPが最も良好だった一方、2%では一部の指標で結果が悪化しました。[13]
つまり、SHMPは単純な「濃度が高いほど強い」という成分でもなさそうです。
最終的な性能は、SHMP濃度、シリカ、pH、その他のリン酸塩、唾液、使用時間などを含む処方全体で決まります。
第6段階 シリカで歯を削って白くしている?
次は無水ケイ酸、シリカです。
日本版では研磨剤として表示されています。
「研磨剤」と聞くと、歯を削って白くしているような印象を受けるかもしれません。
でも、シリカ配合=高研磨とは限りません。
同じシリカでも性能は大きく違う
シリカの研磨・清掃特性は、粒径、形状、量、表面構造、凝集状態、製造法、ほかの成分などで変わります。
したがって、成分表示に「シリカ」「無水ケイ酸」と書いてあるだけでは、その製品の研磨性を決めることはできません。
RDAとPCRは別の指標
歯磨剤の研磨性を考えるときに出てくるのがRDA(Relative Dentin Abrasivity)です。
これは象牙質に対する相対研磨性。
一方、外因性ステインの清掃性能を見る代表的な指標の一つがPCR(Pellicle Cleaning Ratio)です。
市販26製品を比較したin vitro研究では、RDAは36~269、PCRは25~138まで大きくばらつきました。高PCR製品でRDAが高い傾向はあるものの、両者の関係は単純ではありませんでした。[14]

つまり、
「ステインを2倍落とせる歯磨剤なら、歯も2倍削る」
という読み方はできません。
EUTHYMOLのRDA・REA・PCRは?
今回、日本版WPPそのものについて、
- RDA
- REA
- PCR
の製品固有公開値は確認できませんでした。
したがって、
「高研磨だから歯を削りすぎる製品」
とも、
「低研磨だから摩耗の心配がない製品」
とも、現段階では断定できません。
ホワイトニング歯磨剤というカテゴリー全体ではどう?
2025年のupdated systematic review / meta-analysisでは、14件のRCTが採用され、ホワイトニング歯磨剤は通常歯磨剤より外因性ステインの面積・強度を減らす方向の結果でした。[15]
一方で、研究間異質性はI²=91%と非常に大きいものでした。[15]
つまり、
「ホワイトニング歯磨剤というカテゴリーには外因性ステインを減らす根拠がある」
とは言いやすい一方、
「どの商品でも同じくらい白くなる」
とは言えません。
なお、このレビューで示される「94.45%」などの数値を、「歯の着色が94.45%減った」という意味で読むのも適切ではありません。研究・比較の結果を集計した指標であり、一人の歯の着色減少率ではありません。
第7段階 紫歯磨きだけど、フッ素も入っている
パッケージを見るとPurple、Whitening、Correctorが目に入ります。
でも今回、現物パッケージの有効成分欄まで確認し、日本版WPPにフッ化ナトリウムが配合されていることを確認しました。
さらに効能・効果には「むし歯の発生及び進行の予防」も記載されています。したがって、日本版ホワイトパープルは「ホワイトニング・口臭ケアだけの歯磨剤」ではなく、むし歯予防効能も持つ薬用歯磨剤です。
つまり、ホワイトニング系歯磨剤でありながら、むし歯予防を目的とした薬用歯磨剤でもあります。
韓国版は1000ppmF。でも日本版は別に考える
韓国版Purple Correctorでは、メーカーが1000ppmFと公表しています。
一方、日本版は日本向けの別エディションです。
今回確認した日本公式の公開情報では、日本版WPPの正確なフッ素濃度は確認できませんでした。
したがって、
「韓国版が1000ppmFだから、日本版も1000ppmF」
とはしません。
日本版にNaFが有効成分として入っていることまでは確認できる。
正確なppm値は未確認。
ここで止めます。
現在、日本では6歳以上に1400~1500ppmFが推奨
日本小児歯科学会・日本口腔衛生学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会の4学会合同提言では、6歳から成人・高齢者には1400~1500ppmF、歯ブラシ全体1.5~2cm程度を使用する方法が推奨されています。[16]
以前の「ハイドロキシアパタイト歯磨剤はフッ素の代わりになる?」や、「クリンプロF1450は“全部入り”だから強い?」でも、このフッ素濃度について詳しく見てきました。
今回の日本版EUTHYMOLでは正確なppmを確定できないので、現在の1400~1500ppmF推奨と直接比較する最終判断は保留します。

SHMPはフッ素を邪魔する?
SHMPはカルシウムや歯面と相互作用します。
すると「フッ素と一緒に入れて問題ないの?」という疑問も出ます。
1100ppmF+1%HMPを用いたin situ研究では、1100ppmF単独よりエナメル質脱灰が抑えられました。[12]
一方、HMP 2%で一部指標が悪化したin vitro研究もあります。[13]
したがって、
- SHMP入りだからフッ素が働かない
- SHMP入りなら低いフッ素濃度でも1450ppmF以上に強くなる
のどちらも言えません。
第8段階 CPCとビタミンE――白さ以外はどう?
次は口臭・歯肉関連です。
日本版にはCPC=塩化セチルピリジニウムが有効成分として配合されています。
厚生労働省の薬用歯みがき類承認基準でも、CPCは薬用歯磨剤の有効成分として収載されています。[5]
CPCそのものには人でのエビデンスがある
CPC洗口液については、プラーク・歯肉炎を対象としたRCTやsystematic review / meta-analysisがあります。
2021年のsystematic reviewでは8研究が採用され、ブラッシングへCPC洗口液を追加した群で、placebo洗口液よりプラーク指数・歯肉炎指数の改善が大きい結果でした。一方、異質性はプラークでI²=89%、歯肉炎でI²=98%と大きいものでした。[17]
2025年のCPCとchlorhexidineを比較したsystematic reviewでは、ブラッシングを行わない実験モデルではCHXがプラーク抑制でやや優れましたが、通常のブラッシングを行う条件ではプラーク・歯肉炎について両者の明確な差は確認されませんでした。また、着色はCHXの方が強い傾向でした。[18]
口臭についても、70人のRCTでは通常歯磨剤のみと、通常歯磨剤+0.075%CPC洗口液を比較し、CPC群でVSCや官能評価が改善しています。[19]
ですから、CPCという成分に臨床研究がないわけではありません。
ただし、多くは「洗口液」の研究
ここがEUTHYMOLを考えるうえで重要です。
CPCの強い臨床データの中心はmouthrinseです。
EUTHYMOLは歯磨剤。
シリカ、SHMP、発泡剤、粘度調整剤、香味剤など、多数の成分が同じ製剤中に存在します。
そのため、CPC洗口液の数字をEUTHYMOLの完成品へそのまま移すことはできません。
CPCの隣にSLSがいる
成分表を見ていて、かなり興味深かったのがここです。
CPCは陽イオン性。
SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)は陰イオン性。
日本版EUTHYMOLには、CPC、SLS、さらに両性界面活性剤であるヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが同居しています。
CPC配合歯磨剤に関する製剤特許中のin vitro試験では、特定の濃度条件で、CPC単独を100%としたときのモデル歯面への吸着量が、SLS存在下では4.2%、cocamidopropyl betaine存在下では70.4%と報告されています。[20]

ただし、これは特許中の特定濃度・特定試験系のin vitroデータです。
日本版EUTHYMOLそのものを測った結果ではありません。
EUTHYMOLのCPC濃度、SLS濃度、free / bioavailable CPC量も今回確認できません。
したがって、
「SLSが入っているからEUTHYMOLのCPCは無効」
とは言えません。
ここから分かるのは、CPCは“入っているか”だけでなく、完成した製剤の中でどの程度利用可能な形になっているかも重要ということです。
メーカーの「12時間口臭抑制」は?
韓国LGのPurple Corrector公式資料には、12時間口臭抑制という訴求もあります。[21]
しかし同じページで示される「2.9倍」や「1.4段階・1.9段階」と比べ、12時間口臭抑制については、Purple Corrector固有の評価人数・測定対象・対照群・VSC測定条件などの詳細を今回の公開資料から十分確認できませんでした。
別のLG製品には口臭について人で測定した資料がありますが、別製品の結果をPurple Correctorへ移すことはしません。
したがって、
「メーカーは12時間口臭抑制を訴求している。しかし、その主張を支えるPurple Corrector固有の公開試験詳細までは今回確認できなかった」
と整理します。
酢酸DL-α-トコフェロールはどう?
日本版のもう一つの有効成分が酢酸DL-α-トコフェロールです。
日本の薬用歯磨剤承認基準にも収載されているビタミンE誘導体です。[5]
ただ、現代的な単独臨床エビデンスを追うとCPCほど厚くありません。
1991年の48人を対象としたdouble-blind studyでは、5%vitamin E gelはplaceboと比較してプラーク・歯肉炎を明確に改善せず、0.12%chlorhexidineではプラーク低下が確認されました。[22]
ただし、この研究は日本版EUTHYMOLに使われている酢酸DL-α-トコフェロールそのものの歯磨剤試験ではありません。
したがって、これをもって「EUTHYMOLのビタミンE成分は効かない」とも言えません。
言えるのは、日本で薬用歯磨剤の有効成分として使われていることと、同一成分・同一処方による現代的な製品固有RCTが豊富であることは別ということです。
第9段階 メーカーの「1回2.9倍」を元資料まで追う
ここが今回の調査で一番面白かったところです。
韓国LGのPurple Corrector関連資料には、
- 1回2.9倍トーンアップ
- 1週間1.4段階
- 2週間1.9段階
- 24時間着色保護
- 12時間口臭抑制
- 歯面強化
など、かなり印象的な数字・表現が並んでいます。[21]
でも数字を見るときに一番大切なのは、
「何を、何と比べた数字なのか」
です。

「2.9倍」は、人の歯が2.9倍白くなったという意味ではない
「1回2.9倍」の元になっている資料を追うと、2023年のin vitro評価へ行き着きます。
ウシ歯へコーヒー溶液を作用させ、その後に歯磨剤溶液で処理し、SHMPを含まない自社対照歯磨剤と比較したものです。
その結果が、対照群比2.95倍の黄変度低下。[23]
つまり、
「人がEUTHYMOLを一回使うと、歯が2.9倍白くなる」
という臨床結果ではありません。
正確には、
「コーヒーで着色させたウシ歯のin vitroモデルで、対照歯磨剤より黄変度低下が2.95倍大きかった」
という結果です。
1週間1.4段階、2週間1.9段階は人で評価している
こちらは人での評価です。
LGのPurple Corrector公式資料では、Korean Association for Oral Healthによる評価として、VITA shade 16段階を使い、使用前と比較して、
- 1週間:1.4段階
- 2週間:1.9段階
白い方向へ変化したと説明されています。
評価期間は2019年7~12月、評価人数は29人と記載されています。[21]
ここだけ見ると、「EUTHYMOL Purple Correctorを29人で試した臨床試験」があるように見えます。
ところが時系列を確認すると、大きな問題があります。
2019年の試験は、現在のPurple Corrector発売より前
LGは、2023年のESG資料で、SHMPを使った非過酸化物系ホワイトニング技術をCliden、Euthymol、Bamboo Saltなど複数ブランドへ展開していることを説明しています。[24]
さらにPurple系技術の2.95倍黄変度低下などが発表されたのは2023年。
その後、Purple系製品が各ブランドへ展開されています。
つまり、2019年の臨床評価は、現在の日本版WPPそのものを試した研究ではありません。

この時間関係を見ると、2019年データは、現在のEUTHYMOL Purple Corrector完成品そのものというより、LGが以前から開発してきたSHMP+高洗浄シリカを中心とした共通ホワイトニング技術の評価として読む方が自然です。
さらに「29人」と「59人」がある
ここでメーカー公式資料同士にも違いがありました。
Purple CorrectorのLG顧客センター資料では、同じ2019年7~12月のVITA shade評価について29人と書かれています。[21]
一方、2023年にLGがCliden SHMP歯磨剤について公表した公式プレスリリースでは、同じ評価機関、同じ2019年7~12月、同じ1週間1.4段階・2週間1.9段階という評価について、59人と記載されています。[25]
考えられる一つの可能性は、
試験群29人+対照群30人=総参加者59人
という構造です。
数字としてはかなり自然です。
ただし、これは今回確認した公開資料だけでは証明できません。
原報や完全な試験プロトコルへ到達できていないため、
「29人は試験群、59人は総参加者数だった可能性があるが、確認できない」
というところで止めます。
「2週間で9.6倍」も、歯が9.6倍白くなる意味ではない
海外LGのEUTHYMOLページでは、2019年系のデータを使って対照群比のホワイトニング効果を訴求している例もあります。
ここでも倍率の読み方には注意が必要です。
試験群の変化量を対照群の変化量で割れば、対照群の変化が小さいほど倍率は大きくなります。
したがって、
「9.6倍=自分の歯の白さが9.6倍になる」
ではありません。
本当に臨床的重要性を判断するなら、試験群と対照群それぞれの絶対変化量、ばらつき、信頼区間、統計解析などまで見たいところです。
「24時間着色保護」と飲料別5.5倍・8.0倍・8.9倍は別に考える
LG資料には、24時間着色保護という訴求があります。
この根拠として示されるのは、2023年の韓国歯科衛生学会発表によるin vitro評価です。[23]
一方、2023年のCliden公式資料には、人工歯粉末へ歯磨剤と着色物質を作用させたin vitro評価として、
- コーヒー:5.5倍
- 茶:8.0倍
- ワイン:8.9倍
という対照群比の数値が記載されています。[25]
これは、
「朝EUTHYMOLで磨けば、その後24時間コーヒーやワインを飲んでも8.9倍汚れにくいことを、人で証明した」
という意味ではありません。
24時間という持続性に関するin vitro評価と、飲料別の着色抑制を比較した別のin vitro評価は分けて読みます。
「歯を2倍強化」も、人の歯が2倍丈夫になったという意味ではない
LGのPurple系技術資料には、ウシ歯を使い、再石灰化による硬度変化を対照と比較したin vitro評価もあります。[23]
したがって、これを、
「人の弱った歯が2倍頑丈になった」
と置き換えるのは適切ではありません。
特許5件は実在する。でも「5件の臨床試験」ではない
LGはSHMP・シリカなどを利用したホワイトニング処方について複数の特許技術を持っています。
しかし、特許取得と臨床効果の証明は同じではありません。
特許は知的財産としての新規性や技術構成などを扱うもの。
RCTは人で有効性や安全性を検証するもの。
目的が違います。
関連特許には20人の成人男性喫煙者へ試験処方を使わせた使用評価もありますが、評価は分光測色計やLobene stain indexではなく、本人による主観的な5段階評価でした。[26]
したがって、
「特許に20人試験がある=客観的な20人RCTでホワイトニング効果を証明した」
とは言えません。
第10段階 結局、日本版EUTHYMOLは何をしている?
ここまでを全部つなげます。
EUTHYMOLホワイトパープルは、一つの作用だけで「白くする」歯磨剤ではありません。
使用直後:赤227+青1による光学的色補正の可能性
Red 33+Blue 1という同じ組み合わせの別製品では、人RCTで短時間の黄み低下が確認されています。[6]
日本版EUTHYMOLでも色素が歯面・獲得被膜へ適切に残れば、黄みを目立ちにくくする可能性はあります。
ただし、日本版そのものの色素濃度、赤青比、b*変化、持続時間は確認できません。
ブラッシング中:シリカによる物理的清掃
シリカは外因性ステインを物理的に清掃する側。
しかし日本版のRDA・REA・PCRは未確認です。
反復使用:SHMP+シリカによる外因性ステイン制御
SHMPには人RCTがあります。[10]
一方、独立in vitro研究では5%HMPが通常歯磨剤を明確には上回らない結果もあります。[11]
したがって、成分に根拠はあっても、日本版の製品固有効果量までは決められません。
毎日のむし歯予防:NaF
日本版にはフッ化ナトリウムが有効成分として入っています。
ただし日本版の正確なppm値は今回確認できませんでした。
口臭・プラーク関連:CPC
CPCそのものにはRCTやsystematic reviewがあります。[17][19]
一方、洗口液のデータを歯磨剤へそのまま当てはめることはできず、日本版のCPC濃度やbioavailabilityも未確認です。
「白くなった!」だけでは、何が起きたのか分からない
例えばEUTHYMOLを使った直後に鏡を見て、
「あ、白くなった」
と感じたとします。
その変化が、
- 紫色による光学的な見え方の変化なのか
- シリカによって表面着色が落ちたのか
- SHMPがステイン除去を助けたのか
- 複数の作用が同時に起きたのか
鏡だけでは分かりません。
そして、そのいずれも、過酸化物によって歯質内部を漂白したこととは別です。
ここが今回、最も伝えたいところです。
もし院内で実際に観察するなら?
ここまで調べると、歯科衛生士としては実際に測ってみたくなります。
もし使用観察をするなら、
- 使用前
- 使用直後
- 30分
- 60分
- 2時間
- 4時間
くらいで同じ歯を追ってみると面白そうです。
ただし条件を揃えます。
- 照明
- 撮影距離
- 露出
- ホワイトバランス
- 対象歯
- 歯面乾燥時間
などをできるだけ統一します。
可能ならVITA shadeだけでなく、分光測色計などでL*・a*・b*を記録したいところです。
特に注目したいのはb*です。
光学的Color Correctionが主体なら、L*の変化が小さくても、b*だけが一時的に下がる可能性があります。
追加ですすぐとどうなる?
もう一つ面白そうなのが、
通常使用後に測定
↓
追加ですすぐ
↓
再測定
という方法です。
もし使用直後の変化の多くが色素の一時的な残留によるなら、追加すすぎによってb*が元へ近づく可能性があります。
一方、シリカやSHMPによって実際に外因性ステインが除去された部分は、水ですすいだからといって元の着色へ戻るわけではありません。
もちろん、一人で行う観察はN=1です。
それだけで製品効果を証明することはできません。
でも、「光学補正」と「着色除去」は同じではないということを考える観察としては、かなり面白そうです。
今回、比較的しっかり言えること
- 日本版EUTHYMOLホワイトパープルは医薬部外品である。
- フッ化ナトリウム、CPC、酢酸DL-α-トコフェロールが有効成分として配合されている。
- SHMPとシリカが配合されている。
- 赤色227号+青色1号を使用した紫色の歯磨剤である。
- Red 33+Blue 1という同じ色素組み合わせを用いた別製品では、人RCTがある。
- SHMPには外因性ステインを対象とした人RCTがある。
- ホワイトニング歯磨剤というカテゴリー全体では、外因性ステインを減らすsystematic review / meta-analysisがある。
- フッ化物にはむし歯予防に関する豊富なエビデンスがある。
- CPCにはプラーク・歯肉炎・口臭を対象とした人研究がある。
一方、今回の公開資料では確定できなかったこと

- 日本版WPPの正確なフッ素濃度
- SHMP濃度
- CPC濃度
- free / bioavailable CPC
- 赤色227号の濃度
- 青色1号の濃度
- 赤色227号と青色1号の配合比率
- RDA
- REA
- PCR
- 製品pH
- 日本版使用後のL*・a*・b*変化
- WIDなどの白さ指数変化
- 日本版での光学補正の持続時間
- 日本版WPPそのものを使った査読付きRCT
- 2019年人評価についての「29人」と「59人」の公式資料差の完全な理由
- Purple Correctorで訴求される「12時間口臭抑制」の詳細な製品固有試験条件
分からないものを、似た製品や別の国の数字で埋めない。
これも製品を科学的に検証するときには大切だと思います。
朝に思っていた「紫の歯磨き粉」とは、ずいぶん違った
朝、このチューブを見たときには、
「黄色の反対色が紫だから、黄ばみを紫で打ち消す歯磨き粉なんだろうな」
くらいに思っていました。
調べ終わってみると、
CIELAB。
b*。
獲得被膜。
Red 33。
Blue 1。
SHMP。
ハイドロキシアパタイト。
シリカ。
RDA。
PCR。
フッ化物。
CPC。
SLS。
界面活性剤の電荷。
医薬部外品制度。
ウシ歯。
特許。
そして、メーカー試験と現在の市販品の製品同一性。
一本の歯磨き粉から、ずいぶん遠くまで来てしまいました。

でも、歯磨剤を本当に調べようと思ったら、この「遠くまで行く」作業が必要なのかもしれません。
EUTHYMOLホワイトパープルを一文で整理するなら
EUTHYMOLホワイトパープルは、紫色素による一時的な光学補正、SHMPによる化学的な外因性ステイン制御、シリカによる機械的清掃、NaFによるむし歯予防、CPCによる口臭・プラーク関連作用を一つに組み合わせた薬用歯磨剤です。
それぞれの成分や作用機序には、科学的に説明できる部分があります。
一方、その根拠の多くは、
- 成分そのものの研究
- 別製品の臨床研究
- メーカーが以前から開発してきた共通技術の試験
に由来します。
現在、日本で販売されているWPPそのものについて、
「何段階白くなる」
「何時間続く」
「何%ステインを減らす」
といった製品固有の効果量を直接示す強い公開臨床データは、今回確認できませんでした。
したがって、
「科学的根拠が何もない紫色歯磨き粉」
でもありません。
一方、
「現在の日本版そのものについて、広告上のすべての効果量が臨床試験で証明済み」
でもありません。
この中間を、できるだけ正確に見る。
それが今回の10段階検証の結論です。
よくある質問
Q1.EUTHYMOLを使えば、歯そのものが白くなりますか?
紫~青系色素によって黄みが一時的に目立ちにくくなる可能性があります。また、SHMPやシリカによって表面の外因性ステインが減り、歯本来の色へ近づくことも考えられます。
ただし、過酸化物を使う歯科ホワイトニングのように、歯質内部を漂白する作用とは分けて考える必要があります。
Q2.EUTHYMOLとHismile V34は同じですか?
同じ製品ではありません。
ただし、EUTHYMOL日本版の赤色227号+青色1号は、V34の60人RCTで使用されたRed 33+Blue 1と同じ色素の組み合わせです。
濃度・比率・基剤・使い方が違うので、V34の効果量をEUTHYMOLへそのまま当てはめることはできません。
Q3.紫色は歯に残るのですか?
光学的なColor Correctionが起こる場合、青~紫系色素が歯面や獲得被膜へ一時的に取り込まれ、反射光を変えることが一つの機序として考えられます。
ただし、日本版EUTHYMOLで実際にどのくらい残り、何分持続するかを示す製品固有データは今回確認できませんでした。
Q4.研磨剤で歯が削れませんか?
日本版には無水ケイ酸が研磨剤として入っています。
ただし、シリカ配合=高研磨ではありません。
日本版WPPのRDA・REA・PCRは今回確認できなかったため、高研磨とも低研磨とも断定できません。
歯肉退縮で根面象牙質が露出している方や酸蝕がある方では、歯磨剤だけでなくブラッシング圧や磨き方も含めて考える必要があります。
Q5.フッ素は入っていますか?
はい。日本版WPPには有効成分としてフッ化ナトリウムが入っています。
ただし、日本版の正確なppm値は今回確認できませんでした。
韓国版Purple Correctorには1000ppmFというメーカー情報がありますが、日本版は日本向けの別エディションなので、その数値を日本版の濃度として扱っていません。
Q6.口臭にも使えますか?
日本版にはCPCが有効成分として配合されています。
CPC自体には口臭、プラーク、歯肉炎について臨床研究があります。
一方、韓国Purple Correctorで訴求されている「12時間口臭抑制」については、Purple Corrector固有の公開試験の詳細条件までは今回確認できませんでした。
Q7.本当に「2.9倍白くなる」のですか?
この2.9倍は、人がEUTHYMOLを使って歯が2.9倍白くなったという意味ではありません。
コーヒーで着色したウシ歯のin vitro試験で、SHMPを含まない自社対照歯磨剤より黄変度低下が2.95倍大きかったという結果です。
Q8.「2週間で1.9段階」とは、1.9倍白くなることですか?
違います。
メーカー資料には、人を対象にVITA shade guideで評価した2019年の結果があります。
しかしVITAの16段階は完全な等間隔尺度ではありません。
したがって、1.9段階=ΔE 1.9でも、1.9倍白くなるという意味でもありません。
Q9.メーカーの臨床試験があるなら、日本版にもそのまま当てはまりますか?
そのままでは当てはめられません。
今回確認した1.4段階・1.9段階の人評価は2019年に行われたもので、現在の日本版WPPそのものを使った試験ではありません。
さらに日本版は、日本向けに改良された別エディションです。
Q10.歯科医院のホワイトニングの代わりになりますか?
目的と作用が異なります。
歯磨剤は主に外因性ステインを除去したり、黄みを一時的に目立ちにくくしたりする方法です。
歯科医院のホワイトニングでは、過酸化物などを使って歯質内部の色調を変化させます。
「コーヒーや紅茶などの表面着色が主な悩みなのか」「歯そのものの色をさらに明るくしたいのか」で、向いている方法は変わります。
ブランデンタルクリニックではホワイトニングの初回相談は無料ですので、「これは歯磨き粉で対応しやすい着色なのか、ホワイトニングの方が向いているのか」という段階からご相談いただけます。
今日の日誌のまとめ
最初は、
「紫だから黄色を打ち消す歯磨き粉」
だと思っていました。
でも調べてみると、その一本の中には違う時間軸、違う作用機序が重なっていました。
使用直後に起こり得る紫色による光学補正。
ブラッシング中に起こるシリカによる表面清掃。
反復使用で関係し得るSHMPによるステイン制御。
毎日のむし歯予防を担うフッ化ナトリウム。
口臭・プラーク関連のCPC。
そして、それぞれについて、
- 成分レベルの研究
- 別製品での研究
- メーカーの技術試験
- 今、日本で販売されている完成品そのものの研究
を分けて読む必要がありました。
今回、一番印象に残ったのは、やはり、
「成分に科学的根拠がある」ことと、「今手にしている完成品の効果量まで直接証明されている」ことは別
という点です。
パッケージを見る。
成分表を見る。
成分の研究を見る。
メーカーが示した数字の元試験を見る。
そして最後に、
「その研究で調べられたものと、今自分が手に持っている製品は本当に同じなのか」
まで確認する。
歯磨き粉一本でも、そこまで見ていくとずいぶん景色が変わります。
「何となく白くなりそう」から、
何が白さへ寄与し得るのか。
どこまで分かっているのか。
どこから先はまだ分からないのか。
今回、その境界がかなりはっきり見えてきました。
歯磨き粉選びって、本当に奥が深いですね。
参考文献・資料
製品・行政・学会資料
- EUTHYMOL日本公式「ホワイトパープル歯みがき」製品情報。販売名:ユーシモール歯磨(WPP)。
- EUTHYMOL日本公式「About us」。
- EUTHYMOL日本公式FAQ「韓国で販売されているものと同じですか?」。
- EUTHYMOL日本公式 Topics「ユーシモールホワイトパープル歯みがきがLIPSベストコスメ2025受賞!」2026。
- 厚生労働省.薬用歯みがき類製造販売承認基準について.令和3年6月28日 薬生発0628第13号。
光学的Color Correction
- Pascolutti M, et al. Safety and Effectiveness of a Novel Color Corrector Serum for Causing Temporary Changes to Tooth Shade: A Randomized Controlled Clinical Study. 2024. PMCID: PMC11276226.
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- LG H&H. Cliden The Purple Anti-Yellow Toothpaste press release. 2024. Korean Society of Dental Hygiene 2023 in-vitro data cited for 2.95-fold reduction in yellowness and related Purple technology.
- LG H&H. 2023 ESG Report. SHMP whitening technology and multi-brand deployment including Euthymol.
- LG H&H. Cliden The Bone Whitening Premium Toothpaste press release. 2023. VITA shade evaluation: 59 subjects, 2019.07-12; in-vitro coffee/tea/wine staining evaluation.
- US11701313B2. LG H&H oral composition patent relating to silica and phosphate-containing whitening formulations.
※本記事は、公開されている製品情報、行政・学会資料、査読論文、メーカー試験資料、特許資料を確認し、それぞれの証拠レベルと製品同一性を分けて整理したものです。メーカー試験や別製品の研究結果を、現在日本で販売されているユーシモール歯磨(WPP)の効果量として直接置き換えてはいません。
