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Hismile V34は“黄ばみを除去”する?60人RCTと独立研究を11段階で科学検証

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2026年9月20日

Hismile V34は“黄ばみを除去”する?60人RCTと独立研究を11段階で科学検証

(歯科衛生士さんの備忘録)

はじめに

紫色の液体を歯につけると、黄色っぽさが消えて白く見える――。

SNSなどでHismileの「V34 Colour Corrector Serum」を見たことがある方なら、あのかなり鮮やかな紫色を覚えているかもしれません。

私も歯科衛生士として商品説明を読んだときは、最初は「紫と黄色が反対側の色だから、黄色っぽさを目立ちにくくする商品なんだな」くらいに考えていました。

ところが、日本のHismile公式と海外公式を見比べていて、少し手が止まりました。

日本公式には、

  • 「瞬時に歯を真っ白に」
  • 「歯の黄ばみを除去」
  • 「歯の黄ばみを即座に除去」
  • 「どんな色合いの黄ばみも除去」

と、かなり強い表現が並んでいます。

一方、海外のHismile公式では、V34を「歯のためのコンシーラーのように働く」製品と説明し、黄色味を一時的に隠す、効果は歯の表面で起こる、より持続的な方法を求めるなら別シリーズを、という説明になっています。

同じV34です。

でも、

「黄ばみを除去する」

と、

「黄色味を一時的に隠す」

は、歯科的にはかなり違う話です。

そこで今回は、「紫の液を使うと本当に白く見えるの?」だけでは終わらせません。

Hismile V34について、メーカー自身の主張、14成分、色素の配合、特許、発売当初の広告根拠、独立研究、人を対象にした比較試験、系統的レビュー、現在販売されている製品との同一性、利益相反まで、11段階で追いました。

かなり長いです。

ただ、最後まで読むと、V34を単純に「効く」「効かない」の二択で評価すること自体が少しズレていることが見えてきます。

結論を先に少しだけ言うと、V34は何も起こらない紫色の液体ではありません。

人の歯で、機械による色測定まで変化しています。

ただし、調べれば調べるほど見えてきたのは、「歯を漂白するホワイトニング剤」という姿ではなく、海外公式自身が説明している歯用カラーコレクターとしての姿でした。

最初に:「歯が白くなる」を3つに分けます

今回の記事で一番大切なのは、「白くなる」という一言で別々の現象をまとめないことです。

① 白く“見える”

歯そのものの内部の色を変えなくても、表面に色を加えたり、反射する光のバランスを変えたりすれば、見た目を白い方向へ動かすことはできます。

V34が主に狙っているのは、この「見え方」の変化です。

② 歯そのものを漂白する

一般的な歯科のホワイトニングでは、過酸化物などを使い、歯の内部にある色の原因へ作用して歯自体の色調を変えていきます。

これは、紫色を表面に残して見え方を変える方法とは仕組みが違います。

一般的なホワイトニングについては、以前の「ホワイトニングで歯が薄くなり虫歯になる?532人に残っていた45.86%の誤解」でも詳しく取り上げています。

③ ステインや着色そのものを取り除く

コーヒー、紅茶、たばこなどによる外来性の着色を、清掃や研磨などで実際に減らすことです。

つまり、

「黄色く見えにくくする」

と、

「黄色い着色物を取り除く」

は同じではありません。

今回、この3つを最後まで分けて考えます。

① Hismile自身はV34を「何をする商品」と説明している?

まず、科学論文を読む前に検証対象となる主張を固定します。

現在のHismile日本公式では、V34は「瞬時に歯を真っ白に」「歯の黄ばみを除去」「歯の黄ばみを即座に除去」「どんな色合いの黄ばみも除去」などと説明されています。

さらに「強力なV34ホワイトニング技術」とも表現されています。

かなり直接的です。

一方、海外公式の商品説明は少し違います。

V34は過酸化物を使わない歯の明るさ補正製品として説明され、「歯のためのコンシーラーのように働く」「黄色味を一時的に隠す」「知覚上、より白く見える笑顔を作る」「結果は歯の表面で起こる」とされています。

ここは単なる日本語訳のニュアンスだけでは済ませにくい差です。

日本公式の文章を普通に読めば、黄色いものを取っているように感じます。

海外公式では、黄色いもの自体を取り除くのではなく、紫色で一時的に目立ちにくくするという説明に近い。

科学的に検証するなら、この違いを曖昧にしてはいけません。

今回の最初の問いは、

V34は黄ばみを“取っている”のか。

それとも、

黄ばみを“見えにくくしている”のか。

です。

② V34には何が入っていて、それぞれ何をしている?

現在の日本公式に掲載されているV34 Serumの成分は14種類です。

  • グリセリン
  • ソルビトール
  • 水和シリカ
  • キシリトール
  • ポリソルベート80
  • セルロースガム
  • ペパーミントオイル
  • フェノキシエタノール
  • スクラロース
  • ピロリン酸四ナトリウム
  • CI17200/D&C Red No.33
  • CI42090/FD&C Blue No.1
  • エチルヘキシルグリセリン

この中で今回の主役は、D&C Red No.33という赤色色素と、FD&C Blue No.1という青色色素です。

この2色を組み合わせて、V34特有の深い紫色を作っています。

グリセリンや水は製剤の土台、セルロースガムは粘度調整、ポリソルベート80は各成分を均一に分散させる補助などと考えられます。

一方、少し気になる成分もあります。

水和シリカ

一般的な歯磨剤では、種類や粒径、配合量によって研磨・清掃にも関係する成分です。

ただし、V34の2024年論文では主に増粘側の成分として扱われています。

ピロリン酸四ナトリウム

一般的な歯磨剤では、歯石形成を抑える目的などで使われることがあります。

ですから、成分表だけを見て「V34は紫色を表面に乗せているだけ」と断言するのも少し早い。

ところが、この疑問をかなりきれいに切り分けてくれたのが2024年の人を対象にした研究です。

この研究ではV34そのものと、V34とほぼ同じ土台を使い、Red No.33とBlue No.1の2色素だけを抜いた対照製剤を比較しました。

つまり、

「紫色素あり」

「紫色素なし」

です。

水和シリカも、ピロリン酸四ナトリウムも、その他の土台成分も対照製剤側に残っています。

そして色素2種を抜いた対照製剤では、V34群のような大きな色調変化はほとんど起きませんでした。

少なくとも使用直後の色調変化については、主役はかなり高い確率で、

Red No.33+Blue No.1

と考えてよさそうです。

紫と黄色は本当に打ち消し合う?

V34の説明でよく出てくるのが、「紫と黄色は補色だから、黄色を打ち消す」という話です。

入り口としては間違っていません。

ただ、歯の色を研究するときは、もう少し細かく見ます。

代表的なのがL*、a*、b*という色の座標です。

今回は2つだけ分かれば十分です。

  • L*:明るさ。数字が高いほど明るい方向。
  • b*:黄―青方向。数字が高いほど黄色寄り、低くなるほど青方向。

つまり、紫や青系の色素で黄色っぽさを補正するなら、歯自体の明るさL*を大きく上げなくても、b*を下げることで黄色く見えにくくすることができます。

この違いが、後ほど出てくる60人研究で非常に重要になります。

歯面に青系色素を残して白く見せる技術自体には先行研究がある

2008年には、Blue Covarineという青系色素を使った研究があります。

唾液由来の薄い膜を持つ抜去歯へBlue Covarineを作用させると、黄色方向を示すb*が低下し、歯の色見本でも白い方向へ変化しました。

さらにこの研究では、特殊な表面分析を用いて、Blue Covarineそのものが歯面に残っていることまで確認されています。

つまり、色素が歯の表面へ残り、光の見え方を変えるという現象自体は、単なるSNSの理屈ではありません。

ただし、Blue CovarineとV34は別物です。

ここで言えるのは、表面色素による一時的な色補正という考え方そのものには科学的背景がある、というところまでです。

③ 色素濃度・比率・pH・研磨性――実際どれくらい入っている?

ここから少し不思議になります。

2024年のV34論文では、Red No.33とBlue No.1を「高濃度」で含むと説明しています。

では、Red No.33は何%なのか。

Blue No.1は何%なのか。

赤と青を何対何で混ぜているのか。

調べていくと、肝心の数字が出てきません。

メーカーは2種類の水溶性色素を組み合わせて深い紫を作っていると説明していますが、配合比率までは公開していません。

さらに公開資料から確認しにくいものがあります。

  • 1プッシュあたりの量
  • 水和シリカの濃度
  • 水和シリカの粒径
  • 製品の研磨性
  • 定量的な粘度
  • Red No.33とBlue No.1の1回使用量

つまり、V34には何が入っているかはかなり分かる。でも、主作用となる色素をどれだけ入れているかは分からない。

という状態です。

論文に「高濃度」と書かれていても、0.05%なのか0.5%なのか、それ以上なのかが分からなければ、他の研究者が同じ処方を再現することはできません。

pHについては、独立研究で実測された

製品のpHについても、Hismile公式や2024年の人研究では具体的な数値を確認できませんでした。

一方、2026年の独立研究では、使用したカラーコレクター各製品のpHも実際に測定されています。

その研究では、酸性を示したのは比較対象となった別製品で、HiSmile V34は酸性製剤ではありませんでした。

少なくとも、その研究で使用されたV34について、「酸でエナメル質を溶かして白く見せている」ような結果ではなかったことになります。

ただし、これはその研究で使用された製品を測定した結果です。

すべての製造ロットが常に同じpHであることまで保証するデータではありません。

現行公式も「30秒で作用」と訴求。でも研究と市販使用は同じ条件ではない

現在のHismile海外公式商品ページでは、V34を「30秒で作用する毎日のブライトナー」として訴求しています。

2024年の人研究でV34を歯へ作用させた時間も30秒です。

したがって、公式が前面に出している効果発現時間と研究の塗布時間は、数字だけ見れば同じ30秒です。

ただし、公式の「30秒」という訴求だけから、市販時の具体的な塗布量、塗布範囲、塗り方まで研究と同一だとは言えません。

2024年研究では、

  • 2プッシュのV34
  • 綿棒
  • 上顎中切歯2本だけ
  • 研究スタッフが塗布
  • 30秒

という条件でした。

同じ30秒でも、一般の方が自分で広い範囲へ使う場合と、研究スタッフが2プッシュを前歯2本へ集中させる場合では、1本の歯へ付く製剤量や塗布状態が同じとは限りません。

研究で平均約3段階動いたからといって、市販使用でも必ず同じ平均3段階になる、とまでは言えません。

④ メーカー基礎データ・特許・広告根拠を追う

紫色で黄色っぽさを補正する考え方は、Hismileが突然発明したものではありません。

1998年を優先日とする米国特許には、黄色っぽい歯へ紫~青紫系の補色を用いることで、歯をより白く見せる考え方がすでに記載されています。

紫色と青色の色素を混ぜ、綿棒で直接歯へ塗布する実施例まであります。

つまり、「黄色い歯へ紫系の色を加え、白く見せる」という基本発想自体は、V34より20年以上前から存在していました。

さらに2003年を優先日とする別の特許には、候補色素としてD&C Red No.33やFD&C Blue No.1も登場します。

もちろん、特許に書いてある=臨床効果が証明されたではありません。

特許は技術のアイデアや権利範囲を示す資料です。

ただ、補色を使って歯を白く見せる原理そのものがHismileの世界初発明ではないことは分かります。

では発売当初、V34そのものにはどれくらい根拠があった?

英国の広告審査機関ASAは、2023年に出されたHismile V34のInstagramやTikTok広告を審査しています。

広告では、「30秒でステインを打ち消す」という趣旨の表現や、黄色い着色が塗った瞬間に消えるように見える映像などが使われていました。

ASAはHismileに、それを裏付ける科学的根拠を求めました。

Hismileは複数の資料を提出しています。

ただし、資料の本数だけを見て「独立した研究が何本もあった」と考えるのは危険でした。

ASAによれば、提出された複数資料には、同じ研究者による論文、スライド、追加データなどが含まれていました。

さらにHismileが「独立研究」と説明した研究者について、ASAはHismileのScientific Advisorであり、製品開発にも関与していたと理解し、Hismileが説明した意味での独立研究とは認めませんでした。

そのV34固有の小規模試験では、研究者本人への2回と、もう1人への1回という程度の使用でした。

そしてASAは、V34広告の裏付けとして十分ではないと判断しています。

ただし重要なのは、ASAは紫系の色補正という原理自体を否定したわけではないことです。

紫系の色によって黄色い見た目を一時的に減らすという考え方は認めつつ、広告で受けるほどの効果・対象・持続性を支える証拠が不足していると判断しました。

そして2024年。

ここでV34そのものを60人に使った、かなり本格的な比較試験が登場します。

⑤ メーカーを離れた独立研究ではどうなった?

人の研究へ行く前に、Hismileと直接利害関係のない研究グループがV34を調べるとどうなるかを見ます。

2026年8月、Journal of DentistryにV34を含むカラーコレクターの独立研究が発表されました。

対象は牛のエナメル質・象牙質試料です。

コーヒー、紅茶、人工唾液で条件を分け、HiSmile V34、別のカラーコレクター、15%カルバミドペルオキシド、無処置群などを比較しました。

結果はかなり重要です。

HiSmile群は、着色条件や評価時点にかかわらず、無処置群との間に有意な差を示しませんでした。

歯科用の白色度指数でも、意味のある白さの増加は認められませんでした。

一方、カルバミドペルオキシド群では、時間経過とともに白色度が大きく変化しました。

これはV34にとって厳しい結果です。

ただし、「これで2024年の人研究は間違いだった」と結論するのも早すぎます。

牛歯試料は、人の口の中そのものではないからです。

色が変わったことと、白くなったことも同じではない

この2026年研究では、色差を表すΔE00と、歯が白い方向へ動いたかを見る歯科用白色度指数を分けて評価しています。

これはとても大切です。

色が紫方向へ変わっても、「元の色から変化した」ので色差は大きくできます。

でも、色が変わった=歯が白くなったではありません。

今回、V34では一部条件で色差が出ても、白色度が一貫して上昇したわけではありませんでした。

この結果も、V34が歯そのものを漂白しているという説明より、表面の色を一時的に動かしているという説明に合いやすい結果です。

コンポジットでは限定的、CAD/CAM材料では一部に変化

2025年には、コーヒーで着色した単一色調のコンポジットレジンへV34を使った独立研究もあります。

この研究では、V34による色変化は通常の歯磨剤と大きく変わらず、研究者は紫色セラムの効果を限定的と評価しています。

一方、2026年のCAD/CAM材料を使った研究では、一部材料でV34処理後に色や白色度が回復する方向への変化が報告されています。

つまり独立研究をまとめても、「何に使っても効く」でも、「何に使っても全く効かない」でもありません。

天然歯なのか、コンポジットレジンなのか、セラミック系材料なのか、表面に唾液由来の膜があるのか。

V34は、何の表面に使うかの影響をかなり受ける製品なのかもしれません。

⑥ 口の中ではどうなる?獲得被膜と色素の「残り方」

ここで2024年のV34論文が説明している仕組みを見ます。

論文では、Red No.33とBlue No.1が歯表面の獲得被膜に取り込まれ、その色素が残っている間に一時的な色補正を起こす、という機序が説明されています。

獲得被膜とは、歯の表面に唾液由来の成分から作られる非常に薄い膜です。

実際の口の中では、エナメル質がずっと裸で存在しているわけではありません。

ここを考えると、人の口では色調変化が出た一方で、研磨した牛歯の口腔外実験では無処置群との差が出なかったという結果が、必ずしも完全な矛盾とは限りません。

もしV34が獲得被膜への色素保持に大きく依存するなら、人の口の中だからこそ出やすい効果がある可能性はあります。

ただし「獲得被膜に結合した」はV34で直接測ったわけではない

ここはかなり重要です。

2024年研究で実際に測ったのは、歯の色見本と、機械で測った歯の色です。

V34使用後に、Red No.33が歯表面に何µg残ったのか。

Blue No.1が何µg残ったのか。

30分後に何%残ったのか。

60分後に何%残ったのか。

そこまでは測定していません。

つまり、色素2種が色調変化に必要だったことにはかなり強い証拠があります。

でも、その色素がどこへ、どれだけ、何分残ったのかは直接証明されていません。

水を飲んだら?コーヒーを飲んだら?

これもまだよく分かっていません。

2024年研究では、V34使用後60分まで色調を追っています。

ただし、その60分間、参加者は研究施設に残り、飲食禁止・喫煙禁止でした。

つまり、何も飲食しない状態なら60分後まで色調変化が残ったことは分かります。

でも、水を飲んだ後、コーヒーを飲んだ後、食事をした後は調べていません。

逆に、60分で効果が切れるとも言えません。

研究が60分で終わっただけです。

赤と青は同じ速さで落ちる?

これもかなり見てみたいところです。

V34の紫は、Red No.33とBlue No.1の混合です。

もし赤色素と青色素で歯面への残り方が違えば、時間とともに紫の色味そのものが少しずつ変化する可能性があります。

ただし、V34で実際に赤と青の脱離速度が違うというデータはありません。

だからこそ、次に欲しい研究は、歯の色だけでなくRed No.33とBlue No.1の残存量を別々に時間ごとに測る研究です。

⑦ 60人の人研究を徹底解剖――本当に約3段階動いた

ここがV34にとって現在いちばん強い証拠です。

2024年、V34そのものを人に使ったランダム化比較試験が発表されました。

参加者は60人。

30人がV34。

30人が、V34とほぼ同じ土台からRed No.33とBlue No.1だけを抜いた対照製剤です。

歯の色を評価する人には、どちらの製剤を使ったか分からないようにしています。

さらに、肉眼の色見本だけではなく、歯の色を測る機械も使っています。

この研究は企業資金ですが、比較試験として良いところもかなりあります。

色見本では、使用直後に平均3.07段階

VITA Bleachedguideという歯の色見本で評価すると、V34群は開始時から、

  • 使用直後:3.07段階
  • 30分後:3.10段階
  • 60分後:2.90段階

白い方向へ動きました。

一方、色素2種を抜いた対照製剤は、

  • 直後:0.03段階
  • 30分後:0
  • 60分後:0

で、ほとんど変わりませんでした。

これはかなり明確な差です。

ですから、「V34は紫色を塗っているだけで、人の歯では何も起きない」とは言えません。

もっと重要なのがL*とb*

機械による測色では、L*、つまり明るさは、

  • 直後:+0.56
  • 30分後:+1.28
  • 60分後:+0.82

でした。

ただし60分のL*変化は、統計的には明確な差とはなりませんでした。

一方、b*、つまり黄―青方向は、

  • 直後:−0.64
  • 30分後:−1.02
  • 60分後:−0.96

と、60分まで有意に低下しています。

ここがかなり面白いところです。

60分後までしっかり残ったのは、「歯自体が明るくなった」という変化より、「黄色方向が弱くなった」という変化でした。

歯の内部を漂白したという説明より、歯表面の色素によって黄色っぽさを一時的に補正したという説明の方が、データの動きに合っています。

「26.2%白くなった」は、そのまま使わない

論文には、色見本上の約3段階変化を26.2%と表現した部分があります。

ただし、これは歯の物理的な白さが26.2%増えたという意味ではありません。

開始時の色見本順位に対して、数値がどれだけ動いたかを割合で示したものです。

患者さん向けには、「色見本上で平均約3段階動いた」とする方が誤解が少ないでしょう。

「平均3段階」をそのまま日常使用へ持っていけない

現行海外公式も「30秒で作用する」と訴求しているため、時間だけを見ると研究と大きくはずれていません。

ただし研究では、2プッシュを上顎中切歯2本だけへ、綿棒で、研究スタッフが塗布しています。

同じ30秒でも、一般の方が自分で広い範囲へ使う場合と、研究スタッフが2プッシュを前歯2本へ集中させる場合では、1本の歯へ付く製剤量や塗布状態が同じとは限りません。

ですから、「研究で平均3.07段階」=「普通に使えば平均3.07段階」とは言えません。

「1時間持つ」とも、「1時間しか持たない」とも言えない

参加者は、V34使用後60分まで飲食・喫煙禁止でした。

ですから、飲食なしの条件では60分まで変化が確認されたとは言えます。

でも、コーヒーを飲んでも60分続く、とは言えません。

逆に、60分で全部消える、とも言えません。

研究が60分で終了しただけです。

論文内には数字の食い違いもある

ここも記録しておきます。

研究では、色見本が2段階以上改善した人を反応者として扱っています。

結果欄では反応者は27人。

つまりV34群30人中27人、90%です。

一方、考察では直後の反応率を29/30=96.7%としています。

同じ論文内で一致しません。

さらにL*についても、表では直後p=0.028、30分p=0.012なのに、本文ではp<0.001と記載されています。

どちらも「V34群で変化があった」という大きな結論までひっくり返すものではありません。

ただし、現在のV34臨床エビデンスの中心となる1本ですから、報告上の不整合として記録しておくべきでしょう。

⑧ 系統的レビューまで上げれば決着する?――と思ったら、むしろ注意点が増えた

2025年には、V34を含む過酸化水素を使わない色補正製品の系統的レビューが発表されました。

一般には、1本の研究だけを見るより、複数研究を系統的に集めたレビューの方が上位の証拠として扱われます。

ところが、このレビューはV34について数字を引用するときにかなり注意が必要です。

採用されたのは6研究。

そのうち人を対象にした比較試験は、実質的に先ほどのV34研究1本です。

残りは口の外で行う研究です。

しかもV34だけをまとめたレビューではありません。

PAP+など、作用の仕組みが異なる製品まで同じ大きなカテゴリーへ入れています。

したがって、「V34について複数の独立した人研究をまとめたレビューがある」わけではありません。

「統合解析しない」と書いたのに、結果では統合値が出てくる

このレビューは概要と方法で、研究間の違いが大きいため、統計的なメタ解析ではなく記述的にまとめると説明しています。

ところが本文では、共通指標を報告した「2つの臨床試験」を固定効果モデルで統合したという記述が出てきます。

一方、同じレビューの研究一覧では、ランダム化比較試験として掲載されているのはPascoluttiらの2024年研究1本です。

この部分は、レビュー内部で整合していません。

さらに、V34の値について原著で報告されていない指標に置き換えられている箇所や、別のHismile研究との引用番号が混線している箇所もあります。

そのため今回の記事では、V34の具体的な数字は系統的レビューから孫引きせず、2024年の原著へ戻ることにしました。

このレビューは関連研究を探す地図としては使えます。

でも、「レビューに書いてあるからV34の数字は確定」とは扱いません。

⑨ 研究で使ったV34と、今日本で売っているV34は本当に同じ?

これは比較的、V34側にとって安心できるところです。

2024年研究に記載されたV34の成分と、現在の日本公式に掲載されている成分を比べると、Red No.33、Blue No.1を含む14成分の顔ぶれは一致します。

つまり、研究したのは現在の商品とは名前だけ同じ別物だったという証拠はありません。

この点では、製品の同一性はかなり高いと考えられます。

でも「成分名が同じ」=「濃度まで完全に同じ」ではない

一方、Red No.33の濃度、Blue No.1の濃度、赤と青の比率、水和シリカの濃度は公開されていません。

研究で使用した製造ロット番号も論文には示されていません。

ですから、成分の種類が同じことはかなり確認できます。

でも、各成分の量まで完全に同じことまでは確認できません。

ここは「同じ製品」と「完全に同じ処方条件」を分けて考える必要があります。

⑩ 利益相反――「外部施設で試験」と「完全に独立した研究」は同じではない

最後に、研究者とメーカーとの関係を見ます。

2024年V34研究の研究費はHismileが負担しています。

著者のうち、Mauro Pascolutti氏とAlex Tomic氏はHismile所属、Laurence J. Walsh氏はHismileのコンサルタントです。

一方、実際の臨床部分には外部試験施設Salus Researchの研究者が参加しています。

つまり、「Hismile社内だけで行われた試験」ではありません。

でも、「Hismileから完全に独立した第三者研究」でもありません。

誰が研究の何を担当した?

論文の著者貢献を見ると、研究構想にはHismile側の著者とWalsh氏、方法設計はSalus Research側、解析・図表作成はWalsh氏、論文初稿もWalsh氏、研究管理はTomic氏が担当しています。

つまりメーカーは、お金だけを出して研究内容には関与しなかったわけではありません。

研究の構想、解析、論文作成まで関係しています。

利益相反としては、しっかり考慮すべき研究です。

だから研究結果は信用できない?

そこまで単純ではありません。

この研究には、色素2種だけを抜いた対照製剤、ランダム化、色の評価者を伏せた設計、外部臨床施設、機械による測色という長所があります。

企業資金だからといって、「観察された色調変化そのものが嘘」とする根拠はありません。

むしろ、短期的な色調変化自体はかなり真面目に受け止めてよい結果だと思います。

ただし、独立した人の追試がまだ欲しい

現在いちばん欲しいのは、Hismileがお金を出さず、Hismile関係者が著者に入らず、事前に試験計画を登録し、現在販売されているV34を実際の使用に近い条件で人の天然歯に使う追試です。

2026年9月19日時点で今回確認した範囲では、Hismileから資金・著者とも独立した第2の人のV34ランダム化比較試験は確認できませんでした。

つまり、V34で最も目立つ「平均約3段階」という人での効果量は、現在も企業関係者を含む1本の研究にかなり依存しています。

現状なら、短期の色補正作用そのものには人での証拠がある。でも、その効果量が一般使用でも同程度かどうかは、独立した人の追試が欲しい。

という評価が妥当でしょう。

安全性はどう見る?

2024年のV34群30人では、1人に軽い一過性の知覚過敏がありました。

大きな口腔粘膜の安全性問題は報告されていません。

ですから、1回使っただけで重大な問題が多発した製品ではありません。

一方、30人、1回、追跡60分です。

毎日数か月使った場合、繰り返し使用した場合、水和シリカを含む製剤による長期的な摩耗、長期間の知覚過敏や粘膜への影響までは分かりません。

以前の「ホワイトニング中に歯ぐきが白くなった!薬剤が触れたサインと対処法・受診目安」でも扱いましたが、短時間に大きな問題が確認されなかったことと、長期反復使用の安全性が確立したことは分けて考える必要があります。

⑪ 結局、V34について何まで言える?

ここまで11段階追ってきました。

最後に、一つずつ判定します。

V34を使うと、歯が白く見えることはある?

はい。

2024年の人を対象にした比較試験では、色素2種を抜いた対照製剤より明確な色調変化が起きています。

機械で測ったb*も変化しています。

ですから、「全部ただの気のせい」は違います。

黄色っぽさを弱く見せる?

かなり支持されています。

人研究では、黄色―青方向を示すb*が低下し、飲食なしの条件では60分後まで変化が残りました。

V34について現在いちばん確実に説明しやすい作用です。

歯そのものを漂白する?

現在のV34研究が示した作用ではありません。

海外Hismile公式自身も、V34の作用は歯表面で起こり、黄色味を一時的に隠すものと説明しています。

「歯の黄ばみを除去」する?

ここは言葉の意味によります。

「黄色く見えにくくする」という意味なら、人研究で支持されています。

でも、「黄色いステインや色素そのものを歯から取り除く」という意味なら、今回確認した人研究ではそこまで証明されていません。

コーヒー色素や紅茶由来の着色が何mg減った、と測定した研究ではありません。

日本公式の「黄ばみを除去」を物理的・化学的な除去という意味で読むなら、現在の科学的証拠より強い表現に見えます。

平均3段階白くなる?

特定の研究条件では、色見本上で平均3.07段階変化しました。

ただし、2プッシュを前歯2本へ、綿棒で、研究スタッフが30秒塗った条件です。

現行海外公式も「30秒で作用する」と訴求していますが、セルフ使用時に1本の歯へ付く量や塗り方まで同じとは限りません。

ですから、普通に使ったすべての人が平均3.07段階という意味ではありません。

1時間持つ?

飲食なしでは60分まで色調変化が確認されています。

水やコーヒーを飲んだ後の1時間ではありません。

1時間しか持たない?

分かりません。

研究が60分で終了しただけです。

毎日使えば、どんどん歯が白くなる?

人での累積的な漂白効果は十分に証明されていません。

日常的に再使用することと、歯質自体が毎日少しずつ漂白されていくことは別の話です。

長期間使っても安全?

まだ十分には分かりません。

単回・短時間の人研究では、大きな安全性問題は確認されていません。

長期反復使用については証拠が足りません。

普通の歯磨き粉の代わりになる?

そういう製品として研究されたわけではありません。

現在の日本公式成分表にフッ化物は表示されていません。

また、V34の臨床試験はむし歯予防やプラーク除去能力を調べた研究ではありません。

少なくとも、色補正用のV34 Serumと、毎日のむし歯予防を目的としたフッ化物配合歯磨剤は同じ役割として考えない方がよいでしょう。

11段階追ったら、「インチキ」ではなく「歯用コンシーラー」に戻ってきた

今回、かなり深く調べました。

最初に日本公式の、「歯の黄ばみを除去」という言葉を見たときには、本当に黄色いものを取っているのか?と思いました。

結論は、もう少し面白いところに着地しました。

V34は、「何の根拠もない紫色の液」ではありません。

人の天然歯を対象に、色素2種を抜いた対照製剤と比較した研究があり、歯の色見本でも、機械による測色でも短時間の変化が出ています。

だから、「紫を塗って白くなった気がするだけ」と切り捨てるのは正しくありません。

紫色、ちゃんと仕事はしています。

ただし、その仕事の中身を詳しく見るほど、歯の内部を漂白するホワイトニング剤からは遠ざかります。

むしろ、Red No.33とBlue No.1を使い、歯表面の黄色方向を一時的に補正して、白く見せる製品という姿がはっきりしてきます。

そして、それは海外Hismile自身が使っている、「歯用コンシーラー」という説明にかなり近いのです。

日本公式の「黄ばみを除去」という表現を、「黄色い着色そのものを取り去る」という意味で読むなら、現在の科学的証拠はそこまで進んでいません。

一方、「黄色っぽさを一時的に目立たなくする」という意味なら、人での証拠があります。

最後は、この3つに分けるとすっきりします。

「白く見せる」――支持あり。

「歯質を漂白する」――現在のV34研究が示した作用ではない。

「黄ばみ物質そのものを除去する」――未証明。

V34は、思っていたより科学があります。

でも、その科学を丁寧に読むほど、「ホワイトニング剤」より、「一時的な歯のカラーコレクター」と呼ぶ方が実態に近そうです。

FAQ

Q1.Hismile V34は本当に歯を白くしますか?

「白く見せる」という意味では、支持する人の比較試験があります。

2024年の60人研究では、色素2種を抜いた対照製剤と比べて、V34使用後に歯の色見本が白い方向へ動き、機械測定でも黄色方向を示すb*が低下しました。

ただし、歯質そのものを漂白したことを示した研究ではありません。

Q2.歯科医院のホワイトニングと同じですか?

同じ仕組みではありません。

一般的な漂白は歯内部の色へ作用しますが、V34は現在の研究・海外公式の説明では、歯表面の一時的な色補正として位置づけられています。

Q3.コーヒーや紅茶の着色を落としてくれますか?

人研究では、コーヒーや紅茶由来の着色物質そのものが除去されたことを測定していません。

黄色く見えにくくする作用と、ステインを実際に取り除く作用は分けて考える必要があります。

Q4.効果は何時間続きますか?

中心となる人研究では60分まで測定され、その時点でも色調変化が確認されました。

ただし、その60分間は飲食禁止でした。

2時間後や4時間後、コーヒーや食事後の持続については十分なV34固有データがありません。

Q5.毎日使えば、どんどん歯が白くなりますか?

V34の色補正効果が毎日の使用で累積し、歯質そのものが徐々に白くなることを示した十分な人研究は確認できませんでした。

一時的なカラーコレクターと、累積的な漂白は分けて考えた方がよいでしょう。

Q6.V34だけで歯磨きを済ませてもいいですか?

V34 Serumは色調補正を主目的とした製品です。

現在の日本公式成分表示にフッ化物はなく、むし歯予防を検証したV34の臨床試験でもありません。

毎日のプラーク除去やむし歯予防を目的とした歯磨きとは、役割を分けて考えましょう。

参考文献・資料

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  10. Hismile Japan. V34 カラー補正美容液 商品情報. 2026年9月19日確認.
  11. Hismile International. V34 Colour Corrector Serum product information. 2026年9月19日確認.

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