2026年9月09日

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに
こんにちは。ブランデンタルクリニックの歯科衛生士です。
ホワイトニングについて患者さんとお話ししていると、今でもよく聞かれる質問があります。
「ホワイトニングをすると、歯が薄くなりませんか?」
「薬でエナメル質が傷んで、虫歯になりやすくならないですか?」
白い歯には興味があっても、「健康な歯を弱くしてまで白くしたくない」と思うのは当然だと思います。
先に結論からお伝えすると、一般的な過酸化物によるホワイトニングは、エナメル質を削り取って歯を薄くする処置ではありません。一方で、エナメル質の微小硬さ・表面粗さ・ミネラル量などに一時的な変化が起こることはあります。現在の研究では、適切に行われたホワイトニングそのものが直接虫歯を起こすという明確な根拠はありませんが、知覚過敏や歯肉への刺激には注意が必要です。
この「削って薄くなるわけではない。でも、歯には何も起こらないわけでもない」という部分が、今回いちばんお伝えしたいポイントです。
2026年9月、BMC Public Healthに、トルコ在住成人532人を対象として、ホワイトニングに対する認識や情報源、よくある誤解を調べた研究が公開されました。
その中で、532人中244人、45.86%が「ホワイトニングはエナメル質を薄くし、虫歯リスクを高める」という質問に「そう思う」と回答していました。
半数近くです。
では、本当にホワイトニングによってエナメル質が削れて薄くなり、その結果として虫歯になりやすくなるのでしょうか。
今回はこの532人の調査を入口に、過酸化水素・過酸化尿素は歯に何をしているのか、ホワイトニング後のエナメル質では何が起こり得るのか、なぜ歯がしみることがあるのか、そしてSNSで見かけるレモン・重曹・活性炭などの「DIYホワイトニング」とは何が違うのかまで、現在の研究をもとに整理していきます。
532人の45.86%が「エナメル質が薄くなり虫歯リスクが上がる」と回答
まず、今回の研究が何を調べたものなのかを正確に見ておきましょう。
研究タイトルは「Public awareness, preferences, and myths regarding tooth whitening: a cross-sectional survey」。ホワイトニングについて一般の人がどのような情報を得て、どのような安全性へのイメージや誤解を持っているのかを調べた横断調査です。
対象になったのはトルコ在住の18歳以上の成人です。2026年3月から5月にかけて、イスタンブール・ケント大学の歯科医療センターを受診した患者さんと、その付き添いの人から参加者を募集しました。
578件の質問票が回収され、そのうち不完全だった46件を除外し、最終的に532人が解析対象になっています。なお、研究では「何人に参加を依頼したのか」という母数自体は記録されていないため、正式な回答率を算出することはできません。
歯科医療従事者や歯学生は除外されています。

この研究は「ホワイトニングの安全性を証明した研究」ではありません
ここは、とても重要です。
この研究では、532人にホワイトニングを行ってエナメル質の厚さを測定したわけではありません。
その後に何人が虫歯になったのかを追跡した研究でもありません。
あくまで、「人々がホワイトニングについて何を知っているのか、何を信じているのか」を質問票で調べた研究です。
したがって、「532人を調べた結果、ホワイトニングの安全性が証明された」と読むことも、「244人の歯が実際に薄くなった」と読むこともできません。
今回の研究から分かるのは、2026年になっても「ホワイトニング=歯が弱くなる」というイメージを持つ人がかなり多かった、ということです。
45.86%は「歯が薄くなる」と「虫歯になる」をまとめた一つの設問
もう一つ注意したい点があります。
研究で使われた質問は、「ホワイトニングはエナメル質を薄くし、虫歯リスクを高める」という一つの複合設問です。
回答は、Yesが244人・45.86%、Noが162人・30.45%、分からない・意見なしが126人・23.68%でした。
ですから、「45.86%がエナメル質だけが薄くなると思っていた」「45.86%が虫歯になると思っていた」と二つの独立した結果に分けて解釈することはできません。
情報源の1位は歯科医師、それでも誤解は残っていました
ホワイトニングについての情報源を複数回答で尋ねたところ、歯科医師が58.08%で最多でした。
- 歯科医師:58.08%
- SNS:36.09%
- 家族・友人:23.31%
- テレビ・新聞:7.89%
- 特に情報源なし:10.71%
複数回答なので、合計は100%にはなりません。
それでも、「ホワイトニングは歯を傷める」と答えた人は41.35%、「エナメル質を薄くし、虫歯リスクを高める」という複合設問にYesと答えた人は45.86%でした。
ただし、この研究は大学の歯科医療センターを受診した患者さんや付き添いを対象としているため、一般人口より歯科医師との接点が多い集団だった可能性があります。研究者自身も、この結果をトルコ全体や世界全体へそのまま一般化すべきではないとしています。
それでも、歯科医療に接点のある人たちの中にさえ「ホワイトニング=歯が薄くなる」というイメージが残っていた点は興味深い結果です。
そもそもホワイトニングは歯を「削って」白くしているの?
ここを最初にはっきりさせましょう。
一般的な歯科医院の過酸化物を用いたホワイトニングは、歯の表面をバーなどで削ってエナメル質を薄くする治療ではありません。
歯を削って形を変える治療と、薬剤によって歯の色調を明るくするホワイトニングでは、作用の仕方そのものが違います。

歯科医院で行うホワイトニングには、医院で行うオフィスホワイトニングや、自宅で専用トレーを使うホームホワイトニングなどがあります。違いを詳しく知りたい方は、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの違いもご覧ください。
過酸化水素・過酸化尿素は「色の原因」に作用します
歯の色は、表面だけで決まっているわけではありません。
エナメル質の透明性や厚さ、その内側にある象牙質の色、歯質中の着色物質などが組み合わさって、私たちが見ている「歯の色」が決まります。
過酸化水素は歯質へ浸透し、着色の原因となっている有機性物質へ酸化反応を起こします。
ホームホワイトニングで使われる過酸化尿素も、口腔内の水分などによって分解され、過酸化水素を生じ、その作用を利用して歯の色調を明るくしていきます。
日本歯科保存学雑誌に掲載された2024年の研究でも、オフィスホワイトニングでは過酸化水素、ホームホワイトニングでは10%過酸化尿素や6%過酸化水素などが用いられ、これらが歯質の有機性着色物質へ作用すると説明されています。
つまり、黄色い部分を物理的に削って、その下の白い部分を出しているわけではありません。
白い塗料を塗っているわけでもありません。
歯の中に存在する色の原因へ化学的に作用し、見える色調を変えているのです。
なお、「10%過酸化尿素」と「10%過酸化水素」は同じ濃さの薬剤ではありません。数字が同じでも成分や分解の仕方が異なるため、単純に同じ「10%」として比較することはできません。
では、ホワイトニングをしてもエナメル質には「何も起こらない」の?
「歯を削っているわけではない」と聞くと、今度は「では、エナメル質にはまったく何の変化も起こらないのですね」と思うかもしれません。
実は、それも正確ではありません。
過酸化物という薬剤を歯へ作用させる以上、研究条件によってはエナメル質表面の性質に変化が観察されることがあります。
だからこそ、「ホワイトニングは歯を削らない」ということと、「ホワイトニングでは歯に何の変化も起こらない」ということは分けて考える必要があります。
2026年のメタ解析では微小硬さに小さな変化が検出されました
2026年、Journal of Dentistryに、過酸化物によるホワイトニングがエナメル質の微小硬さへ与える影響をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析が掲載されました。
81研究が適格研究として採用され、そのうち9研究が定量的な統合解析に入りました。
統合すると、ホワイトニング後にはエナメル質の微小硬さに統計学的な小さな低下が検出されました。
ただし、著者らはその変化が外れ値となる研究の影響を受けやすく、現在の研究から臨床的に意味のあるエナメル質損傷を明確に示すことはできないとしています。
さらに、この分野には口の外で抜去歯などを使って行う実験研究が多く含まれます。
「微小硬さが変わる」と「歯の厚さが減る」は同じではありません
ここが、患者さんに最も伝えたいところです。
研究で測られている「微小硬さ」と、患者さんが「歯が薄くなる」と聞いて想像するエナメル質の物理的な厚さは、別の指標です。
微小硬さは、歯の表面が小さな圧力にどれだけ抵抗するかを見る指標です。
同じように、表面粗さ、ミネラル量、表面形態も、それぞれ違うものを測定しています。
したがって、研究で「微小硬さが少し低下した」「表面が少し粗くなった」と報告されたからといって、それだけで「エナメル質の厚さが削られて減った」と読み替えることはできません。

ホワイトニング後のエナメル質は唾液の中でどうなる?
もう一つ重要なのが、実際の口の中には「唾液」が存在することです。
抜いた歯を実験室で薬剤に浸す環境と、生きている人の口の中で行うホワイトニングは同じではありません。
日本の研究でも唾液由来のカルシウム・リン酸による表面の再構築が説明されています
2024年の日本歯科保存学雑誌の論文では、10%過酸化尿素が口腔内で過酸化水素へ変化し、有機質へ作用する過程で、エナメル質最表面に極微細な凹凸が生じ得るという先行研究が紹介されています。
その一方で、時間の経過とともに、唾液由来のカルシウムイオンやリン酸イオンが表面へ再沈着し、表面構造が再構築されていくとも説明されています。
唾液は単なる「口の中の水」ではありません。
歯のミネラル環境を維持するために重要な役割を担っています。
2026年のヒト研究レビューでは多くの変化が一過性でした
2026年には、実際の口腔環境を反映しやすいin situ研究とin vivo研究をまとめたスコーピングレビューもJournal of Dentistryに掲載されました。
簡単に言えば、in vitroは主に口の外で行う実験、in situは試料を実際の口腔内環境へ置いて評価する研究、in vivoは実際の人の歯を対象とする研究です。
レビューには24研究が含まれ、ホワイトニング直後には表層ミネラル量の減少、表面粗さの増加、微小硬さの低下などが観察される研究がありました。特に酸性の製剤では変化が大きくなる傾向も報告されています。
一方、多くの変化は生理的な口腔環境では一過性でした。
特に唾液の存在が重要で、研究では多くの場合、7~15日程度の範囲でミネラルや表面性状の回復が観察されています。
ここで「再石灰化」という一言だけでまとめるより、「唾液によってミネラルや表面性状が回復していく」と考えた方が、今回の研究内容には近いでしょう。

つまり、ホワイトニング直後に測定された変化と、その変化がそのまま永久的な損傷として残ることは同じではありません。
では、ホワイトニングをすると本当に虫歯になりやすくなる?
今回の532人調査では、「エナメル質を薄くし、虫歯リスクを高める」という複合設問に45.86%がYesと答えました。
では、この「エナメル質が薄くなる→虫歯になる」という一直線のイメージは正しいのでしょうか。
虫歯はエナメル質の「硬さ」だけで決まる病気ではありません
虫歯は、単純に「歯が少し弱くなったから発生する」という病気ではありません。
- 歯面のバイオフィルム
- その中にいる細菌
- 発酵性糖質の摂取量や摂取頻度
- 細菌が産生する酸
- 唾液
- フッ化物
- 歯質
- 時間
など、複数の要因が重なって発生・進行します。

詳しい仕組みは、虫歯ができる仕組みについて解説した記事も参考にしてください。
2024年のレビューでも「ホワイトニング=虫歯」という単純な答えにはなっていません
2024年には、ホワイトニング剤が健康なエナメル質、白斑、う蝕病変、細菌付着などへ与える影響をまとめたシステマティックレビューが発表されています。
28研究が含まれましたが、結果は一方向ではありませんでした。
- 細菌付着やう蝕関連の活動が増加したとする研究
- 逆に減少したとする研究
- 有意な違いを認めなかった研究
が混在しており、研究方法のばらつきやバイアスの問題もありました。
そのため現在のエビデンスから、「適切なホワイトニングそのものが虫歯を発生させる」と単純に結論づけることはできません。
逆に、「どの製剤をどんな条件で何回使用しても、虫歯リスクには絶対に影響しない」とまで断定できる研究でもありません。
「歯が薄くなるから虫歯になる」という単純な図式ではなく、どんな製剤を、どんな歯に、どのような条件で使ったのかまで考える必要があります。
ホワイトニングで実際によく問題になるのは「知覚過敏」
「虫歯になるのでは」という不安は強い一方で、ホワイトニングで実際に患者さんへ説明する代表的な副作用の一つは、虫歯ではなく一時的な知覚過敏です。
冷たい水を飲んだときに一瞬キーンとする、風が当たるとしみる、といった症状がみられることがあります。
歯肉に薬剤が触れた場合には、歯ぐきへの刺激や炎症が起こることもあります。
日本の127人の診療録でも知覚過敏は約24%
2026年、日本歯科審美学会誌に、新妻由衣子氏らによる6%過酸化水素と10%過酸化尿素を用いたホームホワイトニングの後ろ向き研究が掲載されました。
対象は127人で、6%過酸化水素群42人、10%過酸化尿素群85人です。
知覚過敏の発症率は、両群とも約24%でした。
両群で歯の色調改善が確認され、著者らは、本研究条件下では6%過酸化水素を用いたカスタムトレー型ホームホワイトニング材が十分な臨床的有効性と安全性を示したと結論づけています。
大切なのは、「知覚過敏が起こる=エナメル質が削れて薄くなった」ではないということです。
ホワイトニング中に歯がしみる場合の詳しい対処については、ホワイトニングで歯がしみるときのセルフケアと受診目安も参考にしてください。
なぜホワイトニングの前に虫歯やクラックを確認するの?
「ホワイトニングが歯を削る治療ではないなら、そのまま始めてもよいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
ここに、歯科医院で事前に歯の状態を確認する意味があります。
ホワイトニングを始める前には、虫歯がないか、歯にクラックがないか、くさび状欠損や咬耗がないか、歯ぐきが下がって象牙質が露出していないか、すでに強い知覚過敏がないかなどを確認します。
日本の承認製品でも「健全歯に使用する」ことが前提です
実際、日本で承認されている10%過酸化尿素ホームホワイトニング材「ティオン ホーム プラチナ」の添付文書でも、う蝕、くさび状欠損、咬耗、クラックなどがある健全でない歯や、知覚過敏のある歯には使用しないよう記載されています。
これは、「ホワイトニングが虫歯を作るから診察する」のではありません。
すでに問題のある歯へそのまま薬剤を使用しないため、そして安全にホワイトニングを行える状態なのかを確認するためです。
2024年の日本歯科保存学雑誌の研究でも、事前診査でエナメル質の亀裂や象牙質露出を確認し、必要に応じてシーリングすることで漂白剤の侵入経路を遮断し、知覚過敏の発生を抑える考え方が紹介されています。
ホワイトニング前にクリーニングや口腔内チェックをする理由についても別の記事で詳しく解説しています。
「安全なホワイトニング」と「何をしても安全」は同じではない
ここまで読むと、「では歯科用ホワイトニングなら何回やっても大丈夫なのですね」と感じるかもしれません。
そういう意味でもありません。
ホワイトニングによる歯や歯肉への影響は、単に「過酸化水素かどうか」だけで決まりません。
- 薬剤の種類
- 濃度
- pH
- 使用時間
- 使用回数
- 製剤の組成
- トレーの適合
- もともとの歯の状態
- 歯肉への薬剤接触
など、複数の条件が関係します。

同じ濃度でも「pH」が違えば反応は同じとは限りません
2025年には、35%過酸化水素を使ったオフィスホワイトニングで、酸性の製剤と中性でpHが安定した製剤を比較した160人のランダム化比較試験も報告されています。
中性でpHが安定した製剤では知覚過敏の発生リスクや強さが低く、色の改善効果には大きな差がありませんでした。
つまり、単に「過酸化水素○%」という数字だけを見れば安全性や刺激の強さがすべて分かるわけではありません。
そのため、「もっと長くつければ白くなる」「ジェルを多く入れた方が早く白くなる」と自己判断で使用量や時間を増やすことはおすすめできません。
使用する製品ごとの指示量・使用時間・使用期間を守ることが基本です。
SNSで見る「自然派ホワイトニング」なら歯に優しい?
今回の532人調査では、もう一つ興味深い質問がありました。
「レモン、重曹、酢にはホワイトニング効果があると思いますか?」
これに34.59%がYesと回答しています。
ただし、これもレモン・重曹・酢をまとめた一つの複合設問です。
したがって、「レモンを34.59%が有効だと思っていた」「重曹を34.59%が有効だと思っていた」と個別に分けることはできません。
また、27.82%が何らかの代替的なホワイトニング法を使った経験があると回答しました。
自分の歯を白くするために実際に使った方法を複数回答で尋ねると、重曹13.16%、塩12.78%、レモン9.21%、活性炭7.52%などが挙げられています。
「自然だから安全」は成り立ちません
過酸化物を使わないから歯に優しい、天然のものだから安全、とは限りません。
たとえばレモンや酢は酸性です。
酸によって歯の表面が化学的に溶けていく「酸蝕」は、虫歯菌が作る酸によって進行する虫歯とは別の仕組みです。
レモン汁や酢を繰り返し歯へ接触させる方法を、「薬ではないから歯質に影響しない」と考えるのは危険です。
酸による歯への影響については、酸蝕症と酸性飲料についての記事も参考にしてください。
重曹はレモンや酢と同じ扱いにはしません
一方で、重曹については少し分けて考える必要があります。
家庭用の重曹を自己流で歯へこすりつけることと、研磨性や他の成分を調整して製品化された重曹配合歯磨剤は同じものではありません。
適切に製剤化された重曹配合歯磨剤については、比較的低い研磨性で着色除去に利用できるとする研究もあります。
そのため、「重曹は必ず歯を削るから危険」と一括りにするのも正確ではありません。
活性炭も「汚れを吸ってくれそう」というイメージだけでは判断できません
活性炭配合製品については、十分なホワイトニング効果や長期的な安全性を裏付ける臨床エビデンスが限られています。
研究では、他の方法よりホワイトニング効果が低かったり、研磨性が高くなる可能性を示したものもあります。
「自然」「炭」「毒素を吸着」といったイメージだけで歯への安全性を判断しないことが大切です。

「ホワイトニング歯磨き粉」も歯科医院のホワイトニングとは別物
今回の532人調査では、64.29%が「ホワイトニング歯磨剤を長期間使うとエナメル質を傷める」と回答しています。
ただし、この64.29%をそのまま「誤解」と分類するのは慎重であるべきです。
なぜなら、「ホワイトニング歯磨剤」と「過酸化物による歯科のホワイトニング」は同じ仕組みではないからです。
多くのホワイトニング歯磨剤は表面のステイン除去が中心
東京歯科大学の研究資料でも、ホワイトニング用歯磨剤は、研磨剤や清掃助剤によって歯の表面についた着色を除去することを目的とした製品として整理されています。
つまり、同じ「ホワイトニング」という名前が付いていても、過酸化物によって歯質中の着色物質へ作用する漂白と、歯磨剤によって表面着色を落とすことは別です。
2026年のヒト口腔環境を対象としたレビューでも、ホワイトニング歯磨剤では研磨作用に関連する表面性状への影響が検討されています。
ですから、「ホワイトニング歯磨剤を長期使用するとエナメル質を傷める」という設問へのYesを、単純に「間違い」とは言い切れません。
製品ごとの研磨性、使用回数、ブラッシング圧などを分けて考える必要があります。

また、セルフホワイトニングと歯科医院のホワイトニングの違いについても別の記事で詳しく解説しています。
教育歴が低いほど「ホワイトニングは危険」と思っていたわけではない
今回の原著では、教育歴による違いも調べられています。
ところが、「エナメル質を薄くし、虫歯リスクを高める」というQ8の回答については、教育歴による統計学的な有意差は認められませんでした(p=0.434)。
「レモン・重曹・酢などにホワイトニング効果がある」というQ9についても、教育歴による有意差はありませんでした。
つまり、「教育歴が低い人ほどホワイトニングで歯が薄くなると考えていた」研究ではありません。
差が出たのは「実際に代替法を使った経験」
一方、何らかの代替的ホワイトニング法を実際に使った経験には教育歴による差がありました。
小学校卒のグループでは43.48%だったのに対し、大学院卒では12.09%でした。
ただし、教育歴との関連の効果量を示すCramer’s Vは0.184で、非常に強い関連というわけではありません。
さらに、この研究では性別や教育歴について多くの項目を個別に比較していますが、それらすべてに対して一括した多重比較補正を行っているわけではありません。
著者ら自身も、こうした項目別のサブグループ解析は「確定的な結論」ではなく、今後の研究につなげる探索的な結果として読むべきだとしています。
「知っていること」と「実際に行動すること」は必ずしも同じではない、という点は、この研究の興味深い部分だと思います。
歯科医師が情報源1位でも、なぜ「歯が薄くなる」というイメージは残る?
今回の研究で個人的に興味深かったのは、情報源の1位が歯科医師だったにもかかわらず、約46%が「エナメル質が薄くなり虫歯リスクが高まる」という複合設問にYesと答えたことです。
理由は一つとは限りません。
歯科医師から説明を聞く一方でSNSも見る人はいますし、「ホワイトニングするとしみる」という実際にあり得る副作用から、「しみる=歯が削れた=エナメル質が薄くなった」と結びつけてしまう人もいるかもしれません。
また、「漂白剤」「過酸化水素」という言葉そのものに、強い薬剤という印象を持つ方もいるでしょう。
今回の研究では、「ホワイトニングは歯を傷める」というQ7と、「エナメル質を薄くし虫歯リスクを高める」というQ8には、調査項目同士の中では比較的強い関連が認められました(Cramer’s V=0.443)。
個別の知識というより、「ホワイトニング=歯に悪いもの」という一つのイメージとして複数の認識が結びついている可能性があります。
ただし横断調査なので、「SNSを見たから誤解した」「知覚過敏を経験したから歯が薄くなると思うようになった」といった原因と結果までは分かりません。
歯科衛生士として患者さんに伝えたいこと
ここまでを整理すると、患者さんへお伝えしたいことは次の5つです。
- 一般的な過酸化物ホワイトニングは、エナメル質を削って薄くする治療ではありません。
- 一方で、微小硬さ・表面粗さ・ミネラル量などに一時的な変化が起こることはあります。
- そうした変化と「エナメル質の物理的な厚さが減る」ことは同じではありません。
- 適切なホワイトニングそのものが直接虫歯を起こすという単純な因果関係は、現在の研究では支持されていません。
- 知覚過敏や歯肉刺激などは実際に起こり得るため、歯の状態を確認し、適切な製剤・量・時間・方法で行うことが大切です。
必要以上に怖がる必要はありません。
しかし、「歯を削らないのだから、何をしても安全」という処置でもありません。
この二つを同時に理解することが、ホワイトニングを正しく考えるうえで大切だと思います。
よくある質問
ホワイトニングを続けるとエナメル質がなくなってしまいますか?
一般的な過酸化物ホワイトニングは、エナメル質をバーなどで削り取って白くする治療ではありません。
研究では微小硬さや表面粗さ、ミネラル量などに一時的な変化が認められることがありますが、それと「エナメル質の厚さがどんどん減る」ことは同じではありません。
ただし、自己判断で使用時間や回数を増やすことは避け、製品ごとの使用方法を守ってください。
ホワイトニングをすると虫歯になりやすくなりますか?
現在の研究から、「適切なホワイトニングそのものが直接虫歯を起こす」と断定できる根拠はありません。
虫歯には、バイオフィルム、糖質、唾液、フッ化物、歯質、時間など多くの要因が関わります。
一方、すでに虫歯がある場合には別の問題なので、ホワイトニング前の診査が必要です。
ホワイトニングで歯がしみるのは、エナメル質が薄くなった証拠ですか?
そうとは限りません。
過酸化物が歯質へ浸透することで、一時的な知覚過敏が起こることがあります。
しみる症状が強い、長く続く、特定の歯だけ強く痛むなどの場合には、自己判断で我慢して続けず歯科医院へ相談してください。
虫歯があってもホワイトニングできますか?
まず診査が必要です。
虫歯だけでなく、クラック、くさび状欠損、咬耗、象牙質露出、強い知覚過敏などがある場合には、先に治療や処置を行った方がよいことがあります。
日本の承認ホームホワイトニング材でも、健全歯へ使用することが前提になっています。
レモンや重曹なら薬ではないので安全ですか?
「天然だから安全」とは限りません。
レモンや酢は酸性なので、繰り返し歯へ接触させることは酸蝕の観点から注意が必要です。
重曹は、家庭用重曹を自己流で歯へ擦り付けることと、適切に製剤化された重曹配合歯磨剤を分けて考える必要があります。
市販のホワイトニング歯磨き粉でも歯科医院と同じように白くなりますか?
同じではありません。
多くのホワイトニング歯磨剤は、研磨剤や清掃助剤によって表面についたステインを除去することが中心です。
過酸化物によって歯質中の着色物質へ作用する歯科のホワイトニングとは、白くする仕組みが異なります。
まとめ|「歯が薄くなる」という一言だけでホワイトニングを判断しないで
2026年9月に公開された532人の調査では、45.86%が「ホワイトニングはエナメル質を薄くし、虫歯リスクを高める」という複合設問にYesと答えていました。
しかし、この研究はホワイトニングを受けた人の歯を測定した安全性試験ではありません。
人々がホワイトニングについて何を信じているのかを調べた横断調査です。
さらに、単一の大学歯科医療センターで便宜的に参加者を集めた研究であり、自己申告による質問票調査でもあります。因果関係を示すこともできません。
一方、実際のホワイトニング研究を見ると、話はもう少し複雑です。
過酸化物による一般的なホワイトニングは、歯を物理的に削って白くする治療ではありません。
ただし、エナメル質の微小硬さ、表面粗さ、ミネラル量などに一時的な変化が起こることはあります。
その一部は実際の口腔環境では唾液によるミネラルや表面性状の回復を受けます。そして、微小硬さや粗さが変わることと、「エナメル質の厚さが削られて薄くなること」は同じではありません。
さらに、「ホワイトニングをしたから虫歯になる」という単純な因果関係も、現在の研究からは支持されていません。
その一方で、知覚過敏や歯肉刺激は実際に起こり得ます。
ホワイトニングを必要以上に怖がる必要はありませんが、「歯を削らないのだから何をしても安全」と考えるのも違います。
ホワイトニングに興味はあるけれど、「虫歯があるかもしれない」「歯がしみやすい」「自分の歯でホワイトニングをして大丈夫なのか心配」という方は、まず現在の口腔内の状態を確認したうえで方法を選ぶことをおすすめします。
ブランデンタルクリニックのホワイトニングでは、歯の状態を確認したうえで治療方法をご相談いただけます。
当院は広島市中区立町、立町駅から徒歩1分の立町中央ビル4階にあります。4階まではエレベーターをご利用いただけます。
「歯を白くしたいけれど、健康な歯を傷めたくない」という疑問も、遠慮なくご相談ください。
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