2024年10月18日

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに
「毎日ちゃんと歯を磨いているのに、また虫歯ができました」
歯科医院で患者さんから、こうしたお話を聞くことがあります。
反対に、「それほど丁寧に磨いている自信はない」とおっしゃるのに、長い間ほとんど虫歯ができていない方もいます。
すると、「私は虫歯になりやすい体質なのでしょうか」「親も虫歯が多かったので遺伝でしょうか」と考えてしまうかもしれません。
でも、虫歯になりやすさは「歯磨きをしているか」「歯が強いか」という一つの条件だけでは決まりません。
歯に残っているプラーク、糖を含む飲食物を口にする頻度や量、唾液、フッ化物、これまでの虫歯の経験、歯ぐきの位置、詰め物や被せ物、歯並び、服用している薬など、いくつもの条件が重なって変化します。
虫歯になりやすさは、生まれつき決まって一生変わらない「体質」ではありません。年齢、食生活、服用している薬、唾液、歯ぐきの位置、治療した歯の数などが変われば、同じ人でも虫歯リスクは変化します。
歯科衛生士として患者さんのお口を見るときも、「1日何回磨いていますか?」だけを確認しているわけではありません。
どこにプラークが残っているのか。どんな場所に虫歯ができてきたのか。何を何回、どのように口にしているのか。口は乾いていないか。フッ化物をどのように使っているのか。
こうしたことを一つずつ見ていくことで、その人なりの「虫歯になりやすい理由」が見えてくることがあります。
虫歯になりやすい人と、なりにくい人は何が違う?
虫歯は「虫歯菌がいるだけ」でできる病気ではありません
以前は、虫歯というと「虫歯菌が歯を溶かす病気」という説明がよくされていました。
もちろん、歯の表面に存在する細菌は虫歯の発生に関係します。
ただ現在では、特定の一種類の細菌だけを原因として考えるよりも、歯の表面に形成されたバイオフィルム、そこへ供給される発酵性糖質、唾液やフッ化物などの防御因子のバランスを含めて考えることが重要になっています。
糖などが歯面のバイオフィルムへ繰り返し供給されると、細菌によって酸がつくられやすい環境が続きます。その状態が何度も繰り返されることで、歯からミネラルが失われる「脱灰」が優位になっていきます。
つまり、
「虫歯に関係する細菌が口の中にいる=必ず虫歯になる」
というわけではありません。
細菌だけを見るのではなく、食生活、プラーク、唾液、フッ化物、歯の形や清掃状態など、口腔環境全体を考える必要があります。
歯の表面では「脱灰」と「再石灰化」が繰り返されています
歯は、一度甘い物を食べたり酸に触れたりしただけで、突然大きな穴が開くわけではありません。
食事や間食によって口の中の環境が酸性側へ傾くと、歯からカルシウムやリンなどのミネラルが失われる方向へ進みます。これが「脱灰」です。
その後、唾液の働きなどによって口腔環境が回復し、ミネラルが再び歯へ戻る方向へ進むことがあります。これが「再石灰化」です。
虫歯になりにくい状態とは、単に「酸がまったく生じない状態」ではありません。
脱灰が起きても、その後に回復できる時間と環境が確保されている状態とも考えられます。
反対に、糖を含む物を頻繁に口にしたり、唾液が少なかったり、フッ化物が十分に利用されていなかったりすると、このバランスが脱灰側へ傾きやすくなります。

① 最近も虫歯ができている・過去に虫歯治療が多い
過去の虫歯は、これからのリスクを考える重要な手がかりです
「昔の虫歯は全部治したから、今は虫歯ゼロです」
そのように感じるかもしれません。
もちろん、治療によってその時点の病変は処置できます。
ただ、過去にどこへ、どのくらい虫歯ができたのかという情報は、今後の虫歯リスクを考えるうえでも大切です。
たとえば、いつも歯と歯の間に虫歯ができる方がいます。
その場合、「歯磨きをもっと長くしましょう」だけでは十分ではないかもしれません。歯ブラシでは届きにくい歯間部に対して、フロスなどの清掃方法を見直す必要があります。
一方、歯ぐきが下がった根元に虫歯を繰り返す方であれば、同じ「虫歯が多い人」でも考えるべきリスクは違います。
最近新しい虫歯ができていることや、修復した歯が多いことは、「虫歯体質だから仕方がない」という意味ではありません。
これまで虫歯ができてきた場所を振り返ることで、これから重点的に守る場所を見つけられるということです。
治療した歯にも虫歯が再発することがあります
詰め物や被せ物をした歯も、その後ずっと虫歯にならないわけではありません。
修復物と歯の境目や歯間部などにプラークが停滞しやすい状態があれば、再び虫歯が起こることがあります。
治療が終わったことと、虫歯になりやすかった背景までなくなったことは同じではありません。

② 毎日歯磨きしていても「プラークが残る場所」がある
「朝・昼・夜、1日3回磨いています」
それでも虫歯ができる方はいます。
ここで大切なのは、歯磨きの回数だけではありません。
虫歯になりやすい歯面から、実際にプラークを落とせているかどうかです。
歯ブラシだけでは届きにくい場所があります
特に確認したいのは、次のような場所です。
- 歯と歯の間
- 奥歯の溝
- 一番奥の歯
- 歯ぐきとの境目
- 歯並びが重なった部分
- 詰め物・被せ物の周囲
- ブリッジの周囲
- 矯正装置の周囲
- 歯ぐきが下がって露出した根面
そのため「歯磨きしているのに虫歯になる」という場合には、単純に歯磨き時間を伸ばすより、どこに磨き残しがあるのかを確認する方が重要な場合があります。
詳しくは、歯磨きしているのに虫歯になる理由と「磨けている場所」の考え方でも解説しています。
歯の形そのものが「汚れを残しやすい場所」をつくることもあります
奥歯の噛む面には、小窩裂溝と呼ばれる細かな溝があります。
特に生えたばかりの永久歯などでは、深い溝に歯ブラシの毛先が十分届きにくいことがあります。
小児や若年者では、歯の状態や虫歯リスクに応じて、こうした溝をあらかじめ材料で封鎖する「シーラント」を検討する場合もあります。
「歯質が弱い」と一言でまとめるのではなく、どの歯面が構造的に清掃しにくいのかを見ることも大切です。

③ 甘い物は「量」だけでなく「口にする回数」も大切
「甘い物はほとんど食べません」
そうおっしゃる方でも、詳しくお話を聞いてみると、
- 仕事中に砂糖入りのコーヒーを何度も飲む
- 喉が乾くたびにスポーツドリンクを飲む
- 眠気覚ましに飴を口にする
- カフェラテを何時間もかけて飲む
- 夕食後に少しずつお菓子を食べ続ける
- 寝る直前まで糖を含む飲み物を飲む
ということがあります。
虫歯リスクを考えるときは、甘い物を「食べた・食べなかった」だけではなく、糖を含む飲食物に歯が何回、どのくらい長くさらされているかも重要です。
ダラダラ食べ・ダラダラ飲みでは回復する時間が短くなります
飲食をすると口腔内の環境は変化し、その後、唾液などの働きによって徐々に回復していきます。
ところが、その途中でまた糖を含む物を口にすると、再び酸がつくられやすい環境になります。
同じようなお菓子でも、一日中少しずつ口にし続けると、歯が回復する時間を確保しにくくなります。
以前は「早食い」を虫歯の原因の一つとして説明することもありましたが、虫歯予防としてより重視したいのは、食事に何分かかったかより、糖を含む物をどのくらい頻回に口にしているかです。
ただし「回数だけ減らせば大量に食べてもよい」という意味ではありません
糖については、摂取頻度だけでなく総量も大切です。
「一度にまとめて食べれば、いくら食べても虫歯には関係ない」という意味ではありません。
甘い物を完全に禁止するのではなく、食生活全体の中で量と頻度の両方を見直すことが現実的です。
まずは「午前中に何回口にしているか」「食事と食事の間に何を飲んでいるか」「寝る前まで糖を含む物を口にしていないか」を一度振り返ってみましょう。

④ フッ化物を十分に利用できていない
虫歯予防を考えるうえで、フッ化物は重要な要素です。
ただ、「フッ素入りの歯磨き粉を使っています」というだけでは、濃度や使用量、使い方まで適切とは限りません。
6歳以上では1400~1500ppmFが現在の国内推奨です
日本の4学会合同の推奨では、6歳以上から成人・高齢者では、1400~1500ppmFのフッ化物配合歯磨剤が推奨されています。
ペースト状歯磨剤の場合、使用量の目安は歯ブラシ全体に約1.5~2cm程度です。
就寝前を含めて1日2回の歯磨きを行い、磨いた後は歯磨剤を軽く吐き出します。うがいをする場合は、少量の水で1回にします。
ここで確認したいのは、単に「フッ化物配合」と書いてあるかだけではなく、何ppmF含まれているのかという点です。
小さなお子さんでは年齢によって推奨される濃度や使用量が異なるため、大人と同じ量を一律に使うわけではありません。
虫歯リスクが高い方ではフッ化物の使い方も個別に考えます
過去に虫歯が多い、口腔乾燥がある、根面が露出しているなど、虫歯リスクが高い方では、普段の歯磨剤に加えて歯科医院でのフッ化物塗布などを検討することがあります。
ただし、「高濃度なら多ければ多いほどよい」というものではありません。年齢やお口の状態に合わせて使うことが大切です。

⑤ 口が乾きやすい・唾液による防御が低下している
唾液は、ただ口の中を濡らしているだけではありません。
- 食べかすや細菌を洗い流す
- 酸性に傾いた口腔環境を和らげる
- 歯の表面へミネラルを供給する
- 再石灰化を助ける
など、歯を虫歯から守るためのさまざまな役割があります。
そのため、唾液分泌が大きく低下すると、同じような食生活や清掃状態でも虫歯リスクが高くなることがあります。
「口が乾く感じ」と「実際に唾液が少ない」は必ずしも同じではありません
ここで区別したいのが、本人が「口が乾く」と感じる口腔乾燥感と、実際に測定して唾液分泌量が低下している状態です。
両者は重なることがありますが、必ずしも一致するわけではありません。
そのため、「自分は口が乾くから絶対に唾液が少ない」「乾いた感じがしないから唾液は十分」と自己判断するのではなく、必要に応じて口腔内の状態や服薬なども含めて評価します。
口呼吸そのものより、乾燥が続くことが問題です
「口呼吸をすると虫歯になる」と単純に説明されることがあります。
より正確には、口呼吸や夜間の開口などによって口腔内が乾燥し、唾液による洗浄・緩衝・再石灰化などの防御作用が十分に働きにくくなることを考える必要があります。
特に、
- 朝起きたときに口がカラカラする
- 夜中に水が欲しくなる
- 朝の口の中が強くネバつく
- 寝ているときに口が開いていると言われる
- 鼻づまりが続いている
といった方は、夜間の乾燥も確認したいところです。
薬を飲み始めてから口が乾くこともあります
口腔乾燥は、加齢だけで起こるわけではありません。
一部の抗コリン作用を持つ薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬、利尿薬など、服用している薬が唾液分泌へ影響することがあります。
「以前は虫歯がほとんどなかったのに、薬を飲み始めた頃から口が乾き、虫歯が増えた」という場合には、服薬情報も大切です。
ただし、口が乾くからといって処方薬を自己判断で中止したり減量したりしてはいけません。
必要があれば医科の主治医とも連携しながら、薬を継続したまま行える口腔乾燥対策や虫歯予防を考えます。
口腔乾燥がある方の虫歯予防については、口が乾く人のフッ素ケアと根面う蝕でも詳しく解説しています。

⑥ 歯並び・矯正装置・詰め物などでプラークがたまりやすい
「歯並びが悪いから虫歯になります」
これも少し注意したい表現です。
歯並びそのものが虫歯を作るのではありません。
問題になるのは、歯が重なっていたり、歯ブラシやフロスを通しにくい形になっていたりすることで、プラークを除去しにくい場所が生まれることです。
矯正治療中は清掃する場所が増えます
ブラケットなどの矯正装置が付いていると、歯面に凹凸が増えます。
装置の周囲、歯と歯ぐきの境目、歯間部など、これまでと同じ磨き方では届きにくくなる場所があります。
詰め物・被せ物・ブリッジが増えた後も清掃方法を見直します
歯科治療によってお口の中の形が変われば、必要な清掃方法も変わることがあります。
歯ブラシ一本だけですべての場所を清掃しようとせず、必要に応じてフロス、歯間ブラシ、ワンタフトブラシなどを使い分けます。
⑦ 年齢とともに「虫歯になりやすい場所」も変わる
「子どもの頃は虫歯が多かったけれど、大人になれば虫歯は減る」
そう考えている方もいるかもしれません。
しかし、大人になったから虫歯の心配がなくなるわけではありません。
特に中高年以降では、歯ぐきが下がって露出した歯根面にできる「根面う蝕」へ注意が必要になります。
歯ぐきが下がると、それまで隠れていた根面が口の中へ出てきます
歯の頭の部分はエナメル質に覆われています。
一方、歯ぐきの中に隠れていた根面は、歯冠部とは構造や脱灰しやすさが異なります。
歯周病などに伴って歯肉退縮が起こり、根面が口腔内へ露出すると、そこに新たな虫歯リスクが生まれます。
つまり、
「最近急に虫歯体質になった」のではなく、「虫歯になりやすい場所や条件が変わった」
可能性があります。
中高年以降は「以前と同じように磨くこと」が難しくなる場合もあります
年齢を重ねると、服用する薬が増えたり、口腔乾燥が加わったり、詰め物や被せ物、義歯などが増えたりすることがあります。
また、手指の動かしにくさや身体機能の変化、介助の必要性などによって、若い頃と同じ清掃方法を続けること自体が難しくなる場合もあります。
そのため虫歯予防は、一生同じ方法を続ければよいわけではありません。
その時のお口と生活の状態に合わせて、セルフケアを更新していくことが大切です。

⑧ 酸っぱい物を食べると虫歯になる?
ここは、虫歯と混同されやすいところです。
虫歯と酸蝕症は同じ病気ではありません
虫歯では、歯面のバイオフィルム中の細菌が糖などを利用して酸をつくり、その酸によって歯が脱灰します。
一方、「酸蝕症」では、酸性飲食物や胃酸などの酸が歯へ直接作用して歯質が失われます。
したがって、
「酸っぱい物=虫歯菌が活発になるから虫歯になる」
と一括りにするのは正確ではありません。
糖を含む酸性飲料では、虫歯と酸蝕の両方を考えます
コーラや一部の清涼飲料のように、酸性でありながら糖も含む飲み物では、虫歯と酸蝕の両方を考える必要があります。
特に、少しずつ長時間飲み続ける習慣がある場合は注意が必要です。
「糖質ゼロ」「砂糖不使用」でも酸蝕の問題は別です
糖を含まない飲料であれば、糖を材料に細菌が酸をつくるという虫歯側の要因は減らせます。
しかし、飲料そのものが強い酸性であれば、酸そのものが歯へ作用する酸蝕の問題までなくなるわけではありません。
詳しくは、「糖質ゼロ」「砂糖不使用」の炭酸飲料でも歯は溶ける?酸蝕症リスクをご覧ください。
⑨ 「親も虫歯が多いから遺伝」と考えていい?
「親も歯が弱かったから、私も遺伝だと思います」
そう話される方がいます。
確かに、歯の形成やエナメル質に関係する明確な遺伝性疾患は存在します。また、遺伝的な背景が虫歯への感受性に何らかの影響を与える可能性も研究されています。
しかし、一般的な虫歯について、
「親に虫歯が多いから、子どもも必ず虫歯になる」
と考えることはできません。
家族で似るのは遺伝だけではありません
家族は遺伝子だけではなく、生活環境も共有しています。
- 食事の内容
- 間食の時間や頻度
- よく飲む飲み物
- 歯磨き習慣
- フッ化物の利用
- 歯科医院への通い方
などが家族の中で似ることがあります。
口腔内細菌が家族間で伝わることもありますが、細菌が伝わったことだけで、その後の虫歯発症まで決まるわけではありません。
「虫歯菌をもらったから終わり」ではなく、糖、プラーク、唾液、フッ化物など、その後の口腔環境全体を考えることが大切です。
⑩ 痛くなったときだけ受診し、虫歯リスクを見直す機会が少ない
歯科医院へ行かないこと自体が、直接虫歯をつくるわけではありません。
ただ、痛みが出たときだけ受診していると、初期の変化を見つけたり、食生活・フッ化物・磨き残しなどのリスクを見直したりする機会が少なくなります。
虫歯は痛くなる前から始まっていることがあります
初期の虫歯では、痛みも違和感もないことがあります。
そのため、「痛くないから虫歯はない」とは言い切れません。
早く見つけても、すべての初期虫歯をすぐ削るわけではありません
「早く見つかると、まだ痛くない歯まで削られるのでは?」と心配する方もいると思います。
実際には、初期のう蝕病変すべてをすぐ削るわけではありません。
病変の場所、進行度、表面の状態、活動性、患者さん自身の虫歯リスクなどを確認し、非切削で管理できると判断される場合には、フッ化物、清掃状態や食生活の改善、定期的な経過観察などによって進行を抑えることがあります。
詳しくは、歯科で「治療しない」と判断する理由―経過観察・介入の境界でも解説しています。

「私は虫歯になりやすい?」一度セルフチェックしてみましょう
次の項目があるからといって、必ず虫歯になるわけではありません。
また、「○個以上なら虫歯ハイリスク」という単純な点数表でもありません。
自分のお口の環境を振り返るためのチェックとして使ってみてください。
- ここ数年で新しい虫歯ができた
- 詰め物や被せ物が多い
- いつも同じ場所に虫歯ができる
- 歯と歯の間に虫歯ができやすい
- フロスや歯間ブラシをほとんど使わない
- 飴、砂糖入りコーヒー、カフェラテ、ジュースなどを一日に何度も口にする
- 甘い飲み物を少しずつ長時間飲む
- フッ化物配合歯磨剤の濃度を確認したことがない
- 歯磨き後に何度も強くうがいする
- 起床時に口が乾いている
- 薬を飲み始めてから口が乾くようになった
- 歯ぐきが下がり、歯の根元が見えている
- 矯正装置、ブリッジ、多数の修復物など清掃しにくい場所がある
- 痛いとき以外は歯科医院へ行かない
当てはまる項目があっても、「全部直さなければ」と考える必要はありません。
実際には、この中のどの因子が大きく影響しているかは人によって違います。

歯科医院では「虫歯体質」をどう調べる?
まず「過去にどこへ虫歯ができたか」を見ます
過去の虫歯や修復物の場所には、その人のリスクが表れていることがあります。
どの歯の、どの面に虫歯ができてきたのか。新しい虫歯が増えていないか。詰め物や被せ物の周囲に変化がないかを確認します。
プラークが残っている「場所」を見ます
「毎日3回磨いている」という情報だけでなく、実際の歯面を見て、どこにプラークが残っているかを確認します。
必要に応じて染め出しを行うと、自分では磨けていると思っていた場所に汚れが残っていることが分かる場合もあります。
歯ぐきの位置・修復物・歯列・歯の形も確認します
歯肉退縮によって根面が露出していないか、修復物の周囲が清掃しにくくなっていないか、歯の重なりや深い溝などプラークが停滞しやすい場所がないかを見ます。
食事では「甘い物が好き?」だけでなく時間と回数を聞きます
何を食べるかだけでなく、
- 何時頃に食べるのか
- 食事以外に何回口にするのか
- 仕事中に何を飲んでいるのか
- 一本の飲み物をどのくらい時間をかけて飲むのか
- 寝る前に飲食することがあるか
といった点も大切です。
口腔乾燥や服薬、全身状態も確認します
口が乾いていれば、服用している薬、夜間の開口、鼻づまり、全身状態なども確認します。
必要に応じて、歯科医師による診察やエックス線検査などを組み合わせ、見た目だけでは分かりにくい歯間部や修復物周囲の状態も評価します。
唾液検査だけで「虫歯体質」と決めるわけではありません
「唾液検査をすれば、虫歯体質かどうか一発で分かりますか?」と聞かれることがあります。
唾液量や唾液の性質は、虫歯リスクを考える材料の一つです。
しかし、唾液の状態は時間帯や体調などによって変化することがあります。
そのため、一回の数値だけを見て、
「この数値だから、あなたは虫歯体質です」
と決めるものではありません。
虫歯になりやすさは、一つの検査値ではなく、患者さんの生活と口腔内を総合して考えるものです。

虫歯になりやすい人が今日から見直したいこと
① 歯磨き回数より「残っている場所」を確認する
毎日かなり丁寧に磨いている方へ、単純に「もっと磨いてください」と言っても解決しないことがあります。
まず、自分の磨き残しがどこにあるのかを確認しましょう。
② 必要な場所にフロス・歯間ブラシを使う
歯間部に虫歯ができやすい方では、歯ブラシだけでなくフロスなどが重要になります。
歯間ブラシはサイズが合わないと歯ぐきを傷つけたり、十分清掃できなかったりするため、自分の歯間に合うものを選びます。
③ フッ化物配合歯磨剤は「濃度・量・すすぎ方」を確認する
成人では1400~1500ppmFを一つの目安とし、就寝前を含めて1日2回、適切な量を使います。
歯磨き後に何度も大量の水ですすぐ習慣がある方は、使い方も見直してみましょう。
④ 甘い物を完全禁止するより、量と回数を見直す
続けられないほど厳しい制限より、日常的に繰り返している飴、砂糖入りコーヒー、甘い飲み物などを一つ見直す方が実行しやすいことがあります。
⑤ 口が乾くなら原因まで確認する
単に「水分をたくさん飲む」で終わらせず、服薬、鼻閉、夜間開口、全身状態など、乾燥の背景も確認します。
⑥ 自分の「虫歯ができやすい場所」を知る
歯間なのか、奥歯の溝なのか、修復物の周囲なのか、露出した根面なのか。
それが分かれば、予防方法も具体的になります。
歯科衛生士として伝えたいこと―「磨いているのに虫歯になる」には理由があります
「虫歯ができたということは、自分の歯磨きが悪かったのでしょうか」
そう思われる患者さんは少なくありません。
もちろん、プラークコントロールは虫歯予防の大切な部分です。
でも、虫歯になりやすさはそれだけでは決まりません。
毎日歯磨きをしている方でも、歯間だけにプラークが残ることがあります。
仕事中に糖を含む飲み物を頻回に飲んでいることもあります。
服薬によって以前より唾液分泌が低下していることもあります。
年齢とともに歯ぐきが下がり、若い頃には存在しなかった根面う蝕のリスクが生まれていることもあります。
ですから、
「虫歯になりやすい体質だから仕方がない」
とあきらめる必要はありません。
反対に、
「もっと歯磨きを頑張れば全部解決する」
と一つの原因に決めつける必要もありません。
自分のお口の中で何が虫歯リスクになっているのかを一つずつ確認し、変えられるところから整えていく。
それが、長く歯を守っていくための現実的な虫歯予防だと考えています。
広島市中区・立町で「虫歯になりやすい」と感じている方へ
「毎日磨いているのに虫歯が増える」
「いつも同じ歯の間に虫歯ができる」
「最近になって急に虫歯が増えた」
「口が乾くようになってから歯の状態が気になる」
「歯ぐきが下がって、根元が茶色っぽく見える」
こうした場合は、単に虫歯があるかどうかだけではなく、なぜその場所に虫歯ができたのかまで考えることが大切です。
ブランデンタルクリニックは、広島市中区立町にあり、立町駅徒歩1分、立町中央ビル4階・エレベーターありです。紙屋町・八丁堀・本通からも徒歩圏内です。
虫歯の有無だけでなく、磨き残し、歯間清掃、フッ化物、食生活、口腔乾燥、歯肉退縮などについてもご相談いただけます。
急に歯が痛くなった、腫れた、詰め物が外れたなどの症状がある場合は、当日電話受付可・急患同日可です。予約状況によってお待ちいただく場合がありますので、急な症状ではまずお電話でお問い合わせください。
通常のご相談はWEB・LINE・電話からご予約いただけます。
よくある質問
毎日歯磨きしているのに虫歯になるのはなぜですか?
歯磨き回数だけでは虫歯リスクは決まりません。歯間などにプラークが残っている、糖を含む飲食物を頻回に口にする、唾液が少ない、フッ化物を十分利用できていない、根面が露出しているなど、複数の要因を確認する必要があります。
虫歯になりやすい体質はありますか?
歯質や唾液などには個人差がありますが、一つの「虫歯体質」だけで説明できるものではありません。過去の虫歯、食生活、プラーク、フッ化物、口腔乾燥、修復物などを総合して考えます。また、虫歯リスクは年齢や生活環境によって変化します。
虫歯のなりやすさは遺伝しますか?
遺伝的要因が歯質などに関係する可能性はありますが、親に虫歯が多いから子どもも必ず多くなるわけではありません。家族では食習慣、歯磨き、フッ化物利用、受診習慣なども似るため、遺伝だけで判断することはできません。
甘い物を食べなければ虫歯になりませんか?
甘い物を全く食べなければよいという単純な話ではありません。糖を含む飲食物の量と頻度、プラーク、唾液、フッ化物、歯の状態などが関係します。特に、糖を含む飲み物や飴を長時間・頻回に口にする習慣には注意が必要です。
口が乾くと虫歯になりやすいですか?
唾液には洗浄、酸の緩衝、再石灰化など、歯を守る働きがあります。そのため唾液分泌が大きく低下している方では虫歯リスクが高くなることがあります。ただし、「口が乾く感じ」と実際の唾液分泌低下は必ずしも同じではありません。服薬などが関係している場合もあるため、自己判断で薬を中止せず歯科医院へご相談ください。
酸っぱい物を食べると虫歯になりますか?
酸性飲食物によって歯が直接溶ける「酸蝕症」と、バイオフィルム中の細菌が糖を利用して酸をつくる「虫歯」は別の病態です。ただし、糖を含む酸性飲料では両方が関係することがあります。
「糖質ゼロ」の炭酸飲料なら歯には安全ですか?
糖を含まなければ虫歯側の糖の問題は減らせますが、飲料そのものが酸性であれば酸蝕症のリスクは別に考える必要があります。「糖質ゼロ=歯にまったく影響しない」という意味ではありません。
初期虫歯なら削らなくてよいことがありますか?
あります。病変の進行度や活動性、場所、患者さんの虫歯リスクなどによっては、フッ化物、清掃改善、食生活の調整、定期的な経過観察などで非切削管理を行う場合があります。ただし、すでに修復処置が必要な段階では治療が必要です。
大人になってから急に虫歯が増えることはありますか?
あります。歯肉退縮による根面露出、服薬や全身状態に伴う口腔乾燥、修復物の増加、食生活や清掃能力の変化などにより、若い頃とは虫歯リスクが変わることがあります。
