横向きの親知らずを分割して抜くのはなぜ?一本のまま抜けない理由と歯冠・歯根を分ける目的|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

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横向きの親知らずを分割して抜くのはなぜ?一本のまま抜けない理由と歯冠・歯根を分ける目的

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2026年8月03日

横向きの親知らずを分割して抜くのはなぜ?一本のまま抜けない理由と歯冠・歯根を分ける目的

(歯科助手さんの治療見学ノート)

はじめに

下顎の一番奥に、横向きに埋まっている親知らず。

このような状態は、歯科では「水平埋伏智歯」と呼ばれることがあります。

横向きの親知らずを抜く治療では、先生が親知らずを削り、いくつかの部分に分けて取り出すことがあります。

治療中の音や振動を感じたり、抜歯後に「歯を分割して取り出しました」と説明されたりすると、

「どうして一本のまま抜かなかったのだろう?」

「歯を割らなければならないほど、難しい状態だったのかな?」

「何個にも分けたら、かえって傷が大きくならないの?」

と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

私も歯科助手として初めて横向きの親知らずの抜歯を見学したとき、普通に生えている歯の抜歯とは、治療の進み方がかなり違うことに驚きました。

先生は親知らずを一本のまま強く引っ張るのではなく、まず手前の歯に引っかかっている歯冠を分けて取り出していました。

歯冠があった場所に空間ができると、今度は残った歯根をその空間へ少しずつ動かします。歯根が一塊のまま動かない場合には、根も分け、それぞれを動きやすい方向へ取り出していきます。

横向きの親知らずを分割するのは、力任せに歯を砕くためではありません。

一本のままでは動かない親知らずに、出口と動く方向をつくり、手前の歯や周囲の骨へ必要以上の力をかけずに取り出すための計画的な処置です。

今回は、横向きの親知らずをなぜ分割するのか、歯冠と歯根を分ける意味、CTで確認していること、治療中に歯科助手が行っていることについて、治療見学ノートとしてお伝えします。

横向きの親知らずは、どのような順番で取り出すの?

横向きの親知らずにも、浅い位置にあるもの、顎の骨の深いところにあるもの、歯根が一本にまとまっているもの、複数の根が大きく開いているものなど、さまざまな状態があります。

そのため、すべての親知らずを同じ順番、同じ分割方法で取り出すわけではありません。

代表的な流れとしては、まず局所麻酔が十分に効いていることを確認します。その後、必要な範囲の歯肉を開き、親知らずを確認したり器具をかけたりするために必要な範囲の骨を削ります。

次に、手前の歯や周囲の骨に引っかかっている歯冠を分割して取り出します。

歯冠を取り出すと、それまで歯で埋まっていた場所に空間ができます。先生は、その空間へ残った歯根を動かします。

歯根が一塊のまま動けば、そのまま取り出せることがあります。根が開いている、根の先が曲がっているなどの理由で動かない場合には、歯根も分けて一本ずつ取り出します。

歯冠と歯根を取り出した後は、傷口の内部を確認して洗浄し、必要に応じて縫合します。最後に、出血が落ち着いていることも確認します。

ただし、親知らずの深さや歯根の形、神経との位置関係によっては、別の分割方法や取り出す順番が選ばれることもあります。

この記事では、特に多く行われる「歯冠を先に分け、できた空間へ歯根を動かす方法」を中心にご説明します。

横向きの親知らずには、そのまま通れる出口がありません

普通に生えている奥歯は、歯冠と呼ばれる噛む部分が口の中に出ており、歯根は顎の骨の中に入っています。

抜歯するときには、歯と周囲の組織とのつながりを少しずつ緩めながら、歯が生えている方向に近い向きへ動かして取り出します。

一方、横向きに埋まった下顎の親知らずでは、歯冠が上ではなく、手前にある第二大臼歯の方向を向いています。

親知らずの上や後ろは顎の骨に囲まれ、歯根も骨の中に入ったままです。

この状態で親知らずを上へ持ち上げようとしても、歯冠が第二大臼歯や周囲の骨に引っかかります。後ろへ動かそうとしても、後方には顎の骨があります。

つまり、横向きの親知らずには、一本のまま口の中へ出てくるための通り道がありません。

大きな家具を狭い扉から運び出そうとしても、横幅や角が引っかかれば、そのままでは外へ出せません。向きを変える空間がなければ、取り外せる部分を先に外す必要があります。

横向きの親知らずの分割にも、これと似た考え方があります。

ただし、親知らずを無計画に細かく砕いているわけではありません。術前の画像と治療中の状態を確認しながら、引っかかりを解除できる位置へ切れ目を入れ、必要な部分を計画的に切り分けています。

分割の目的は、歯を小さくすることだけではありません

患者さんへの説明では、「大きな親知らずを小さくして取り出します」とお伝えすることがあります。

確かに、歯を小さく分ければ、限られたスペースから取り出しやすくなります。

しかし、分割の本当の目的は、単純に歯の大きさを小さくすることだけではありません。

主な目的は、次の三つです。

手前の歯に引っかかっている歯冠を外す

横向きの親知らずでは、歯冠が第二大臼歯の後ろ側へ向いています。

この部分が残ったままでは、親知らずを動かそうとしても、歯冠が第二大臼歯に引っかかります。

そこで、歯冠へ計画的に切れ目を入れ、手前側の部分を分けて取り出します。

歯冠を先に外すことで、第二大臼歯との引っかかりを解除できます。

残った歯根を動かすための空間をつくる

歯冠を取り出すと、それまで歯で埋まっていた場所に空間ができます。

先生は、その新しくできた空間へ、残っている歯根を動かします。

つまり、歯冠を取り出した場所が、歯根を口の中へ出すための通り道になります。

横向きの親知らずでは、最初から歯根を直接引き抜くための空間があるわけではありません。歯冠を先に取り出すことで、初めて歯根を動かせる余裕が生まれます。

複数の歯根を別々の方向へ動かす

親知らずの歯根は、すべての人で同じ形をしているわけではありません。

一本の太い根のようにまとまっていることもあれば、二本以上の根に分かれていることもあります。根の先が大きく開いていたり、途中から曲がっていたりする場合もあります。

複数の根が異なる方向を向いていると、一塊のまま動かそうとしても、どこかの根が骨に引っかかります。

そこで、必要に応じて歯根も分け、それぞれを動きやすい方向へ取り出します。

歯冠を分けるのは、歯根の出口をつくるため。歯根を分けるのは、それぞれの根に合った方向へ動かすためです。

基本的には、歯冠を先に取り出して歯根の通り道をつくります

歯には、大きく分けて歯冠と歯根があります。

歯冠は、本来は歯肉より上に出て、食べ物を噛む部分です。歯根は、顎の骨の中に入って歯を支えている部分です。

横向きに埋まった親知らずでも、歯冠と歯根という構造は同じです。ただし、歯冠が口の中へ向かうのではなく、第二大臼歯の方向を向いています。

基本的な分割抜歯では、まず必要な範囲の歯肉を開き、親知らずを覆っている骨を必要な範囲だけ削って、歯冠を確認します。

その後、回転する切削器具を使い、歯冠へ計画的に切れ目を入れます。

歯冠が分かれると、手前側の部分から取り出せるようになります。

治療を見学していると、歯冠を取り出した直後、親知らずがあった部分に新しい空間ができることが分かります。

先生は、その空間へ残った歯根を少しずつ動かしていました。

歯冠を取り出すこと自体が、分割の最終目的ではありません。

歯冠を先に外すことで、次に歯根を動かすための通り道をつくっているのです。

ただし、すべての横向きの親知らずを、この順番で取り出すとは限りません。親知らずの深さや根の形、神経との位置関係によって、分割する位置や取り出す順番が変わることがあります。

歯根まで分割することがあるのはなぜ?

歯冠を取り出せば、残った歯根が必ず一緒に抜けるとは限りません。

歯根がほぼ真っすぐで、根同士がまとまっていれば、歯冠を外した後に一塊のまま動かせることがあります。

一方で、次のような形では、歯根が骨に引っかかることがあります。

  • 二本の根が先端に向かって開いている
  • 根の先が強く曲がっている
  • 根と根の間に骨が入り込んでいる
  • 一方の根だけが頬側や舌側へ傾いている
  • 根の太さや長さがそれぞれ異なる

たとえば、二本の歯根が異なる方向へ開いている場合を考えてみます。

一方の根を動かしやすい方向へ力をかけると、もう一方の根は反対側の骨へ食い込んでしまうことがあります。

このような状態では、二本の根を一緒に動かすよりも、根を分けて一本ずつ動かしたほうが、少ない力で取り出せます。

患者さんからすると、「歯根まで分けたということは、予定どおり抜けなかったのでは」と不安になるかもしれません。

しかし、歯根分割は、抜歯に失敗したから行う処置とは限りません。

CTやレントゲン写真で根が分かれていることを確認し、最初から歯根分割を想定している場合があります。また、歯冠を取り出した後に歯根の動きを確認し、必要だと判断して追加することもあります。

親知らずの根の形は、一人ひとり異なります。

無理に一塊のまま動かすのではなく、実際の形と動きに合わせて分けることが、周囲への負担を抑えることにつながります。

動かない歯へ、さらに強い力を加えるわけではありません

抜歯という言葉から、歯を器具でつかみ、強く引っ張って抜く治療を想像する方もいると思います。

しかし、横向きの親知らずの抜歯は、単純に引っ張る力だけで行うものではありません。

一本のまま動かない親知らずへ無理に強い力を加えると、その力は親知らずだけでなく、周囲にも伝わります。

たとえば、手前の第二大臼歯、親知らずを囲む顎の骨、比較的薄い舌側の骨、周囲の歯肉や粘膜などです。

そのため、歯が思うように動かないとき、先生は単純に力を強くするのではなく、「なぜ動かないのか」を確認します。

歯冠の一部がまだ引っかかっているのかもしれません。

歯根が二本に分かれ、異なる方向を向いているのかもしれません。

根の先が曲がっている、あるいは分割線が十分な位置まで入っていない可能性もあります。

歯を動かそうとしている方向そのものが、根の形に合っていないこともあります。

治療を見学していると、先生が一度手を止め、歯の位置をよく確認してから、切れ目を少し追加したり、器具をかける位置や方向を変えたりする場面があります。

動かない歯へ力を足すのではなく、なぜ動かないのかを見直す。

これが、横向きの親知らずを分割して抜くときの大切な考え方です。

骨を削ることと、歯を分割することを組み合わせます

横向きの親知らずが歯肉や顎の骨に覆われている場合、歯を分割するだけでは取り出せません。

歯冠を確認し、器具をかけ、歯を動かせる状態にするためには、必要な範囲の骨を削ることがあります。

ここで、

「歯を分けずに、周囲の骨を大きく削って一本のまま抜けばよいのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

確かに、親知らずの周囲の骨を広く削れば、一本のまま取り出せる場合もあります。

しかし、顎の骨を必要以上に削ることが、患者さんにとって望ましいとは限りません。

実際の治療では、親知らずを確認するために必要な骨を削り、第二大臼歯や骨に引っかかっている歯冠を分けます。

歯冠を取り出して歯根の出口をつくり、残った歯根を動かします。それでも動かない場合には、必要な範囲だけ骨を追加で削ったり、歯根を分けたりします。

「骨を削るか、歯を分割するか」の二者択一ではありません。

親知らずの深さ、向き、根の形に合わせて、骨を削る範囲と歯を分ける位置を組み合わせながら、周囲へ無理な力がかかりにくい取り出し方を選びます。

CTは神経との距離だけを見る検査ではありません

横向きの下顎親知らずを抜く前には、診察と画像検査によって、歯の向きや深さ、手前の歯、顎の骨との関係を確認します。

一般的なレントゲン写真では、親知らずのおおまかな向きや深さ、第二大臼歯との関係、顎の骨の中を走る下顎管の位置などを確認できます。

CTを追加するかどうかは、画像所見や治療方針、医療機関の診療体制などによって判断されます。

ブランデンタルクリニックでは、下顎の親知らずを抜歯する前にCTも撮影し、三次元的な位置関係を確認しています。

CTでは、たとえば次のようなことを確認します。

  • 親知らずが頬側と舌側のどちらへ寄っているか
  • 歯冠が第二大臼歯へどの程度接しているか
  • 歯根が何本に分かれているように見えるか
  • 根の先がどの方向へ曲がっているか
  • 頬側と舌側の骨の厚さ
  • 下顎管と歯根の三次元的な位置関係
  • 親知らずの周囲に病変がないか

患者さんからは、「神経に近いかを調べるためにCTを撮る」と説明されることが多いかもしれません。

もちろん、下歯槽神経との位置関係は重要な確認事項です。

しかし、CTは神経との距離だけを見る検査ではありません。

どの部分を先に分け、どの方向へ動かせば周囲への負担を抑えて取り出せそうかを考えるための、立体的な地図でもあります。

当院では、下顎親知らずの抜歯を検討する際に行うCT撮影について、追加の撮影費用はいただいていません。

CTと通常のレントゲン写真で分かることの違いについては、歯科用CTとレントゲンは何が違う?二次元画像と三次元画像で確認できること⁠でも詳しくご紹介しています。

手前の第二大臼歯を守りながら取り出します

横向きの親知らずでは、歯冠が手前の第二大臼歯へ接していることがあります。

この部分は普段から歯ブラシが届きにくく、食べ物や細菌がたまりやすい場所です。

そのため、親知らず周囲の炎症だけでなく、親知らず自体のむし歯、第二大臼歯の後ろ側のむし歯、第二大臼歯後方の歯周組織の問題などが起こることがあります。

親知らずの位置や接触の仕方によっては、第二大臼歯の歯根へ影響が及ぶこともあります。

抜歯するときも、手前の第二大臼歯へ無理な力をかけないことが重要です。

親知らずを一本のまま強く動かそうとすると、第二大臼歯に接している歯冠部分から力が伝わる可能性があります。

そのため、まず第二大臼歯に引っかかっている歯冠を分け、接触や抵抗を解除してから、残った部分を動かします。

分割は、親知らずを取り出しやすくするだけでなく、手前の大切な歯へ必要以上の力を伝えないためにも行われています。

舌側には薄い骨や大切な神経があります

下顎の親知らずの周囲には、注意が必要な神経や組織があります。

顎の骨の中には、下唇や顎先の感覚に関係する下歯槽神経が走っています。

また、親知らずの舌側に近い軟らかい組織には、舌の感覚や味覚の一部に関係する舌神経があります。

舌側の骨は、部位によっては比較的薄いことがあります。

そのため、分割した歯や歯根を舌側へ強く押し出すのではなく、先生が確認できる方向へ少しずつ動かします。

助手も、舌や粘膜が器具へ近づかないように注意しながら、吸引管の位置を調整します。

「神経に近い可能性がある」と聞くと、不安になる方もいらっしゃると思います。

しかし、神経が近い可能性があるからこそ、術前に画像で位置関係を確認し、歯を動かす方向や器具の使い方を慎重に選びます。

画像や診察の結果、院内での抜歯よりも病院での処置が適していると判断した場合には、連携する医療機関へご紹介することがあります。

横向きの親知らずを分割している間、歯科助手は吸引管を持ち、先生の手元を見ながら位置を細かく調整しています。

分割中、歯科助手は何をしているの?

患者さんから見ると、水や唾液を吸っているだけのように見えるかもしれません。

しかし、実際にはいくつもの役割があります。

切削時の水を吸引する

歯や骨を切削する器具は高速で回転するため、処置中は水をかけながら使用します。

注水には、切削する部分を洗い流すだけでなく、歯や骨、器具が熱を持ちすぎないように冷却する役割があります。

助手は、その水を吸引しながら、先生が切削している部分を確認できる状態に保ちます。

血液や切削片を取り除き、視野を確保する

抜歯中には、血液や歯・骨の細かな切削片が出ます。

これらが分割線を覆うと、先生がどこまで切れ目を入れたのか確認しにくくなります。

助手は、分割する場所が隠れないように吸引管を調整します。

舌や頬の粘膜を守る

吸引管の位置を調整しながら、舌や頬が切削器具へ近づかないようにすることも大切です。

ただし、吸引管を強く押し当てたり、歯肉を吸い込み続けたりしないようにも注意します。

小さな歯片が口の奥へ流れないようにする

分割した歯冠や歯根は、先生が目で確認しながら取り出します。

助手は、小さな歯片が水と一緒に口の奥へ流れないよう、吸引する位置を調整します。

患者さんの表情や動きを確認する

治療中は、先生の手元だけでなく、患者さんの表情や手の動きも確認します。

痛みや不安が強くなっていないか、呼吸が苦しくないか、急に動きそうな様子がないかを見ながら、必要に応じて先生へ伝えます。

私が見学したときも、先生が歯をどちらへ動かそうとしているのかを見ながら、吸引管の位置を少しずつ変えていました。

水を吸いすぎて歯肉を巻き込まないようにしながら、分割線が隠れない場所を保ちます。

親知らずの分割中に行う吸引は、単に口の中の水を減らすためだけではありません。

先生が歯の位置を確認し、周囲へ無理な力がかかりにくい方向へ動かすための視野を保つことが、大きな役割です。

麻酔が効いていても、音や振動は感じることがあります

親知らずの抜歯は、局所麻酔が効いていることを確認してから始めます。

ただし、麻酔が効いていても、治療中の感覚がすべてなくなるわけではありません。

患者さんは、機械が回転する音、水が流れる感覚、歯や骨を削る振動、歯を押されるような圧迫感、分割した歯が外れるときの感覚、吸引管の音などを感じることがあります。

麻酔は主に痛みを抑えるものです。

そのため、音、振動、押される感じまで完全に消えるわけではありません。

歯へ入れた切れ目から歯冠や歯根が分かれたときや、骨との引っかかりが外れたときに、音や振動が伝わることもあります。

音がしたからといって、顎の骨を大きく割ったという意味ではありません。

ただし、鋭い痛みや我慢できない痛みを感じた場合は、遠慮せず、事前に決めた合図で知らせてください。

麻酔の効き方を確認し、必要に応じて麻酔を追加してから治療を続けます。

分割する回数は、患者さんによって異なります

横向きの親知らずを抜くとき、最初からすべての歯を同じ数に分けるわけではありません。

親知らずの大きさ、深さ、傾き、根の形、周囲の骨との関係は患者さんごとに違います。

歯冠を一度分ければ取り出せる場合もあれば、歯冠を複数の部分に分ける場合もあります。歯冠を取った後に歯根を分けたり、一方の歯根だけを追加で分けたりすることもあります。

歯冠を取り出した後、残った歯根がどの程度動くかを確認し、必要に応じて次の操作を選ぶこともあります。

分割回数が多かったからといって、抜歯に失敗したという意味ではありません。

見えてきた歯根の形や実際の動きに合わせて、取り出し方を調整している場合があります。

反対に、分割回数が少ない、あるいは短時間で終わったから、必ず簡単な親知らずだったとも限りません。

大切なのは、分割した回数や処置時間だけではなく、その親知らずに合った方法で、周囲へ必要以上の力をかけずに取り出すことです。

分割抜歯と、歯根を計画的に残す処置は別です

通常の分割抜歯では、親知らずの歯冠や歯根を必要な形に分け、原則としてそれぞれの部分を取り出します。

一方、下歯槽神経と歯根が非常に近く、歯根を取り出すことによる神経障害のリスクが高いと判断された一部の症例では、歯冠だけを除去し、歯根を計画的に残す方法が検討されることがあります。

この方法は「コロネクトミー」と呼ばれます。

ただし、神経に近い親知らずであれば、すべてコロネクトミーを選べるわけではありません。

親知らずのむし歯や歯の神経の状態、歯根周囲の炎症、歯の動揺、患者さんの全身状態、術後の経過観察を継続できるかなどを確認したうえで判断します。

残した歯根が後から移動したり、痛みや感染によって追加の処置が必要になったりする可能性もあります。

通常の分割抜歯と、歯根を計画的に残すコロネクトミーは、目的も適応も異なる治療です。

「親知らずを分割した」という説明が、そのまま「歯根を残した」という意味になるわけではありません。

抜歯後に腫れたり、口が開きにくくなったりするのはなぜ?

横向きの親知らずの抜歯では、歯肉を開く、必要な範囲の骨を削る、歯を分割するといった外科的な処置を行います。

そのため、抜歯後には一時的に、痛み、頬の腫れ、傷口周辺の張り、口の開けにくさ、噛む筋肉の疲れ、飲み込むときの違和感などが生じることがあります。

術後の腫れや口の開けにくさは、必ずしも細菌感染が起きたことを意味しません。

手術を受けた組織が治ろうとする過程でも、炎症反応は起こります。また、長い時間口を開けていたことや、親知らずの近くにある噛む筋肉へ刺激が加わったことも、顎の疲れや口の開けにくさに関係します。

ただし、次のような変化がある場合は、早めに歯科医院へ連絡してください。

  • 腫れや痛みが時間とともに増え続ける
  • 発熱がある
  • 膿のような味やにおいがする
  • いったん軽くなった痛みが再び強くなる
  • 出血が止まりにくい

口や首の腫れが急速に広がり、呼吸しにくい、唾液も飲み込みにくい、会話がしにくいといった症状がある場合は、通常の診療時間まで待たず、直ちに救急医療機関を受診してください。

抜歯後の穴がどのように治っていくのかについては、抜歯後の穴はどう治る?血のかたまりから歯肉・骨へ変わるまで⁠でも詳しく解説しています。

難しい親知らずは、連携する病院へ紹介することがあります

すべての親知らずを、同じ方法や同じ診療環境で抜くわけではありません。

CTや診察で確認した結果、下歯槽神経との位置関係、親知らずの深さ、歯根の複雑な形、周囲の病変、患者さんの全身状態、服用している薬、出血や感染に関するリスクなどから、病院での処置が適していると判断する場合があります。

ブランデンタルクリニックでは、必要に応じて広島市民病院などの連携医療機関へご紹介しています。

病院へ紹介することは、「抜歯に失敗した」「当院では何もできない」という意味ではありません。

その親知らずに適した設備や診療体制を選ぶことも、周囲への負担や合併症のリスクに配慮するための治療計画の一部です。

当院では、抜歯前に服用している薬や血圧、親知らずと神経の位置関係などを確認します。詳しくは、親知らずや歯を抜く前に薬・血圧・CTを確認するのはなぜ?⁠をご覧ください。

横向きの親知らずの分割抜歯に関するFAQ

Q1.親知らずを分割したのは、抜歯に失敗したからですか?

いいえ。

横向きの親知らずでは、歯冠が第二大臼歯や周囲の骨に引っかかるため、最初から分割を予定していることがあります。

歯冠を先に取り出して歯根の通り道をつくり、必要に応じて歯根も分けることは、計画的な抜歯方法の一つです。

Q2.親知らずは何個くらいに分けるのですか?

決まった数はありません。

歯冠を一度分けるだけで取り出せる場合もあれば、歯冠を複数の部分に分けたり、歯根も分けたりする場合があります。

親知らずの向き、深さ、根の形、骨との関係を確認しながら、必要な位置を必要な回数だけ分割します。

Q3.分割するときに、顎の骨も一緒に割っているのですか?

通常の分割抜歯では、歯へ計画的な切れ目を入れ、歯冠や歯根を取り出しやすい形に分けます。

親知らずを確認し、動かすために必要な範囲の骨を削ることはありますが、顎の骨を大きく割って歯を取り出すという意味ではありません。

Q4.分割するときは痛いですか?

局所麻酔が十分に効いていることを確認してから処置を始めます。

麻酔が効いていても、音、振動、押される感覚などは残ることがあります。

鋭い痛みや我慢できない痛みを感じる場合は、遠慮せず、事前に決めた合図で知らせてください。麻酔の効き方を確認し、必要に応じて追加します。

Q5.横向きの親知らずでは、必ずCTが必要ですか?

CTが必要かどうかは、親知らずの位置や通常のレントゲン写真の所見、治療方針、医療機関の診療体制などによって判断されます。

ブランデンタルクリニックでは、下顎の親知らずを抜歯する前にCTを撮影し、三次元的な位置関係を確認しています。

CTでは神経との距離だけでなく、歯根の形、頬側・舌側の骨、第二大臼歯との関係、歯を取り出す方向なども確認します。

Q6.分割した歯の一部が残ることはありますか?

通常の分割抜歯では、分けた歯冠や歯根を確認しながら取り出し、抜歯後には傷口の内部も確認します。

一方、下歯槽神経との位置関係などを踏まえ、歯根を計画的に残すコロネクトミーが選択されることがあります。

これは通常の分割抜歯中に偶然歯根が残ったという意味ではなく、術前の診査と説明に基づいて行う別の治療方法です。

Q7.細かく分割したほうが、腫れや痛みは少なくなりますか?

細かく分ければ、必ず腫れや痛みが少なくなるとは限りません。

術後の反応には、親知らずの深さ、骨を削った範囲、手術時間、もともとの炎症、患者さんの体質など、さまざまな要因が関係します。

必要以上に細かくするのではなく、取り出すために必要な位置を、必要な回数だけ分割します。

Q8.分割回数が多いと、難しい親知らずだったということですか?

分割回数だけでは、抜歯の難易度を判断できません。

根が複数に分かれている、根の先が曲がっているなど、歯の形に合わせて分割回数が増えることがあります。

手前の歯や周囲の骨へ無理な力をかけないために、あえて追加で分割する場合もあります。

Q9.横向きの親知らずは、すべて抜いたほうがよいですか?

横向きであることだけで、すべての親知らずを直ちに抜くとは限りません。

痛みや腫れを繰り返しているか、むし歯や歯周組織への影響があるか、手前の第二大臼歯へ悪影響があるか、将来的なリスクがどの程度あるかなどを確認して判断します。

抜歯による利益とリスクを比較し、経過観察を選ぶこともあります。

Q10.院内では難しいと言われたら、かなり危険な状態ですか?

必ずしも、非常に危険な状態という意味ではありません。

神経との位置関係、親知らずの深さ、歯根の形、患者さんの全身状態などから、病院の設備や診療体制で処置したほうがよいと判断する場合があります。

その親知らずに適した医療機関を選ぶことも、治療の大切な一部です。

Q11.分割する音が聞こえましたが、歯や顎に問題はありませんか?

歯へ入れた切れ目から歯冠や歯根が分かれたときや、周囲の骨との引っかかりが外れたときには、音や振動が伝わることがあります。

音が聞こえたことだけで、顎の骨が大きく割れたという意味ではありません。

ただし、治療後に噛み合わせの大きな変化、強い痛み、急速に広がる腫れなどがある場合は、歯科医院へ連絡してください。

Q12.抜歯後、口が開けにくいのは分割したからですか?

分割だけが原因とは限りません。

歯肉を開いたこと、骨を削ったこと、親知らず周囲の組織へ刺激が加わったこと、長時間口を開けていたことなどが重なり、一時的に口が開けにくくなることがあります。

多くは治癒とともに改善していきますが、症状が強くなる、発熱や膿を伴う、飲み込みにくさが増すなどの場合は、歯科医院へ連絡してください。

まとめ|分割は、無理な力を減らし、取り出す空間と方向をつくる処置です

横向きの親知らずは、普通の奥歯のように、そのまま上へ引き抜ける状態ではありません。

歯冠が手前の第二大臼歯へ突き当たり、周囲を顎の骨に囲まれているため、一本のまま口の中へ出てくる通り道がないからです。

代表的な方法では、まず引っかかっている歯冠を分けて取り出します。

歯冠があった場所に空間ができると、残っている歯根をその空間へ動かせるようになります。

歯根が異なる方向へ開いていたり、根の先が曲がっていたりする場合には、歯根も分け、それぞれを動きやすい方向へ取り出します。

分割は、力任せに歯を砕くための処置ではありません。

一本のまま動かない歯に出口と動く方向をつくり、周囲の骨や第二大臼歯へ必要以上の力をかけないための、計画的な操作です。

治療中には大きな音や振動、押される感覚が伝わることがあります。しかし、音や振動があるからといって、顎の骨を大きく割っているという意味ではありません。

ブランデンタルクリニックでは、下顎の親知らずをCTで立体的に確認し、歯根、骨、神経、手前の歯との位置関係を踏まえて治療方針を検討しています。

院内での抜歯よりも病院での処置が適していると判断した場合には、連携する医療機関へご紹介します。

親知らずの向きや歯根の形は、一人ひとり異なります。

「横向きだから全員が同じ方法で抜く」のではなく、その親知らずに合った出口と動かし方を考えることが、周囲への負担を抑え、安全性に配慮した抜歯につながります。

参考資料

  • Royal College of Surgeons of England. Parameters of Care for Patients Undergoing Mandibular Third Molar Surgery. 2021.
  • 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 口腔顎顔面外科学分野「水平埋伏智歯抜歯の基本手技」
  • 下顎埋伏第三大臼歯抜歯における歯冠・歯根分割法および術後合併症に関する臨床研究
  • 埋伏第三大臼歯抜歯時の歯・歯根片迷入に関するシステマティックレビュー
  • 下顎第三大臼歯抜歯後の疼痛、腫脹、開口障害および神経障害に関する関連文献

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