2026年9月24日

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに
こんにちは。ブランデンタルクリニックの歯科衛生士です。
もし患者さんからスマートフォンの画面を見せられて、
「私の歯、92点だったんですけど、かなり白いってことですか?」
と聞かれたら、私はたぶん最初にこう考えます。
「その92点って、何の92点なんだろう?」

2026年9月24日、サンスターのOra²(オーラツー)から、スマートフォンで歯を撮影するとAIが歯の状態を解析する無料Webツール「Ora² WHITE CHECKER」が公開されました。[1]
アプリを入れる必要はなく、スマートフォンのブラウザから歯を撮影すると、およそ2分で判定結果が表示されます。
結果は100点満点。
さらにS〜Cまでの4段階でも表示されます。
「歯の白さが数字で分かる」となると、とても分かりやすそうですよね。
ただ、歯科医院で歯の色を確認するときには、シェードガイドという色見本を使ったり、条件をそろえて写真を撮ったり、場合によっては分光測色計という機器で色を数値化したりします。
では、Ora² WHITE CHECKERが表示する「100点」は、歯科で測る「歯の白さ」と同じものなのでしょうか。
今回は、
- WHITE CHECKERのAIは何を見ているのか
- 歯科でいう「歯の色」と何が同じで、何が違うのか
- スマホ写真から歯を採点するとき、数字をどう読めばよいのか
歯科衛生士の立場から、少し細かいところまで見てみたいと思います。
なお、サンスター自身も、WHITE CHECKERについて撮影環境によって結果が変動する場合があること、医療診断を目的としたものではないこと、矯正装置を使用中の場合には対応していないことを明記しています。[1]
虫歯や歯周病を診断するAIではありません。
この点は最初に押さえておきたいところです。
Ora² WHITE CHECKERは何をするツール?
まず、サンスターが公表している内容から見てみます。
WHITE CHECKERは、スマートフォンで撮影した歯の画像をAIで解析し、
「ステインクリアレベル」
と
「ツヤレベル」
という2つの指標を表示します。[1]
そして、その2つをもとにOra²独自の総合指標である「純美白度」を判定します。
純美白度は100点満点と、S〜Cの4段階で表示されます。
さらに、純美白度の結果と簡単な質問への回答をもとに、Ora²のオーラルケア製品が提案される仕組みになっています。[1]
つまり、歯科医院で使う測色器というより、自分の歯の見た目に関心を持ち、セルフケアへつなげるための一般消費者向けサービスとして見る方が分かりやすそうです。
「ステインクリアレベル」は何を見ている?
サンスターによると、AIがステインの付着エリアや占有率を解析します。
数値が高いほど、ステインやヤニなどの着色が少ない状態を表します。[1]
「ツヤレベル」は何を見ている?
こちらは歯面での光の反射状態です。
歯面の光反射のムラを解析し、光を均一に反射している状態かどうかを評価します。[1]
そして、
ステインクリアレベル+ツヤレベル
をまとめたものが「純美白度」です。
ここが、この記事で最初に押さえたいポイントです。
WHITE CHECKERは、公開されている説明を見る限り、「歯そのものの色だけ」を測って100点にしているわけではありません。

「純美白度」は歯科共通の測色尺度ではない
「純美白度」という言葉を見ると、
「歯の白さそのものを100点満点で表したもの」
のように感じるかもしれません。
ただし「純美白」は、歯科で共通して使われている測色学上の用語ではありません。
Ora²では、ステインをケアすることと歯面のツヤを組み合わせた独自の考え方として「純美白」を打ち出しています。[1]
つまりWHITE CHECKERの100点は、
「歯科用測色器で測った結果、最も白い歯だった」
という意味ではありません。
シェードガイドでB1だったという意味でもありません。
Ora²が定義した「ステインとツヤ」という物差しの中での総合点と考えた方が正確です。
独自指標を使うこと自体が問題なのではありません。
睡眠アプリでも活動量計でも、複数の情報をまとめて独自の点数にするサービスはあります。
大切なのは、
その数字が「何を材料にして作られた数字なのか」を理解して読むこと
です。
では歯科では、歯の色をどう見ている?
シェードガイドで色を比べる
歯科で昔から使われている方法の一つが、シェードガイドという色見本です。
VITA Classicalなどでは、A1、A2、A3、B1など複数の色見本があります。
実際の歯と比較しながら、
- 明るさはどのくらいか
- 黄みや赤みはどのくらいか
- 隣の歯とどのくらい調和しているか
などを見ていきます。
ただし、天然歯は1本の中でも同じ色ではありません。
歯ぐきに近い部分、中央、先端側では、明るさや透明感が異なります。
そのため補綴物の色合わせでは、シェードガイドだけでなく写真も利用します。
このあたりは以前の「セラミックやジルコニアの色合わせの日は何をしている?シェードガイドと写真の意味」でも詳しく解説しています。
色を「明るさ・赤み・黄み」に分ける方法もある
歯科の研究では、歯の色をL*、a*、b*という数値に分けて表す方法がよく使われます。
少し難しく見えますが、意味はそれほど複雑ではありません。
L*は明るさです。
0に近いほど暗く、100に近いほど明るくなります。
a*は赤〜緑方向。
b*は黄〜青方向です。
つまり「歯が白いか」を考えるときも、単に明るいかどうかだけではなく、どのくらい黄色方向に見えるかなども関係します。
また、2つの色がどのくらい違うかは「色差」という考え方で数値化できます。
歯科の色研究では、L*a*b*やCIEDE2000による色差などを用いて、色の違いを定量的に評価します。人が違いに気づける程度と、臨床的に許容できる程度を分けて考える研究もあります。[4]

「歯の白さ」専用の指数まである
歯科研究には、「歯がどれくらい白く見えるか」を数値化するための指標もあります。
代表的なものの一つが、歯科用白色度指数 WI_Dです。[3]
WI_DはL*、a*、b*を組み合わせ、人が感じる歯の白さとの対応を考えて作られた指標です。
ここで重要なのは計算式ではありません。
白さは、単純な明るさだけで決まるわけではないという点です。
例えば、明るさがほとんど変わらなくても、黄みが弱くなれば人には白く感じられることがあります。
ブランデンタルクリニックでは以前、紫色のカラー補正製品「Hismile V34」を検証しました。
そのときも、黄色く見えにくくなることと、歯そのものが漂白されることを分けて考えました。
詳しくは「Hismile V34は“黄ばみを除去”する?60人RCTと独立研究を11段階で科学検証」で解説しています。
つまりWHITE CHECKERの100点は「L*=100」ではない
ここまで整理すると、WHITE CHECKERの100点をどう読めばよいかが分かりやすくなります。
WHITE CHECKERで100点だったとしても、
- L*=100という意味ではありません。
- シェードガイドで一番白い色だったという意味でもありません。
- WI_Dが最高値だったという意味でもありません。
- 分光測色計で「最も白い天然歯」と判定されたという意味でもありません。
WHITE CHECKER独自の純美白度が100点だったという意味です。
100点満点と表示されると、つい学校のテストのように、
「100点=完璧」
「80点=少し悪い」
と考えたくなります。
でも測定値を読むときは、「何を100点としているのか」を先に確認する必要があります。

「ステインが少ない歯」と「白い歯」は同じではない
ここで「ステイン」について考えてみましょう。
ステインは、簡単にいえば歯の表面に付く外因性の着色です。
歯の表面には唾液由来の薄い膜が形成され、その上へ飲食物由来の成分などが付着します。
ライオン株式会社の橋本による2022年の研究報告では、口腔内で形成したステインについて、タンパク質や紅茶由来のポリフェノール類などが関わる凝集物が形成されることが検討されています。また、ピロリン酸ナトリウムがCaなどを捕捉し、凝集物を除去されやすい状態へ変化させる可能性も報告されています。[14]
つまりステインは、歯そのものの色とは別の「表面についている着色」です。
例えば、ステインがほとんど付いていない天然歯でも、その人本来の象牙質などの影響で少し黄みを帯びて見えることがあります。
逆に、もともと明るい歯でも、コーヒーや紅茶などによる着色が表面に付いていることがあります。
したがって、
ステインが少ない=歯そのものの色が最も白い
ではありません。
この違いについては「ホワイトニング前にクリーニングを勧めるのはなぜ?」でも詳しく解説しています。
「白く見える」「ステインが取れる」「漂白される」は別の話
ここはぜひ分けて考えてほしいところです。
例えば、表面の着色汚れが落ちれば、歯は明るくきれいに見えることがあります。
でも、それは歯質そのものの色が変わったとは限りません。
一方、歯科医院などで行う漂白によるホワイトニングでは、過酸化物などを用いて天然歯の色調そのものを変化させます。
さらに、紫や青系の色を利用し、黄色っぽい見え方を一時的に弱める「色補正」もあります。
つまり、
- 白く見える
- ステインが取れる
- 歯質そのものが漂白される
は、それぞれ別の現象です。
WHITE CHECKERの点数が上がったとしても、それだけで歯そのものが漂白されたとは判断できません。
WHITE CHECKERのもう一つの評価項目「ツヤ」
WHITE CHECKERの特徴として面白いのが「ツヤレベル」です。
サンスターは、歯面の光反射ムラをAIで解析し、反射が均一な状態ほどツヤのある状態として評価しています。[1]
たしかに、歯の見た目は色だけで決まりません。
同じ色でも、表面が滑らかで光をきれいに反射する場合と、光が乱れてくすんで見える場合では印象が変わります。
ただし、ツヤと色は同じものではありません。
ここがWHITE CHECKERを理解するうえで、とても重要です。
歯の「色」を調べる研究では、逆に表面反射を消すことがある
少し面白い話があります。
歯科で歯の色を写真から詳しく調べるとき、表面に映り込む強い反射光が邪魔になることがあります。
歯面の粗さや唾液によって生じる鏡面反射は、画像を使った色解析では誤差の原因になり得ます。
そのため、偏光フィルターを使って、歯面のギラッとした反射を抑えて撮影する方法があります。
2012年の研究では、クロスポーラライズと呼ばれる偏光撮影によって歯面の鏡面反射を抑え、繰り返し評価しやすい反射の少ない歯科画像を得られることが示されています。[10]
2025年の研究でも、カメラと照明条件を固定し、偏光を使った写真から歯科材料の色を評価しています。[11]
つまり、
「色そのもの」を調べたいときは、反射をできるだけ除くことがある。
一方、WHITE CHECKERでは、その反射状態自体を「ツヤ」として評価する。
この違いはとても面白いと思います。
WHITE CHECKERは、最初から単純な「歯色測定器」とは少し違うものを見ているわけです。
だから、仮に歯科用分光測色計と完全に一致しなくても、それだけで「測定に失敗している」とは限りません。
そもそも測ろうとしているものが一部違うからです。
では、スマホ写真から歯の色を測ること自体は無理なの?
ここまで読むと、
「やっぱり普通のスマホ写真で歯の色を測るのは無理なのでは?」
と思うかもしれません。
でも、そこまで単純でもありません。
2026年には、スマートフォンを使った歯の色評価についての系統的レビューが発表されています。[5]
8研究をまとめたところ、スマートフォンと一眼レフカメラのどちらかが一貫して優れている、という結果ではありませんでした。
一方で、研究ごとに、
- 使ったスマートフォン
- 照明
- カメラ設定
- 色の校正方法
- 比較した基準
などが大きく異なっていました。
レビューでは、スマートフォンによる歯色評価には可能性がある一方、照明・校正・撮影方法の標準化が重要だとまとめられています。[5]
つまり、
「スマホだから測れない」のではありません。
問題は、
「どんな条件で撮り、どのように補正し、どこまで検証したのか」
です。
実際、研究でスマホを使うときはかなり条件をそろえている
2025年の研究では、スマートフォンで歯科材料の色を評価しています。[6]
使われたのはXiaomi 11T Proです。
ただし撮影方法を見ると、普段のスマホ撮影とはかなり違います。
- スマートフォンを三脚で固定
- 被写体までの距離は25cm
- 同じ室内で撮影
- ホワイトバランスは5500K
- 18%グレーカードを基準に露出を調整
- 偏光撮影を使用
- 画像の3か所から色を測り、その平均値を使用
ここまで条件を整えて、研究用の色データとして扱っています。[6]
つまり、「スマホで撮った写真」という言葉だけでは、色測定としてどれくらい信頼できるかは判断できません。
普通に手で持って撮った写真と、距離・光・ホワイトバランスまでそろえて撮った写真では意味が違います。

ただしAIなら、条件の違いをある程度吸収できる可能性もある
ここも公平に見ておきたいところです。
2026年には、異なる照明条件や撮影機器を含む歯科画像から、歯のシェードを推定するAI研究も報告されています。[7]
「PerceptShade」という研究用システムでは、357人から得られた1,553枚のシェードマッチング画像を用いて開発・評価し、さらに別に集めた50症例でも評価しています。[7]
撮影画像には、さまざまな照明条件や、スマートフォン・デジタルカメラなど異なる機器で撮影したものが含まれていました。
もちろん、これはWHITE CHECKERとは別の仕組みです。
しかもPerceptShadeでは、写真内に基準となるシェードタブを写し込む必要があります。[7]
この研究からWHITE CHECKERの性能を推測することはできません。
ただ、撮影条件が変わるから画像AIそのものが成立しない、というわけでもありません。
重要なのは、
「AIなら自動的に補正してくれるはず」と考えることではなく、そのAIが実際にどの条件で検証されたかを見ること
です。
AIが判定する前に、写真はすでにいくつもの段階を通っている
今回の仕組みは、4段階に分けると分かりやすいと思います。
1.実際の歯
- 歯そのものの色
- ステイン
- 唾液
- ツヤ
- 乾燥状態
- レジンやセラミックなどの修復物
2.光
- 暖色の照明なのか
- 白っぽい照明なのか
- 窓からの自然光なのか
- 光の強さ
- 光が当たる方向
3.スマートフォン
- カメラの機種
- 露出
- ホワイトバランス
- 画像処理
- 撮影距離
- 撮影角度
4.AI
- どこを歯として認識するか
- どこをステインと判断するか
- 反射状態をどう評価するか
- それぞれをどう総合点へまとめるか
AIは最後の段階です。
つまりAIは、歯そのものを直接測っているわけではありません。
歯 → 光 → スマホ画像 → AI判定
という段階を通ります。
だからAIの性能だけでなく、AIへ入る画像がどれくらい安定しているかも大切になります。

同じ歯でも、スマホ機種や照明によって色値は変わり得る
2024年には、45人を対象に、3種類のスマートフォンと5種類の照明条件を比較した研究があります。[8]
スマートフォンの機種と照明条件のどちらも、L*a*b*による色評価に有意な影響を与えました。[8]
しかも、ただ適当に撮影した実験ではなく、撮影条件をある程度そろえたうえでの結果です。
だからWHITE CHECKERについても、
- iPhoneとAndroidでどの程度同じ点になるのか
- スマートフォンを買い替えても同じ人の経過を追えるのか
- 照明が違うとどのくらい変動するのか
というところは気になります。
ただし、「機種が違えばWHITE CHECKERの点数が必ず大きく変わる」とは言えません。
WHITE CHECKER側で画像を補正している可能性もあるからです。
だからこそ、WHITE CHECKERそのものを使った検証データが見たいところです。
スマートフォンの「自然な写真」と測色用写真は同じではない
スマートフォンは、目で見て自然な写真になるように、さまざまな画像処理を行います。
つまり私たちが画面で見ている写真は、カメラセンサーが受けた情報をそのまま表示しているわけではありません。
特に色を測るときは、ホワイトバランスが重要です。
2025年の研究では、歯科用シェードタブを同じ条件で撮影し、画像形式とホワイトバランス処理の違いを比較しています。[9]
グレーカードを使ってホワイトバランスを合わせた画像では基準画像との色差を小さくできた一方、ホワイトバランスを行わなかった画像では、視覚的な許容範囲を大きく超える色差が生じました。[9]
ここでも、
きれいに見える写真
と
色を測るために標準化された写真
は同じではありません。
一般のスマートフォン画像から歯の状態を判定するAIでは、こうした違いをどこまで吸収できるかが重要になります。
さらに、撮影している間に「歯そのもの」が変わることもある
ここからさらにややこしくなります。
同じスマートフォン。
同じ人。
同じ部屋。
同じ照明。
それでも、歯そのものの見え方が変わる場合があります。
その代表が乾燥です。
歯は口を開けた状態が続いて乾燥すると、測色上の色が変化します。
2019年の研究では、32人の歯を対象に、脱水と再水和に伴う色の変化を分光測色計で追跡しました。[12]
その結果、脱水開始からわずか1分の時点で、87%の歯が、人が色の違いに気づき得るとされる色差の基準を超え、72%が、臨床的な許容範囲として用いられる基準を超えました。[4][12]
つまり、歯は短時間乾燥するだけでも、測定される色が変わり得るということです。
これより以前のランダム化比較試験でも、歯の脱水によって色調が変化することが報告されています。[13]
乾燥すると、エナメル質内の水分状態が変わり、光の散乱の仕方も変化します。
その結果、透明感が低下し、内部の象牙質の黄色みが見えにくくなって、歯が明るく見える方向へ変化することがあります。
だから、
1回撮影。
「うまく撮れなかった」
もう一度撮影。
さらにもう一度。
と長時間口を開け続けていると、最初と最後が完全に同じ状態とは限りません。
歯の乾燥と色については「前歯の白い詰め物、なぜレジンを何色も重ねるの?」でも詳しく解説しています。

「ツヤ」を測るなら、唾液や撮影角度も気になる
WHITE CHECKERでは歯面の光反射ムラを「ツヤレベル」として評価します。
すると、色測定以上に気になるのが、
歯面がどのくらい濡れているか
と
スマートフォンと歯の角度
です。
天然歯は平らな板ではありません。
中切歯、側切歯、犬歯では、カメラに対する歯面の向きが少しずつ違います。
スマートフォンを真正面に構えるのか、少し上から撮るのか、少し右から撮るのか。
これだけでも、表面で光を反射する位置は変わります。
また、歯面の唾液による鏡面反射が画像解析へ影響し得ることは、偏光歯科写真の研究でも問題にされています。[10]
ただし、
「だからWHITE CHECKERのツヤ判定は正確ではない」
とは言えません。
アルゴリズム側で撮影条件の違いをある程度吸収している可能性もあります。
現時点で言えるのは、ツヤを画像から判定するなら、角度や湿潤状態を変えたときの再現性も知りたいというところまでです。
私が一番見てみたいのは「同じ歯を10回撮ったら何点になるか」
ここまでいろいろ書いてきましたが、WHITE CHECKERについて私が最も見てみたいデータは、とても単純です。
同じ人が、同じ場所で、同じスマートフォンを使って、同じ歯を10回撮ったら何点になるのか。
例えば、説明のための架空例ですが、
88点、89点、88点、90点、89点。
というように集まるのであれば、
「かなり安定しているんだな」
と考えられます。
反対に、
73点、91点、82点、76点、94点。
のように大きく動くのであれば、
昨日80点、今日85点。
だから5点改善した。
とは簡単に言えません。
同じものを何度測っても、どれくらい同じ結果になるか。
これを再現性と考えます。
「毎回同じ」と「正確」は別の話
再現性が高いことと、正確であることも同じではありません。
例えば同じ歯を測るたびに、
90、90、90、90、90。
と表示されたとします。
とても安定しています。
でも基準となる別の測定法と比べたら、大きくずれているかもしれません。
反対に、平均すると基準に近くても、75、93、81、88、69と毎回大きく動くなら、日々の変化を追うには使いにくいでしょう。
だから測定方法を見るときは、
- 基準となる方法とどのくらい一致するか
- 繰り返し測ったときにどのくらい安定するか
を分けて考える必要があります。
WHITE CHECKERそのものは、どこまで検証されている?
サンスターは、WHITE CHECKERについて、長年のステイン研究や調査をもとに開発した独自アルゴリズムであると説明しています。[1]
一方、2026年9月24日時点で今回確認できた公表資料の範囲では、
- 分光測色計とどのくらい一致したのか
- 同じ人を何度撮っても同じ点になるのか
- 異なるスマートフォンでどの程度一致するのか
- 照明を変えると何点程度動くのか
- 歯科医師や歯科衛生士が確認したステイン領域とどの程度一致するのか
といった詳しい精度・再現性の検証結果までは確認できませんでした。
これは、「精度が低い」という意味ではありません。
逆に、「歯科用測色器と同じくらい正確だ」ともまだ言えません。
現時点で公開されている資料だけでは、そこまで判断できないということです。
「一般レベル」と比較できる――でも、誰の平均?
WHITE CHECKERでは、自分の結果を「一般レベル」と比較できます。
これも分かりやすい機能です。
ただしサンスターの発表には、サービス公開時の一般レベルは過去の調査に基づくと注記されています。[1]
つまり公開直後の段階では、
「これまでWHITE CHECKERを使った全利用者のリアルタイム平均」
という単純な意味ではありません。
では、
- 何人を調べたのか
- 年齢構成はどうだったのか
- ホワイトニング経験はどうだったのか
- 喫煙習慣はどうだったのか
- コーヒーや紅茶をよく飲む人はどのくらいいたのか
- どのような撮影条件で調べたのか
といった細かな情報は、今回確認した発表資料からは判断できませんでした。
そして、もっと大切なのは、
平均=理想ではない
ということです。
平均より高ければ健康。
平均より低ければ不健康。
という意味でもありません。
少し寄り道――「20〜40代で歯の色が悩み1位」は原資料と少し違う
今回のサンスター発表には、日本歯科医師会の2022年調査を引用し、「特に20〜40代では歯の色が最も気になる悩み」という趣旨の記載があります。[1]
ただ、元の日本歯科医師会調査を確認すると、10代では「歯の色」が37.6%で1位、20代では41.4%で1位、30代では41.0%で1位でした。
一方40代では、「歯と歯の間にものが挟まる」が36.8%で1位、「歯の色」は36.1%で2位です。[2]
そのため原資料に忠実にまとめるなら、「10〜30代では歯の色が悩みの1位」という表現の方が正確です。
これはWHITE CHECKERの性能とは別問題ですが、数字を扱う記事なので、引用元まで確認しておきたいところです。
80点から85点へ――5点の差にどれだけ意味がある?
100点方式でもう一つ気になるのが、1点や5点の差が何を意味するのかです。
WHITE CHECKERでは、
- ステインクリアレベル
- ツヤレベル
- 純美白度
が表示されます。
ただし今回確認した公表資料では、
- ステインとツヤをどの割合で総合点へ反映しているのか
- S・A・B・Cの具体的な点数境界
- 1点の差がどの程度の状態差を意味するのか
- 通常の測定ばらつきが何点程度なのか
までは確認できませんでした。
そのため、
81点から83点になった。
だから確実に改善した。
と細かな点数差まで読み込むのは、現時点では慎重にした方がよさそうです。
同じ85点でも、状態が同じとは限らない
これは仕組みを説明するための架空例です。
例えば、
Aさんはステインが非常に少ないけれど、ツヤが少なめ。
Bさんはステインがやや多いけれど、ツヤが高い。
そして何らかの計算で両方が85点になったとします。
この場合、同じ85点でも状態は違います。
実際のWHITE CHECKERがこのような計算をしている、という意味ではありません。
配点方法は今回確認した資料からは分かりません。
ここで伝えたいのは、複数の情報を一つの総合点にすると分かりやすくなる一方、その人の状態の違いが一つの数字へ圧縮されるということです。
総合点だけでなく、ステインクリアレベルとツヤレベルをそれぞれ見る方が、何が変わったのかを理解しやすいかもしれません。
セラミックやレジンの前歯はどう判定される?
歯科医院にいると、ここも気になります。
前歯がすべて天然歯という方ばかりではありません。
- コンポジットレジンが入っている人
- セラミッククラウンが入っている人
- ラミネートベニアが入っている人
- 天然歯と人工材料が混在している人
もいます。
歯科材料は天然歯とは光学的性質が違います。
透明性、厚み、背景、表面性状によって、見える色や反射の仕方も変化します。
WHITE CHECKERは矯正装置を使用中の人には対応していないと明記しています。[1]
一方、今回確認した公開資料では、
- セラミックやレジンをAIがどのように識別するのか
- 天然歯と同じように判定するのか
- 判定対象から除外するのか
という詳細までは分かりませんでした。
ここも今後確認してみたいところです。
高得点なら「健康な歯」なの?
ここはとても大切です。
WHITE CHECKERの点数が高かったとしても、
- 虫歯がない
- 歯周病がない
- 歯の神経が健康
という意味ではありません。
WHITE CHECKERが公表上評価しているのは、ステインと歯面の反射状態です。[1]
虫歯、歯周病、歯の亀裂、歯髄の状態などを診断するものではありません。
例えば、
- 1本だけ急に暗くなった
- 白い斑点や茶色い部分がある
- 痛い
- しみる
- 欠けた
といった変化がある場合は、点数にかかわらず歯科医院で確認した方がよいでしょう。
白い歯=健康な歯、ではありません。
見た目と健康状態は分けて考える必要があります。
ではWHITE CHECKERは使わない方がいい?
ここまでかなり細かく見てきたので、
「結局、使わない方がいいの?」
と思われるかもしれません。
私は、そういう話ではないと思います。
WHITE CHECKERは歯科医院の分光測色計として発売された医療機器ではありません。
メーカー自身も医療診断目的ではないと明記しています。[1]
スマートフォンだけで簡単に使えて、
「ここにステインがあるんだ」
「自分の歯ってこんなふうに光を反射しているんだ」
「少し丁寧にケアしてみようかな」
と、自分の口の中へ目を向けるきっかけになる。
これは歯科用測色器とは別の価値です。
セルフケアへの入り口としての使いやすさ
と
歯科的な測色精度
は、別々に考えればよいと思います。
経過を見るなら「高得点を出す」より「撮影条件をそろえる」
もしWHITE CHECKERを何度か使い、自分の変化を見たい場合は、まずメーカーの撮影手順に従うことが前提です。
そのうえで比較するなら、
- できるだけ同じスマートフォンを使う
- 同じ場所で撮る
- 同じ照明で撮る
- 距離や角度を大きく変えない
- 長時間口を開け続けて歯が乾いてから比較しない
- 良い点が出るまで何度も撮り、一番高い点だけを記録しない
このあたりをそろえると、余計な条件差を減らしやすくなります。
これは、
「こうすれば医学的に正しい点数が出る」
という意味ではありません。
昨日と今日を比較するなら、できるだけ昨日と同じ条件にする
という測定の基本的な考え方です。

私ならWHITE CHECKERをこう検証してみたい
もし研究としてWHITE CHECKERそのものを詳しく評価するなら、まず見てみたいのは繰り返し測定です。
同じ歯を同じ条件で10回撮影する
純美白度がどのくらい散らばるのか。
スマートフォンを変える
iPhone、Pixel、Galaxyなどで同じ歯を撮り、どこまで一致するか。
照明を変える
昼白色、暖色、自然光などで比較する。
距離と角度を変える
少し近づく、少し離れる、真正面、斜めなどでツヤレベルや純美白度がどの程度動くか。
歯の乾燥状態を変える
湿った状態と、少し乾いた状態でどうなるか。
歯科用測色器と比較する
L*a*b*やWI_Dとの関係を見る。
ステイン判定を人と比較する
AIが「ステインあり」と示した領域と、歯科医師や歯科衛生士が確認した領域がどの程度一致するか。
ツヤを機器と比較する
専用の光沢測定機器などと、ツヤレベルがどの程度対応するか。
天然歯と修復物を分ける
天然歯、コンポジットレジン、セラミックで結果がどう変わるか。
開発に関係していない施設でも再現する
最終的には、開発元とは別の研究者が同じような結果を再現できるか。
ここまで分かれば、WHITE CHECKERの100点が何を、どのくらい安定して表しているのかかなり詳しく評価できるようになります。

「AI」という言葉より、何と比べて検証したかを見る
最近は歯科でもAIという言葉を見る機会が増えました。
AIと聞くと、
「人より正確そう」
と思う人もいれば、
「AIだから信用できない」
と感じる人もいると思います。
でも、どちらも少し早いと思います。
AIを評価するときに大切なのは、AIを使っているかどうかではありません。
- 何を正解として開発したのか
- どれくらいのデータを使ったのか
- 開発に使っていない別のデータでも動いたのか
- 基準となる測定法とどの程度一致したのか
- 同じものを何度測っても安定するのか
- 異なる撮影条件でも性能を保てるのか
こうした検証の方が重要です。
AIだから正しいわけでもありません。
AIだから間違っているわけでもありません。
結局は、データを見て判断します。
現時点で分かっていること・まだ分からないこと
2026年9月24日時点の公表情報から確認できるのは、次のような点です。
現時点で確認できること
- スマートフォンのブラウザから利用できる
- アプリやログインが不要
- 約2分で判定できる
- AIでステインの付着エリア・占有率を解析する
- 歯面の光反射ムラからツヤを評価する
- それらを統合して純美白度を100点満点とS〜Cで表示する
- 一般レベルと比較できる
- 質問回答と結果をもとにOra²製品の提案が表示される
- 矯正装置使用中には対応していない
- 撮影環境によって結果が変動する場合がある
- 医療診断を目的としていない
今回確認できた公開資料だけでは判断できないこと
- 分光測色計との一致度
- WI_Dなど歯科用白色度指標との関係
- 同じ歯を繰り返し撮ったときの再現性
- スマートフォン機種間の再現性
- 照明条件による変動幅
- ステインとツヤの総合点への重み付け
- S〜Cの具体的な点数境界
- 1点の差がどの程度の違いを意味するのか
- セラミックやレジンをどのように扱うのか
- 独立した研究者による精度・再現性検証
これらは、存在しないと断定するものではありません。
2026年9月24日時点で、今回確認できた公表資料からは判断できなかった、という意味です。
歯科衛生士として思うこと――「何点?」より「何の点数?」
WHITE CHECKERは、とても今っぽいサービスだと思います。
スマートフォンを開く。
歯を撮る。
AIが解析する。
数分後には、自分の歯が100点満点で表示される。
歯科医院へ行かなくても、自分の歯をじっくり見るきっかけになります。
「こんなところに着色があるんだ」
「歯って色だけではなく、ツヤも関係するんだ」
と気づく入口になるなら、面白い試みだと思います。
ただ、数字が表示されると、その数字は想像以上に「客観的」に見えます。
92点。
85点。
Sランク。
こう表示されると、とても正確な測定結果のように感じます。
だからこそ私は、
「何点だった?」の前に、「何の点数だった?」
を一度考えてみてほしいと思います。
WHITE CHECKERの純美白度は、歯科用分光測色計で歯の色だけを測って100点にした数値ではありません。
ステイン。
歯面の光反射。
その2つをAIで解析して作ったOra²独自の指標です。
歯が「白く見える」ことには、
- 歯そのものの色
- 黄み
- 明るさ
- 表面ステイン
- ツヤ
- 透明感
- 水分状態
- 撮影する光
さまざまな要素が関わります。
そしてスマートフォンによる歯色解析そのものには、研究する価値があります。
実際に歯科研究でもスマートフォンは利用されていますし、撮影条件の違いに対応しようとするAI研究も進んでいます。[5][7]
だから、
「スマホだから信用できない」
でもなく、
「AIだから正確」
でもありません。
その数字が、
何を、どんな条件で測り、どこまで検証されて作られたものなのか。
そこを理解して使うこと。
歯科衛生士としては、それが一番大切だと思っています。
よくある質問
Q.WHITE CHECKERで100点なら、歯科的にも一番白い歯ですか?
いいえ。その意味ではありません。
WHITE CHECKERの100点は、ステインクリアレベルとツヤレベルから作られたOra²独自の「純美白度」です。
歯科用分光測色計の数値や、シェードガイドで最も白い色だったという意味ではありません。
Q.100点に近ければ、歯も健康ということですか?
いいえ。
WHITE CHECKERはステインやツヤをもとに純美白度を判定するサービスで、虫歯や歯周病などを診断するものではありません。
1本だけ急に暗くなった、白や茶色の斑点がある、痛い、しみる、欠けたなどの変化がある場合は、点数に関係なく歯科医院で確認してください。
Q.80点だったらホワイトニングをした方がいいですか?
点数だけでホワイトニングが必要かどうかを判断することはできません。
黄色く見える原因が表面の着色なのか、その人本来の歯の色なのか、修復物なのかでも対応は変わります。
Q.昨日より5点下がったら、歯が黄ばんだのでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。
照明、撮影角度、スマートフォン、歯の乾燥状態などによる変動も考える必要があります。
WHITE CHECKERそのものの通常の測定ばらつきが何点程度なのかも、今回確認できた公表資料からは判断できませんでした。
Q.コーヒーや紅茶のステインも分かりますか?
サンスターは、飲食由来のステインやたばこのヤニなどが疑われる場所をAIが検出すると説明しています。
ただし画像だけから、その着色原因を医学的に診断するサービスではありません。
Q.前歯にセラミックやレジンがあっても使えますか?
今回確認した公表資料では、矯正装置使用中には対応していないことは明記されています。
一方、セラミックやコンポジットレジンなどの修復物をどのように認識・評価するのかまでは確認できませんでした。
Q.ホワイトニング前後の比較に使えますか?
セルフチェックとして記録するのは興味深いと思います。
ただし、歯科医院で行う正式な測色と同じものではありません。
比較するのであれば、できるだけ同じスマートフォン、同じ場所、同じ照明、似た角度で撮影した方が余計な条件差を減らせます。
Q.歯科医院では何を使って歯の色を確認しますか?
シェードガイド、条件をそろえた写真、分光測色計などがあります。
目的によって複数の方法を組み合わせます。
Q.AIなら人が見るより正確なのでは?
AIというだけでは正確さは決まりません。
何を基準にして、どのくらい一致したのか。
同じものを繰り返し測ったとき、どのくらい安定するのか。
異なる撮影条件でも性能を保てるのか。
そうした検証データを見る必要があります。
参考文献・参考資料
本文中の番号は以下の参考文献・参考資料に対応しています。
- サンスターグループ.Ora²、歯の「純美白度」を判定するAIツールを独自開発「Ora² WHITE CHECKER」を公開~スマホで撮るだけで歯の白さを可視化~.2026年9月24日.サンスター公式発表
- 公益社団法人日本歯科医師会.歯科医療に関する一般生活者意識調査.2022.日本歯科医師会資料
- Pérez MM, Ghinea R, Rivas MJ, et al. Development of a customized whiteness index for dentistry based on CIELAB color space. Dent Mater. 2016;32(3):461-467. doi:10.1016/j.dental.2015.12.008. PubMed
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- 橋本遼太.ピロリン酸ナトリウムのステイン除去メカニズムに関する研究.オレオサイエンス.2022;22(9):465-470. doi:10.5650/oleoscience.22.465. J-STAGE
※Ora² WHITE CHECKERは2026年9月24日公開のサービスです。本記事は同日時点で確認できたサンスターの公表資料、日本歯科医師会資料、および歯科の色調・画像評価に関する研究をもとにまとめています。今後、WHITE CHECKERそのものの精度・再現性・機種間一致性などに関する研究や技術資料が新たに公表された場合、評価が変わる可能性があります。
