2026年9月20日

(院長の徒然コラム)

はじめに
「親知らずが隣の歯に当たって、その歯の根が吸収されています」
歯科医院で歯科用CTを見ながらこう説明されたら、かなり驚くと思います。
根が「溶けている」なら、その第二大臼歯も抜かなければいけないのか。神経も取らなければならないのか。原因の親知らずを抜いても、すでに始まった吸収はその後も進み続けるのか。
どれも自然な疑問です。
2026年、BMC Oral Healthに、この問題をかなり真正面から調べた研究が査読後の早期公開版として公表されました。対象は、埋伏した第三大臼歯、いわゆる親知らずとの直接接触に関連して、その手前の第二大臼歯に外部歯根吸収(external root resorption:ERR)が起きていた55人65歯です。
原因と考えられた親知らずを抜歯し、術前と少なくとも6か月後の歯科用コーンビームCT(CBCT)を比較したところ、今回追跡できた第二大臼歯では、ERRの明らかな画像上の進行は検出されませんでした。
さらに目を引くのが歯髄の結果です。
術前にすでに根管治療されていた1歯を除くと、64/64歯、100%で最終診察時にも冷刺激への反応が維持されていました。根尖部の病変や動揺の増加も確認されていません。
「根が吸収されている」ことと、「歯髄、いわゆる神経がもう失活している」ことは、同じではないようです。
ただし、この64/64という数字だけを見て「親知らずを抜けばどんなERRでも止まる」「神経を取る必要はない」と読むのは危険です。今回の研究では、最初から無症状で歯髄感覚反応が保たれた歯が主に選ばれており、追跡期間も長期とはいえません。
今回は、この2026年の研究を中心に、1980年代から積み上がってきた病態研究、ヒト組織学、歯科用CT研究、歯髄診断、さらに親知らずを抜いた後の遠心骨欠損までつなげて見ていきます。
そもそも「親知らずで隣の歯の根が溶ける」とは?
まず、「根が溶ける」という表現を少し正確にしておきましょう。
永久歯の歯根が、酸のようなものによって単純に溶解しているわけではありません。外部歯根吸収とは、歯根の外側からセメント質や象牙質が、破歯細胞と呼ばれる吸収細胞によって失われていく現象です。
2022年のInternational Endodontic Journalの総説では、歯根表面の未石灰化セメント質や歯根膜、根管内側では象牙前質や象牙芽細胞層などが、通常はその下にある石灰化歯質を吸収細胞から守っていると整理されています。
これらの防御層が障害され、吸収細胞が石灰化した歯質へ作用できる条件が整うと、歯根吸収が始まり得ます。
ですから、親知らずがヤスリのように第二大臼歯の根を物理的に削っている、と理解するのは少し違います。
親知らずの歯冠が第二大臼歯の歯根へ接触し、局所に圧力がかかる。その影響で歯根膜や根面を守る環境が損なわれ、破歯細胞がセメント質、さらに象牙質を吸収していく。
患者さん向けには「根が溶けた」と表現することがありますが、実際には細胞が関わる生物学的な吸収現象です。

なぜ「押される」と歯根が吸収されるのか
歯は骨の中にあります。単純に「押されたら根が削れる」という話ではありません。
矯正治療の研究では、歯へ力が加わると歯根膜や周囲骨が作り替えられ、通常は骨側の吸収と形成によって歯が移動します。一方、圧迫が強い、あるいは長く続き、セメント質側の修復能力を超えると、象牙質まで吸収が及び得ると考えられています。
ただし、この病態説明に使われる研究の多くは矯正性の外部歯根吸収を調べたもので、親知らずERRそのものの研究ではありません。親知らずによるERRへ矯正研究の数字をそのまま当てはめるのではなく、「機械的な圧力と歯根表面の修復能のバランス」という病態を理解する補助資料として読む必要があります。
そして、圧力だけですべてが決まるわけでもありません。
1981年、Nitzanらは、埋伏歯199例を口内法X線写真で調べました。隣在歯の歯根吸収を認めたのは15例、7.5%でした。そして、その15例では埋伏歯との接触部と歯根吸収部が一致していました。
これは「接触・圧迫が関係している」ことを支持します。
一方で、埋伏歯が存在していても大多数には明らかな歯根吸収がありませんでした。著者ら自身も、圧力だけではこのばらつきを十分説明できないのではないかと考察しています。
ここは現代の歯科用CT研究と単純に発生率を比較してはいけません。1981年は2次元の口内法X線写真を使っており、後述するように歯科用CTではより小さなERRまで検出されます。
それでも、「接触している人全員が同じように吸収されるわけではない」という観察は重要です。
同じような位置に親知らずがあっても、接触位置、圧力のかかり方、持続時間、歯根膜の状態、局所炎症、セメント質の修復能など、複数の条件が関わっている可能性があります。
矯正性の歯根吸収では、同じ程度の力を受けても個人差が大きいことが知られ、RANK/RANKL/OPGなど吸収細胞を調節する仕組みや遺伝的素因も研究されています。
ただし、これも矯正性歯根吸収の研究です。「親知らずERRの何%が遺伝で決まる」といった転用はできません。ここでは、機械刺激だけでなく、患者側の生物学的反応も歯根吸収のばらつきに関わり得るという背景として扱うにとどめます。
歯根吸収には「活動中」「停止」「修復」という状態がある
ここは今回の研究を読むうえで、とても重要です。
歯科用CTで歯根に吸収窩が見えているからといって、その場所で今この瞬間も吸収が同じ速度で進み続けているとは限りません。
Andreasenは1987年、再植歯を用いた動物実験モデルで外部歯根吸収を詳細に組織学的観察し、表面吸収について「活動中」「停止」「修復」という状態を区別しました。
これは親知らずによるERRを直接調べた研究ではありません。しかし、外部歯根吸収を「欠損があるか、ないか」だけでなく、「いま吸収細胞が活動しているのか、活動が止まっているのか、修復へ向かっているのか」という視点で理解するための古典的な病態モデルです。
つまり、吸収窩が残っていることと、現在も吸収が進行していることは同じではありません。
さらに2016年のFellerらの総説では、吸収細胞が吸収窩から離れたあと、歯根膜由来の細胞が入り、セメント芽細胞様の細胞が基質を形成し、最終的に修復性セメント質が形成される過程が整理されています。
ただし、Fellerらが主に扱っているのも矯正性の外部歯根吸収です。親知らずERRで同じ修復量がそのまま起こることを証明した研究ではありません。ここでも、セメント質修復の一般的な生物学を理解する補助資料として使います。
そして、「修復」という言葉にも注意が必要です。
吸収が止まることと、失われた歯根の形や長さが完全に元へ戻ることは別です。
吸収面に修復性セメント質が形成されることはあっても、すでに失われた象牙質や歯根長が元の解剖学的形態そのままに再生するわけではありません。
今回の2026年研究も「根が元通りになった」と報告した研究ではありません。
親知らずを抜いた後、吸収欠損に明らかな追加進行を認めなかった。
ここが大切です。

圧迫性ERRでは「原因となる刺激を取り除く」という考え方が昔からある
1988年のTronstadの総説では、外部歯根吸収を維持する刺激の一つとして圧力が挙げられています。第三大臼歯による第二大臼歯の圧迫性吸収も例として扱われ、刺激がなくなれば吸収過程が停止し得るという考えが示されました。
2003年、Fuss、Tsesis、Linは、この考え方をさらに臨床的に整理しています。
歯根吸収では、まず歯根を守る組織への損傷があり、その後、吸収細胞を活動させ続ける刺激が必要になる。刺激が根管内感染なのか、歯周組織由来の感染なのか、矯正力なのか、埋伏歯や腫瘍による圧迫なのかによって、治療の考え方も変わります。
ここが重要です。
「歯根吸収」という一つの言葉だけで、すべてを同じ病気として扱うことはできません。
感染によって進む外部歯根吸収と、圧迫に関連する外部歯根吸収では、病変を維持している刺激が違います。
2022年のPatelらの総説でも、外部表面吸収は圧力に関連し、感染を必須とせず、圧迫原因がなくなれば停止・修復へ向かい得る病態として整理されています。
European Society of Endodontologyの2023年Position Statementでも、隣接する埋伏歯は外部表面吸収を起こし得る圧迫原因として挙げられています。通常は無症状で、歯髄感覚検査にも正常に反応することが多いと整理されています。
ただし、今回のYaoらの65歯すべてを、PatelやESEが整理する狭義の外部表面吸収と完全に同一視することはできません。Yao研究には、吸収が根管系方向へかなり深く及んだ症例も含まれています。
PatelやESEの分類は、今回の症例すべてを一つの箱に入れるためではなく、「圧迫による外部吸収では、歯根外側の病変と歯髄の状態を分けて評価する」という病態理解の土台として使うのが適切でしょう。
40年以上前から「親知らずを抜いた後」は観察されていた
今回の2026年論文は新しい研究ですが、「原因の親知らずを抜いたら隣の歯はどうなるのか」という疑問そのものは昔からあります。
1981年のNitzan研究では、歯根そのものではなく歯周組織だけが傷害されていた16例のうち5例を、原因の埋伏歯を抜歯してから1年間追っています。その5例では、歯槽硬線や歯根膜腔を含む正常なX線像へ回復していました。
1982年のGoultschinらの総説では、水平埋伏した下顎第三大臼歯によって第二大臼歯遠心根に進んだ吸収を認めた症例が紹介されています。原因の親知らずを除去したあとも、当時用いられた生活反応検査で反応が保たれ、その後さらなるX線変化を認めなかったという症例でした。
ここでは「歯髄血流が正常だったことが証明された」とは言いません。1980年代の“vitality test”という用語は、現在の歯髄感覚検査と血流評価を厳密に分ける考え方とは異なる文脈で使われています。
1997年には、Nemcovskyらがさらに一歩踏み込みました。
第三大臼歯に近接していたため抜去された第二大臼歯11歯を、X線だけでなく実際に組織学的に観察しています。X線では8/11、臨床的には9/11で吸収が認められましたが、組織学的には11/11すべてに吸収所見が確認されました。
さらに、表面吸収がみられた歯では、吸収窩に修復性セメント質も認められています。
一方、この研究の対照歯にも小さな組織学的吸収部位は認められました。
つまり、顕微鏡レベルの微小な歯根吸収そのものは、親知らず接触例だけに特異的な現象ではないということです。そのうえで、第三大臼歯に近接した研究群では、臨床・X線で問題になる大きな吸収と修復性セメント質が確認された点に意味があります。
ここまで研究史を振り返ると、
「親知らずによる第二大臼歯ERRでも、原因除去後に保存できる症例がある」
という観察は、2026年に突然現れたわけではないことが分かります。

2022年には63歯を前向きに追った
2022年、Quらは、埋伏第三大臼歯によって第二大臼歯に外部歯根吸収が起きた58人63歯を前向きに追跡しました。
原因となる第三大臼歯を抜歯し、6か月後まで経過を確認したところ、56/63歯、約89%が無症状で、温冷刺激への正常反応を維持しました。
一方、全例が問題なく経過したわけではありません。
多変量解析では、年齢が高いことと、すべての歯根が吸収の影響を受けているタイプが不良予後と有意に関連していました。
ここで重要なのは、2026年の64/64を単独で「100%成功」と読むのではなく、先行研究も含めて、
原因となる第三大臼歯を除去した後に、歯髄反応を保ちながら第二大臼歯を保存できる症例がかなり存在する
と読むことです。
そして2026年――65歯を抜歯前後の歯科用CTで比較した
今回の本命論文を詳しく見てみます。
研究は北京大学第三医院で行われた、単施設の後ろ向きコホート研究です。
2022年から2024年に、埋伏第三大臼歯との直接接触によって第二大臼歯にERRがあると診断された症例が対象候補になりました。
ここで、今回の64/64を理解するうえで極めて重要なのが組み入れ条件です。
対象となった第二大臼歯は、臨床的に無症状で、Endo-Iceを用いた冷刺激検査で対照歯と同程度の陽性反応を示し、刺激後の持続痛がなく、打診痛・触診痛もないことが基本条件でした。
一方、吸収部にう蝕がある歯、根尖性歯周炎、瘻孔、Grade II以上の動揺、別の原因によるERR、矯正治療歴などは除外されています。
また、吸収が髄室床まで達した症例も除外されました。
つまりこれは、
親知らずによるERRを重症度に関係なく全部集めた研究ではありません。
無症状で、歯髄感覚反応が保たれ、第二大臼歯の保存可能性が比較的高い症例を中心に集めた研究です。
一方で興味深いのは、根管系方向まで進展した吸収は必ずしも除外していない点です。
研究では「歯髄関与あり」という画像上の分類項目を設定しており、65歯中39歯が「あり」に分類されています。
ただし、この39歯すべてで臨床的・肉眼的に歯髄露出が確認されたという意味ではありません。研究上は、CBCTで吸収欠損が根管系へ及ぶように見えるものを「歯髄関与あり」として扱っています。
ですから、
「39/65歯で歯髄が露出していた」
とは読み替えません。
233歯を調べて、最終解析は65歯
研究では233本の第二大臼歯がまず調べられました。
最終解析に入ったのは55人65歯です。
除外された168歯のうち、もっとも多かったのは6か月未満の追跡で145歯。ほかに、う蝕による歯髄炎または根尖性歯周炎が11歯、原因となる親知らずを抜かなかったものが7歯、吸収が髄室床へ及んだものが5歯でした。
ここはかなり重要です。
233歯のうち最終的に65歯しか解析へ残っていません。
しかも除外の大部分が追跡不足でした。
著者自身も、定期的に再来できた患者、あるいは比較的経過の良い患者が残りやすかった可能性を認め、選択の偏りとして注意を促しています。

65歯はどんな症例だった?
解析された65歯の平均年齢は約25.8歳。
上顎18歯、下顎47歯でした。
ERRの位置は頸部3歯、中部43歯、根尖部19歯。
研究上の画像分類で「歯髄関与あり」は39歯、「なし」は26歯でした。
影響を受けていた歯根は、63/65歯では1根のみで、2根以上に及んでいたのは2歯だけでした。
歯根長そのものが変化しているタイプは19歯、歯根長が保たれているタイプは46歯です。
したがって「65歯」と一言で言っても、吸収位置や深さには幅があります。
ただし、複数根へ広範囲に及んだ症例は非常に少ない。
この点も、すべての重症ERRへ64/64という結果をそのまま広げられない理由です。
研究方法には一つ、説明の足りない点もある
細かいところですが、今回の論文を読んでいて気になる記載があります。
組み入れ条件では「正常な歯髄感覚反応」が明記されている一方、最終結果では術前に根管治療を受けていた1歯を除いて64/64を評価したと記載されています。
つまり、術前根管治療済みの1歯が最終65歯の中に含まれています。
研究本文だけでは、なぜ正常な歯髄感覚反応を必要とする集団に、その1歯が含まれたのか十分な説明がありません。
大勢に影響する問題ではありませんが、組み入れ条件と実際の解析集団の間に小さな記載上の不整合がある点は押さえておきたいところです。
歯科用CTで「吸収が進んだか」をどう測ったのか
今回の研究は、術前と術後のCTを並べて「変わっていないように見える」と判定しただけではありません。
歯根長、吸収欠損の上端・下端、吸収部の縦方向の大きさ、第二大臼歯遠心のCEJから歯槽骨頂までの距離などを定義し、術前と最終追跡時のCBCTで比較しています。
歯根長が変化している症例では歯根長を評価し、歯根長が変わっていない症例では吸収欠損の縦方向の大きさを算出しました。
骨については、第二大臼歯遠心のCEJから歯槽骨頂までを線形に測定しています。
歯科用CTでは、ひとつの歯を軸位断・矢状断・冠状断など複数方向から追うことで、2次元画像では重なって見えにくい位置関係を確認できます。
この見方については、院内コラムの「歯医者のCTはなぜ3方向を見る?十字線で同じ歯を断面から追う理由」でも詳しく解説しています。

結果① 親知らずを抜いたあと、ERRの明らかな進行は検出されなかった
まず、歯根長そのものが変化していた症例です。
術前と術後の歯根長の推定差は0.110 mm、95%信頼区間 −0.185~0.380 mm、P=0.457でした。
歯根長が変化していない症例では、吸収欠損の縦方向の大きさの推定差は0.033 mm、95%信頼区間 −0.248~0.283 mm、P=0.785でした。
いずれも、今回の追跡範囲では明らかな増大を検出していません。
患者さん向けに言い換えるなら、
「今回追跡できた症例では、原因となる親知らずを抜いた後、6~28か月のCBCTでERRの明らかな追加進行は検出されなかった」
となります。
ただし「P>0.05だから完全に止まった」とは言わない
統計学的な有意差を認めなかったことと、
「変化が完全にゼロであることを証明した」
ことは同じではありません。
今回の研究は、「一定範囲内なら同等とみなす」ことをあらかじめ検証する同等性試験ではありません。
測定誤差以下の微小変化まで含めて「吸収が全く起きていない」と証明したわけでもありません。
さらに追跡期間は6~28か月です。
ですから、私はこの研究を説明するとき、
「吸収が完全に止まったことが証明された」
ではなく、
「今回追跡できた症例では、CBCT上の明らかな進行を検出しなかった」
と書くのが適切だと思います。
さらに、「親知らずを抜いたから止まった」と因果関係まで証明した研究でもない
今回の65歯は、すべて原因と考えられた第三大臼歯を抜歯しています。
つまり、
親知らずを抜いたERR群
と、
親知らずを残したERR群
を比較した研究ではありません。
親知らずを抜いたあとに安定していたことは分かります。
しかし、
「もし残していたら吸収が進んだはずであり、抜いたから止まった」
という因果関係を、直接比較によって証明したわけではありません。
病態学的には、圧迫原因を除去することで吸収活動が停止し得るという古典的な考え方と整合します。1980年代から同じ方向の症例報告もあり、2022年の前向き研究も同じ方向を示しています。
それでも、
生物学的に筋が通っていることと、比較研究によって因果関係が証明されていることは別です。
著者自身も今後の課題として、親知らずを抜く場合と残す場合を比較し、親知らずを残したときERRが進行するのか、第二大臼歯の長期生存率が違うのかを調べる必要があるとしています。
結果② もっと目を引くのが「64/64」
今回もう一つの大きな結果が歯髄です。
術前にすでに根管治療を受けていた1歯を除き、64/64歯、100%が最終診察時にも冷刺激検査に陽性でした。
さらに、最終診察時に根尖病変や動揺増加も認められていません。
先ほど触れたように、この研究では39/65歯が画像上の「歯髄関与あり」に分類されています。
しかし、この39歯すべてで臨床的な歯髄露出が確認されたわけではありません。
ここから言えるのは、
「CBCTで吸収が根管系方向まで進んで見えること」と「歯髄が失活していること」は同義ではなかった
ということです。
まして、
「根管系の近くまで吸収があるから、予防的に神経を取る」
という一本道でもありません。
今回の著者も、無症状で歯髄感覚反応が保たれている第二大臼歯に対し、予防的な根管治療を一律に行うことを今回の結果は支持しないと結論しています。
ただし、64/64は「最初から歯髄反応の良い歯」を追った結果
ここは何度強調してもよいところです。
組み入れ時点から、第二大臼歯は基本的に、
無症状で、冷刺激検査に正常反応を示す歯
でした。
ですから、
「親知らずERRの患者を64歯無作為に集めたら、100%神経が生きていた」
研究ではありません。
正確には、
「抜歯前から無症状で歯髄感覚反応が保たれていた選択症例を追跡したところ、評価可能な64歯すべてで最終診察時にも冷刺激への反応が維持されていた」
という結果です。
しかも233歯の候補から65歯まで絞られ、145歯は追跡不足で解析から外れています。
きれいな100%という数字ほど、その分母がどのように作られたかまで読まなければなりません。
「冷たいものに反応した」=歯髄が完全に正常、でもない
もう一段、言葉を正確にしましょう。
冷刺激検査が評価しているのは、厳密には歯髄感覚です。
冷刺激に対する神経反応を利用しています。
一方、歯髄が本当に生活しているかをより直接的に考えるなら、歯髄に血流があるかという血管の状態も重要です。
2018年の系統的レビュー・メタ解析では28研究が解析され、冷刺激検査の感度は0.87、特異度は0.84でした。一方、レーザードップラー血流測定では感度0.98、特異度0.95、パルスオキシメーターでは0.97、0.95でした。
冷刺激検査は有用です。
しかし、
冷刺激に反応した=組織学的に完全正常=歯髄血流が正常
ではありません。
今回のYao研究もこの点を限界として認め、将来研究では電気歯髄診、レーザードップラー血流測定、パルスオキシメーターなどを併用する必要性を挙げています。

2022年研究では「89%」――だから100%だけを見ない
ここでQuらの2022年研究に戻ります。
63歯中56歯、約89%が6か月後も無症状で温冷刺激への正常反応を維持しました。
つまり、Yao研究の64/64と方向は同じですが、先行研究では全例良好だったわけではありません。
二つの数字を「89%より100%の方が優れている」と直接比較するのも適切ではありません。組み入れ条件、症例の重症度、評価方法が違うからです。
複数研究を合わせて読むと、
親知らずによるERRがあっても、原因となる第三大臼歯を除去した後に歯髄反応を保ちながら第二大臼歯を保存できる症例は少なくない。
しかし、
全症例で保証されるわけではない。
ここまでが妥当でしょう。

反対に、重症ERRでは歯髄腔まで達する症例もある
2026年の64/64だけを見て楽観するのも危険です。
2025年のCBCT研究では、親知らずによるERRがすでに診断されていた69本の第二大臼歯を詳しく解析しています。
この選択症例群では、47.9%で吸収が歯髄腔まで進展し、24.6%では吸収部と口腔が交通していました。
これはかなり重要です。
親知らずによるERRにも、軽い表面吸収から、歯髄腔や口腔環境にまで関係する重症例まで、かなり幅があります。
ですから、
「ERRなら神経を取る」
でも、
「ERRなら神経を取らなくてよい」
でもありません。
症状、冷刺激への反応、根尖所見、吸収位置、吸収深度、口腔との交通、残存歯質、動揺、清掃環境などを合わせて判断する必要があります。
重症ERRでも「神経を全部取らずに残す」研究が始まっている
ここは少し先の話です。
2025年には、第三大臼歯による第二大臼歯ERRに対し、親知らずの抜歯と同時に逆行性の生活歯髄療法を行った実証の第一段階となる症例報告も発表されています。
吸収部側から歯髄を限定的に処置し、カルシウムシリケート系セメントを使用して、残りの歯髄を保存しようという考え方です。
報告された同一患者の2歯では、その後も歯髄反応を保ち、24か月まで追加吸収を認めなかったとされています。
ただし、これは症例報告レベルです。
「これが標準治療」と書ける段階ではありません。
それでも研究の方向としては興味深い。
ERRが歯髄に近づいたら自動的に全部抜髄するのではなく、本当にどこまで歯髄を保存できるのかを検討する時代になってきています。
では、どんな親知らずでERRが起きやすいのか
2026年、今回のYao研究より少し前に、BMC Oral Healthから26研究を統合した系統的レビュー・メタ解析が公開されています。
すべてCBCTを用いた研究で、統合されたERRの割合は31%、95%信頼区間26~36%でした。
また、ERRは近心傾斜、水平、横断方向の第三大臼歯や、第二大臼歯根尖1/3への直接接触で多いことが示されました。
ただし、この31%を、
「親知らずがある一般人の約3人に1人で、隣の歯根が吸収している」
と読むのは間違いです。
このメタ解析はCBCT研究を統合したものです。CBCTを撮影された時点で何らかの臨床的理由を持つ患者が多く、研究ごとの対象、親知らずの位置、ERRの定義にも違いがあります。
あくまで、CBCTで評価された研究群の中での統合値です。
「13.6°を超えたら危険」という境界線でもない
2019年のSmailienėらの研究では、109人254本の埋伏第三大臼歯がCBCTで評価されました。
その研究では102歯、40.2%にERRが認められ、第三大臼歯の近心傾斜角が13.6°を超えるとERRとの関連が強く、単変量ロジスティック回帰でオッズ比5.439、95%信頼区間2.97~9.98でした。
ただし、ここにも注意があります。
埋伏の深さと近心傾斜には相関があり、この研究では両者を同時に入れた多変量ロジスティック回帰を行っていません。
さらに、この研究は最初から第二大臼歯へ接触しやすい高リスク位置の第三大臼歯を選んでいます。
ですから、
「14°以上なら抜く」
という臨床境界線にはできません。
近心傾斜、水平埋伏、深い位置、第二大臼歯への直接接触といった三次元的位置関係を総合して考えるべきです。
上顎と下顎では同じなのか
2019年のLiらのCBCT研究では、507本の第二大臼歯と第三大臼歯の関係が評価されました。
ERRは上顎第二大臼歯で32.6%、下顎で52.9%と、下顎で多く検出されました。
一方、重症度を見ると上顎第二大臼歯の方が重度吸収の割合が高いという結果でした。
つまり、
「下顎の方が起こりやすい」ことと「上顎なら軽い」ことは同じではありません。
もっとも、これも後ろ向きCBCT研究ですから、すべての患者へそのまま適用できる普遍的な法則とまでは言えません。
なぜ研究によって「7.5%」「23%」「40%」「50%」と全然違うのか
大きな理由の一つが画像診断法です。
2014年、Oenningらは同じ188歯をパノラマX線とCBCTの両方で評価しました。
パノラマでERRが検出されたのは約5.3%。
CBCTでは約22.9%。
同じ歯を見ているにもかかわらず、CBCTでは約4.3倍多くERRが検出されました。
小さな吸収窩は、2次元のパノラマでは歯根や骨の重なりに隠れます。
CBCTなら軸位・矢状・冠状など複数断面から、第三大臼歯と第二大臼歯の接触部を追えます。
ですから、1981年の口内法X線写真による7.5%と、現代のCBCT研究の30~50%を、そのまま「最近はERRが増えた」と比較することはできません。
画像法だけでなく、研究にどんな症例を入れたかも違います。
高リスク形態だけを集めたのか。直接接触例だけなのか。上顎か下顎か。どこからをERRと定義したのか。
発生割合を見るときは、数字より先に分母を見る必要があります。
パノラマで見えなければ大丈夫?――歯科用CTの役割
歯科用CTがよく見えることと、全患者に歯科用CTを撮影することも同義ではありません。
AAEとAAOMRの2025年改訂声明は2026年にJournal of Endodonticsへ掲載され、歯根吸収の位置、内部吸収か外部吸収かの鑑別、治療計画、予後評価に撮影範囲を絞ったCBCTが有用としています。
一方で、CBCTを一律のスクリーニングとして使うのではなく、個々の臨床的必要性と放射線被曝を考えて適応を決める立場です。
つまり、
「パノラマで見えないERRがある」
から、
「親知らずがある人全員にCT」
とはなりません。
二次元画像で第二大臼歯との接触関係が疑わしい、第二大臼歯遠心に変化がある、三次元的な位置関係を確認することで治療方針が変わる。
そうした具体的な臨床疑問があるときにCBCTの価値が出てきます。
結果③ 歯根吸収が安定しても「骨」は別問題だった
今回のYao研究でもう一つ重要なのが、第二大臼歯遠心の歯槽骨です。
研究では第二大臼歯遠心のCEJから歯槽骨頂までの距離をCBCT上で測定しました。
骨再生誘導法(GBR)を併用した43歯では、骨レベル改善量が6.32±2.67 mm。
親知らず抜歯のみの22歯では4.08±3.50 mm。
群間差は2.03 mm、95%信頼区間0.56~3.82 mm、P=0.007でした。
初期の骨欠損の大きさなどを調整した解析でも、GBRは2.244 mm大きい骨レベル改善量との関連を示しました。
ただし、この数字を、
「GBRで6.32 mmの新しい骨が再生した」
と表現するのは正確ではありません。
評価しているのは、CBCT上で測定したCEJから歯槽骨頂までの線形距離の改善です。
組織学的に6.32 mmの新生骨を証明したわけでも、三次元的な骨体積がその数字だけ増えたわけでもありません。
今回の記事では、
歯根吸収の安定
と、
遠心骨・歯周組織の回復
を別の評価軸として考える必要があります。
親知らずを抜くだけでも骨はある程度回復していた
抜歯のみ群でも平均4.08 mmの骨レベル改善がありました。
つまり、
GBRをしなければ骨は全く治らない
という研究でもありません。
第三大臼歯抜歯後の第二大臼歯遠心部については、以前から自然治癒と歯周組織再生療法の両方が研究されています。
2016年の系統的レビュー・メタ解析などでは、再生療法によって自然治癒群よりクリニカルアタッチメントレベルや歯周ポケットの改善が大きい傾向が報告されてきました。
一方、抜歯後に深い遠心骨欠損や歯周ポケットが残るケースもあります。
国内にも、第三大臼歯抜歯後の第二大臼歯遠心に深い歯周欠損が残り、段階的な歯周組織再生療法を行った報告があります。
したがって、
親知らずを抜いた=骨も自動的に完全回復
ではありません。
ではGBRをすれば必ず2 mm多く骨が戻るのか
ここも今回の研究をそのまま治療ルールへ変換してはいけないところです。
Yao研究でGBRを行うかどうかはランダムに割り付けられていませんでした。
画像上の歯髄関与が疑われる、歯根長変化がある、遠心骨欠損が深い、といった症例ほどGBRを勧める傾向がありました。
著者らは統計学的な調整をしていますが、喫煙や口腔衛生状態など十分に回収できなかった交絡因子があります。
E-valueの95%信頼区間下限は1.68で、著者自身も未測定交絡を完全には除外できないとしています。
また、この研究には歯周ポケット深さやクリニカルアタッチメントレベルの記録がなく、CBCT上の骨レベルを歯周組織治癒の代替指標として使っています。
さらに2025年には、第三大臼歯抜歯時にコラーゲンを含む脱タンパク牛由来骨ミネラルを入れる群と、抜歯のみ群を比較したランダム化比較試験も報告されています。
42部位が割り付けられましたが、最終解析は24部位。6か月後、両群とも治癒したものの、骨補填材を使った群に明確な追加利益は確認されませんでした。
ただし、これをYao研究への「反証試験」と呼ぶのも正確ではありません。
YaoではBio-OssとBio-Gide膜を組み合わせたGBRを行っており、しかもERRを伴う第二大臼歯遠心骨欠損が対象です。
一方、2025年のランダム化比較試験は、特定の骨補填材を第三大臼歯抜歯窩へ使用した研究で、ERR症例だけを集めた試験ではありません。
対象も術式も違います。
したがって、この試験から言えるのは、
「第三大臼歯抜歯後に骨補填材を使えば、どんな症例でも必ず追加利益が得られるわけではない」
という程度です。
YaoのGBR結果は興味深い。
しかし、
「ERRがあればGBR必須」
あるいは、
「GBRなら約2 mm余計に骨が戻る」
と一般化できる段階ではありません。
これは「親知らずは全部早く抜こう」という研究でもない
ここも混同してはいけません。
今回の研究対象は、
すでに隣の第二大臼歯にERRが存在している第三大臼歯
です。
一方、
症状も病変もない親知らずを、将来のリスクだけで予防的にすべて抜くべきか
は別の問いです。
2020年のCochrane Reviewでは、無症状で病変のない埋伏智歯について、抜歯する方がよいか、残す方がよいかを決めるには利用できるエビデンスが不十分と結論しています。残す場合も定期的な診察が必要とされています。
つまり、
すでに第二大臼歯へERRという病変を起こしている親知らず
と、
完全に病変のない親知らず
は分けて考える必要があります。
今回の記事から、
「親知らずは隣の根を溶かすから、症状がなくても全部若いうちに抜いた方がよい」
という結論へ飛ぶのは適切ではありません。
今回の「64/64」を読むときに忘れてはいけない12のこと
- 後ろ向き研究であり、ランダム化比較試験ではない。
- 単施設の研究である。
- 手術は一人の経験豊富な術者が担当している。
- 対象の平均年齢は約25.8歳と比較的若い。
- 最初から無症状で冷刺激への反応が保たれた歯が基本的な対象だった。
- 233歯から最終解析65歯まで減り、除外168歯中145歯は追跡不足だった。
- 親知らずを残した対照群がない。
- 追跡は6~28か月で、5年・10年後の第二大臼歯生存率や歯髄生存率は分からない。
- 冷刺激検査は歯髄感覚をみる検査で、歯髄血流を直接測定していない。
- 骨については歯周ポケット深さやクリニカルアタッチメントレベルがなく、線形のCBCT測定が中心だった。
- GBRの有無はランダムに決められておらず、喫煙や口腔衛生状態など未測定の交絡因子も残る。
- 正常な歯髄感覚反応を組み入れ条件としている一方、術前根管治療済み1歯が解析対象に含まれており、その理由が十分説明されていない。

ここまで並べると、この研究が「この問題に最終決着をつけた論文」ではないことがよく分かります。
一方で、それは研究価値を否定するものではありません。
これまで症例報告や小規模研究で示唆されてきた、
「親知らずによるERRでも、原因となる第三大臼歯を除去したあと第二大臼歯を保存できる症例がある」
という考え方を、65歯のCBCT前後比較と歯髄感覚検査で具体的に示した点に意味があります。
私なら「歯根」「歯髄」「骨」を別々に見る
今回、多くの資料を読んで一番大切だと思ったのはここです。
「親知らずに押されて、第二大臼歯の根が吸収されています」
という一つの診断だけで、その歯全体の運命を決めない。
① 歯根
どの根のどこが吸収されているのか。どこまで深いのか。以前の画像と比べて進行しているのか。
② 歯髄
冷刺激に反応するか。自発痛はあるか。刺激後の痛みが長く残るか。打診痛はあるか。根尖病変はないか。
③ 骨・歯周組織
第二大臼歯遠心の骨欠損はどの程度か。深い歯周ポケットや炎症が残っていないか。清掃できる環境なのか。
さらに原因となる親知らずそのものについても、位置、接触状態、抜歯難易度、下歯槽神経や上顎洞との関係などを別に評価します。
「根が吸収されている」というCT画像だけを見て、
神経を取る。第二大臼歯も抜く。逆に何もしない。
そのどれかへ自動的に進むのではない。
今回の研究は、その考え方をかなり分かりやすく示していると思います。
今後、ぜひ答えてほしいこと
まだ大きな空白があります。
一番大きいのは、すでにERRがある患者で、親知らずを抜く群と残す群を直接比較した研究です。
病態的には圧迫原因を取り除くのが合理的に見えます。
しかし、「残していたら実際に何%で進行するのか」「抜歯することで第二大臼歯の長期生存率がどれだけ変わるのか」は十分分かっていません。
次に5年、10年という長期予後。
今回6~28か月で安定していた第二大臼歯が、その後も生活歯として機能し続けるのか。何%が根管治療へ進み、何%が抜歯になるのか。
歯髄評価も冷刺激検査だけではなく、レーザードップラー血流測定やパルスオキシメーターなどを組み合わせると、より直接的な情報が得られるでしょう。
どの深さ・位置・臨床所見から生活歯髄療法や根管治療が必要になるのかという実用的な境界も未確立です。
GBRについても、ERRを伴う遠心骨欠損だけを対象にしたランダム化比較試験が欲しいところです。
そして、人の第二大臼歯で吸収停止後にどの程度修復性セメント質が形成され、それが5年、10年と安定するのかも、まだ十分分かっていません。
院長として今回の研究をどう読むか
「根が溶けています」という言葉は強いです。
歯科用CTで第二大臼歯の根がえぐられているように見えれば、「もうこの歯は長く持たないのでは」と考えるのも当然です。
そして実際、ERRは軽視してよい所見ではありません。
重症例では歯髄腔へ達し、口腔と交通し、症状や感染を伴うこともあります。
一方で、今回の研究はその反対側も見せてくれました。
根が吸収されていても、歯髄感覚反応を保っている歯がある。
原因となる親知らずを抜いたあと、短中期的にはERRの明らかな進行を認めない歯がある。
そして、
ERRという画像所見だけを理由に、無症状で歯髄感覚反応が保たれた第二大臼歯へ予防的な根管治療を一律に行う根拠にはならなかった。
ただし同時に、
歯根吸収が安定しても、骨・歯周組織の問題は別に残り得る。
ここまで読むと、この研究の面白さは「親知らずを抜けば治る」という単純な話ではありません。
一つの第二大臼歯を、歯根、歯髄、骨・歯周組織という別々の組織に分けて評価する必要がある。
私はそこが、この研究から最も持ち帰りたいところです。
まとめ
2026年のBMC Oral Health研究では、親知らずとの接触に関連する外部歯根吸収を認めた第二大臼歯65歯を、原因となる親知らずの抜歯後にCBCTで追跡しました。
今回追跡できた症例では、ERRの明らかな画像上の進行は検出されませんでした。
さらに術前に根管治療済みだった1歯を除く64/64歯で冷刺激への反応が維持されていました。
しかし、対象はもともと無症状で歯髄感覚反応が保たれた比較的若い選択症例です。
親知らずを残した対照群はなく、追跡も6~28か月です。
ですから、
「どんなERRでも親知らずを抜けば止まる」
でも、
「根が吸収されても神経は絶対に大丈夫」
でもありません。
一方で、
「根が吸収されている=その歯はもうダメ」
という単純な話でもありません。
吸収が今どういう状態なのか。
歯髄はどう反応しているのか。
根尖や周囲骨はどうなっているのか。
今回の研究が示した一番大きな意味は、そこを一つずつ分けて評価する重要性だと私は読みました。
FAQ
親知らずで第二大臼歯の根が吸収されていたら、必ず神経を取りますか?
必ずではありません。
今回の2026年研究では、術前に根管治療されていた1歯を除く64/64歯で、最終診察時にも冷刺激への反応が残っていました。
ただし、これはもともと無症状で冷刺激への反応が良好だった選択症例です。症状、歯髄反応、根尖病変、吸収範囲、口腔との交通などによっては根管治療が必要になることもあります。
親知らずを抜けば、吸収された歯根は元に戻りますか?
「追加の吸収が止まること」と「失われた歯根が完全に元通りになること」は別です。
吸収活動が停止したあと、吸収窩に修復性セメント質が形成されることはありますが、失われた象牙質や歯根長が元の形のまま完全再生するという意味ではありません。
親知らずが第二大臼歯に当たっていたら、必ず歯根吸収になりますか?
なりません。
直接接触、近心傾斜、水平埋伏、接触位置などはERRと関連しますが、接触しているだけで全員に同じ吸収が起こるわけではありません。
パノラマで異常が見えなければ、ERRはないですか?
小さなERRは2次元画像では見えにくいことがあります。
一方で、CBCTを全員に一律撮影するという意味でもありません。CBCTを追加することで診断や治療方針が変わる具体的な臨床疑問があるかどうかで判断します。
症状のない親知らずは、全部抜いた方がよいですか?
今回の研究対象は、すでに隣の第二大臼歯へERRが発生していた症例です。
完全に無症状で病変のない親知らずを予防的にすべて抜歯するかどうかは別の問題です。Cochrane Reviewでも、無症状・無病変の埋伏智歯を抜く方がよいか、残す方がよいかを決めるには、現在のエビデンスは不十分とされています。
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