2026年9月30日

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに
歯ブラシ売り場を見ていると、最近は「振動する」「回転する」だけではなく、さまざまな機能を備えた製品が増えています。
その中でも少し変わっているのが、微細な電流を利用する「バイオエレクトリック歯ブラシ」です。
2026年9月、軽度~中等度のプラーク性歯肉炎がある成人99人を対象として、バイオエレクトリック歯ブラシ、音波歯ブラシ、手用歯ブラシを4週間比較した無作為化比較試験(RCT)がScientific Reportsに掲載されました。
一番目を引くのは、4週間後のGingival Index(GI:歯肉炎指数)です。
開始時の違いを統計的に調整した値は、
- バイオエレクトリック:0.822
- 音波歯ブラシ:1.078
- 手用歯ブラシ:1.414
でした。
バイオエレクトリック群と音波群の差は統計学的に有意で、P=0.023です。
ここだけを見ると、
「微細電流歯ブラシは音波歯ブラシより歯肉炎にいいのでは?」
と思います。
ところが、別の数字を見ると話はそれほど単純ではありません。
プラークの付着程度を評価したPlaque Index(PI)は、バイオエレクトリック群と音波群で1.047対1.048。
ほとんど同じです。
さらに、歯ぐきからの出血を評価するBleeding on Probing(BOP)は、8.76%対13.11%とバイオエレクトリック群の方が低かったものの、音波群との差は統計学的に有意ではありませんでした。
つまり今回の研究は、
「微細電流歯ブラシが音波歯ブラシに全面的に勝った」
という研究ではありません。
むしろ私が気になったのは、
「プラークの付着程度はほぼ同じなのに、なぜGIだけ差が出たのか?」
というところです。
今回は、この99人RCTを歯科衛生士の視点から詳しく読んでみます。

今回知りたいのは「電流で歯垢が取れるの?」だけではありません
バイオエレクトリック歯ブラシという名前を見ると、
「電気を流したら歯垢が落ちるの?」
というところに興味が向きます。
でも、今回の論文を読むうえで本当に重要なのはそこだけではありません。
- 微細電流歯ブラシは音波歯ブラシより多くプラークを除去したのか
- 歯肉炎はどの指標で改善したのか
- GIとBOPで結果が一致しなかったのはなぜか
- 50~200µAの微細電流がバイオフィルムのEPSへ作用したという説明は、今回の患者さんで実際に確認されたのか
- 4週間の結果から「歯周病を予防できる」とまで言えるのか
- 開発企業から研究費と試験機器の提供を受けた研究を、どう読めばよいのか
こうした点を一つずつ分けて考えていきます。
99人を3群に分けた4週間の無作為化比較試験
今回の主論文は、Ha J, Lee J.「Efficacy of bioelectric toothbrush in reducing gingival inflammation: a randomized controlled trial」です。
韓国の蔚山大学病院で行われた、単施設・並行群の無作為化比較試験です。
対象者99人を1:1:1で、
- 手用歯ブラシ
- バイオエレクトリック歯ブラシ
- 音波歯ブラシ
へ33人ずつ割り付けました。
割り付けにはコンピューターで作成した無作為化表が使われ、独立したスタッフが管理しました。
また、歯周状態を測定する検査者には、患者さんがどの歯ブラシを使っているのか分からないようにしていました。
つまり検査者盲検です。
論文では、主要評価項目は4週間後の、開始時の値を調整したGIと明記されています。
著者らは、研究計画、参加・除外条件、評価項目、統計解析計画は参加者登録前に確定しており、研究途中には変更していないと説明しています。
ただし、後ほど詳しく触れるように、今回の試験は公的な試験登録が研究終了後に行われています。
そのため、GIが論文上の主要評価項目であることは確認できますが、試験開始前から公開された登録情報によって第三者がそれを確認できる設計ではなかったことも同時に押さえておく必要があります。
「99人RCT」ですが、4週間後の解析は97人です
最初に研究参加候補となったのは110人でした。
そのうち11人が適格基準を満たさず、99人が無作為化されました。
開始時は、
- 手用:33人
- バイオエレクトリック:33人
- 音波:33人
です。
4週間を完遂したのは97人でした。
- 手用:31人
- バイオエレクトリック:33人
- 音波:33人
となっています。
手用群から2人が脱落しました。
1人はブラシ毛が著しく変形して使用できなくなったため、もう1人は検査で使用した染め出し剤に不快感があったためです。
4週後のデータがないため、研究者らは97人による完遂例解析を行いました。
ですから、「99人を無作為化したRCT」という表現は問題ありませんが、結果を読むときには99人割り付け、97人解析と知っておくとより正確です。
なお、今回特に注目するバイオエレクトリック群と音波群では、それぞれ33人全員が4週間の評価まで残っています。
対象は重度の歯周炎ではなく「プラーク性歯肉炎」
対象になったのは18~65歳の、全身的に健康な成人です。
天然歯が20本以上あり、軽度~中等度のプラーク性歯肉炎があることが条件でした。
さらに歯周状態について、
- すべての測定部位でPPD(歯周ポケット測定値)が3mm以下
- BOP陽性部位が10~50%
と定められていました。
現在喫煙している人、妊娠中の人、重度歯周炎がある人、矯正装置を装着している人、直近2週間に全身性抗菌薬や抗炎症薬を使用している人などは除外されています。
ここは非常に重要です。
今回の結果を、
「6mmや7mmの深い歯周ポケットがある歯周炎患者にも有効だった」
とは言えません。
今回調べられたのは、すべての測定部位がPPD3mm以下の人です。
深い歯周ポケットへ家庭用歯ブラシの毛先がどこまで届くのかについては、別の記事「歯周ポケットの中は自分で磨ける?セルフケアで届く範囲と歯科医院で行うケア」でも詳しく解説しています。
「歯周ポケットの中まで磨ける」という表現は魅力的ですが、セルフケアで届く範囲と、歯科医院で行う歯肉縁下の処置は分けて考える必要があります。
比較したのは具体的な3製品です
今回使われた歯ブラシも確認しておきましょう。
手用歯ブラシ
Oral-B Indicator
バイオエレクトリック歯ブラシ
Great Gums®(ProxiHealthcare Inc.)
音波歯ブラシ
Aquasonic Icon™
Great Gumsは、50~200µAの微細電流を、10MHzのAC/DC重畳波形で発生させる歯ブラシとして記載されています。
Aquasonic Iconについては、原著の表現では“low-to-mid-range powered sonic toothbrush”と位置づけられています。
この記事では便宜上、その後は単に「音波歯ブラシ」と表記しますが、今回の比較対象はすべての音波歯ブラシを代表するものではなく、Aquasonic Iconという1機種です。
全群でブラシヘッドの大きさや毛の性状をなるべくそろえ、柔らかく先端を丸めた毛を使用しました。
歯磨剤も統一されています。
全員が1日2回、1回2分ブラッシングしました。
開始時には、それぞれの歯ブラシについて口腔衛生指導と実技説明も行われています。
つまり今回比較しているのは、「微細電流という概念全般」と「音波式という概念全般」ではありません。
実際には、Great Gumsを指定された方法で使用する介入と、Aquasonic Iconを指定された方法で使用する介入の比較です。

日本のTROMATZを99人で試した研究ではありません
ここは国内でこの研究を知った方には、特に注意してほしい点です。
日本ではバイオカレント技術を使ったTROMATZという製品が紹介されています。
しかし、今回の99人RCTで使われた製品として論文に記載されているのはGreat Gums®です。
日本トロマツ株式会社の国内発表でも、今回の研究はTROMATZそのものを99人で試験したものではなく、TROMATZの技術基盤であるバイオカレント技術に関連する研究として紹介されています。
したがって、
「TROMATZを99人で試したところGIが0.82になった」
という読み方は正確ではありません。
製品そのものと、共通する技術基盤は分けて考える必要があります。
10MHzと50~200µAは違う数字です
電気の話になると、単位がたくさん出てきて分かりにくくなります。
今回登場する10MHzと50~200µAも、別の意味です。
MHzは周波数です。
10MHzなら、電気信号が1秒間に1000万周期変化するという意味です。
一方、µAは電流の大きさです。
1µAは100万分の1Aです。
今回の装置では50~200µAとされています。
論文のFigure 1でも、10MHzのAC/DC重畳信号と50~200µAの微細電流は別々の仕様として示されています。
「10MHzだから非常に大きな電流が流れている」という意味ではありません。

結果を見る前にGI・PI・BOPを分けておきましょう
今回の研究には、GI、PI、BOPという3つの数字が出てきます。
どれも歯肉炎やプラークに関係しますが、同じものではありません。
GIは「歯ぐきの炎症」を0~3で評価する
GIはGingival Index、歯肉炎指数です。
歯肉の色、腫れ、出血傾向などを見ながら0~3で評価します。
今回の研究では1本の歯について、近心頬側、中央頬側、遠心頬側、中央舌側の4部位を評価しています。
GIは長年、歯周研究で使用されてきた確立した臨床指標です。
一方、後で説明するBOPとは、測定している内容が同じではありません。
PIは「プラークの絶対量」を直接測っているわけではない
今回使われたPIは、Turesky modification of the Quigley–Hein indexです。
染め出し剤でプラークを染め、歯面に付着しているプラークの広がりや程度を0~5で段階評価します。
1歯6部位で測定されました。
この記事では読みやすさのため「プラーク量」と表現することがありますが、厳密にはプラークの重量や菌数を直接測った値ではなく、歯面への付着程度を段階評価した指標です。
ここは後半の「PIが同じでもバイオフィルムの中身まで同じとは限らない」という話にも関係します。
BOPは「プロービングしたときに出血するか」
BOPはBleeding on Probingです。
歯周ポケットをプローブで測定した後に、出血したかどうかを記録します。
今回の研究では15~20g程度の力でプロービングし、30秒以内に出血したかどうかを判定しました。
つまり、
- GI=歯肉炎症を段階評価
- PI=プラーク付着程度
- BOP=プロービング時出血
です。
3つを同じ意味の数字として扱わないことが、今回の論文を読む鍵になります。
歯周検査で読み上げられる数字やBOPについては、「歯医者で『3、2、3…』と数字を読み上げるのはなぜ?」でも詳しく解説しています。

主要評価項目GIでは、バイオエレクトリック群が音波群より低かった
4週間後のGIを見てみましょう。
開始時の違いを統計的に調整した平均値は、
- 手用:1.414
- バイオエレクトリック:0.822
- 音波:1.078
でした。
バイオエレクトリックと音波の差は、
−0.257
95%信頼区間 −0.487~−0.026
P=0.023
です。
手用との比較では、
−0.592
95%信頼区間 −0.827~−0.358
P<0.001
でした。
ですから、「主要評価項目GIでは、バイオエレクトリック群が音波群より統計学的に低かった」という点は今回のRCTから言えます。
この結果を必要以上に弱める必要はありません。
ただし0.257点差が「患者さんにとって大きな差」かは別です
ここで、統計学的に差があることと、患者さんにとって重要なほど大きな差であることを分ける必要があります。
バイオエレクトリックと音波の差は−0.257。
95%信頼区間は、−0.487~−0.026です。
つまり、本当の差が比較的大きい可能性もあれば、かなり小さい可能性も含まれています。
また、今回の研究では、GIが何点違えば患者さんにとって明らかに意味のある改善なのかという「臨床的に重要な最小差」は事前に設定されていません。
GIは0~3の数字を多数の歯面で評価し、その平均をとったものです。
0.257点差という数字は、「患者さん一人一人の歯ぐきが1段階良くなった」という意味ではありません。
主要評価項目に統計学的有意差が出たことは重要。
ただし、その差の大きさを患者さんにどう翻訳するかは別の問題です。
PIでは1.047対1.048――ほとんど同じでした
次はPIです。
4週間後の調整済みPIは、
- 手用:1.234
- バイオエレクトリック:1.047
- 音波:1.048
でした。
バイオエレクトリックと音波の差は、
−0.001
95%信頼区間 −0.152~0.149
P=1.000
です。
値はほぼ同じです。
したがって今回の結果を、
「微細電流歯ブラシの方が音波歯ブラシよりたくさんプラークを落としたので、GIも良くなった」
とは説明できません。
少なくとも、この研究で用いたPIでは、そのような差は確認されていません。
P=1.000でも「両者は完全に同じ」と証明されたわけではありません
P=1.000という数字を見ると、「完全に同じだったんだ」と感じるかもしれません。
しかし、このP値は多重比較に対する補正を行った後の値です。
また、今回の研究は、両者の性能が同じであることを証明するための同等性試験ではありません。
ですから、
「バイオエレクトリックと音波のプラーク除去能力が同等だと証明された」
とまでは言えません。
正確には、「4週間後の調整済みPIは非常に近く、この試験では両群間に統計学的有意差を検出しなかった」です。
BOPは8.76%対13.11%――でも音波との差は有意ではありません
BOPの結果も見てみましょう。
4週間後の調整済み値は、
- 手用:14.30%
- バイオエレクトリック:8.76%
- 音波:13.11%
でした。
バイオエレクトリックと手用の差は、
−5.536ポイント
95%信頼区間 −10.741~−0.331
P=0.033
で有意でした。
一方、バイオエレクトリックと音波では、
差 −4.354ポイント
95%信頼区間 −9.485~0.777
P=0.124
です。
したがって、この試験ではBOPについてバイオエレクトリックと音波の有意差を確認できませんでした。
ただし、ここで「両者は同じ」と断定するのも適切ではありません。
95%信頼区間には、バイオエレクトリック側がかなり低い可能性も含まれています。
さらに、この研究の必要人数は主要評価項目であるGIを基準に計算されています。
BOPにおけるバイオエレクトリックと音波の差を検出するためだけに人数設計された試験ではありません。
したがって、
「BOPでは差が存在しないことが証明された」
ではなく、
「今回の試験では、音波群との差を統計学的に確認できなかった」
と読むのが適切です。
3つの数字を一緒に見ると、この研究の特徴がよく分かります
| 4週間後・調整済み | 手用 | バイオエレクトリック | 音波 | バイオエレクトリック vs 音波 |
|---|---|---|---|---|
| PI | 1.234 | 1.047 | 1.048 | P=1.000 |
| GI | 1.414 | 0.822 | 1.078 | P=0.023 |
| BOP | 14.30% | 8.76% | 13.11% | P=0.124 |

こうして並べると、GIだけがバイオエレクトリックと音波の比較で有意という研究であることがよく分かります。
「GIだけ有意差が出た」のは、なぜでしょう?
もしバイオエレクトリック群でPIも大きく低下していたなら、
プラーク付着が減った
↓
歯肉炎症も改善した
という分かりやすい説明ができます。
ところが今回、PIは1.047対1.048。
ほぼ同じでした。
それでもGIには差が出ました。
そこで著者らは、機械的なプラーク除去程度だけでは説明できない作用がある可能性を考察しています。
その候補として出てくるのが、バイオフィルムのEPSへの作用です。
ただし、その話へ進む前に、もう一つ注意したい数字があります。
「GIが91.82%減った」という数字は、扱いに注意が必要です
論文の副次的な記述解析には、
- バイオエレクトリック:91.82%
- 音波:54.55%
- 手用:18.71%
というGI減少率が出ています。
非常に大きな数字です。
しかし、これは各参加者について「開始時から何%減ったか」を計算し、その割合を平均した値です。
グループ平均をそのまま91.82%減らしたという意味ではありません。
しかも、この解析は未調整の副次的解析です。
論文自身も、主要な有効性評価は開始時の値を調整した共分散分析であり、91.82%という値はそちらと併せて解釈するよう注意しています。
ですから、
「微細電流で歯肉炎を92%改善」
という表現は、この研究をかなり派手に見せてしまいます。
開始時のPIは3群でそろっていませんでした
なぜ開始時の値を調整する必要があったのでしょう。
ベースラインPIを見ると、
- 手用:1.10
- バイオエレクトリック:1.45
- 音波:1.14
でした。
バイオエレクトリック群だけ、研究開始時からPIが高くなっています。
P<0.001です。
無作為化をしても、対象者数がそれほど大きくなければ、偶然こうした偏りが生じることがあります。
そこで研究者らは、開始時の値を共変量にした共分散分析を行いました。
実際、生の4週間後PIを見ると、
- バイオエレクトリック:1.19
- 音波:0.99
なので、単純に4週後の数字だけ比較すると音波の方が良さそうに見えます。
しかし開始時の違いを調整すると、1.047対1.048です。
RCTだからといって、最初から全項目が完全に同じになるとは限りません。
PIが同じでも、バイオフィルムの中身まで同じとは限りません
では、PIがほぼ同じなのにGIが違ったことを、どう考えるのでしょう。
まず重要なのは、PIで測っているのは、染め出されたプラークの歯面への付着程度だということです。
PIだけでは、
- どの菌が多いのか
- どの程度成熟したバイオフィルムなのか
- EPSがどれくらい存在するのか
- 細菌同士がどんな立体構造を作っているのか
- 炎症を起こしやすい状態なのか
といった情報までは分かりません。
つまり、PIが同じ=生物学的にまったく同じバイオフィルムではありません。
歯周病では単純な細菌量だけでなく、細菌群の構成や宿主反応も重要になります。この点は「歯周病治療後も炎症の履歴は残るのか?」でも詳しく扱っています。
音波歯ブラシの別研究でも「量だけでは分からない」結果があります
ここで、微細電流とは別の研究を一つ見てみます。
2015年、鶴見大学から「極細毛音波歯ブラシの歯肉傷害と臨床効果ならびにポケット内細菌への影響」という研究が報告されています。
歯肉炎または軽度歯周炎の52人を4群に分け、3種類の極細毛音波歯ブラシと極細毛手用歯ブラシを4週間使用しました。
この部分では、プラーク除去や歯肉炎症改善について、歯ブラシ間の有意差は認められませんでした。
さらに別の18人を対象に、同じ3mm段差の極細毛を、音波式として使った場合と、手用ハンドルに装着して使った場合で比較しています。
調べたのは、
- Aggregatibacter actinomycetemcomitans
- Prevotella intermedia
- Porphyromonas gingivalis
- Tannerella forsythia
- Treponema denticola
の5菌種です。
各菌種を一つずつ評価すると有意差はありませんでした。
一方、5菌種の合計では、音波群の使用前後で有意な減少が認められ、P=0.019でした。
手用群では使用前後の有意差はなく、P=0.31でした。
ただし、ここは慎重に読む必要があります。
「音波群では有意だった」「手用群では有意でなかった」という事実だけで、「両群の変化量に有意差があった」とは言えません。
それぞれの群の中で行った前後比較だからです。
この研究から言えるのは、通常のプラーク指標や総菌数だけを見ても、細菌叢の変化をすべて捉えられるとは限らないということです。
今回のBioelectric RCTの作用機序を証明する研究ではありません。
2025年の赤色蛍光研究も補助材料になります
もう一つ興味深い研究があります。
2025年、延世大学の研究グループが歯肉炎の成人55人を対象に、バイオフィルムの赤色蛍光を調べました。
赤色蛍光が多い群では、少ない群に比べ、
- GIが約21.6%高く、P=0.049
- BOPも48.0%高く、P=0.029
でした。
一方、PIの群間差は統計学的に有意ではありませんでした。
この赤色蛍光は、先行研究でバイオフィルムの厚みや成熟、微生物組成などとの関連が報告されています。
成熟したバイオフィルムで赤色蛍光が強くなることや、赤色蛍光を示すバイオフィルムではLeptotrichiaやSelenomonasなど歯肉炎と関連する細菌が多いという研究も紹介されています。
ただし、この研究も「バイオフィルムの質だけ」を直接測定した研究ではありません。
赤色蛍光面積には、プラーク量に関する情報も含まれます。
したがって今回の記事では、従来のPIだけでは捉えきれないバイオフィルム情報が存在する可能性を示す補助例として扱います。
なお、この2025年研究はLion Corporationのスポンサーを受けています。

そこで登場する「EPS」とは何でしょう
今回のBioelectric論文で重要になる言葉が、EPSです。
EPSはExtracellular Polymeric Substances、バイオフィルムを支える細胞外高分子物質です。
バイオフィルムは、細菌が単に歯の表面に並んでいるだけではありません。
細菌とさまざまな細胞外成分が組み合わさって、立体的な構造を作っています。
その構造は、
- 細菌同士をまとめる
- バイオフィルムの立体構造を支える
- 機械的な力から守る
- 抗菌物質などに対する防御環境をつくる
といった役割を持っています。
今回の論文では、50~200µA程度の微細電流によって、このEPSを含むバイオフィルム構造へ電気化学的な影響を与えられる可能性が論じられています。

微細電流はEPSに何をすると考えられている?
原著が引用している基礎研究では、低レベルの電気エネルギーによって、
- バイオフィルム内部の静電的な結合への干渉
- 構造の透過性の変化
- 細菌膜の透過性への影響
- 細菌同士の情報伝達への干渉
などが起こる可能性が議論されています。
もしバイオフィルムの構造が弱くなれば、その後ブラシ毛が当たったときに機械的に除去されやすくなるかもしれません。
また、同じ程度のプラーク付着が残っていても、そのバイオフィルムの炎症誘発性が変わる可能性も考えられます。
ここまでは、十分検討する価値のある仮説です。
しかし、仮説と証明は別です。
今回の99人RCTではEPSを測定していません
今回のRCTで実際に測ったのは、
- GI
- PI
- BOP
です。
一方、
- EPS量
- EPS構造
- バイオフィルムの立体構造
- 細菌叢
- 菌種構成
- 細菌の病原性
- 細菌同士の情報伝達
- 炎症性サイトカイン
などは測定していません。
論文自身も、今回の臨床試験では生物学的な作用機序を直接評価しておらず、提案されている作用機序は仮説の段階だと明記しています。
ですから、
「99人RCTで微細電流がEPSを破壊することが証明された」
とは言えません。
今回直接示されたのは、あくまで臨床指標の違いです。

GIだけ差が出た理由を「EPSだけ」で説明することもできません
GIとBOPは、同じ炎症をまったく同じ方法で測った指標ではありません。
GIは0~3で、歯肉の色、腫れ、炎症の見た目、出血傾向などを含めて評価します。
一方、BOPは、プロービング後に出血したか、しなかったかを部位ごとに記録します。
2024年のPeriodontology 2000のレビューでも、BOPは歯肉炎を評価する重要な診断項目として位置づけられています。
一方、GIも歯周研究で長く使用されてきた確立した臨床指標です。
つまり、
「GIは弱い指標で、BOPだけが正しい」
という話ではありません。
ただし、GIとBOPは違う情報を持つ指標なので、同じ統計結果になるとは限りません。
したがって、GIだけ差が出た理由としてEPS作用を考えることはできますが、それが唯一の説明とは言えません。
測定尺度の違いも考える必要があります。
BOP平均8.76%なら「歯肉炎が治った」と言える?
バイオエレクトリック群の4週間後BOPは、平均8.76%でした。
2017年の歯周病分類では、アタッチメントロスのない歯周組織で、BOP<10%、PPD≤3mmであれば、患者単位の臨床的歯肉健康を定義する基準に用いられます。
すると、
「平均8.76%なら、バイオエレクトリック群は健康になったのでは?」
と思います。
しかし、ここには落とし穴があります。
8.76%は、33人それぞれが10%未満になったという意味ではありません。
あくまで群全体の平均です。
論文自身も、この点を明確に注意しています。
本当に知りたいのは、
「バイオエレクトリック群33人のうち、何人がBOP<10%へ到達したのか」
です。
そして同じことを音波群、手用群でも比較する。
しかし、その患者単位の到達率は今回報告されていません。
微細電流歯ブラシの研究は今回が初めてではありません
今回の99人RCTだけを読むと、突然現れた新技術に見えます。
でも、微細電流歯ブラシについては以前から臨床研究があります。
2021年――歯肉炎40人でクロスオーバー試験
2021年には、歯肉炎患者40人を対象に、微細電流歯ブラシと対照歯ブラシを使うクロスオーバー試験が行われています。
全歯面のPIについては明確な歯ブラシ間差が認められなかった一方、歯間部GIでは微細電流側が低かったと報告されています。
つまり、「PIでは大きな違いがないのにGIで差が出る」というパターンは今回が初めてではありません。
ただし、対象条件や歯ブラシ、期間などが同じではないため、「2026年RCTの結果が完全に再現された」とまでは言えません。
2023年――インプラント患者で電流あり/なしを比較
2023年には、インプラント患者を対象に、バイオエレクトリック機能ありと機能なしを比較したクロスオーバー試験が報告されています。
この研究では、形状と毛を同じにしたブラシで電気信号の有無を比較しており、今回の2026年研究よりも微細電流そのものの寄与へ近づいた設計です。
バイオエレクトリック使用時にはmodified plaque indexやmodified sulcus bleeding indexの改善が報告され、非作動条件では同様の有意な改善を認めませんでした。
ただし、これも「一方では有意、もう一方では非有意」という結果だけをもって、微細電流単独の効果が完全に確立したとまでは言えません。
また対象は天然歯の歯肉炎ではなく、インプラント患者です。
2024年――矯正患者22人で微細電流歯ブラシを比較
2024年には、固定式矯正装置を装着している患者22人を対象とした無作為化二重盲検クロスオーバー試験がScientific Reportsに掲載されています。
微細電流歯ブラシを使用した期間では、使用前後のPIが有意に低下し、P=0.009でした。
一方、通常歯ブラシを使用した期間では有意な低下を認めず、P=0.595でした。
ただし、ここも大切です。
クロスオーバー試験として治療効果を直接比較した解析では、P=0.451で有意差は確認されていません。
したがって、「微細電流期間では有意だった、通常歯ブラシ期間では有意でなかった」というだけで、微細電流歯ブラシの優越性が証明されたとは言えません。
なお、この論文には2024年に図中の数式に関する著者訂正が出ていますが、このPIの主要な結果を覆す訂正ではありません。
また、こちらの対象者は固定式矯正患者です。
今回の2026年RCTでは、矯正装置を装着している人は対象から除外されています。
2026年――99人で音波歯ブラシと直接比較
今回の研究では、軽度~中等度のプラーク性歯肉炎を対象として、バイオエレクトリック、音波、手用を同時に比較しました。
その中で、主要評価項目GIについてバイオエレクトリックが音波より低かったというのが今回の新しい結果です。
一方で、PIとBOPでは音波との差を確認できませんでした。

「研究が4本ある」ことと「同じ結果が4回再現された」ことは別です
2021年、2023年、2024年、2026年と、関連する臨床研究は増えています。
これはバイオエレクトリック技術にとって興味深い材料です。
しかし、それぞれ、
- 対象者
- 歯ブラシ
- 電気条件
- ブラッシング方法
- 使用回数
- 観察期間
- 評価項目
- 研究施設
が異なります。
天然歯の歯肉炎、インプラント、固定式矯正患者を、すべて一つの患者集団のように数えることはできません。
したがって、
「微細電流歯ブラシについて臨床研究が少しずつ積み上がってきている」
とは言えます。
でも、
「同じ効果が4つの独立したRCTで完全に再現された」
とはまだ言えません。
今回のRCTは「微細電流だけ」の効果を分離した試験でもありません
今回の99人RCTには、
Great Gumsの電流ON群
と、
同じGreat Gumsの電流OFF群
はありません。
比較しているのは、Great Gums、Aquasonic Icon、Oral-B Indicatorという3種類の歯ブラシです。
したがってバイオエレクトリックと音波のGI差0.257点を、
「50~200µAという電流だけが生み出した差」
と解釈することはできません。
ブラシヘッド、毛、操作法、使用感など、製品としての違いも含まれています。
論文自身も、今回の研究は微細電流単独の寄与を分離する研究ではなく、市販されている手用・音波歯ブラシとの臨床効果を比較する目的だったと説明しています。
この点で、2023年の非作動対照を用いた研究とは役割が違います。
使用状況も電子的に記録したわけではありません
今回の研究では、1日2回・2分のブラッシングを指示しています。
ただし、実際に毎回2分間磨いたかどうかを歯ブラシ内蔵センサーなどで客観的に記録したわけではありません。
使用状況は、参加者自身が記入したブラッシング日誌と、4週間後の聞き取りによって確認されています。
著者らも、自己申告によるため報告上の偏りを完全には除外できないとしています。
検査者は1人――ばらつきを減らす利点と限界があります
歯周検査は、経験豊富な1人の歯周病専門医が開始時と4週後の両方を担当しました。
検査者間の違いが入りにくいという利点があります。
一方、同じ検査者が同じ状態を繰り返しどの程度一致して採点できるかという正式な検査者内再現性試験は行われていません。
この点も原著自身が限界として挙げています。
結果をそのまますべての患者さんへ広げることもできません
今回の試験では、喫煙者、重度歯周炎患者、妊娠中の人などが除外されています。
さらに全身状態にも条件があります。
したがって、今回の99人の結果を、歯周炎が進行した患者さんや全身状態の異なる患者さんへそのまま一般化することはできません。
「音波歯ブラシより優れている」を全製品へ広げてはいけません
今回比較された音波式はAquasonic Iconです。
原著では“low-to-mid-range powered sonic toothbrush”と位置づけられています。
ですから、
「バイオエレクトリック歯ブラシは、すべての音波歯ブラシより優れていることが証明された」
と製品カテゴリー全体へ広げるのは適切ではありません。
著者ら自身も今後、上位機種の音波歯ブラシや、回転振動式電動歯ブラシとの比較が必要だと書いています。
今回分かったのは、あくまでこの研究で使用された製品同士の4週間比較です。
歯ブラシは「機械の性能」だけで成績が決まりません
歯科衛生士として患者さんのお口を見ていると、同じ歯ブラシを使っていても、磨き残しの程度はかなり違います。
歯ブラシの結果には、
- どこへ当てるか
- どの程度の力で当てるか
- どのくらいの時間磨くか
- 毎日続けられているか
- 歯間部をどう清掃しているか
- 手指をどの程度細かく動かせるか
などが関係します。
歯ブラシに関する日本のレビューでも、プラーク除去効果には、指導方法、患者の意欲、器用さ、ブラッシング方法、歯ブラシの種類、補助清掃用具、歯磨剤や洗口剤など、複数の条件が関与すると整理されています。
今回のRCTではその影響を減らすため、全員にブラッシング指導を行い、1日2回・2分という条件をそろえています。
それでも、一般の患者さんが市販品を買って自由に使用したときに、研究と同じ結果になるとは限りません。
電動歯ブラシの当て方や押しつけ方については、「電動歯ブラシの正しい使い方|歯ぐきを傷めない押しつけ方・当てる角度・動かし方」でも詳しく紹介しています。
毛先で機械的に取る方法にも届く範囲があります
通常の歯ブラシは、毛先を歯面に接触させ、摩擦によってプラークを除去するのが基本です。
日本歯周病学会誌のレビューでも、歯面に付着したプラーク除去には、ある程度の摩擦力が必要と説明されています。
同レビューが紹介する研究では、手用と電動歯ブラシで歯肉縁下プラーク除去に大きな差はなく、歯肉縁下1mm程度までは除去できたとされています。
さらに抜去予定歯32本・128面を対象に熟練者がBass法で磨いた研究では、平均2.22mmの歯肉縁下までプラーク除去が可能でしたが、3mmを超える領域では清掃が困難になると整理されています。
だからこそ、毛先だけではアプローチしにくいバイオフィルムへ、別の作用を加えられないかというバイオエレクトリックの発想には研究価値があります。
ただし、もう一度確認すると、今回の99人RCTはPPD3mm以下の患者だけです。
この研究から、「微細電流なら6mm・7mmの深いポケットでも作用する」とは言えません。
深い歯周ポケットのブラッシングについては、「歯周ポケットが6mm・7mmある場所はどう磨く?」も参考にしてください。
4週間という期間は、短期の歯肉炎を見るには意味があります
「4週間しか調べていないなら、何も分からないのでは?」と思うかもしれません。
歯肉炎は、プラーク蓄積や口腔清掃の改善に対して比較的短い期間でも変化します。
ですから、4週間でGI、PI、BOPの短期変化を評価するという研究目的自体には意味があります。
問題は、その先です。
- 6か月後も差が残るのか
- 1年後も効果が続くのか
- 使い続けられるのか
- 歯周炎への進行を抑えるのか
- アタッチメントロスや骨吸収を減らすのか
そこまでは分かりません。
原著自身も、4週間では長期的な歯周組織の維持、効果の持続、長期の使用継続性について結論できないとしています。
だから「歯周病予防が証明された」とまでは言えません
今回の対象はプラーク性歯肉炎です。
そして測定したのは、GI、PI、BOPです。
一方、測定していないものには、
- 歯周炎の新規発症
- 長期的なアタッチメントロス
- 歯槽骨吸収
- 歯の喪失
があります。
したがって、「歯肉炎の短期臨床指標が改善した」ことと、「将来の歯周炎を防げる」ことは分けなければいけません。
原著自身も、バイオエレクトリック技術が歯周病の進行や全身健康へ及ぼす影響は、さらに長期研究で確かめる必要があるとしています。
4週間の安全性については、明らかな問題は報告されていません
97人の4週間観察では、有害事象は報告されませんでした。
口腔粘膜の異常や、歯科修復物への損傷も認められなかったとしています。
また論文のFigure 1では、50~200µAの電流は人が知覚する閾値より低いと説明されています。
したがって、「4週間の短期使用では明らかな安全性上の問題は観察されなかった」とは言えます。
一方、長期間使っても誰にでも安全だと証明されたという意味ではありません。
研究費と試験機器はProxiHealthcareから提供されています
この研究では、ProxiHealthcare Inc.が研究費を提供し、試験機器も供給しています。
これは必ず確認しておきたい情報です。
一方、論文には、スポンサーは、
- 研究デザイン
- データ収集
- 統計解析
- 結果の解釈
- 原稿作成
- 投稿判断
には関与しなかったと記載されています。
著者らは利益相反なしと申告しています。
企業資金だから結果を無効と扱う必要はありません。
しかし、製品研究を読むときに資金源を確認することは重要です。
研究方法、再現性、他の研究グループでも同じ結果が出るかを含めて評価する必要があります。
試験登録は研究終了後でした
今回の研究には、KCT0011422という試験登録番号があります。
しかし論文のDiscussionを読むと、CRISへの登録は試験終了後だったと記載されています。
著者らによると、試験登録の必要性を認識したのが研究終了後だったためです。
一方で、研究計画、参加・除外条件、評価項目、統計解析計画は参加者登録前に倫理審査で確定しており、研究途中では変更していないと説明しています。
これだけで研究結果が無効になるわけではありません。
ただし、試験開始前から公的な登録サイトへ公開されていれば、
- 最初からGIを主要評価項目にしていたのか
- 解析方法は途中で変更されていないのか
- 測定したのに報告されなかった評価項目はないのか
といった点を第三者がより確認しやすくなります。
ですから、論文上GIは主要評価項目として扱われていますが、前向きの公開試験登録によって、その設定を独立に確認できる研究ではなかったことは透明性上の限界として残ります。

今回のRCTから言えること・まだ言えないこと
| 今回の研究から言えること | 今回の研究だけではまだ言えないこと |
|---|---|
| 軽度~中等度のプラーク性歯肉炎99人を無作為化した4週間試験 | 微細電流歯ブラシ全般が音波歯ブラシ全般より優れている |
| 主要評価項目GIはバイオエレクトリックが音波より低かった | GI差が微細電流だけによって生じた |
| PIではバイオエレクトリックと音波の有意差を確認できなかった | EPSが実際に破壊された |
| BOPでもバイオエレクトリックと音波の有意差を確認できなかった | 細菌叢やバイオフィルム成熟度が改善した |
| 手用との比較ではバイオエレクトリックが複数指標で良好だった | 深い歯周ポケットにも同じ効果がある |
| 4週間では明らかな有害事象は報告されなかった | 歯周炎、骨吸収、歯の喪失を長期的に予防する |
| 微細電流歯ブラシに関する臨床研究は複数存在する | Great Gums以外のすべての製品で同じ結果が出る |
この区別をしておくと、研究結果を必要以上に持ち上げることも、反対に過小評価することも避けられます。
では、音波歯ブラシから微細電流歯ブラシへ買い替えるべき?
患者さんにとっては、ここが一番気になるところかもしれません。
今回の1本のRCTだけから、
「今使っている音波歯ブラシをやめて、微細電流歯ブラシへ替えた方がいい」
とまでは言えません。
PIでは音波との差を確認できていません。
BOPでも有意差は確認できていません。
比較した音波歯ブラシは1機種です。
期間も4週間です。
さらに今回の試験だけでは、GI差が微細電流そのものによって生じたのかも分離できていません。
一方で、主要評価項目GIでは音波より有意に低かったという結果を無視する必要もありません。
現時点では、
「興味深い臨床効果が示された。しかし、微細電流歯ブラシという製品群全体が音波歯ブラシより優れていると確立した段階ではない」
くらいに考えるのがよさそうです。
歯科衛生士としては「何を使っているか」だけでなく「どこが磨けているか」を見ます
患者さんが、手用歯ブラシ、音波歯ブラシ、回転式電動歯ブラシ、微細電流歯ブラシのどれを使っているかは、もちろん大切です。
でも診療室で私たちが見るのは、それだけではありません。

- 歯ぐきのきわにプラークが残っていないか
- 歯間部はどうか
- 一番奥の歯まで毛先が届いているか
- 被せ物の周囲はどうか
- 毎回同じ場所から出血していないか
- BOPがどれくらいあるか
- 本人がその歯ブラシを無理なく使い続けられているか
そういうところを見ます。
高機能な歯ブラシを持っていても、必要な場所に当たっていなければ十分には磨けません。
逆に、手用歯ブラシでも、その人に合った方法でしっかり磨けている方はいます。
だからこそ、「どの方式が最新か」だけではなく、「その人の口の中で実際に機能しているか」を見ることが大切だと思います。
少し変わった歯ブラシの研究では、「くわえるだけの全自動歯ブラシは本当に磨けるのか」でも、手用・音波・新型機器の比較を原著から検証しています。
次に欲しいのは「なぜGIだけ違ったのか」を直接調べる研究
今回の研究を読んだ後、次に知りたいことはかなりはっきりしています。
まず、同じ形、同じ毛、同じヘッドの歯ブラシで、微細電流ONとOFFを比較する。
そこに、上位クラスの音波式、回転振動式、手用歯ブラシも加える。
さらに単施設だけでなく、複数施設で行う。
観察期間も4週間ではなく、6か月、できれば1年まで延ばす。
ブラッシング回数や時間は自己申告だけでなく、電子的に記録する。
そしてGI、PI、BOPだけでなく、
- 患者単位でBOP<10%へ到達した割合
- 細菌叢
- EPS
- バイオフィルム構造
- バイオフィルム成熟度
- 炎症性物質
- 長期使用時の有害事象
まで測る。
そうすれば、
「PIはほぼ同じなのに、なぜGIだけ違ったのか?」
という今回最大の疑問へ、かなり直接迫れるはずです。
そして試験開始前に研究計画と解析方法を公的登録しておけば、さらに評価しやすくなります。

まとめ――「GIだけ差が出た」からこそ、面白いRCTです
今回の研究では、軽度~中等度のプラーク性歯肉炎がある成人99人を、バイオエレクトリック、音波、手用の3群へ無作為に分け、4週間比較しました。
主要評価項目GIは、
- バイオエレクトリック:0.822
- 音波:1.078
で、バイオエレクトリック群が有意に低く、P=0.023でした。
一方、PIは1.047対1.048とほぼ同じで、差を確認できませんでした。
BOPも8.76%対13.11%と数値上はバイオエレクトリック群が低かったものの、P=0.124で音波群との有意差を確認できませんでした。
だから今回の研究は、
「微細電流歯ブラシが音波歯ブラシに勝った」
という一文では、少し単純化しすぎです。
むしろ、
「プラーク付着程度がほぼ同じなのに、なぜGIだけ違ったのか?」
という新しい疑問を生んだ研究です。
プラークの付着程度と、細菌叢、成熟度、EPS、バイオフィルムの生物学的性質は、完全に同じ意味ではありません。
そのため、微細電流がバイオフィルムの状態へ何らかの影響を与えた可能性は、十分研究する価値があります。
ただし今回のRCTでは、EPSも、細菌叢も、バイオフィルム構造も直接測っていません。
ですから、作用機序はまだ仮説です。
関連する臨床研究は少しずつ増えています。
でも、長期効果、他施設での再現、微細電流そのものの寄与、生物学的な作用機序まで十分に確認されれば、ようやくこの技術をもう一段強く評価できるようになります。
現時点で言えるのは、
「主要評価項目GIでは、音波歯ブラシより興味深い差が出た」
というところまで。
そして、その「GIだけ違った」という結果こそ、今回の研究で一番面白いところだと思います。
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