2026年8月27日

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに
「ここの歯周ポケットが6mmと言われたんですけど、歯ブラシの毛先も6mmくらい入れたほうがいいんですか?」
今日のメインテナンス中、そんな質問をいただきました。
歯周病の検査では、「3mm」「4mm」「6mm」「7mm」など、歯周ポケットの深さを数字でお伝えすることがあります。
数字を聞くと、「6mmも深いなら、その奥まで歯ブラシを入れないと汚れが取れないのでは?」と思ってしまうかもしれません。
でも、ここにはとても大切な違いがあります。
歯周ポケットが6mmあることと、歯ブラシの毛先を6mm押し込むことは、まったく同じ意味ではありません。
深い場所ほど、力を入れて毛先を押し込めばよいわけでもありません。
歯ブラシで大切なのは、ポケットの数字と同じ深さまで毛先を入れることではなく、歯と歯ぐきの境目へ毛先を適切に当て、毎日のプラークをためにくくすることです。
今回は、歯周ポケットが6mm・7mmある場所を自宅でどう磨けばよいのか、「6mmなら6mmまで入れる?」という疑問から、バス法、45度、極細毛、ブラッシング圧、歯間ブラシ、歯科医院で行う歯周治療まで、歯科衛生士の立場から整理していきます。
先に結論|6mm・7mmの歯周ポケットへ毛先を6mm・7mm押し込む必要はありません
最初に結論からお伝えします。
歯周ポケットが6mm、7mmあるからといって、その数字と同じ深さまで歯ブラシの毛先を押し込む必要はありません。
むしろ、「もっと奥へ」「もっと強く」と考えすぎると、毛先をうまくコントロールできなくなったり、歯ぐきをこすって傷つけたりすることがあります。
深い場所のセルフケアで意識したいのは、「何mm入ったか」「どれくらい強く押したか」ではありません。
- どこへ毛先を当てるのか
- その場所ではどの道具を使うのか
- 毛先を大きく動かさず清掃できているか
- 自宅で清掃できる範囲と、歯科医院で処置する範囲を分けて考えられているか
この4つのほうが大切です。
なお、「そもそも歯周ポケットの中を家庭の歯ブラシでどこまで清掃できるの?」という疑問については、歯周ポケットの中は自分で磨ける?セルフケアで届く範囲と歯科医院で行うケアで詳しく解説しています。
今回はそこからさらに一歩進んで、深い歯周ポケットを指摘された場所へ、実際にどう毛先を当てればよいのかに焦点を当てます。

そもそも「歯周ポケット6mm」とは何を測った数字?
ここを理解すると、「6mmだから6mmまで磨かなければ」という誤解がかなり解けます。
歯周病の検査では、細い目盛りのついた歯周プローブという器具を使います。
6mmとは、歯ぐきの縁からポケット底まで測った値
プロービングデプス、つまりPPD(probing pocket depth)は、歯ぐきの縁である遊離歯肉辺縁から、プローブが到達した歯肉溝・歯周ポケットの底までの距離を測定したものです。
ただし、歯周病の状態はPPDだけで判断するわけではありません。
- プロービング時の出血(BOP)
- 臨床的アタッチメントレベル(CAL)
- 歯の動揺
- プラークの付着状態
- 根分岐部病変の有無
- レントゲンで確認する歯槽骨の状態
- 前回の検査から数値がどう変化しているか
などを組み合わせて評価します。
つまり、プローブは「深さや歯周組織の状態を調べる道具」です。
一方、歯ブラシは「歯面に付着したプラークを日常的に減らす道具」です。
目的が違うため、プローブが6mm入ったからといって、「歯ブラシも同じ6mmまで入れなければならない」とはなりません。
歯周ポケットの数字は「固定された穴の深さ」ではありません
もう一つ、とても大切なポイントがあります。
PPDの6mmという数字を、歯の横にいつも同じ形で存在する「6mmの穴」のようにイメージしないほうがよいでしょう。
炎症が強い歯ぐきでは、組織が腫れたり、プローブに対する組織の抵抗性が低下したりするため、測定されるPPDが大きくなることがあります。
反対に、歯周基本治療によって炎症が改善すると、歯ぐきの腫れが引き、PPDが浅くなることがあります。
ただし、PPDが浅くなったからといって、過去に失われた歯槽骨やアタッチメントがすべて元通りになったという意味でもありません。
だからこそ、歯周病ではPPDだけを一つの数字として見るのではなく、BOP、CAL、レントゲン所見、前回からの変化などを一緒に確認します。
プローブですら力任せに突き刺して測っているわけではありません
歯周病検査では、強い力でプローブを押し込んでいるわけではありません。
BOPなどを適切に評価する際には、組織を不必要に傷つけないよう軽いプロービング圧が用いられ、文献では約0.25Nという圧が示されています。
歯周組織を診査する細い器具でさえ、力任せに押し込んでいるわけではないのです。
家庭の歯ブラシでも、「奥まで届かせたいから強く押す」という考え方から離れてみましょう。
歯ブラシの毛先は歯周ポケットのどこまで届く?
では実際に、歯ブラシは歯ぐきの下までどの程度作用できるのでしょうか。
ここは昔から研究されてきたテーマです。
音波式および機械式歯ブラシを用いた小規模研究では、歯肉縁下およそ1mmまで細菌性プラークへの影響が確認されています。
さらに日本の小西らは、抜歯予定の32歯・128歯面を対象として、術者自身がBass法でブラッシングした場合、歯肉縁下プラークの除去距離は平均2.22mm、最大3.85mmだったと報告しています。
日本歯周病学会誌の総説でも、こうした研究を踏まえ、3mmを超える歯肉縁下の清掃は難しいと整理されています。
ただし、ここで絶対に誤解してほしくないことがあります。
「だから家庭でも2.22mmまで歯ブラシを入れればよい」という意味ではありません。
2.22mmは特定の研究条件で得られた平均値です。
歯ぐきの形、炎症の程度、歯並び、歯ブラシの種類、毛先の形態、当てる角度、歯の位置などによって状況は変わります。
6mmという数字を「毛先を6mm入れる目標」にしないのと同じように、2mmという数字を新しい目標にする必要もありません。
患者さんが毎日のセルフケアで意識したいのは、何mm入ったかではなく、歯と歯ぐきの境目へ毛先が安定して当たっているかです。

バス法の「45度」は、毛先を奥へ突き刺すための角度ではありません
歯周病の歯磨き方法として、「バス法」を聞いたことがある方もいると思います。
Bass法では、細くやわらかい毛先を根の方向へ向け、歯の長軸に対しておよそ45度に当て、小さな振動を加えながら歯と歯ぐきの境目を清掃します。
ただし、ここで「45度にすれば奥まで刺さる」と考えないことが大切です。
45度は「深さ」ではなく「毛先を向ける方向」
歯周ポケット6mmという数字は、検査で測定した深さです。
一方、45度は、歯ブラシをどちらへ向けるかという方向です。
そもそも同じ種類の数字ではありません。
日本歯周病学会誌の「歯ブラシを使いこなそう」でも、「45度で当てているからBass法」「直角だからスクラッビング法」という単純な理解では不十分であり、患者さんの歯並びや歯肉の状態、磨き残しの場所に応じて方法を選ぶ重要性が指摘されています。
「45度は聞いたことがあるけれど、本当に自分の当て方で合っているのかな?」という方は、正しい歯磨きの方法は一つではない?歯ブラシの角度や磨き方についても参考にしてください。
極細毛・テーパー毛なら深く押し込んでもいい?
歯周病用の歯ブラシには、「極細毛」「テーパー毛」「歯周ポケット用」などと表示されたものがあります。
すると、「細い毛なら、深いポケットへどんどん入れたほうがよいのでは?」と思うかもしれません。
ここにも注意が必要です。
極細毛は「強く押し込むための毛」ではありません
テーパー加工された毛先は細いため、歯と歯の間、補綴物との段差、歯肉辺縁などへ入りやすく、細かな形態へ適合させやすい特徴があります。
一方で、日本歯周病学会誌の総説では、テーパー毛はブラッシング圧が強いと毛先がはね、効率的にバイオフィルムを除去しにくくなることや、毛先を無理に歯周ポケットへ挿入しようとすると歯肉に擦過傷を生じさせる可能性が指摘されています。
つまり、
「細いから強く押し込める」ではなく、「細いから軽い力でも狭い部分へ適合させやすい」
と考えるほうがよいでしょう。
音波歯ブラシの極細毛研究でも「軽く当てる」
極細毛を用いた音波歯ブラシについて調べた松島らの研究では、歯肉炎または軽度歯周炎の患者さんを対象に、プラークや歯周ポケット内細菌、歯肉への傷害などが評価されています。
この研究でのブラッシング指導も、歯軸に対して45度にし、歯と歯ぐきの境目へ軽く毛先が当たるようにする方法でした。
極細毛に意味がないわけではありません。
実際、条件によっては歯周ポケット内の細菌への影響も報告されています。
しかし、極細毛がポケット内へ作用することと、深いポケット底を目標に力任せに押し込むことは別の話です。
電動・音波歯ブラシを使用している方は、電動歯ブラシの正しい使い方|歯ぐきを傷めない押しつけ方・当てる角度・動かし方も参考にしてください。

深い場所を磨くときは「力」ではなく「位置」を変えます
深いポケットを指摘されたとき、「もっと力を入れなければ」ではなく、「どこに毛先を当てれば、この場所のプラークを取りやすいだろう?」と考えてみましょう。
まず歯と歯ぐきの境目へ毛先を置く
歯の真ん中だけを磨いていても、歯肉辺縁にプラークが残れば歯周病のセルフケアとしては十分ではありません。
反対に、歯ぐきそのものを強くゴシゴシこすればよいわけでもありません。
狙うのは歯と歯ぐきの境目です。
鏡を見ながら、まず毛先をその位置へ置きます。
大きくゴシゴシせず、狙った場所で小さく動かす
ストロークが大きいと、せっかく歯肉辺縁へ置いた毛先が別の場所へ逃げてしまいます。
「奥へ押す」のではなく、狙ったところから毛先を逃がさないことを意識してみてください。
歯ブラシの「わき」を使う方法もあります
一般的な3列・4列の歯ブラシを45度に傾けても、すべての毛束が歯肉辺縁へ同じように当たるわけではありません。
歯ブラシの外側一列、いわゆる「わき」の毛先を利用し、狙った場所へ当てる方法があります。
大きなヘッド全体を歯ぐきへ押しつけるより、使う毛束を意識して位置を合わせるという考え方です。
最後の奥歯には「つま先」が便利なことも
歯ブラシの先端部分は「つま先」と呼ばれることがあります。
最後の奥歯の後ろ側、舌側の細かな場所、歯並びによって通常のブラシ面が入りにくい部分では、この「つま先」を使うと狙いやすいことがあります。
ただし、先端だけを使うと力が集中しやすいため注意が必要です。
日本歯周病学会誌の解説でも、「つま先」「かかと」を使うブラッシングでは圧が強くなりやすく、親指・人差し指・中指の3本で軽く持つなど、圧をコントロールする工夫が紹介されています。

強く押せば、もっとプラークが取れるわけではありません
「軽く磨くと汚れが残りそう」と感じる方もいます。
確かに、歯ブラシの毛先が歯面へまったく接触していなければ、プラークを機械的に除去することはできません。
しかし、必要な接触があることと、強ければ強いほどよいことは別です。
ブラッシング圧については研究によって測定値にかなり幅があり、歯ブラシの種類、磨き方、測定方法、磨く場所などによって結果も変わります。
過度のブラッシング圧と、歯肉の擦過、痛み、歯肉退縮、歯頸部の摩耗などとの関連を検討した研究もあります。
ただし、家庭で「200gなら正解」「250gなら安全」と数字を測る必要はありません。
むしろ、次のような状態があれば一度ブラッシング圧を見直してみましょう。
- 磨くたびに歯ぐきが痛い
- 毛先が大きく曲がるほど押している
- 新しい歯ブラシが短期間ですぐ開く
- いつも同じ場所に擦り傷ができる
- 力を抜くと毛先を当てられない
- 歯肉退縮がある場所を強く横磨きしている
歯周ポケットが深いからといって、ブラッシング圧まで深さに比例して強くする必要はありません。
「血が出るから、もっと奥まで磨く」はやめましょう
歯周病の患者さんからよく聞くのが、「血が出るから、まだ汚れていると思ってもっと強く磨いていました」というお話です。
たしかに、歯周病による炎症がある場所では出血しやすくなります。
しかし、歯ブラシで出血したという事実だけでは、なぜ出血したのかまでは分かりません。
歯周病による出血と、歯ブラシで傷つけた出血は同じではありません
歯科医院で記録するBOPは、歯周プローブを用いて一定の条件で確認する炎症所見です。
歯ブラシを強くこすって歯肉を傷つけた結果の出血と、そのまま同じ意味ではありません。
そのため、
「血が出た」→「まだ汚れている」→「さらに強く、さらに奥まで磨く」
という循環にはしないでください。
歯周病による炎症があるなら、プラークコントロール自体は大切です。
でも必要なのは、力を増やすことではなく、プラークが残る位置と使っている道具を見直すことです。
同じ場所から何日も出血する、腫れている、膿が出る、噛むと痛いという場合には、自己判断だけで磨き続けず、歯科医院で確認してもらいましょう。
歯と歯の間が磨きにくいなら、普通の歯ブラシをねじ込まない
深い歯周ポケットがある患者さんでは、歯と歯の間の清掃もとても重要です。
しかし、普通の歯ブラシを歯間へ無理やりねじ込む必要はありません。
歯間ブラシが向いている場所
歯周炎によってアタッチメントが失われると、歯と歯の間の空間が広くなることがあります。
このような場所では、歯間ブラシが使いやすい場合があります。
歯周炎既往患者を対象とした研究では、隣接面清掃について歯間ブラシがフロスより高い清掃効果を示した報告もあります。
ただし、大きい歯間ブラシを力任せに通すのも違います。
その歯間に合ったサイズを選び、無理なく通る方向で使用することが大切です。
ブラックトライアングルなど歯間が開いた場所の道具選びについては、ブラックトライアングルができた歯間はどう磨く?歯間ブラシ・フロスの選び方とサイズの合わせ方で詳しく解説しています。
フロスが向いている場所
歯間ブラシが通らない狭い歯間では、フロスが使いやすいことがあります。
「歯周病だから全員同じ道具」ではありません。
ワンタフトブラシが便利な場所
最後の奥歯の後ろ、歯並びが複雑な場所、通常の歯ブラシでは狙いにくい凹凸部や根分岐部の入口周囲などでは、毛束の小さなワンタフトブラシが便利な場合があります。
ただし、ワンタフトブラシも「深いポケット底へ突き刺すための器具」ではありません。
根分岐部など複雑な場所については、根分岐部病変のセルフケアと歯間ブラシ・ワンタフトブラシの使い分けも参考にしてください。

深い歯周ポケットがあるのは「歯磨きが下手だから」だけではありません
「6mmと言われました。私の歯磨きが下手だからですよね」
そうおっしゃる患者さんもいます。
もちろん、毎日のプラークコントロールは歯周病の予防・治療にとても重要です。
しかし、歯周ポケットの深さは歯磨きの上手・下手だけで決まるものではありません。
Wernerらが746人・16,825歯を対象として非外科的歯周治療後のPPD変化を調べた研究では、歯種、根の数、根分岐部病変、修復物などの歯に関する条件も、治療後のポケットの状態と関連していました。
奥歯・複根歯
前歯より形が複雑で、頬側・舌側・歯間部・最後方など、清掃しにくい場所が多くあります。
根分岐部
奥歯には複数の根があり、その分かれ目まで歯周病が進むと、通常の歯ブラシだけでは清掃しにくい複雑な形態になります。
被せ物・詰め物の周囲
修復物の形態や歯肉との位置関係によっては、プラークが残りやすい場所が生じることがあります。
すでに歯周組織が失われている歯
過去の歯周炎によって歯槽骨やアタッチメントが失われた歯では、炎症が改善しても清掃の難しい形態が残ることがあります。
だから、「もっと深く歯ブラシを押し込めば、自分の努力だけですべて解決できる」とは考えなくて大丈夫です。
セルフケアでできることと、歯科医院で確認・処置することを分けて考えることが大切です。
では、深い歯周ポケットの奥は誰がきれいにするの?
ここで、セルフケアと歯科治療の役割分担が出てきます。
歯周基本治療では、患者さん自身による毎日のプラークコントロールが非常に重要です。
一方、深い歯肉縁下に存在するバイオフィルムや歯石については、歯科医院でスケーリング・ルートプレーニング(SRP)や歯肉縁下インスツルメンテーションなどを行います。
日本歯周病学会誌のレビューでも、患者さん自身によるプラークコントロールは主として歯肉縁上、SRPなどの専門的処置は歯肉縁下の感染源への対応を担うという役割が整理されています。
そして、ここが重要です。
歯科衛生士や歯科医師が専用器具を使っても、歯周ポケットが深くなるほど、また根面形態が複雑になるほど処置は難しくなります。
古典的な研究では、深いポケットや根分岐部などでは、専門的な器具を使用しても歯石やバイオフィルムを完全に除去することが難しくなることが示されています。
それほど難しい場所なのです。
ですから家庭で、「専用器具でも難しい6mmや7mmのポケット底まで、自分の歯ブラシをなんとか押し込まなければ」と思う必要はありません。

初回検査で6mmだから、すぐ歯周外科になるわけではありません
ここは、6mm・7mmという数字を見て不安になった方に特にお伝えしたいところです。
初回の歯周病検査で6mmと測定されたからといって、すぐに歯周外科治療が決まるわけではありません。
通常はまず、患者さん自身によるプラークコントロールの改善、歯石除去、歯肉縁下インスツルメンテーションなどの歯周基本治療を行います。
その後、歯周組織が治癒する期間を置いて再評価します。
炎症が改善して歯ぐきの腫れが引けば、治療前よりPPDが浅くなることもあります。
そのうえで、深いポケットが残っているのか、BOPがあるのか、歯石やプラークが残っているのか、骨欠損や根分岐部病変があるのかなどを確認して、次の治療を検討します。
治療後も6mm以上が残っていたら「もっと強く磨く」ではなく再評価です
歯周基本治療後の再評価でも深い歯周ポケットが残る場合、それは自宅でさらに歯ブラシを強く押し込む合図ではありません。
EFP(ヨーロッパ歯周病連盟)のStage I~III歯周炎に対するS3レベル診療ガイドラインでは、歯周基本治療後の残存ポケットを再評価し、4~5mmの残存部位では再度の歯肉縁下インスツルメンテーション、6mm以上の深い残存ポケットでは症例に応じて外科的アクセスを検討する治療の流れが示されています。
ただし、これは「6mmなら全員手術」という意味ではありません。
初診時なのか治療後なのか、BOPがあるのか、歯の位置や根面形態、骨欠損、根分岐部、動揺、治療前からの変化、患者さんの全身状態などを総合して判断します。
大切なのは、
「6mm → 歯ブラシを6mm入れる」ではなく、「6mm → なぜその深さがあるのか、治療後も残っているのかを評価する」
という考え方です。
毛先がポケット底まで届かなくても、毎日の歯磨きには大きな意味があります
ここまで読むと、「それなら、自分では奥まで届かないんだから歯磨きしても意味がないのでは?」と思うかもしれません。
そんなことはありません。
むしろ、家庭でのプラークコントロールは歯周治療の土台です。
過去の歯周治療研究では、歯肉縁上のプラークコントロールが不十分な状態では、治療後にも歯肉縁上から連続するように歯肉縁下へプラークが形成されていくことが示されています。
セルフケアの役割は、「歯周ポケット底を毎日歯ブラシで直接こすること」ではありません。
ポケット入口周囲や歯面、歯間部のバイオフィルムを毎日減らし、新しいプラークが増え続ける環境を作らないことです。
そして歯科医院では、自分では見えない深い部分を検査し、必要に応じて専門的な処置を行います。
この2つを組み合わせることで、歯周病を長く管理していきます。
こんなときは歯ブラシの当て方だけで様子を見ないでください
深い歯周ポケットを指摘されている場所で、次のような変化がある場合には、一度歯科医院へご相談ください。
- 歯ぐきが急に腫れてきた
- 膿が出る
- 噛むと痛い
- 歯が以前より揺れる
- 急に違和感や口臭が強くなった
- 同じ場所から繰り返し出血する
- 歯周治療後に再びポケットが深くなってきた
- どの角度から磨いても同じ場所にプラークが残る
深い歯周ポケットでは、歯石、根分岐部病変、骨欠損など、自宅では確認できない原因が関係している場合があります。
また、急な腫れ・強い痛み・膿などがあるときは、「今日は強く磨いて様子を見よう」とせず、早めに歯科医院へ連絡してください。
ブランデンタルクリニックは立町駅徒歩1分、立町中央ビル4階エレベーターでお越しいただけます。通常の歯周病相談はWEB・LINE・電話でご予約いただけます。急な腫れや痛みなどでは当日電話受付可・急患同日可ですので、現在の症状を電話でお伝えください。
歯科衛生士さんから|深さを追いかけるより、毎日同じ場所へ正しく当てる
「6mmもあると言われたから、もっと奥まで磨かなければ」
そう思って一生懸命になっていた方に、「6mmまで歯ブラシを入れる必要はないんですよ」とお伝えすると、少し安心した表情をされることがあります。
歯周病のセルフケアは、昨日より1mm深く歯ブラシを入れる競争ではありません。
大切なのは、今日も歯と歯ぐきの境目へ毛先を当てること。
歯間部には、その場所に合った道具を使うこと。
力を入れすぎず、磨き残す場所を少しずつ減らすこと。
そして、自分では届かない場所は歯科医院で確認することです。
歯周ポケットの数字を見て不安になったときは、「何mmまで歯ブラシを入れればいいですか?」ではなく、
「この6mmの場所は、家ではどの角度から、どの歯ブラシを使って磨けばいいですか?」
と歯科衛生士に聞いてみてください。
同じ6mmでも、奥歯なのか前歯なのか、歯と歯の間なのか、頬側なのか舌側なのか、根分岐部なのかで、適したセルフケアは変わります。
実際のお口の中を見ながら、「この場所にはこの角度」「ここにはこのサイズの歯間ブラシ」というように、一緒に磨き方を決めていきましょう。
よくある質問
歯周ポケットが6mmあります。歯ブラシは6mmまで入れますか?
いいえ。6mmは歯周プローブで測定した歯周ポケットの深さであり、歯ブラシの毛先を6mm挿入するという意味ではありません。歯と歯ぐきの境目へ適切に毛先を当てることを意識してください。
7mmの歯周ポケットは自分で磨けますか?
歯肉辺縁や歯面・歯間部のセルフケアは非常に重要です。しかし、7mmのポケット底まで家庭用歯ブラシで完全に清掃することを目標にはしません。深いポケットは歯科医院での検査や歯肉縁下処置と組み合わせて管理します。
初めて6mmと言われたら手術が必要ですか?
6mmという数字だけで手術が決まるわけではありません。まず歯周基本治療を行い、炎症や歯肉縁下の状態が改善したあとに再評価します。そのうえで深いポケットが残る場合に、必要な追加治療を検討します。
バス法は歯周ポケットへ毛先を入れる磨き方ではないのですか?
Bass法では、毛先を歯肉溝方向へ向けて歯と歯ぐきの境目を清掃します。ただし、測定されたポケット深さと同じmm数まで毛先を押し込む方法ではありません。45度は主に毛先を当てる方向として考えてください。
極細毛なら深い歯周ポケットまで届きますか?
極細毛・テーパー毛は歯肉辺縁などへ適合しやすい特徴がありますが、深いポケット底まで必ず清掃できるわけではありません。また、細い毛だからといって強く押し込む必要もありません。
歯ぐきから血が出ても磨いたほうがいいですか?
歯周病による炎症がある場合、プラークコントロールを続けることは大切です。ただし、出血するからといって力を強くする必要はありません。何日も同じ場所から出血する、腫れ・痛み・膿を伴う場合には歯科医院で原因を確認してもらいましょう。
歯間ブラシを歯周ポケットへ入れてもいいですか?
歯間ブラシは主に歯と歯の間を清掃する道具です。深いポケット底へ力任せに押し込むためのものではありません。歯間の広さに合ったサイズを選び、歯科衛生士からその部位に合った通し方を確認してもらうと安心です。
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