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知覚過敏にヒアルロン酸+レーザー?抜去歯60本で検証、酸負荷後も象牙細管の開口面積が最小

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2026年9月10日

知覚過敏にヒアルロン酸+レーザー?抜去歯60本で検証、酸負荷後も象牙細管の開口面積が最小

(歯科助手さんの治療見学ノート)

はじめに

「先生、ヒアルロン酸って……歯にも塗るんですか?」

ヒアルロン酸と聞くと、化粧品や美容医療を思い浮かべる方が多いかもしれません。ところが2026年9月9日、知覚過敏に関係する象牙細管の閉鎖に、ヒアルロン酸とダイオードレーザーを組み合わせた研究がBMC Oral Healthに公開されました。

研究に使われたのは、知覚過敏の患者さん60人ではありません。抜去された第三大臼歯60本から象牙質の試料を作り、5%フッ化ナトリウム、ヒアルロン酸、ダイオードレーザー、それらの組み合わせを比較した実験室研究です。

その結果、処置直後に「開いている象牙細管の面積」がもっとも小さかったのは、ヒアルロン酸+ダイオードレーザー群でした。

さらに、脱灰と再石灰化を人工的に繰り返す14日間のpH cycling後には、どの群でも象牙細管が再び開く方向へ変化しました。それでも、最後まで開口面積がもっとも小さかったのはヒアルロン酸+レーザー群でした。

「それなら、知覚過敏にも一番効いたということですか?」

そう考えたくなる結果ですが、ここがこの研究を読むうえで一番大切なところです。

この研究では、患者さんの「しみる」「痛い」を一度も測っていません。

分かったのは、電子顕微鏡で見た象牙質表面の象牙細管がどの程度閉じていたかです。

「穴が一番よく閉じていた」と「患者さんが一番しみなくなった」は、同じ結果ではありません。

今回は歯科助手の目線から、「ヒアルロン酸+レーザー」という少し意外な研究と、研究結果をどこまで実際の知覚過敏治療へ読み替えてよいのかを見ていきます。

そもそも知覚過敏で「象牙細管を閉じる」のはなぜ?

冷たい水を飲んだ瞬間に「キーン」。歯ブラシの毛先が歯の根元に当たった瞬間に「ズキッ」。

こうした一過性の鋭い痛みを起こす代表的な原因のひとつが、象牙質知覚過敏症です。

象牙質知覚過敏は、露出した象牙質に冷気や冷水、乾燥、擦過、浸透圧の変化などの刺激が加わったときに短く鋭い痛みが起こり、刺激を取り除くと比較的速やかに消えることを特徴とします。

「歯がしみる」症状全体については、歯がしみるのは知覚過敏?冷たい水・歯磨きでしみる原因と歯医者へ行く目安でも詳しく解説しています。

象牙質の中には、象牙細管という非常に細い管がたくさん走っています。

知覚過敏の痛みを説明する代表的な考え方が「動水力学説(hydrodynamic theory)」です。

  • 冷たいものや乾燥などの刺激が露出した象牙質へ加わる
  • 象牙細管の中にある液体が動く
  • 歯髄側の神経が刺激される
  • 「キーン」「ズキッ」という鋭い痛みとして感じる

という考え方です。

そのため、象牙細管の開口部を塞いで管内の液体を動きにくくすることは、知覚過敏を抑える代表的な治療戦略のひとつになります。

ただし「象牙細管を閉じる」だけが知覚過敏治療ではありません

ここは今回の研究を読む前に押さえておきたいところです。

知覚過敏への対応には、象牙細管を物理的に塞ぐ方法だけでなく、神経の反応を鈍くする方法や、象牙細管内のタンパク質を変化させて刺激を伝わりにくくする方法などがあります。

例えば、硝酸カリウムを含む知覚過敏用歯磨剤は神経の興奮を抑える方向から作用します。一方、シュウ酸系材料、フッ化物、グルタールアルデヒドを含む製剤、各種コーティング材などは、それぞれ異なる仕組みで象牙細管を狭くしたり、刺激を遮断したりします。

歯質の欠損が大きければ、コンポジットレジンやグラスアイオノマーセメントなどで露出した部分を覆うことを検討する場合もあります。

つまり、象牙細管が閉じることは重要ですが、それだけで知覚過敏治療のすべてを説明できるわけではありません。

今回の論文が主に調べたのは、その中でも「象牙質表面で象牙細管がどれだけ閉じたか」という部分です。

「抜去歯60本」の研究で、知覚過敏患者60人ではありません

まず誤解しやすいのが、この「60本」の意味です。

研究に使用されたのは、20〜40歳の人から抜去された埋伏下顎第三大臼歯60本です。

むし歯、亀裂、摩耗、着色、脱灰などが認められない歯を選び、洗浄・観察したうえで実験試料としています。

研究者は歯の咬合面側から歯を切断し、厚さ約2mmの象牙質ディスクを作製しました。さらに表面を1200-gritの研磨紙で整えたあと、17%EDTAを2分間作用させています。

これは、切削や研磨で生じるスメア層や象牙細管を塞ぐスメアプラグを取り除き、象牙細管が開いた状態をそろえてから各処置を比較するためです。

したがって、もともと知覚過敏を起こしていた歯を60本集めた研究ではありません。

実験条件をそろえ、人工的に象牙細管を開口させた象牙質モデルです。

また、使用されたのは第三大臼歯から作った冠部象牙質です。実際の一般的な象牙質知覚過敏では、歯肉退縮などによって露出した歯頸部や根面の象牙質が問題になることが少なくありません。

そのため、「実際に知覚過敏が起きている歯頸部・根面をそのまま再現した実験」と考えることもできません。

歯肉退縮と知覚過敏の関係については、歯磨きのしすぎで歯ぐきが下がる?歯肉退縮と知覚過敏を防ぐ歯ブラシの力・硬さ・動かし方も参考にしてください。

研究方法には、比較を公平にするための工夫もあります

実験室研究だからといって、結果に意味がないわけではありません。

今回の研究では、60試料を5群へ無作為に割り付けています。また、電子顕微鏡による評価では1試料につき3つの視野を撮影し、その平均値を統計解析に使用しています。

画像解析を担当した評価者には、どの処置群なのか、処置前・処置後・pH cycling後のどの時点なのかが分からないようにし、すべての画像を同じImageJの解析条件で処理しています。

つまり、研究者の主観によって「これはよく閉じて見える」と判断するのではなく、できるだけ同じ条件で数値化する工夫がされています。

一方で、こうした厳密な実験条件は、唾液、歯髄側からの圧力、バイオフィルム、食事、ブラッシングなどが同時に存在する実際の口の中とは異なります。

60試料を5群に分けて何を比較した?

M1:5%フッ化ナトリウム

5%NaFを含むProfluorid varnishを使用しています。

この群は「何もしない群」ではなく、既存の処置法と比較するための比較対照です。

5%フッ化ナトリウムを含む製剤は、日本でも象牙質知覚過敏に関連する製剤として使用されているものがあります。

M2:ヒアルロン酸

0.8% sodium hyaluronateを含むヒアルロン酸ゲル「Gengigel」を使用しています。

象牙質表面へ薄く塗り、約2分間やさしく擦りながら適用しました。

M3:ダイオードレーザー

波長980nmのダイオードレーザーを使用しています。

出力1W、連続照射で30秒間という条件です。

M4:ヒアルロン酸+ダイオードレーザー

ヒアルロン酸ゲルを塗布したあと、同じ条件で980nmダイオードレーザーを照射しました。

M5:ヒアルロン酸+5%フッ化ナトリウム

ヒアルロン酸を塗布したあと、5%NaFを使用しました。

いずれの処置も1回だけです。毎日塗布したり、何回もレーザーを照射したりした研究ではありません。

何をもって「象牙細管が閉じた」と判断した?

処置の効果は、環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)を使って評価しました。

倍率は2000倍。それぞれの試料から3視野を撮影し、ImageJという画像解析ソフトを使って、観察した象牙質表面のうち、開いている象牙細管が占める面積の割合を計算しています。

したがって、数字が小さいほど、少なくとも電子顕微鏡で見た表面では象牙細管の開口部分が少なかったと考えます。

ただし、数字の意味には注意が必要です。

「4.78%」は、象牙細管100本のうち4.78本が開いていたという意味ではありません。

まして、「知覚過敏の痛みが4.78%残った」という意味でもありません。

解析した画像面積に対して、開いて見える象牙細管部分が何%を占めていたかという数値です。

処置直後、ヒアルロン酸+レーザーは4.78%で最小でした

処置前と処置直後の結果を見てみましょう。

処置処置前 T0処置直後 T1
5%NaF14.86±3.06%11.22±0.97%
ヒアルロン酸13.60±2.92%6.79±1.83%
ダイオードレーザー14.97±2.60%8.84±2.21%
HA+レーザー16.32±2.65%4.78±1.33%
HA+NaF15.01±1.88%6.71±1.63%

論文本文では、処置前には5群間に統計学的な有意差はなかったと報告されています。

処置後にはすべての群で開口面積が減少しました。

そして最小だったのが、ヒアルロン酸+ダイオードレーザー群の4.78±1.33%です。

もうひとつ興味深いのが、ヒアルロン酸単独群です。

ヒアルロン酸単独は6.79%、レーザー単独は8.84%でした。今回の実験条件では、平均値で見るとヒアルロン酸単独の方がレーザー単独より開口面積が小さく、著者らも結論でヒアルロン酸単独がレーザー単独より大きな閉鎖効果を示したと述べています。

また、ヒアルロン酸単独とヒアルロン酸+NaFの間には、著者らの群間比較で統計学的な有意差が認められていません。

つまり、「何かを2つ組み合わせれば必ず単独処置より強くなる」という結果でもありません。

一度閉じた象牙細管は、そのままずっと閉じている?

実際の口の中では、知覚過敏の処置をしたあとも食事をしますし、飲み物も飲みます。歯の周囲のpHも一定ではありません。

酸性の飲食物やプラーク中で産生される酸などによって、露出した象牙質が脱灰方向へ傾くことがあります。

日本の臨床資料でも、知覚過敏抑制材によって象牙細管内に結晶を作ったとしても、酸性飲食物などによる脱灰によって再び症状が現れる可能性が指摘されています。

そこでこの研究では、処置直後の観察だけでは終わらず、脱灰と再石灰化を人工的に繰り返すpH cyclingを行っています。

pH4.8を8時間、pH7.0を16時間、これを14日間

今回行われたpH cyclingでは、まず試料をpH4.8の脱灰液へ8時間浸しました。

脱灰液にはカルシウム、リン酸塩、酢酸などが含まれています。

その後、pH7.0の再石灰化液へ16時間浸します。

この「8時間+16時間」を1サイクルとして、14日間繰り返しました。

これは脱灰・再石灰化を実験室で繰り返す人工的なモデルです。

「炭酸飲料を14日間飲んだ」「レモンを食べても14日間効果が続いた」といった臨床試験ではありません。

酸負荷後は5群すべてで象牙細管が再び開く方向へ

pH cycling後の結果がこちらです。

処置処置直後 T1pH cycling後 T2
5%NaF11.22%13.05%
ヒアルロン酸6.79%8.68%
ダイオードレーザー8.84%10.06%
HA+レーザー4.78%6.45%
HA+NaF6.71%8.08%

5群すべてで数字が増えています。

ヒアルロン酸+レーザー群も、4.78%から6.45%へ増加しました。

つまり、ヒアルロン酸+レーザーだけが酸負荷を受けても全く変化しなかったわけではありません。

電子顕微鏡像でも、pH cycling後には処置直後より象牙細管の内腔が広くなり、著者らは閉鎖効果が部分的に失われたと説明しています。

それでも、pH cycling終了後の開口面積はHA+レーザー群の6.45±1.15%が5群中最小でした。

「酸に一番強かった」と言い切らない理由

原著では、HA+レーザー群について酸性環境への抵抗性が高かった可能性が示されています。

ただし、「pH cycling後の最終値が最小だった」ことと、「酸によって失われた閉鎖効果が最も少なかった」ことは同じではありません。

処置直後T1からpH cycling後T2までの平均値の単純な差を計算すると、次のようになります。

  • 5%NaF:11.22→13.05 +1.83ポイント
  • ヒアルロン酸:6.79→8.68 +1.89ポイント
  • レーザー:8.84→10.06 +1.22ポイント
  • HA+レーザー:4.78→6.45 +1.67ポイント
  • HA+NaF:6.71→8.08 +1.37ポイント

HA+レーザーは、pH cycling後の最終的な開口面積がもっとも小さかったのは確かです。

しかし、この単純差そのものについて「どの群の劣化量が統計学的に最小だったか」を比較した結果ではありません。

したがって、レーザー単独が+1.22ポイントだったから「レーザー単独が酸に最も強い」と結論づけることもできません。

今回強く言えるのは、14日間のpH cycling後にも、HA+レーザー群の開口面積の絶対値が5群中もっとも小さかったというところまでです。

4.78%なら「知覚過敏が95.22%治った」?それは違います

ここがこの記事で一番覚えておいていただきたい部分です。

4.78%は痛みの改善率ではありません。

この研究では患者さんへ冷水を飲んでもらっていません。

歯へ風を当てたときにどれくらい痛むかも調べていません。

患者さん本人の痛みをVASで評価したわけでも、Schiff sensitivity scoreで刺激への反応を評価したわけでもありません。

何週間しみなくなったのかも調べていません。

研究で測定したのは、電子顕微鏡画像で見た象牙細管の開口面積です。

したがって、

「4.78%だったから、知覚過敏が95.22%改善した」

とは言えません。


この研究で測ったこと
○ 象牙細管表面の開口面積
○ 処置直後の変化
○ pH cycling後の変化
○ 5つの処置法の比較

この研究では測っていないこと
× 患者さんの痛みが何%減ったか
× 冷たいものがどれだけしみなくなったか
× 何週間・何か月効果が続くか
× 日常生活がどれだけ楽になったか
× HA+レーザーが臨床的に最も優れているか

本当に「知覚過敏が改善した」を調べる研究は何が違う?

では、本当に患者さんの知覚過敏が改善したかを調べる臨床研究では、何を測るのでしょうか。

例えば2026年のBDJ Openに掲載された別の無作為化臨床試験では、127人を対象として知覚過敏用歯磨剤を比較しています。

そこでは実際の患者さんに対して、歯へ一定の力を加える触覚刺激と、風を当てるair-blast刺激を使い、開始時、使用直後、2週、4週、8週など複数の時点で知覚過敏の変化を調べています。

さらに2026年のClinical Oral Investigationsには、独立した2つの臨床試験で104人と113人を対象とし、歯科医師側が評価するSchiff scoreや触覚閾値だけでなく、患者さん本人による疼痛評価や、知覚過敏が生活へ与える影響を調べるDHEQ-48まで評価した研究があります。

つまり「患者さんに本当に効いたか」を考えるには、研究の階段を一段ずつ上がる必要があります。

  • 象牙細管が閉じるか
  • 象牙質の透過性や細管内の液体移動が低下するか
  • 実際に刺激を加えたときの痛みが減るか
  • その効果が何週間・何か月続くか
  • 食事・飲水・歯磨きなど患者さんの日常生活が楽になるか

今回のHA+レーザー研究で主に確認されたのは、この階段のかなり上流にある「象牙細管表面がどの程度閉じて見えるか」です。

電子顕微鏡で入口が閉じても「管の奥」までは分からない

象牙細管は、表面にある小さなくぼみではありません。

象牙質の内部へ続いている細い管です。

ですから、電子顕微鏡で表面を見て「入口が閉じている」ことと、「閉鎖物がどのくらい深いところまで入っている」ことは別の問題です。

2026年のJ Appl Oral Sciに掲載された別の実験室研究では、知覚過敏関連材料について、SEMによる象牙細管の形態だけでなく、元素組成、表面硬さ、共焦点レーザー顕微鏡による材料の侵入深さなど、複数の方法で調べています。

これは、象牙質材料を評価するときには、

  • 表面が塞がって見えるか
  • 内部まで材料が入り込んでいるか
  • 歯質のミネラル状態が変わっているか
  • 実際に液体を通しにくくなっているか

といった項目が必ずしも同じではないことを示しています。

今回のHA+レーザー研究では、象牙質表面の開口面積は測定しましたが、閉鎖物の侵入深さは測っていません。

さらに、象牙質を液体がどれくらい通過するかという象牙質透過性も測定していません。

細いストローに例えるなら、上から見て入口に蓋があるように見えても、その蓋がどの深さまで続いているのか、液体が本当にどれほど流れにくくなったのかは、それぞれ別に調べる必要があるということです。

では、なぜ「ヒアルロン酸」を象牙質へ使ったのでしょうか?

ヒアルロン酸は、美容目的だけに使われる成分ではありません。

もともと生体内に存在するグリコサミノグリカンの一種で、歯科でも歯周組織などとの関係が研究されています。

今回使われたのは、0.8% sodium hyaluronateを含む高分子量ヒアルロン酸ゲルです。

原著では、ヒアルロン酸を使用する理論的背景のひとつとして、ヒアルロン酸がコラーゲン線維内の石灰化や象牙質再石灰化を促進する可能性を示した2023年の基礎研究を引用しています。

ただし、ここでも研究段階を混同してはいけません。

「象牙質の再石灰化を助ける可能性がある」ことと、「ヒアルロン酸を患者さんの歯へ塗れば知覚過敏の痛みが改善することが証明されている」ことは別です。

今回の原著自身も、ヒアルロン酸を知覚過敏へ応用する臨床的エビデンスはまだ限定的であるとしています。

したがって、この研究を見て市販のヒアルロン酸製品などを自己判断で歯へ塗る、という話にはなりません。

ヒアルロン酸+レーザーは「相乗効果が証明された」の?

処置直後4.78%、pH cycling後6.45%。

どちらもHA+レーザー群が5群中最小でした。

そうなると、「2つを一緒に使ったことで相乗効果が出たのでは?」と思います。

原著でも、ヒアルロン酸とレーザーによる異なる作用が互いに補い合った可能性について考察しています。

しかし著者ら自身、今回の結果を「確認された相乗作用」だとはしていません。

組み合わせによって結果が良くなったことは確認できますが、ヒアルロン酸とレーザーがどのような割合で寄与し、2つの作用が単純な加算以上に強め合ったのかまでは直接検証していません。

また、処置の順序はヒアルロン酸を塗布したあとにレーザーです。

著者らはレーザーによる象牙質表面の変化が材料の保持などに関与した可能性を考察していますが、今回の研究ではヒアルロン酸が象牙細管のどの深さまで侵入したかを測定していません。

したがって、「レーザーがヒアルロン酸を象牙細管の奥深くまで押し込んだ」と断定することもできません。

「レーザー+知覚過敏抑制材」という発想自体は新しくありません

ダイオードレーザーと、象牙細管を閉鎖する材料を組み合わせる研究自体は以前から行われています。

2026年には、nano-hydroxyapatite(nHAP)歯磨剤と940nmダイオードレーザーを組み合わせ、実際の知覚過敏患者でVASなどを最大8週間評価した小規模な臨床研究も報告されています。

そこでは併用群で大きな疼痛低下が報告されました。

ただし、これは今回と同じ治療ではありません。

  • ヒアルロン酸ではなくnHAP
  • 980nmではなく940nm
  • 小規模な研究
  • プラセボ対照なし
  • 観察期間は8週間

という違いがあります。

したがって、「nHAP+レーザーが効いたから、HA+レーザーも患者さんに効く」と読み替えることはできません。

分かるのは、象牙細管閉鎖系の材料とダイオードレーザーを組み合わせる研究の流れ自体は今回突然始まったものではないということです。

レーザーによる知覚過敏治療については、当院の歯がしみるのを治したい!CO2レーザーで知覚過敏症治療でも紹介しています。ただし、CO2レーザーと今回の980nmダイオードレーザーは別のレーザーです。波長、組織への吸収、出力、照射方法などが違うため、「歯科用レーザー」と一括りにはできません。

今回には「何もしない群」がありません

研究を読むうえでもうひとつ注意したい点があります。

今回の5群には、何も処置しない無処置対照群がありません。

5%NaF群も無処置群ではなく、著者らが既存処置との比較のために設定した比較対照です。

そのため、5つの処置法の中でどの群がより小さな開口面積を示したかは比較できます。

一方で、「何もしなかった象牙質なら同じ期間でどう変化したのか」「各処置が無処置と比較してどの程度の閉鎖を維持したのか」を直接比較した試験ではありません。

「すべての群で処置後に開口面積が減った」という結果と、「すべての処置が無処置より臨床的に有効だと証明された」という結論は分けて考える必要があります。

この研究だけでは、まだ分からないこと

ここまでを整理すると、今回の研究だけでは次のことはまだ分かりません。

  • 実際の知覚過敏患者の痛みが減るか
  • HA+レーザーが既存の知覚過敏治療より臨床的に優れているか
  • 冷水や冷風に対する痛みが何%減るか
  • 効果が何日、何週間、何か月続くか
  • 最適な処置回数が何回なのか
  • 毎日のブラッシングを受けても閉鎖状態を維持できるか
  • 咀嚼や温度変化などを加えても同じ結果になるか
  • 唾液、歯髄側からの圧力、バイオフィルムが存在する口腔内でも同じ結果になるか
  • ヒアルロン酸が象牙細管のどの深さまで入り込んでいるか
  • 象牙質内の液体移動が実際にどれくらい減ったか
  • 無処置の場合と比べてどれだけ閉鎖状態を維持できるか

原著自身も、唾液動態、歯髄圧、バイオフィルムを十分に再現できていないこと、1回だけの処置であること、表面のみの評価であること、侵入深さと象牙質透過性を評価していないことなどを限界として挙げています。

さらに今回のようにEDTAを使って象牙細管を均一に開いた試料では、実際の口の中より各処置の閉鎖効果が大きく見える可能性もあります。

「期待できそうな結果」と「臨床的な治療効果が確立した」の間には、まだ距離があります。

研究室で「閉じた」から、患者さんで「効いた」へ

実験室で良い結果が出たあと、次は何を調べればよいのでしょうか。

日本の知覚過敏研究にも分かりやすい例があります。

ステアリン酸亜鉛という材料では、まず実験室研究で象牙質表面への沈着や象牙細管内部への侵入、物理的な閉鎖が確認されました。

その後、実際に象牙質知覚過敏症と診断された患者さんへ使用し、一定条件の送風刺激を加えて、患者さん自身のVASによる痛みを2週後・4週後まで調べる臨床研究が行われています。

つまり、

  • まず実験室で「閉じるか」を調べる
  • 次に患者さんで「痛みが減るか」を調べる
  • さらに「どのくらい長く続くか」を調べる

という順番で、少しずつ臨床へ近づいていきます。

今回のHA+レーザー研究も、著者らは今後の課題として実際の患者さんで知覚過敏症状が減るかを調べるin vivo研究や、象牙細管内への侵入深さを評価する研究を挙げています。

現時点では、この1本の実験室研究だけを根拠に、ヒアルロン酸+980nmダイオードレーザーを標準的な知覚過敏治療と位置づけることはできません。

だから「知覚過敏ならヒアルロン酸+レーザー」ではありません

「冷たいものがしみるなら、ヒアルロン酸とレーザーをお願いすればいい」という話ではありません。

そもそも、歯がしみる=すべて象牙質知覚過敏ではありません。

むし歯、歯の亀裂、詰め物や被せ物の問題、歯髄の炎症、歯肉退縮や露出根面などでも似た症状が起こります。

歯石除去のあとにしみる場合についても、歯石取り後に歯がしみるのはなぜ?知覚過敏はいつまで続く?クリーニング後の原因と自宅ケアで詳しく紹介しています。

また、知覚過敏と考えて処置をしても改善しない場合には、同じ薬を何度も塗り続けるだけではなく、咬合、酸性飲食物、ブラッシング、服薬、さらには歯以外から生じる痛みなども含めて原因を再評価することが重要です。

患者さんにとって一番大切なのは、特定の材料やレーザーを指定することではなく、「なぜその歯がしみているのか」を最初に確認することです。

歯科助手さんの治療見学ノート:一番印象に残ったのは「4.78%」ではありませんでした

最初に論文の内容を聞いたとき、一番びっくりしたのはもちろん、

「知覚過敏にヒアルロン酸を使うんですか?」

というところでした。

しかも、そこへダイオードレーザーを組み合わせる。

そして実際、処置直後には開いている象牙細管の面積が4.78%まで小さくなり、14日間のpH cycling後にも6.45%で5群中最小でした。

十分に目を引く数字です。

でも、最後まで読んで一番印象に残ったのは、その数字そのものではありませんでした。

「電子顕微鏡で一番閉じていた」と、「患者さんが一番しみなくなる」は同じ意味ではない。

ということです。

歯科の研究は、「この仕組みは使えそう」というところから始まり、実験室で本当に変化するのか、実際の患者さんでも痛みが減るのか、その効果が続くのか、生活まで楽になるのか、と少しずつ積み重なっていきます。

今回の研究は、ヒアルロン酸+980nmダイオードレーザーという組み合わせについて、次の臨床研究へ進む理由を示した研究と考えると分かりやすそうです。

「新しい知覚過敏治療が完成した」という研究では、まだありません。

それでも、酸負荷後にも5群中もっとも象牙細管の開口面積が小さかったという結果は、確かに「次は患者さんでどうなるんだろう?」と思わせるものでした。

よくある質問

ヒアルロン酸を自分で歯に塗れば知覚過敏に効きますか?

今回の研究からは言えません。特定の0.8% sodium hyaluronate製剤を、抜去歯から作った象牙質試料へ使用した実験です。市販のヒアルロン酸製品を家庭で歯へ塗った場合の効果を調べた研究ではありません。

4.78%ということは、知覚過敏が95.22%改善したのですか?

違います。4.78%は、電子顕微鏡画像で解析した象牙質表面のうち、開いた象牙細管が占めていた面積の割合です。患者さんの疼痛改善率ではありません。

知覚過敏にレーザー治療は使われていますか?

知覚過敏にレーザーを用いた臨床研究はあります。ただし、ダイオードレーザー、Nd:YAGレーザー、CO2レーザーなど種類があり、同じ種類でも波長、出力、照射時間、照射方法が異なります。今回のHA+980nmダイオードレーザーと他のレーザー治療を同じものとして考えることはできません。

酸っぱいものを食べると、知覚過敏の処置は全部取れてしまいますか?

今回の実験ではpH cycling後に全群で象牙細管開口面積が増えましたが、これは人工的な脱灰・再石灰化モデルです。実際の患者さんが酸性飲料を飲んだあとに、どの程度・どの速さで知覚過敏抑制効果が変化するかを直接調べた研究ではありません。

フッ化物群の数字が大きかったなら、フッ化物は知覚過敏に効かないのですか?

その結論にはなりません。今回比較したのは、特定の実験条件における象牙細管表面の開口面積です。フッ化物を使った知覚過敏治療全体の臨床効果を否定する研究ではありません。

冷たい水がしみるなら知覚過敏ですか?

知覚過敏は代表的な原因のひとつですが、むし歯、歯の亀裂、歯髄の問題など別の原因でも似た症状が起こります。

特に、何もしていなくても痛い、刺激を取り除いても痛みが長く残る、噛むと痛い、以前より急に症状が強くなった、といった場合には自己判断せず歯科医院で確認してください。

広島市中区立町のブランデンタルクリニックは立町駅徒歩1分、立町中央ビル4階にあり、4階へはエレベーターでお越しいただけます。急に歯がしみるようになった、痛みが強くなったなどの場合には当日の電話受付も可能で、急患も予約状況に応じて同日受診をご相談いただけます

参考文献

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