2026年9月24日

(受付さんの備忘録)

はじめに
受付にいると、ときどき「子どもが学校で前歯をぶつけたそうです」「部活中に歯が折れたと学校から電話がありました」というご相談があります。
転んだ。ほかの選手とぶつかった。ボールが顔に当たった。バットやラケットが当たった。
学校で突然こんな事故が起きたら、先生も保護者の方も慌ててしまうと思います。
そして意外と迷いやすいのが、
・まず保護者へ連絡する?
・先に歯医者へ電話する?
・保護者が学校へ迎えに行ってから歯医者を探す?
・学校の事故の書類を先にもらった方がいい?
という「順番」です。
最初にお伝えしたいのは、歯の外傷では、
「学校→保護者→歯科」と、一つの連絡が全部終わるまで次を待つ必要はない
ということです。
事故直後に最優先するのは、子どもの安全確認と必要な応急処置です。
そのうえで外傷の緊急性に応じて、保護者への連絡、歯科への連絡、受傷状況の記録などを並行して進めます。
日本学校歯科医会も、学校で歯・口の外傷が起きた場合には、教員やスポーツ指導者が応急処置を行い、受傷状況を記録し、保護者へ連絡するとともに、学校歯科医やかかりつけ歯科医などと連携する流れを示しています。
今回は「部活中に歯が折れた!」という場面を想定して、事故発生から歯科受診、そして学校での手続きまでの流れを、受付の立場から整理してみます。
まず確認するのは「歯」より子どもの全身状態です
前歯が大きく欠けていたり、口から血が出ていたりすると、どうしても最初に歯へ目が向きます。
でもスポーツ中の外傷では、歯だけに力が加わったとは限りません。
転倒して地面へ顔を打ったのかもしれませんし、選手同士で強く衝突したのかもしれません。ボールや器具がかなりの勢いで顔に当たった可能性もあります。
そのため、まず見てほしいのは子ども本人の全身状態です。
・普通に受け答えできているか
・呼びかけへの反応がおかしくないか
・一時的でも意識を失っていなかったか
・頭を強く打っていないか
・繰り返し吐いていないか
・強い頭痛やめまいがないか
・物が二重に見えるなどの症状がないか
・呼吸に問題はないか
・大きな出血が続いていないか
文部科学省の「学校事故対応に関する指針」でも、学校管理下で事故が発生した場合には、児童生徒の生命と健康を最優先として対応することが基本になっています。
つまり、
「歯が折れているから、とにかく歯医者へ」
とは限りません。
頭部外傷や全身状態に問題が疑われる場合には、歯科より先に119番通報や医科での評価が必要になることがあります。

「口が開かない」「噛み合わせが変」も歯科へ伝えてください
歯科へ電話するとき、受付から歯以外のことをいろいろ聞かれる場合があります。
「口は普通に開きますか?」
「噛み合わせは事故前と同じですか?」
「顎も打っていますか?」
と聞かれると、
「歯が折れた話をしているのに、なぜ顎のことまで?」
と思われるかもしれません。
でも、これは大切な確認です。
スポーツ外傷では歯だけではなく、歯を支えている歯槽骨や顎骨まで損傷する場合があります。
・口を開けにくい
・事故前と噛み合わせが違う
・開け閉めすると顎がずれる感じがする
・歯列に段差がある
・複数の歯がひとかたまりになって動く
・顎先を強く打ったあと、しびれるような感じがある
こうした症状は、単純な歯冠破折とは違う外傷を考える手掛かりになります。
ですから、
「前歯が折れました」
だけでなく、
「口も開きにくそうです」
「噛むと上下の歯が以前と違う位置で当たります」
という情報も、そのまま歯科医院へ伝えてください。

事故が起きた「時刻」をできるだけ記録してください
学校で歯の外傷が起きたときに、ぜひ残してほしい情報があります。
それが、
「何時ごろ事故が起きたのか」
です。
たとえば、
「今日の部活中です」
だけではなく、
「16時20分ごろです」
まで分かれば、歯科側にとって大切な情報になります。
特に永久歯が完全に抜けてしまった場合には、歯が口の外にあった時間や保存状態が再植後の予後に関係します。
2025年改訂の口腔顎顔面外傷診療ガイドラインでも、受傷時刻は完全脱臼歯の再植の予後を判断する重要な情報とされています。
できれば事故時刻と一緒に、
何をしていたときか。
何にぶつかったか。
どこを打ったか。
意識を失った時間はなかったか。
歯は欠けたのか、揺れているのか、位置が変わったのか、抜けたのか。
といった情報も残しておくと、その後の診察に役立ちます。
「歯が折れた」と「歯が抜けた」は分けて考えます
学校から、
「前歯が折れました」
と連絡が来ても、実際の状態はいろいろです。
歯の先端が少し欠けただけの場合もあれば、歯のかなり大きな部分が折れている場合もあります。
歯そのものは残っていてもグラグラしていることもありますし、位置がずれてしまっていることもあります。
そして、ときには「折れたと思ったら、永久歯が歯根ごと抜けていた」ということもあります。
ここは分けて考えます。
歯の一部が折れた場合
折れた歯の破片が見つかったら、小さく見えても捨てずに歯科医院へ持ってきてください。
状態によっては、破折片を治療に利用できる場合があります。
また、大きく欠けているのに破片が見当たらず、同時に唇を強く切っているようなケースでは、破折片が口唇などの軟組織内へ入り込んでいないか確認が必要になる場合があります。
「破片があったか」
「見つからなかったか」
も歯科医院へ伝えてください。
歯が欠けたときの受診については、「歯が欠けたときは当日受診できる?予約前に受付へ伝えてほしいこと」でも詳しく紹介しています。
永久歯が丸ごと抜けた場合
永久歯の完全脱臼は、歯の外傷の中でも特に時間が重要です。
国際歯科外傷学会(IADT)では、抜けた歯が永久歯であることを確実に判断でき、安全に行える場合には、事故現場での即時再植が推奨されています。
ただし、学校現場で乳歯か永久歯か判断できない、戻し方が分からない、子どもが動いていて安全に行えないなど、無理に戻そうとすることが適切でない状況もあります。
判断に迷う場合は、無理に元へ戻そうとせず、まず歯を適切に扱い、乾燥を避けながら直ちに歯科へ連絡してください。
抜けた永久歯を扱うときは、白く見える歯冠部分を持ちます。
歯根部分はできるだけ触らないでください。
また、歯根の表面を指や布でこすったり、ゴシゴシ強く洗ったりしないでください。
学校に専用の歯の保存液があれば、それを使用します。
すぐに再植できない場合には、歯を乾燥させないことが重要です。状況に応じて、歯の保存液や牛乳などが保存媒体として使われます。
大切なのは、
「保護者が学校へ到着するまで待とう」
「診察券を取りに家へ帰ろう」
「学校の書類を用意してから歯医者へ行こう」
と、時間を使ってしまわないことです。
永久歯が抜けていることが分かったら、歯を乾燥させないようにしながら、直ちに歯科へ連絡してください。

乳歯が抜けた場合
乳歯は永久歯と対応が違います。
抜けた乳歯を自己判断で元の場所へ戻さないでください。
乳歯のすぐ近くでは後継永久歯が発育しています。
2025年改訂の口腔顎顔面外傷診療ガイドラインでも、乳歯の完全脱臼では後継永久歯への影響を考え、原則として再植しない方針が示されています。
「乳歯か永久歯か分からない」
という場合もあると思います。
分からなくても構いません。
年齢と現在の状態を歯科医院へ伝えてください。
「少し欠けただけ」に見えても、歯の中まで同じとは限りません
学校から、
「前歯の角が少し欠けただけです」
「本人は痛くないと言っています」
と言われることがあります。
もちろん、本当に軽い破折で済んでいることもあります。
ただし、「歯が折れた」は見た目を表した言葉であって、それだけで外傷の全体像が分かるわけではありません。
小児期の外傷では、
歯冠破折。
歯根破折。
脱臼。
歯槽骨骨折。
露髄。
歯髄や歯周組織の損傷。
などが複合して起きることがあります。
そのため、
「痛くないから明日でいい」
「少し欠けただけだから様子を見よう」
と、痛みの強さだけで判断するのではなく、まず歯科へ相談してください。
歯をぶつけたあと、なぜ痛みがなくても経過観察が必要になることがあるのかは、「歯をぶつけたあと、痛みがなくても経過観察が必要な理由」で詳しく紹介しています。
では、学校・保護者・歯科にはどの順番で連絡すればいい?
ここが今回いちばんお伝えしたいところです。
答えは、
「一列に並べて考えない」
です。
事故が起きたら、まずその場で子どもの安全を確認し、必要な応急処置を始めます。
全身状態に問題があれば、119番通報などの救急対応を優先します。
その一方で、事故時刻や受傷状況を記録し、保護者へ連絡します。
そして歯の破折・脱臼・完全脱臼など、歯科での早い対応が必要と考えられる場合には、外傷の緊急性に応じて学校歯科医、かかりつけ歯科医、受診予定の歯科医院などへの連絡も並行して進めます。
日本学校歯科医会も、教員やスポーツ指導者に対して、応急処置、受傷状況の記録、保護者への連絡、学校歯科医・かかりつけ歯科医との連携を求めています。
特に歯が欠けたり抜けたりした場合には、適切に保存して速やかに歯科を受診することが重要です。
つまり、
先生から保護者へ電話する。
保護者が仕事を抜ける。
保護者が学校へ到着する。
いったん自宅へ帰る。
診察券や書類を探す。
それから歯科医院へ電話する。
と、すべてを順番待ちにする必要はありません。
とくに永久歯の完全脱臼のように時間が重要な外傷では、保護者への連絡と歯科への連絡を並行して進めることに意味があります。

学校の先生から歯科医院へ電話してもいい?
「歯医者への電話は保護者からでないといけないのでしょうか?」
これも学校事故では迷いやすいところです。
学校側が受傷状況を把握しているのであれば、
「部活中に生徒が前歯をぶつけました」
「16時20分ごろです」
「前歯が欠けて出血があります」
「保護者へは現在連絡しています」
など、学校から歯科医院へ状況を伝え、受診について相談することは考えられます。
実際、事故を目撃していた先生の方が、受傷時刻やぶつかり方を正確に説明できる場合もあります。
ただし、
「学校から歯科へ電話できること」
と、
「未成年者の治療について保護者の同意・同伴がどのように必要か」
は別の問題です。
先生が付き添って受診すれば、どのような歯科治療でも自動的に受けられるという意味ではありません。
保護者の同伴や同意については、患者さんの年齢、処置内容、緊急性、医療機関の運用などを確認する必要があります。
ブランデンタルクリニックでの未成年の受診については、「未成年が歯医者を受診するとき、保護者の同伴や同意は必要?」も参考にしてください。
保護者と連絡がつくまで、歯科へ電話しない方がいい?
必ずしも待つ必要はありません。
たとえば学校から、
「保護者には今連絡していますが、永久歯が抜けています」
という状況であれば、保護者との連絡がすべて完了するまで歯科相談まで止めておくより、まず現在の状態を歯科医院へ伝える方がよい場合があります。
そのうえで、
誰が付き添って受診するのか。
保護者といつ連絡が取れるのか。
何時ごろ歯科医院へ到着できるのか。
を確認していきます。
事故現場で必要な応急対応と、実際の診療で必要になる保護者確認は、分けて考えることが大切です。
歯科医院へ電話するとき、受付へ何を伝えればいい?
全部を確認してからでなくても大丈夫です。
分かる範囲で構いません。
受付へ電話するときに分かると助かるのは、次のような情報です。
・子どもの年齢
・事故が起きた時刻
・何をしていて、何にぶつかったのか
・頭や顔も打っているか
・意識を失った、吐いた、強い頭痛がある、物が二重に見えるなどの症状はないか
・歯が欠けた、揺れている、位置がずれた、抜けた、のどれに近いか
・出血しているか
・折れた破片や抜けた歯が見つかっているか
・抜けた歯がある場合、現在どのように保存しているか
・口を開けにくい、噛み合わせが変わったなどの症状はないか
・何時ごろ歯科医院へ到着できそうか
もちろん、学校から保護者へ電話が来たばかりなら、
「私もまだ詳しく分かりません」
ということもあるでしょう。
それでも構いません。
「全部分かってから電話しよう」と待つ必要はありません。
まず分かっている範囲を教えていただければ、受付から必要なことを順番に確認します。
一般的な子どもの歯科予約については、「子どもの歯医者予約で何を伝える?年齢・症状・泣きやすさを受付に伝えるコツ」も参考になります。

診察券や学校の書類を取りに帰った方がいい?
学校事故では、保護者の方から、
「まだ学校の書類をもらっていません」
「災害共済給付の用紙を持っていません」
と心配されることがあります。
でも、外傷への対応を遅らせてまで、学校関係の書類を先にそろえる必要はありません。
JSCの書類がまだ手元になくても、それを理由に必要な歯科受診を遅らせる必要はありません。
日本スポーツ振興センター(JSC)の災害共済給付では、学校管理下でけがをして医療機関を受診した後、必要に応じて医療機関で「医療等の状況」などの証明を受け、学校へ提出し、学校・設置者を通じて手続きを進めます。
つまり、
書類を学校でもらう。
歯科医院で記入してもらう。
学校へ提出する。
というのは、その後の手続きです。
特に時間が重要な歯の外傷では、
「書類を先にそろえる」より「必要な受診を先にする」
と考えてください。
ブランデンタルクリニックへ当日相談するときは電話がおすすめです
ブランデンタルクリニックでは、通常のご予約はWEB、LINE、電話から受け付けています。
ただし、
「今、学校の部活中に前歯を折った」
「さっき永久歯が抜けた」
「転んで前歯が大きくずれた」
など、その日の受診を相談したい歯の外傷については、電話でのご相談がおすすめです。
WEB予約の空き時間だけでは、外傷の種類や緊急度、必要になりそうな診査・処置、現在の診療状況まで判断できないためです。
受付で現在の状態を確認し、その日の予約状況などと合わせてご案内します。
ただし、当日の混雑状況や必要な処置内容などによっては、待ち時間が生じたり、まず応急処置を行ったり、より適切な医療機関への受診をご案内したりする場合があります。
「今日診てもらうほどなのか分からないから電話しにくい」
と遠慮する必要はありません。
まず現在の状態をご相談ください。
当日受診については、「広島市中区で『今日診てもらえる歯医者』を探す方へ」でも詳しく紹介しています。
歯医者では「折れたところ」だけを見るわけではありません
歯科医院では、単に欠けた部分の大きさだけを見るわけではありません。
必要に応じて、
歯の位置。
動揺。
歯ぐきや口唇の傷。
噛み合わせ。
歯根。
歯槽骨。
歯髄の状態。
などを確認します。
X線検査などが必要になることもあります。
なぜそこまで見るのでしょうか。
外から見ると、
「前歯の角が欠けただけ」
でも、同じ衝撃で歯根膜や歯髄が傷ついたり、歯がわずかに脱臼したり、歯根や歯槽骨に損傷が生じたりすることがあるからです。
だから、学校や保護者の方が外傷の重症度を完璧に判断する必要はありません。
「これくらいなら軽いだろう」と決めず、まず相談してください。
その日に歯を直してもらったら、学校事故の治療は終わり?
これも必ずしもそうではありません。
外傷を受けた歯では、その日の診察だけでは将来の変化まで分からないことがあります。
日本外傷歯学会のガイドラインも、歯の外傷では後から合併症が生じる場合があるため、外傷の種類や程度に応じて経過観察する必要があるとしています。
受傷後しばらくしてから、
歯の変色。
歯髄壊死。
歯根吸収。
歯髄腔の変化。
などが分かることもあります。
また、受傷直後の歯髄検査では、生活している歯でも外傷の影響によって一時的に反応が弱くなることがあります。
そのため初診時の結果だけで、その歯の将来まですべて決まるわけではありません。
乳歯の外傷では、後継永久歯への影響を長期的に確認することが必要になる場合もあります。
「その日にきれいに直ったから、もう終わり」
とは限りません。
歯科医師から経過観察を案内された場合には、その後の受診も続けてください。
詳しくは、「歯をぶつけたあと、痛みがなくても経過観察が必要な理由」をご覧ください。

学校の部活中ならJSC災害共済給付の対象になる?
学校の教育計画に位置付けられ、学校の責任と指導体制の下で行われる部活動は、JSC災害共済給付の「学校の管理下」に含まれる可能性があります。
JSCは、学校の教育計画に基づく課外指導として行われる部活動について、所定の条件を満たす場合は給付対象になると説明しています。
ただし、
「学校で行われていたスポーツだから全部同じ」
ではありません。
近年は学校部活動だけでなく地域クラブで活動する子どもも増えています。
JSCも、学校の課外指導としての部活動と、地域などの運営団体が実施するクラブ活動を区別しています。また、2026年度から従来「地域移行」と呼ばれていたものは「地域展開」という名称になっています。
そのため、
「学校のグラウンドで起きたから必ず対象」
「部活動と呼んでいるから必ず対象」
と自己判断せず、在籍している学校へ確認してください。
JSCは窓口で5,000円払ったら対象、ではありません
JSCの医療費給付については、
「5,000円以上なら対象」
という数字を聞くことがあります。
ここは少し注意が必要です。
JSCが示す5,000円とは、保護者が医療機関の窓口で実際に払った金額ではありません。
原則として、初診から治ゆまでの医療費総額、つまり健康保険でいう10割分が5,000円以上の場合です。
給付対象となった場合、原則として医療保険並の療養に要する費用の額の4/10が給付されます。
このうち1/10は、療養に伴って要する費用として加算される分です。
ただし、高額療養費などが関係する場合には計算方法が異なります。
治療期間が続く外傷では、その日の窓口支払額だけを見て判断しないことが大切です。
永久歯を失った場合には「歯牙欠損見舞金」という制度もあります
学校管理下の事故によって永久歯を失った場合には、条件によってJSCの「歯牙欠損見舞金」の対象になることがあります。
現在のJSC制度では、障害見舞金の対象となるものを除き、学校管理下の負傷による1歯以上の欠損について、歯牙欠損見舞金として1歯につき8万円が定められています。
ただし、
「前歯の先端が少し欠けた」
という意味での“欠けた”と、この制度上の「歯牙欠損」は同じではありません。
実際の対象になるかは、学校を通じて確認してください。
広島市では2027年1月診療分から学校事故時の医療費の扱いが変わります
広島市にお住まいの方には、もう一つ知っておいていただきたい変更があります。
現在は2026年9月ですが、広島市は2027年1月診療分から、学校や保育園等の管理下で生じたけがについて、JSC災害共済給付制度を利用できる場合には、こども医療費受給者証を使用できないと案内しています。
その場合は、いったん健康保険による2割または3割の自己負担分を医療機関で支払い、その後、学校等を通じてJSCの給付を請求する流れになります。
大切なのは、
2027年1月診療分から
という点です。
制度は時期や自治体によって扱いが異なる場合がありますので、受診時点の最新情報を学校や自治体で確認してください。

よくある質問|保護者が学校へ着くまで歯科へ電話しない方がいい?
いいえ。
保護者への連絡と歯科への相談は、必要に応じて並行して進めることができます。
とくに永久歯が完全に抜けた、大きく位置がずれたなど、時間が重要になり得る外傷では、状況を把握している学校側から早めに歯科へ相談することにも意味があります。
よくある質問|本人が「痛くない」と言っています。明日でもいい?
痛みがないことだけでは、外傷の程度は判断できません。
歯の破折だけでなく、脱臼、歯根膜損傷、歯根破折、歯槽骨損傷などを伴っている可能性があります。
受診のタイミングを自己判断せず、まず歯科へ相談してください。
よくある質問|折れた歯の破片は持って行った方がいい?
はい。
大きな破折片が見つかった場合は捨てずに持参してください。
破折の状態によっては治療に利用できる場合があります。
よくある質問|永久歯が抜けました。学校の書類を先にもらった方がいい?
学校の書類より、抜けた歯を乾燥させないことと、歯科へ早く連絡することを優先してください。
JSCの申請書類は受診後に手続きを進めることができます。
よくある質問|抜けた永久歯の根っこが汚れています。こすって洗ってもいい?
強くこすったり、歯根表面を削るように洗ったりしないでください。
抜けた永久歯の歯根表面には、再植後の治癒に関係する歯根膜組織が残っている可能性があります。
歯は歯冠部分を持ち、歯根部分をできるだけ触らずに扱ってください。
よくある質問|乳歯が抜けました。元へ戻した方がいい?
自己判断で元へ戻さないでください。
永久歯の完全脱臼とは対応が異なります。
乳歯か永久歯か判断できない場合も、そのまま歯科へ伝えてください。
よくある質問|頭も打っています。歯科へ行けば一緒に診てもらえる?
頭部外傷などが疑われる場合には、歯科より医科救急の評価を優先することがあります。
意識がおかしい、繰り返し吐く、強い頭痛がある、物が二重に見えるなどの症状がある場合には、歯だけの問題と考えないでください。
受付さんから:全部分からなくても電話して大丈夫です
学校から突然、
「お子さんが部活中に前歯を折りました」
と電話が来たら、保護者の方がすべてを把握できている方が珍しいと思います。
「どのくらい折れたのか分からない」
「永久歯なのか分からない」
「何時にぶつけたのか先生からまだ聞いていない」
「本人がどれくらい痛いのか分からない」
それでも大丈夫です。
分からないことを全部調べてから歯科医院へ連絡する必要はありません。
まず、
「学校から今、前歯を折ったと連絡がありました」
というところから教えてください。
受付で必要なことを一つずつ確認していきます。
逆に、歯が抜けた、大きく位置がずれた、出血が続いている、頭や顎も強く打っているなど、緊急性が高い可能性がある情報が分かっている場合は、最初に教えていただけると助かります。
まとめ|覚えておきたいのは「順番待ちにしない」こと
部活中に歯の外傷が起きたとき、
「学校から保護者へ連絡して、保護者が学校へ行って、書類を受け取って、それから歯医者を探す」
という一本道にする必要はありません。
まず、子どもの全身状態を確認します。
必要なら119番通報や医科救急を優先します。
歯が欠けた・抜けた場合には、破折片や脱落歯を適切に扱います。
永久歯が抜けている場合には、歯根をこすらず、乾燥させないよう注意します。
そして事故が起きた時刻や状況を記録しながら、外傷の緊急性に応じて保護者への連絡と歯科への連絡を並行して進めます。
その後、できるだけ早く必要な診察を受けます。
歯科医師から経過観察を案内された場合には、その後の受診も続けます。
学校やJSCに関する書類手続きは、その後です。
歯の外傷では、
「全部準備できてから次へ進む」より、「子どもの安全を確認しながら、必要なことを同時に進める」
と覚えておくと分かりやすいと思います。
部活中の突然の事故で何をすればよいか分からないときも、分かる範囲でまずご相談ください。
参考文献
1.文部科学省.学校事故対応に関する指針.
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1417343_00034.htm
2.日本学校歯科医会.歯・口の外傷への対応(学校での応急処置・保護者連絡・歯科医療機関との連携).
https://www.nichigakushi.or.jp/school-dental/sos/
3.日本外傷歯学会.歯の外傷治療ガイドライン.令和5年10月改訂.
4.口腔顎顔面外傷診療ガイドライン 2025 改訂版.第Ⅱ部:総論編・歯槽骨骨折,歯の外傷.
5.Fouad AF, Abbott PV, Tsilingaridis G, et al. International Association of Dental Traumatology guidelines for the management of traumatic dental injuries: 2. Avulsion of permanent teeth. Dent Traumatol. 2020;36:331-342.
6.Malmgren B, Andreasen JO, Flores MT, et al. International Association of Dental Traumatology guidelines for the management of traumatic dental injuries: 3. Injuries in the primary dentition. Dent Traumatol. 2020;36:343-359.
7.日本スポーツ振興センター.災害共済給付制度について.
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/saigai/seido/tabid/85/Default.aspx
8.日本スポーツ振興センター.学校の管理下の範囲・部活動等における災害共済給付.
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/tabid/1902/Default.aspx
9.日本スポーツ振興センター.災害共済給付の請求手続・医療等の状況.
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Default.aspx?TabId=86
10.広島市.こども医療費補助制度.学校・保育園等の管理下でのけがに関する2027年1月診療分からの取扱い.
https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/medical/1021209/1027972/1003459.html
※制度・行政情報は2026年9月23日時点で確認しています。最新の取扱いは各機関の公式情報をご確認ください。
