2026年9月10日

(受付さんの備忘録)

はじめに
親知らずが腫れて歯医者を受診したあと、数日たつと痛みも腫れもすっかり治まることがあります。
受付にいると、こんなお電話をいただくことがあります。
「この前、親知らずが腫れて診てもらったんですが、もう痛くありません」
「薬を飲んだら腫れが引きました。次も診てもらった方がいいですか?」
「もう何ともないので、次の予約はキャンセルして大丈夫ですか?」
症状がなくなると、「もう治ったのでは?」と思いますよね。
ところが2026年9月、BMC Oral Healthに、中国・北京の口腔救急部門で第三大臼歯、つまり親知らずの歯冠周囲炎を診療した患者さんについて調べた研究が発表されました。
対象となったのは1,605人。そのうち536人、33.4%に、研究期間内に同じ口腔救急部門を少なくとも1回再受診した記録がありました。
つまり、研究期間内に同じ口腔救急部門へ再受診した人は約3人に1人でした。
ただし、ここには非常に大切な注意点があります。
「33.4%の人が親知らずを再発した」という研究ではありません。
では、この33.4%は何を意味する数字なのでしょうか。親知らずの腫れが治まったあとに、なぜ再評価が必要になることがあるのかと合わせて見ていきます。
1605人の親知らずの歯冠周囲炎を調べた2026年の研究
今回取り上げるのは、Li氏らが2026年にBMC Oral Healthで報告した、口腔救急部門における第三大臼歯歯冠周囲炎の再受診についての後ろ向き観察研究です。
歯冠周囲炎とは、萌出中または部分的に萌出した歯の歯冠周囲の歯肉に起こる炎症です。その中でも親知らずに起こるものは「智歯周囲炎」と呼ばれます。
北京の24時間口腔救急部門で調査
研究が行われたのは、中国・北京のPeking University School and Hospital of Stomatologyの口腔救急部門です。
この部門は24時間365日診療する三次口腔救急施設で、研究期間は2024年1月1日から6月30日まででした。
期間中に歯冠周囲炎と診断された患者さんは1,655人。そのうち第三大臼歯、つまり親知らずに関連した歯冠周囲炎は1,605人、97.0%でした。
この1,605人には、合計1,691本の罹患第三大臼歯が記録されていました。患者さん1人につき、必ず親知らず1本だけが問題になっていたわけではありません。
また、罹患した1,691本のうち1,500本、88.7%は下顎の親知らずでした。ただし、これは「下の親知らずの88.7%が智歯周囲炎になる」という発症率ではありません。今回この口腔救急部門を受診した症例の中で、下顎智歯が大部分を占めていたという意味です。
33.4%に少なくとも1回の再受診記録
1,605人のうち、研究期間中に同じ口腔救急部門への再受診が記録されなかった人は1,069人、66.6%でした。
一方、少なくとも1回再受診していた人は536人、33.4%でした。
再受診した536人の内訳を見ると、1回が295人、2回が123人、3回が66人、4回が25人、5回以上が27人でした。
再受診した人のうち、78.0%は1回または2回の再受診でした。

でも「3人に1人がまた親知らずを腫らした」という意味ではありません
33.4%という数字だけを見ると、「一度親知らずが腫れると、3人に1人はまた腫れる」と読みたくなるかもしれません。
しかし、今回の原著はそこまで示していません。
「再受診」と「再発」は違います
今回の研究が数えたのは、病気そのものの再発回数ではなく、研究期間内に同じ口腔救急部門へ再び受診したかどうかです。
再受診には、症状が再び悪化したケースだけでなく、炎症がまだ残っていたための継続処置、洗浄、予定された再評価などが含まれていた可能性があります。
研究データには、各受診時に症状が完全に消失していたのか、治療が完了したのか、予定された再診だったのかを統一して判定できる項目がありませんでした。
研究者自身も、今回観察された再受診を病気の再発や治療失敗と同一視してはいけないと明記しています。
したがって、536人=536人が親知らずを再発したとは言えません。
「同じ親知らずがまた腫れた」とも限りません
今回の再受診は患者さん単位で集計されています。
対象は1,605人ですが、問題となった第三大臼歯は1,691本ありました。1回の受診で複数の親知らずが記録されたケースもあります。
そのため、最初は右下の親知らずで受診し、後の受診では別の親知らずが問題になっていた可能性も研究デザイン上は否定できません。
同じ一本の親知らずを追跡して再発率を調べた研究ではないということです。
研究でいう「最初の受診」も、その人にとって初めてとは限りません
研究で基準になったのは、2024年1月から6月までの研究期間中に最初に確認された受診です。
その患者さんが、それ以前に一度も智歯周囲炎になったことがなかったという意味ではありません。
2023年以前に同じ場所が腫れていた可能性もありますし、別の歯科医院で治療を受けていた可能性もあります。
したがって、「初めて智歯周囲炎になった人の33.4%が再受診した」という解釈もできません。
「6か月追跡すると33.4%」でもありません
研究期間そのものは2024年1月から6月までの6か月間でした。
しかし、1月に受診した患者さんはその後を比較的長く観察できますが、6月末に初めて受診した患者さんにはほとんど観察期間がありません。
一人ひとりを初診から6か月間追跡した研究ではないため、33.4%を「6か月再受診率」と考えることもできません。
33.4%を日本の一般歯科医院へそのまま当てはめることもできません
もう一つ重要なのが、研究が行われた医療環境です。
今回の33.4%は、中国・北京にある一つの大学病院の口腔救急部門で観察された数字です。この施設は24時間365日診療する三次口腔救急施設で、日本の予約制の一般歯科医院とは患者さんの受診経路や診療体制が異なります。
また、研究では他の歯科医院や病院で受けた治療までは把握できませんでした。
そのため、「日本でも親知らずが腫れた患者さんの33.4%が再受診する」という意味でもありません。
今回の数字は、あくまでこの口腔救急施設で、固定された研究期間中に観察された再受診の頻度として読む必要があります。

親知らずの腫れを繰り返すのはなぜ?症状が引いても残る条件
今回の33.4%は再発率ではありません。
ただし、それとは別に、智歯周囲炎という病気では炎症を繰り返すことがあります。
部分的に生えた親知らずは清掃しにくくなります
国際口腔顔面痛分類ICOP-1では、歯冠周囲炎による痛みは部分的に萌出した智歯に関連することが多く、不完全萌出・埋伏状態では持続的または反復性の感染が起こる場合があるとされています。
親知らずの頭が一部だけ口の中へ出ていると、その周囲に歯ぐきがかぶり、歯ブラシが十分に届きにくい部分ができることがあります。
そこへ細菌性バイオフィルムや食べ物の汚れが停滞すると、炎症が起こりやすい環境になります。
痛みや腫れが数日で落ち着いても、親知らずの向き、萌出するスペース、歯ぐきのかぶり方、清掃しにくさそのものまで急に変わったわけではありません。
つまり、「症状が消えたこと」と「今後この親知らずについて確認する必要がなくなったこと」は分けて考える必要があります。

急性症状を抑えることと、親知らずを今後どうするかは別です
親知らずが強く腫れているときには、まず現在の炎症の程度を確認します。
歯ぐきの周囲だけの炎症なのか、頬や顎の下まで腫れているのか、口が開きにくくなっていないか、発熱や全身症状がないかなどによって対応は変わります。
必要に応じて局所の洗浄や清掃、排膿などを行い、痛みに対する対応をします。感染の広がりや全身状態によっては抗菌薬が必要になる場合もあります。
厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 歯科編」でも、歯性感染症では感染源に対する局所的な処置が治療の基本となる考え方が示されています。
薬だけが歯性感染症の治療ではありません。
そして急性症状が治まったあとには、「この親知らずを今後どう管理するか」という次の判断があります。
急性期の症状を抑えることと、その親知らずを今後残すのか、抜歯を検討するのかを判断することは、同じではありません。
再診では「まだ腫れているか」だけを見ているわけではありません
患者さんからすると、痛みも腫れもなくなっているのにもう一度診てもらうと、「何を確認するのだろう?」と思うかもしれません。
実際には、症状以外にも確認したいことがあります。
親知らずはどの向きに生えているか
まっすぐ生えているのか、前へ傾いているのか、横向きなのか、一部だけ萌出しているのか。
今後さらに萌出できそうなのか、日常的に清掃できる位置なのかも重要です。
親知らずの向きや水平埋伏などについては、親知らず(智歯)の萌出異常と変位についてのコラムでも詳しく解説しています。
手前の第二大臼歯に問題がないか
親知らずの相談というと、どうしても親知らずそのものだけに目が向きます。
しかし、歯科医師が確認するのはそれだけではありません。
親知らずと手前の第二大臼歯の間が清掃できるか、虫歯や歯周組織への影響がないかなど、親知らずを残していくことで手前の歯まで管理しやすい状態なのかも確認します。
これまで同じ場所が何回腫れたか
過去の炎症歴も大切な情報です。
「今回が初めてです」
「去年も右下が腫れました」
「何年か前に別の歯医者で洗浄してもらいました」
「以前、抜歯を勧められたけれど延期していました」
こうした情報は今後の方針を考える材料になります。受付へご連絡いただくときにも、以前同じ場所が腫れたことがあれば伝えてください。
一度腫れたら、親知らずは必ず抜くの?
いいえ。一度智歯周囲炎になったという理由だけで、すべての親知らずを必ず抜歯するわけではありません。
日本口腔外科学会の一般向け解説でも、親知らずの萌出位置に問題がある場合や、智歯周囲炎を繰り返す場合などには抜歯が行われることがあると説明されています。
一方で、初回の炎症だけを理由に全員同じように抜くという単純な基準でもありません。
英国NICEが2000年に公表した第三大臼歯抜歯の指針では、特に重症ではない初回の歯冠周囲炎だけを、それだけで抜歯適応とはせず、2回目以降の発症をより明確な適応として扱っています。
また、SECIBの第三大臼歯診療ガイドラインでは、感染や反復する智歯周囲炎など病変がある第三大臼歯では抜歯が検討されます。ただし、この領域の研究には方法論上の限界もあり、一つの数字だけで全員同じ判断ができるわけではありません。
実際の診療では、炎症を何度繰り返しているか、親知らずの位置や萌出状態、清掃性、第二大臼歯への影響、年齢や全身状態、抜歯そのものの難しさやリスクなどを総合して考えます。
「一度腫れたから絶対に抜く」でもなければ、「痛くなくなったから絶対に残して大丈夫」でもありません。

抜歯を検討する場合も、まず状態を確認します
親知らずを抜歯することになった場合にも、事前に確認する内容があります。
レントゲンや必要に応じたCTなどで歯の位置を確認し、服用している薬、持病、血圧、体調などを踏まえて処置を計画します。
特に下顎の親知らずでは、歯根と下顎管との位置関係などが重要になることがあります。
腫れているという一点だけで、その日に抜歯できるかどうかを決めることはできません。炎症の程度、感染の広がり、親知らずの位置、全身状態などを診察して、抜歯の要否と時期を判断します。
抜歯前にどのような点を確認するのかは、抜歯前の確認日には薬・血圧・レントゲン・体調の何を確認しているのかでも詳しく説明しています。
薬で腫れが引いたら、原因もなくなった?
そうとは限りません。
抗菌薬や鎮痛薬などで症状が軽減すると、「薬で治った」と感じることがあります。
必要な場面で薬を使うことにはもちろん意味があります。
しかし、薬を飲んだからといって、横向きだった親知らずがまっすぐになるわけではありません。部分的に萌出している歯が急に完全萌出するわけでもなく、歯ぐきがかぶって清掃しにくい状態そのものが薬でなくなるわけでもありません。
そのため、「薬を飲んで痛みや腫れが消えたこと」と「将来的な問題まで解決したこと」は同じではありません。
逆に、「親知らずが腫れたら必ず抗菌薬が必要」というわけでもありません。局所の状態、感染の広がり、全身症状、免疫状態などを確認して必要性を判断します。
予約の日より前に、また親知らずが腫れてきたら?
一度症状が落ち着いて次回の予約を取っていても、その予約日までにもう一度腫れてくることがあります。
その場合は、「予約を取っているからその日まで待とう」と自己判断せず、一度歯科医院へ連絡してください。
予約を前倒しした方がよいのか、そのまま予定日でよいのかは、現在の症状によって変わります。
電話で受付へ伝えてほしいこと
- 右か左か、どのあたりの親知らずか
- いつから腫れ始めたか
- 痛みや腫れが強くなっているか
- 口が開けにくくなっていないか
- 発熱、飲み込みにくさ、頬や顎の下の腫れがないか
- 以前にも同じ場所が腫れたことがあるか、すでに抜歯予定があるか
前回処方された薬を飲んでいる場合や、普段から服用している薬がある場合も、分かる範囲で伝えてください。
予約を早めたい場合の相談方法については、歯医者の次回予約を早めたいときの希望日時と症状の伝え方でも詳しく説明しています。

「早めに歯科へ」と「直ちに救急医療」は分けて考えます
智歯周囲炎の多くは歯科で診察しますが、感染の広がりによって緊急度が変わることがあります。
頬や顎の下まで腫れる・口が開きにくい・発熱がある
頬や顎の下まで腫れてきた、以前より口が開きにくい、発熱や強いだるさがあるといった場合は、次回予約までそのまま待たず、早めに歯科医院へ連絡してください。
現在の症状を伝えたうえで、当日の診察が必要か、病院の口腔外科などへの受診が適しているかを判断します。
息苦しい・唾液も飲み込めない・声が変わる
息が苦しい、唾液も飲み込めないほど飲み込みにくい、声がこもる・かすれるなど、呼吸や嚥下に関係する症状がある場合は、通常の歯科予約を待つ状態ではありません。
気道への影響が疑われるため、直ちに救急医療機関への受診を検討してください。
今まさに急な腫れや強い痛みがあり、「今日診てもらうべきか」を迷っている場合は、広島市中区で今日診てもらえる歯医者を探すときの急患・当日相談の受診目安も参考にしてください。

では、再受診しなかった66.6%は「完全に治った」の?
今回の研究では、1,605人のうち1,069人、66.6%には研究期間中の同施設への再受診記録がありませんでした。
では、この66.6%は全員完全に治ったのでしょうか。
それも、この研究からは分かりません。
同じ口腔救急部門へ戻らなかった患者さんについて、症状がそのまま改善したのか、一般歯科医院や別の病院を受診したのか、別施設で抜歯などの治療を受けたのか、症状があっても再受診しなかったのかを区別できないからです。
さらに、患者さんごとの観察可能期間も一定ではありません。
再受診記録がないことを、そのまま「完全に治った」と置き換えることもできません。
一部には何度も口腔救急を利用した患者さんもいました
今回の研究では、5回以上再受診した患者さんは27人でした。
27人は全1,605人の1.7%ですが、この27人だけで研究期間中に194回の受診記録がありました。
最多では11回の再受診が記録されており、研究期間中の最初の受診を含めれば合計12回の受診記録になります。
ただし、この一回一回が新しい智歯周囲炎の再発だったという意味ではありません。継続的な処置や予定された再評価などが含まれていた可能性があり、研究から個々の再受診理由までは判定できません。
この研究が注目しているのは、病気の再発率だけではなく、口腔救急という医療サービスがどのように繰り返し利用されていたかという側面でもあります。
なお、探索的な解析では女性や年齢と再受診との統計学的な関連もみられました。しかし、炎症の重症度、治療内容、予定再診、他院受診などを十分に調整できていないため、「女性や年齢の高い人ほど智歯周囲炎が再発しやすい」と解釈することはできません。

受付からお願いしたいこと|「治ったからキャンセル」の前に確認を
親知らずが腫れていたのに、予約の日が近づくころには痛みも腫れもすっかりなくなっている。
そんなとき、「もう行かなくてもいいかな」と思うのは自然なことです。
ただ、次回の診察では単に「まだ痛いですか?」だけを確認するとは限りません。
炎症が治まった状態で親知らずや周囲を改めて確認したり、今後経過観察するのか、抜歯を検討するのかを相談したりする予定になっていることがあります。
親知らずに限らず、痛みが消えたことと、原因がなくなったことは同じとは限りません。
予約後に症状が消えた場合の一般的な考え方については、歯医者を予約したのに痛みが消えたとき、それでも受診した方がよいのかでも詳しく説明しています。
予定された再診がある場合は、自分だけで「治ったから不要」と決めるのではなく、「もう痛みも腫れもありませんが、予定どおり受診した方がいいですか?」と一度確認してください。
広島・立町で親知らずの腫れを相談したい方へ
ブランデンタルクリニックは、広島市中区立町の立町中央ビル4階にあります。立町駅から徒歩1分で、ビル1階のすき家が目印です。4階まではエレベーターをご利用いただけます。
通常のご予約はWEB・LINE・電話から受け付けています。
一方、「親知らずが今日急に腫れてきた」「昨日より頬まで腫れてきた」「次回予約より前に症状が悪化した」といった場合は、WEBの空き枠だけを確認するより、お電話で現在の症状を伝えていただくことをおすすめします。
当院は当日電話受付可で、予約状況を確認しながら急患の同日相談も可能です。ただし、その日の予約状況や症状によっては待ち時間が生じたり、まず応急処置を優先したりする場合があります。
また、親知らずの位置、感染の広がり、全身状態などによっては、病院の口腔外科での治療が適していることがあります。その場合は、診察したうえで必要な連携を検討します。
よくある質問|親知らずの腫れと再受診
親知らずの腫れが完全に引いていても再診した方がいいですか?
予定された再診には、症状が残っているかの確認だけでなく、親知らずの位置や清掃性、周囲の歯への影響、今後の管理方針を判断する目的が含まれていることがあります。
腫れが引いたことだけで自己判断してキャンセルせず、受診した歯科医院へ確認してください。
33.4%というのは親知らずの再発率ですか?
いいえ。
33.4%は、研究期間内に同じ口腔救急部門への再受診が記録された患者さんの割合です。再受診には症状の再燃だけでなく、予定された洗浄や再評価などが含まれていた可能性があるため、再発率とは言えません。
同じ親知らずが33.4%でまた腫れたという意味ですか?
それも違います。
今回の研究は患者さん単位で再受診を数えており、1,605人に1,691本の罹患第三大臼歯が記録されています。同じ一本の親知らずを追跡して再発率を調べた研究ではありません。
一度智歯周囲炎になったら必ず抜歯ですか?
必ずではありません。
炎症を繰り返しているか、親知らずの向きや萌出状態、清掃性、手前の第二大臼歯への影響、抜歯の難易度や全身状態などを確認して、経過観察するか抜歯を検討するかを個別に判断します。
薬を飲んで腫れが引いたら、親知らずは治ったのですか?
症状が軽減したことは良い変化ですが、親知らずの位置や清掃しにくい環境までなくなったとは限りません。
急性症状が治まったことと、その親知らずを今後どう管理するかは分けて考えます。
予約日前にまた腫れてきたらどうすればいいですか?
予定日までそのまま待つかどうかを自己判断せず、歯科医院へ連絡してください。
いつから、どちら側か、腫れの広がり、発熱、口の開けにくさ、飲み込みにくさ、以前にも同じ症状があったかなどを伝えると、受診時期を判断しやすくなります。
親知らずが腫れている日に、そのまま抜歯できますか?
その日の状態によって異なります。
腫れているという一点だけで抜歯できるかどうかは決まりません。炎症の程度、感染の広がり、親知らずの位置、全身状態、画像所見などを確認して、抜歯の要否と時期を歯科医師が判断します。
顔まで腫れたり、口が開きにくくなった場合はどうすればいいですか?
頬や顎の下まで腫れてきた、口が開きにくい、発熱がある場合は、次回予約を待たず早めに歯科医院へ連絡してください。
一方、息苦しい、唾液も飲み込めないほど飲み込みにくい、声がこもる・かすれるなど、呼吸や嚥下に影響する症状がある場合は、通常の歯科予約を待たず、直ちに救急医療機関への受診を検討してください。
まとめ|「痛くない」と「もう診なくていい」は同じではありません
2026年にBMC Oral Healthで報告された研究では、第三大臼歯の歯冠周囲炎で口腔救急部門を受診した1,605人のうち536人、33.4%に研究期間内の同一口腔救急部門への再受診が記録されていました。
ただし、これは「3人に1人が親知らずを再発した」という意味ではありません。
再受診には予定された処置や再評価が含まれていた可能性があり、同じ一本の親知らずの再発を追跡した研究でもありません。一人ひとりを最初の受診から6か月間追跡した研究でもなく、中国の一つの三次口腔救急施設で得られた33.4%を日本の一般歯科医院へそのまま当てはめることもできません。
その一方で、部分的に萌出した親知らずでは、清掃しにくい環境などが残ることで炎症を持続・反復することがあります。
ですから、「腫れが引いた」ことと「もうその親知らずについて診てもらう必要がない」ことは同じではありません。
急性症状を抑えたあとに、その親知らずをこのまま管理できるのか、今後抜歯を検討した方がよいのかを改めて確認することがあります。
「もう痛くないから、予約をキャンセルしようかな」と思ったときは、まず一度、受診した歯科医院へ確認してください。
参考文献
- Li Q, Wang K, Zheng J, et al. Observed reattendance and epidemiological characteristics of third-molar pericoronitis in an oral emergency department: a retrospective study. BMC Oral Health. 2026. doi:10.1186/s12903-026-09835-w.
- International Classification of Orofacial Pain, 1st edition(ICOP-1). 日本口腔顔面痛学会・日本頭痛学会共同訳.
- 厚生労働省. 抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 歯科編. 2026.
- Scottish Dental Clinical Effectiveness Programme. Acute pericoronitis (including erupting teeth in children).
- 日本口腔外科学会. 口腔外科相談室・口腔外科疾患の解説.
- Sánchez-Garcés MA, et al. Diagnosis and indications for the extraction of third molars – The SECIB clinical practice guideline. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2024;29(4):e545-e551.
- National Institute for Health and Care Excellence. Guidance on the extraction of wisdom teeth. TA1. 2000.
