2026年9月24日

(受付さんの備忘録)

はじめに
「来週から抗がん剤治療が始まるので、その前に歯医者へ行ってくださいと言われました。何の予約を取ればいいですか?」
受付では、このようなご相談をいただくことがあります。
がんの診断を受け、検査や治療の説明を聞き、通院や入院の日程を調整している中で、さらに「歯科も受診してください」と言われると、「抗がん剤の名前まで伝えないといけない?」「血液検査の数字も必要?」「紹介状をまだもらっていない」「痛い歯はないけれど、何を診てもらうの?」と戸惑う方もいると思います。
まず覚えておいてほしいのは、薬の名前や血液検査の数字を全部そろえてから歯科へ連絡する必要はないということです。
最初に、「○月○日から抗がん剤治療が始まる予定です。治療前に歯科を受診するよう言われました」と伝えてください。
特に大切なのが、治療開始予定日です。
歯科で何を確認し、どこまで治療するかを考えるうえで、「がん治療がいつ始まるのか」は重要な情報になるからです。
一般に「抗がん剤治療」と呼ばれるがん薬物療法には、現在さまざまな種類があります。従来から使われている細胞障害性抗がん薬だけでなく、分子標的薬や免疫療法などもあり、すべての薬が同じ副作用を起こすわけではありません。歯科で必要になる配慮も、治療内容や患者さんの状態によって変わります。[1][2]
抗がん剤治療前の歯科予約で、まず伝えてほしい5つのこと
電話や予約時に、最初から治療内容を完璧に説明する必要はありません。
まず次の5つが分かれば、受付でも状況をかなり整理できます。
1.抗がん剤治療前の歯科受診であること
「検診をお願いします」だけでは、通常の定期検診なのか、別の治療を控えた受診なのかまでは分かりません。
そこで、「抗がん剤治療が始まるので、その前の歯科受診です」と一言添えてください。
それだけで、「がん治療開始までの期間を考える必要がある受診」だと分かります。
2.抗がん剤治療の開始予定日
できれば、「10月5日からです」というように日付まで教えてください。
まだ正確な日が決まっていなければ、「10月上旬の予定です」でも構いません。
歯科で確認した結果、特に治療が必要ない場合もあります。一方で、歯周治療や根管治療、場合によっては抜歯などを検討することもあります。
処置によっては治療後の治癒期間や全身状態を考える必要があるため、治療開始予定日が重要になります。[3][4]
3.がん治療を受ける病院と診療科
「○○病院の腫瘍内科です」「○○病院の乳腺外科です」といった情報です。
分かれば主治医のお名前も参考になりますが、すぐ思い出せないからといって予約を遅らせる必要はありません。
予定する歯科処置によっては、がん治療を担当する医療機関との情報共有が必要になることがあります。
4.今、歯や口の中に症状があるか
「痛い歯があります」だけではありません。
- 歯ぐきが腫れている
- 膿が出る
- 噛むと痛い
- 歯がかなりぐらつく
- 親知らずの周囲が腫れる
- 歯が欠けて舌や頬に当たる
- 入れ歯が擦れて傷になる
- 口の中に痛い場所や治りにくい傷がある
このようなことも教えてください。現在の症状は、どこを優先して確認するかを考える手掛かりになります。
5.紹介状や病院から渡された資料があるか
「紹介状をもらっています」「治療予定表があります」「薬の説明書があります」ということも、分かれば伝えてください。
ただし、資料が全部そろうまで歯科への連絡を待つ必要はありません。

そもそも、なぜ抗がん剤治療の前に歯科を受診するの?
「別に歯は痛くないのに、なぜ歯医者へ行くんだろう?」と思う方もいるかもしれません。
がん治療前の歯科受診は、単に虫歯を探したり、歯石を取ったりするためだけではありません。
がん薬物療法や放射線治療では、治療内容によって口腔粘膜炎、口腔乾燥、感染などの口腔トラブルが生じることがあります。そのため、治療開始前に歯科で口の状態を確認し、必要な治療や口腔管理を行うことが勧められています。[1][2][3]
歯科では治療前に、虫歯、歯周病、根の先の感染、強く動いている歯、治療途中の歯、入れ歯や尖った歯による粘膜への刺激など、がん治療中に問題になりそうな場所がないかを確認します。
周術期等口腔機能管理では、単なる歯の清掃だけでなく、感染源の確認、必要に応じた根管治療や歯周治療、抜歯なども含めて口腔管理を考えます。[3][6]

痛い歯がなくても受診する意味はあります
歯科の病気は、必ず痛みとして現れるわけではありません。
本人にはほとんど症状がなくても、歯周病が進んでいたり、根の先に慢性的な病変があったりすることがあります。
そのため治療前の歯科受診では、「今痛いところがあるか」だけではなく、「治療中に問題になりそうな場所がないか」という視点で確認します。
痛みがないことと、歯科的な問題がまったくないことは同じではありません。
「抗がん剤治療前だから悪い歯を全部抜く」わけではありません
治療前の歯科受診と聞くと、「少し悪い歯が見つかっただけでも抜かれるのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。
しかし、目的は抜歯することそのものではありません。
歯を残した場合に、がん治療中どの程度問題になる可能性があるのか。一方、今抜歯などの処置をした場合、治癒にどのくらい時間が必要なのか。さらに、がん治療開始までに残された時間はどのくらいなのか。
こうした条件を合わせて考えます。
状況によっては、根管治療などで歯を残すことを考えたり、応急的に安定させたり、口腔衛生管理を優先したり、今は侵襲的な処置を行わなかったりする場合もあります。
2025年に公表された血液腫瘍患者向けの国際的な専門家声明でも、がん治療開始までの時間、歯科疾患の状態、予定されるがん治療の内容などを踏まえて、歯科治療の優先順位を決める考え方が示されています。[4]
ブランデンタルクリニックでも、「抜歯の相談で予約した=その日に必ず抜歯する」ではありません。
まず診察し、必要な検査や全身状態の確認を行ったうえで判断します。
歯科の予約時間には処置だけではなく、問診、診察、検査、診断、説明、安全確認なども含まれます。詳しくは、「治療前の説明・同意と歯科の予約時間」も参考にしてください。
「抗がん剤治療の何週間前まで?」一律の期限ではありません
インターネットを検索すると、「抗がん剤の2週間前までに歯科治療を」といった情報を目にすることがあります。
ただし、すべてのがん患者さんに当てはまる一律の期限ではありません。
2025年の血液腫瘍患者を対象とした専門家声明では、治療前に抜歯が必要となった場合、可能であれば抜歯した部分が粘膜で覆われるまでの治癒期間を確保することが勧められており、その目安としておよそ2〜3週間が示されています。[4]
しかし、この「2〜3週間」は、血液腫瘍の治療前に抜歯が必要となった場合を中心にした専門的な目安です。
「すべてのがん患者は抗がん剤開始3週間前までに歯科へ行かなければならない」という意味ではありません。
抜歯が必要なのか、そもそも外科処置をするのか、予定されているがん治療は何なのか、現在の全身状態はどうなのかによって条件は変わります。
ですから、「あと10日しかないからもう間に合わない」とも、「3週間あるから絶対大丈夫」とも、日数だけで自己判断しないでください。

治療開始まであと数日しかない――今さら歯科へ行っても遅い?
自己判断で「もう遅い」と諦めず、まず治療開始日を伝えて相談してください。
時間が短いからといって、歯科でできることがなくなるわけではありません。
- 口の中を診察する
- 感染源になりそうな場所を確認する
- 痛みや腫れの原因を調べる
- 口腔衛生状態を整える
- 入れ歯や尖った歯による刺激を確認する
- 必要な情報をがん治療側と共有する
など、その時点で優先できることがあります。
一方で、治療開始直前だからこそ、今あえて大きな処置をしない方がよいと判断する場合もあります。
残された日数だけを見て患者さん自身が決めるのではなく、現在の口の状態と予定されているがん治療を合わせて考えることが大切です。
虫歯を全部治してからでないと抗がん剤は始められない?
これも一律ではありません。
治療前に歯科を受診する目的は、口の中のすべてを短期間で完全に治療することではありません。
治療開始まで時間が限られている場合には、がん治療中に感染や制御しにくい痛みなどを起こす可能性が高い場所から優先して対応する考え方があります。[4]
反対に、今すぐ大きな問題になる可能性が低い場所については、がん治療の状況を見ながら後で治療する場合もあります。
大切なのは、患者さん自身の判断でがん治療を延期したり中止したりしないことです。
歯科治療との日程調整が必要な場合は、必要に応じてがん治療側と歯科側で情報を確認して考えます。
「入れ歯が当たる」「欠けた歯が舌に当たる」も伝えてください
抗がん剤治療前に確認するのは、虫歯や歯周病だけではありません。
治療中には、使用する薬によって口の粘膜に炎症が起こる場合があります。
その際、欠けた歯の尖った部分、粗くなった詰め物、合っていない入れ歯、頬や舌を繰り返し傷つける場所などがあると、粘膜への刺激になる可能性があります。
化学療法や放射線療法の口腔管理でも、鋭い歯や不適合な義歯などによる粘膜への刺激を減らすことが重要とされています。[3][4][6]
ですから、「痛くはないけれど、欠けた歯が舌に引っかかります」「入れ歯が当たって、いつも同じ場所に傷ができます」ということも歯科へ伝えてください。

全部入れ歯でも受診する意味はある?
あります。
「もう自分の歯がないから歯科は関係ない」とは限りません。
歯がなくても、入れ歯が粘膜に強く当たっていないか、傷や炎症がないか、清掃しやすい状態か、口腔粘膜に問題がないかなどを確認できます。
歯科は歯だけを見る場所ではありません。
抗がん剤の名前を覚えていなくても大丈夫です
がん治療が決まると、短期間にたくさんの説明を受けます。
病名、検査結果、治療方法、薬、副作用、入院や通院の日程――そのすべてを覚えて歯科へ伝えるのは大変です。
薬の名前が分かればもちろん参考になりますが、分からなくても予約を後回しにする必要はありません。
病院から受け取っている治療予定表、薬の説明書、服薬一覧、お薬手帳などがあれば、受診時に持参してください。
「点滴の治療です」「飲み薬も一緒に使うそうです」というところからでも構いません。
血液検査結果は「いつ検査したものか」も大切です
抜歯など出血を伴う処置を検討する際には、白血球や好中球、血小板などの血液検査が判断材料になる場合があります。
がん薬物療法では、治療内容や時期によって血液データが変化することがあるため、数字だけでなく検査日も大切です。厚生労働省の周術期等口腔機能管理の書式でも、血液データとともに検査日を確認する構成になっています。[5]
最近の血液検査結果をお持ちの場合は、検査日が分かる状態で持参してください。
ただし、患者さん自身が「白血球がこの数字だから抜歯できる」「血小板がこの数字だから治療できない」と判断する必要はありません。
受付が数字だけを見て治療の可否を決めるものでもありません。
血液検査は、予定する処置、現在の口の状態、がん治療の内容などと合わせて歯科医師が確認するための情報です。
抗がん剤等の投与後には血液データが大きく変化する場合があり、特に抜歯などの処置では病院主治医との情報交換が必要になることがあると、国内の周術期等口腔機能管理に関する総説でも指摘されています。[6]

最近、歯を抜いた・歯ぐきの手術をした場合も教えてください
これから何か歯科治療をする予定があるかだけでなく、すでに歯科処置を受けて治りかけている場所があるかも重要です。
たとえば、「5日前に親知らずを抜きました」「先週、歯ぐきの手術を受けました」「抜歯したところがまだ完全には閉じていません」という場合です。
がん治療開始までの期間を考えるうえで、現在どの段階まで治癒しているかが参考になる場合があります。
処置を受けた歯科医院、処置を受けた日、現在の症状が分かれば伝えてください。
今、ほかの歯医者で治療途中の歯がある場合も伝えてください
最近処置を受けた場合だけでなく、根管治療の途中、仮詰めの状態、仮歯が入っている、抜歯を予定していた、被せ物を作っている途中といった歯がある場合も教えてください。
今は痛くなくても、どの段階まで治療が進んでいるかによって、がん治療開始前の対応が変わる可能性があります。
抜歯などが必要になったら、病院との情報確認が必要になることがあります
診察の結果、「この歯は抜歯も含めて検討した方がよい」という場所が見つかることがあります。
その場合は、抗がん剤治療の開始予定日、現在の全身状態、最近の血液検査、がん治療の内容、使用している薬、今後の治療予定などを確認しながら判断することがあります。
必要に応じて、がん治療を担当する医療機関との情報共有・確認を行うことがあります。
患者さん一人に、「主治医に全部聞いて、それを覚えて歯医者へ伝えてください」と医学情報の伝言役をお願いすることが目的ではありません。
患者さんには分かる範囲のことと、手元にある資料を教えていただき、専門的な確認が必要であれば医療者間での情報共有も検討します。

がん治療を担当する先生にも「歯科を受診する予定」と伝えてください
情報共有は歯科側だけの話ではありません。
これから抜歯などの処置を受ける可能性がある場合や、すでに歯科で治療中の場合は、歯科を受診していることをがん治療側にも伝えておくと、その後の情報共有がスムーズです。[1][3]
特に、「歯を抜く可能性があると言われた」「強い腫れの治療をしている」「抜歯した直後でまだ傷が治っている途中」という場合には、がん治療を担当する先生にも伝えておきましょう。
ただし、患者さん自身でがん治療の日程を変更するのではなく、必要な調整は医療者と相談して決めます。
紹介状がまだない場合は?
ブランデンタルクリニックへのご相談では、紹介状がまだ手元になくても、まず治療開始予定日をお知らせください。
もちろん、がん治療側から紹介状や診療情報提供書を渡されている場合は、受診時に持参してください。
ただ、「紹介状を受け取るまで歯科へ電話できない」と考えて、治療開始日が迫っているのに何日も連絡を待つ必要はありません。
「10月5日から治療が始まります。紹介状はまだ手元にありません」と、そのまま教えてください。
歯科治療における紹介状については、「歯科治療で紹介状が必要になるのはどんな時?大学病院・市民病院と連携する理由を受付目線で解説」でも詳しく説明しています。
「骨の薬も始める」と言われている場合は、必ず伝えてください
がん治療では、がんそのものに対する薬とは別に、骨転移などに対して骨の吸収を抑える薬が使われることがあります。
薬の名前を覚えていなくても、「骨転移のための注射も始まると言われています」「骨を守るための薬も使います」と伝えてください。
一部の骨吸収を抑える薬は、薬剤関連顎骨壊死という顎骨の合併症と関係するため、歯科にとって重要な情報です。[3][7]
ただし、「抜歯をしなければ顎骨壊死にならないから、感染した歯もそのまま残した方がいい」と単純に考えるのも正確ではありません。
薬剤関連顎骨壊死に関する国内のポジションペーパーでは、抜歯そのものだけでなく、歯周病、根の先の病変、顎骨骨髄炎、インプラント周囲炎など、歯性感染が残ることも重要なリスク因子として重視されています。[7]
詳しくは、「骨粗鬆症の薬・注射を始める前に歯医者へ行くのはなぜ?予約時に伝えること・持ち物・受診の流れ」も参考にしてください。
また、歯科治療があるからといって、骨の薬を患者さん自身の判断で中止しないでください。
放射線治療も予定されている場合は、そのことも伝えてください
抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせて行うこともあります。
特に、口・顎・のどなど頭頸部への放射線治療が予定されている場合は、そのことも歯科へ伝えてください。
頭頸部への放射線治療では、照射範囲などによって、治療後に口腔乾燥や虫歯が増えたり、放射線による顎骨の障害が問題になったりする場合があります。そのため、治療開始前から歯科で評価することが重要です。[3][8]
放射線治療前に歯科処置が必要だからといって、歯科側だけの判断でがん治療を不必要に遅らせるものでもありません。がん治療の必要性と歯科処置の必要性を合わせて考えます。[8]
もう1回目の抗がん剤治療を受けてしまった場合は?
「歯医者に行く前に、もう1回目の抗がん剤を受けてしまった」という場合でも、もう歯科には行けない、という意味ではありません。
ただし、治療開始前とは確認したい情報が少し変わります。
予約時には、最後に治療を受けた日と、次の治療予定日を教えてください。
たとえば、「9月22日に1回目の治療を受けて、次回は10月6日の予定です」という伝え方です。
さらに、強い歯の痛み、歯ぐきや顔の腫れ、膿、口の中の強い痛み、出血などがあれば、その症状も伝えてください。
抗がん剤治療後の血液データの変化は、薬や治療方法、時期によって異なります。必要な場合は、直近の血液検査結果と検査日も確認します。
「抗がん剤を受けてから○日たてば必ず歯を抜ける」という自己判断はしないでください。
顔や首まで急に腫れる、息苦しい、飲み込みにくい場合は通常の予約だけで待たない
歯や歯ぐきの感染が強く広がると、顔や首まで腫れることがあります。
特に、腫れが短時間で広がっている、息苦しい、飲み込みにくい、唾液も飲み込みにくい、口が開きにくくなってきた、強い全身症状を伴うといった場合は、通常の歯科予約日までそのまま待つのではなく、緊急性を含めて速やかに医療機関へ相談してください。
抗がん剤治療前かどうかにかかわらず、こうした症状は「次の予約まで様子を見る」と自己判断しない方がよい症状です。
ブランデンタルクリニックへ予約するときは?
ブランデンタルクリニックでは、通常のご予約をWEB・公式LINE・電話から受け付けています。
予約方法については、「WEB予約・LINE・電話、どれで予約する?ブランデンタルクリニックの予約方法と使い分け」もご覧ください。
一方、抗がん剤治療の開始日がかなり迫っている、強い歯の痛みがある、歯ぐきや顔が腫れている、今日の受診を相談したいという場合は、電話でのご相談をおすすめします。
ブランデンタルクリニックでは、急な症状について電話で状況をお聞きし、その日の予約状況や必要な処置時間などを確認しながら、可能な範囲で当日相談にも対応しています。
WEB上の空き枠だけを見て、「ここまで予約がないなら、抗がん剤開始までにもう間に合わない」と決める前に、まず治療開始日と現在の状況を教えてください。
必要に応じて病院歯科・口腔外科などへの紹介を検討することもあります
がん治療前の歯科受診だからといって、全員が病院歯科や大学病院で治療を受けるわけではありません。
一方で、全身状態、がん治療の内容、血液検査、必要な歯科処置、処置の難しさなどによっては、病院歯科や口腔外科などでの対応が適切な場合もあります。
ブランデンタルクリニックでは、必要に応じて広島大学病院や広島市民病院などへの紹介・逆紹介を行っています。
大学病院への紹介後の予約については、「歯医者から大学病院を紹介されたら自分で予約する?広島大学病院では誰が予約するのか」も参考にしてください。
電話では、こんなふうに伝えてもらえれば十分です
難しい言葉を並べる必要はありません。
たとえば、現在症状がない場合なら、
「10月5日から○○病院の腫瘍内科で抗がん剤治療が始まる予定です。主治医からその前に歯科へ行くよう言われました。今は歯の痛みはありません。治療予定表を持っています」
これでかなり分かります。
症状がある場合なら、
「10月5日から抗がん剤治療が始まる予定ですが、右下の歯ぐきが3日前から腫れています。病院から紹介状をもらっています」
といった伝え方で大丈夫です。
薬の名前が分からなければ、
「薬の名前はすぐには分かりませんが、病院から説明書をもらっています」
で構いません。
受付で必要なことを追加で確認します。
よくある質問
Q.抗がん剤の名前が分かりません。それでも予約できますか?
まず治療開始予定日を教えてください。治療予定表や薬の説明書などがあれば、受診時にお持ちください。
Q.紹介状がまだありません
ブランデンタルクリニックへのご相談では、紹介状がまだ手元になくても、まず治療開始予定日をお知らせください。紹介状を渡されている場合は受診時に持参してください。
Q.痛い歯がありません。それでも歯科を受診する意味がありますか?
あります。治療前歯科は現在痛い場所だけを診るものではなく、症状のない感染源や、治療中に問題になりそうな場所を確認する意味があります。
Q.来週から抗がん剤です。今からでは遅いですか?
日数だけで「もう遅い」と判断せず、まず開始予定日を伝えて相談してください。残された期間と口の状態によって、優先することが変わります。
Q.虫歯を全部治してからでないと抗がん剤は始められませんか?
一律ではありません。限られた期間では、がん治療中に問題となる可能性の高い場所から優先して対応する場合があります。
Q.抗がん剤治療前に歯を抜くことになりますか?
抜歯が前提ではありません。まず診察し、歯の状態、治療開始までの期間、全身状態などを確認して判断します。
Q.最近の血液検査結果は必要ですか?
手元にある場合は、検査日が分かる状態で持参していただくと参考になります。患者さん自身が数値を見て歯科処置の可否を判断する必要はありません。
Q.全部入れ歯です。それでも歯科受診は必要ですか?
歯がなくても、入れ歯の当たりや口腔粘膜の傷、清掃状態などを確認する意味があります。
Q.骨転移の注射も始まる予定です
そのことも歯科へ伝えてください。薬の名前が分からなくても、「骨のための注射も始めます」で構いません。
Q.抗がん剤治療はもう始まっています
最後に治療を受けた日と、次回の予定日を教えてください。現在の症状や予定する歯科処置によって、血液検査結果や主治医との情報共有が重要になる場合があります。
Q.歯科治療が必要と言われたので、次の抗がん剤を自分で延期した方がいいですか?
自己判断で延期・中断しないでください。日程調整が必要な場合は、がん治療側と歯科側で必要な情報を確認して考えます。
Q.WEB予約でも大丈夫ですか?
通常のご予約はWEB・公式LINE・電話から受け付けています。ただし、治療開始日が迫っている場合や、痛み・腫れなどがある場合、当日の相談を希望する場合は電話でのご相談をおすすめします。
まとめ――全部覚えなくて大丈夫。まず「いつ治療が始まるか」を教えてください
抗がん剤治療を始める前の歯科予約で、患者さんが最初から難しい医学情報を全部説明する必要はありません。
まず受付へ伝えてほしいのは、抗がん剤治療前の歯科受診であること、治療開始予定日、治療を受ける病院・診療科、今の口の症状、紹介状や治療予定表などの資料を持っているかということです。
最近、抜歯や歯ぐきの手術を受けている場合は、その日付も伝えてください。
血液検査結果をお持ちなら、検査日が分かるものを持参すると参考になります。
抗がん剤の正式名称が分からない。血液検査の数字を覚えていない。紹介状がまだ手元にない。
それを理由に、歯科への連絡を後回しにする必要はありません。
「○月○日から抗がん剤治療が始まる予定です」
まず、その一言からで大丈夫です。
参考文献・参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス.「口内炎・口内の乾燥」.https://ganjoho.jp/public/support/condition/stomatitis/index.html
- 国立がん研究センター東病院 歯科.「診療内容」.https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/dental/050/index.html
- 国立がん研究センター・日本歯科医師会.「全国共通がん医科歯科連携講習会テキスト 第三版」2025年3月.https://ganjoho.jp/public/qa_links/book/medical/koshukai_text.html
- Zadik Y, Raber-Durlacher JE, Epstein JB, et al. MASCC/ISOO Clinical Practice Statement: dental evaluation and management prior to treatment for hematologic malignancies and CAR T-cell therapy. Support Care Cancer. 2025;33:853. doi:10.1007/s00520-025-09845-4.
- 厚生労働省.「周術期等口腔機能管理に係る計画書について」.https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001560051.pdf
- 中尾紀子,鵜飼孝.周術期等口腔機能管理におけるかかりつけ歯科医の役割.保健医療科学.2020;69(4):357-364.
- 岸本裕充.薬剤関連顎骨壊死ポジションペーパー2023―改訂の要点および今後の課題―.日本口腔外科学会雑誌.2025;71(8):344-348. doi:10.5794/jjoms.71.344.
- Peterson DE, Koyfman SA, Yarom N, et al. Prevention and Management of Osteoradionecrosis in Patients With Head and Neck Cancer Treated With Radiation Therapy: ISOO-MASCC-ASCO Guideline. J Clin Oncol. 2024;42:1975-1996. doi:10.1200/JCO.23.02750.
- 日本歯科医師会.「全国共通がん医科歯科連携講習会 Q&A」2026年7月16日版.https://www.jda.or.jp/dentist/info/pdf/qa_20260716.pdf
