2026年9月16日

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに
「入れ歯が入ったから、奥歯は元どおりですよね?」
メインテナンスをしていると、そんなふうに聞かれることがあります。
たしかに、歯を失ったところに入れ歯を入れる大きな目的の一つは、失われた噛み合わせを補うことです。奥歯がなくなったままでは噛みにくかったものが、入れ歯を使うことで食べやすくなることもあります。
では、入れ歯によって上下の奥歯が噛み合っていれば、「天然歯が多く残っている人」と同じように食べられるのでしょうか。
2026年9月11日、日本の研究グループが、自立して生活する高齢者297人について、天然歯の本数、奥歯で噛み合っている場所、入れ歯の使用状態、そして「硬さの異なる6種類の食品を噛めるか」を調べた研究を『Journal of Oral Rehabilitation』に発表しました。
この研究が興味深いのは、単純に「歯が何本残っているか」だけを数えていないところです。天然歯や固定された被せ物・ブリッジで奥歯が噛み合っている状態と、取り外し式の入れ歯による接触まで含めた状態を、別々に評価しています。
結果から見えてきたのは、「入れ歯は意味がない」という話ではありませんでした。
失った歯を入れ歯で補うことには大切な意味があります。それでも、失ってから補うことと、天然歯をできるだけ残しておくことを完全に同じものとして考えることはできない。今回は、そんな研究を歯科衛生士の視点から読み解いてみます。
日本の高齢者297人は、何を調べられた?
今回の研究は、愛知県の一地域で自立して生活していた高齢者297人を対象とした横断研究です。
論文が発表されたのは2026年ですが、実際に口腔内の診査と質問票調査が行われたのは2016年5月です。6人の歯科医師が、歯の状態、義歯の使用、口腔衛生状態などを確認しました。
つまり、「歯を失う前→入れ歯を入れた後」と同じ人を追いかけた治療前後の研究ではありません。ある時点での口腔状態と「噛める食品」との関連を調べた研究です。
参加者の年齢中央値は76歳、現在歯数の中央値は18本でした。297人中177人、59.6%が入れ歯を使用していました。
また、対象となったのは地域で自立して暮らしていた高齢者です。要介護高齢者や施設入所者を中心とした研究ではないため、今回の数字をすべての高齢者へそのまま当てはめることはできません。
「何本あるか」だけでなく「奥歯で噛み合っているか」を見た
今回の研究を理解するうえで重要なのが、POPs(Posterior Occluding Pairs)という指標です。
簡単にいえば、「上下の奥歯が向かい合って噛めるペア」です。小臼歯と大臼歯について、上下の同じ種類の歯が向かい合っている場所を数え、最大8ペアになります。
研究では、このPOPsを2通りで評価しました。
- 天然歯・治療済みの歯・固定性補綴によるPOPs:天然歯や固定された被せ物、ブリッジなどで成立する奥歯の噛み合わせ
- 可撤性義歯まで含めたPOPs:上記に加えて、取り外し式の入れ歯によって作られた奥歯の接触も含めた噛み合わせ
「歯が18本残っている」という情報だけでは、その18本がどこに残っていて、上下の奥歯がどれだけ向かい合っているかまでは分かりません。
以前、奥歯で噛み合う場所と咬筋の関係を調べた研究も紹介しました。今回の研究ではさらに、その奥歯の支持が天然歯や固定性補綴によるものなのか、可撤性義歯まで含めたものなのかを分け、「実際にどんな食品を噛めると感じているか」と比較しています。

「噛めるか」を調べたのは6種類の食品
では、この研究では「噛める」「噛めない」をどのように調べたのでしょうか。
質問されたのは、酢ダコ、たくあん、りんご、団子、エビフライ、バナナの6種類です。
先行研究をもとに硬さの異なる食品として選ばれ、それぞれについて「噛めるか」を本人が回答しました。
「噛めない」と回答した割合は、酢ダコ23.9%、たくあん17.5%、りんご9.4%、団子3.7%、エビフライ3.7%、バナナ2.7%でした。

今回の「噛める」は、機械で測った咀嚼力ではない
ここは、とても大切です。
「咀嚼能力を調べた研究」と聞くと、どのくらい強い力で噛めたのか、食品をどれだけ細かく砕けたのかを機械で測ったように感じるかもしれません。
しかし今回の研究では、咬合力を測定していません。グミなどを実際に噛んでもらい、その粉砕度やグルコースの溶出量を測定したわけでもありません。
6種類の食品を「自分は噛める」と感じているかという自己評価です。
歯科では、グミを噛んだ後に溶け出したグルコース量などを測り、客観的に咀嚼機能を評価する方法もあります。口腔機能低下症の検査では何を調べているのかについては、こちらでも詳しく紹介しています。
今回の記事では、機械で測定した「咀嚼能率」と混同しないように、「6食品を噛めるかという自己評価」として結果を見ていきます。
6食品すべて噛めた人は、天然歯が多く残っていた
297人のうち、6種類すべての食品を「噛める」と回答した人は220人でした。一方、噛める食品が5種類以下だった人は77人です。
現在歯数の中央値を比べると、6食品すべて噛めた人では22本、5食品以下だった人では8本でした。
大きな差ですが、この数字から「歯を14本失えば噛めなくなる」と考えることはできません。5食品以下だった人の方が年齢も高く、そのほかにも口腔状態や全身状態など複数の違いがあり得ます。
そこで研究者は、年齢や性別などを含めた多変量解析も行っています。
特に関連が目立ったのが「奥歯で噛み合う場所」
天然歯・固定性補綴によるPOPsが7〜8ペアあった67人では、64人が6食品すべてを噛めると回答し、5食品以下だったのは3人でした。
一方、POPsが0〜3ペアだった174人では、105人が6食品すべて、69人が5食品以下でした。
多変量解析でも、天然歯・固定性補綴によるPOPsが7〜8ペアある人を基準にすると、0〜3ペアの人は「5食品以下」となるオッズが高く、調整オッズ比は7.10、95%信頼区間は1.51〜33.3でした。
ここから「奥歯が少ないと7倍噛めなくなる」と読むのは正確ではありません。オッズ比は単純な発生確率の「7倍」と同じ意味ではなく、信頼区間もかなり広くなっています。
また、この解析ではPOPsを加えると現在歯数そのものは統計学的に有意ではなくなりました。これは、「何本残っているか」だけではなく、その歯がどこに残り、奥歯の噛み合わせをどれだけ作れているかも重要な可能性を示しています。
入れ歯による接触まで数えると、7〜8 POPsは70.7%だった
今回の研究で、特に興味深い数字があります。
天然歯・固定性補綴だけで数えた場合、7〜8 POPsあった人は67人、全体の22.6%でした。
一方、取り外し式の入れ歯によって作られている接触まで含めると、7〜8 POPsと評価された人は210人、70.7%でした。
ここから分かるのは、入れ歯が単に「歯がない場所を見た目だけ埋める装置」ではないということです。
可撤性義歯による接触まで含めて評価すると、多くの参加者で奥歯の咬合支持がある状態として評価されていました。
ただし、「22.6%から70.7%へ改善した」という意味ではありません。
同じ人について「入れ歯を入れる前は22.6%、治療後は70.7%になった」と追跡した研究ではなく、同じ297人を「天然歯・固定性補綴だけで数える方法」と「可撤性義歯による接触まで含める方法」の2通りで分類した結果です。

入れ歯で奥歯を補えば「天然歯と同じ」と言える?
ここまで読むと、「入れ歯で奥歯を全部噛み合わせれば、天然歯と同じなのでは?」と思うかもしれません。
今回の研究から、そこまでは言えませんでした。
可撤性義歯まで含めたPOPsでも、7〜8ペアある人を基準にすると、0〜3ペアの人では「5食品以下」となるオッズが高く、調整オッズ比は4.88でした。
一方、4〜6 POPs群では7〜8 POPs群との統計学的な有意差は認められていません。
つまり、「POPsが1段階減るたびに少しずつ噛めなくなる」という、きれいな階段状の結果が出たわけでもありません。
さらに、この解析では現在歯数が多いことも、「5食品以下」となるオッズが低いことと関連していました。
これらを合わせると、奥歯の接触を入れ歯で作ることには意味がある一方、「奥歯が接触している」という一つの条件だけで、天然歯が多く残っている人と同じ咀嚼状態になるとまでは言えない、という読み方が妥当でしょう。
「義歯使用者は2.95倍噛めない」と読んではいけない
今回の多変量解析の一つでは、義歯使用者が「5食品以下」となる調整オッズ比が2.95でした。
しかし、この数字だけを切り取って「入れ歯を使っている人は約3倍噛めない」とするのは適切ではありません。
この解析には、「入れ歯まで含めたPOPs」と「入れ歯を使用しているか」の両方が入っています。つまり可撤性義歯という要素が、咬合支持を表す変数と義歯使用の変数の両方へ関係しています。
著者ら自身も、この重なりによって2つの変数が相反するような結果となった可能性を指摘しています。また、義歯の適合状態も評価されていません。
さらに、義歯使用は別の2つの解析モデルでは咀嚼能力との有意な関連が認められず、このモデルでのみ有意でした。
ですから、今回の研究を「入れ歯の人は噛めない」という結論に置き換えることはできません。
今回の研究だけでは「差が生じた理由」までは分からない

では、なぜ天然歯や固定性補綴による咬合支持が多い人と、義歯を使用する人との間に違いがみられたのでしょうか。
「人工の歯だから」と一言で片づけることはできません。
今回の研究では義歯を使用しているかは確認されていますが、その義歯がどの程度合っているかは評価されていません。新しく作って安定している入れ歯なのか、長年使用して緩くなっている入れ歯なのかも分かりません。
さらに、咬合力や客観的な咀嚼効率も測定していません。
著者らは、社会経済的状況、喫煙、認知機能、うつなど、咀嚼能力に関係し得る要因を十分に解析できなかったことも限界として挙げています。
今回の結果は、「口腔内の状態と、本人が噛めると感じる食品との間に関連があった」ことを示したものであり、「なぜその関連が生じたのか」まで証明した研究ではありません。
「6食品すべて」と「5食品以下」に分けた解析でもある
もう一つ、結果を見るときに知っておきたい点があります。
研究では最終的に、参加者を「6食品すべて噛める人」と「噛める食品が5種類以下の人」の2群に分けて解析しています。
そのため、たとえば「酢ダコだけ噛みにくい人」も、「複数の食品を噛めない人」も、同じ「5食品以下」の群に入ります。
噛みにくさの程度を何段階にも細かく分けて解析した研究ではありません。「5食品以下」という結果を、そのまま「強い咀嚼障害」と読み替えないことも大切です。
「では、入れ歯は意味がない?」それも違います
天然歯を残すことが大切なら、「だったら入れ歯を作っても意味がないの?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、そこまで結論を飛ばすこともできません。
24件の臨床研究をまとめても、義歯後の改善は報告されている
可撤性部分床義歯が咀嚼機能へ与える影響をまとめた2024年のシステマティックレビューでは、1件のランダム化比較試験と23件の臨床研究、合計24件が採用されました。
そのうち14研究で、部分入れ歯治療後に咀嚼機能の何らかの改善が報告されています。
主観的な咀嚼能力を評価した研究では83.3%、客観的な評価を行った研究では69.5%の研究で改善が報告されました。
ここでの83.3%や69.5%は「患者さんの83.3%が改善した」という意味ではありません。採用された研究のうち、改善を報告した研究の割合です。
また、対象者、欠損の形、義歯の種類、評価方法などには研究ごとの差があります。「部分入れ歯を入れれば、誰でも同じ程度まで噛めるようになる」ことを示した結果ではありません。
それでも、「可撤性義歯には咀嚼機能を回復させる意味がない」という考えとは合わない結果です。
日本の高齢者でも、義歯治療を含む介入後に咀嚼能力は改善した
2023年に『老年歯学』へ報告された日本の研究では、臼歯部の可撤性義歯治療が必要で、口腔機能低下症が認められた65歳以上20人を対象に、義歯治療、オーラルフレイル改善プログラム、栄養指導を行っています。年齢中央値は77.5歳でした。
こちらでは質問票だけでなく、最大咬合力や、グミを使った客観的な咀嚼能力検査も行われています。
最大咬合力の中央値は、初診時86Nから3か月後163N、6か月後129Nへ。咀嚼能力検査は83mg/dLから3か月後167mg/dL、6か月後139mg/dLへ変化し、初診時と比べ3か月後・6か月後とも有意な改善が認められました。
ただし「新しい入れ歯だけで倍になった」研究ではない
この研究にも注意点があります。
対象は20人と少なく、対照群のない前後比較研究です。さらに行われたのは義歯治療だけではなく、口腔機能訓練や栄養指導も同時に実施されています。
著者らも、義歯治療とオーラルフレイル改善プログラムのどちらがどの程度結果へ寄与したのか、それぞれの効果を分けて検証できなかったとしています。
つまり、「天然歯とまったく同じとは限らない」ことと、「義歯で失った機能を回復させる意味がある」ことは両立します。
入れ歯を使っている人は「噛めないのが普通」と諦めないで
今回の297人研究では、義歯の適合状態が評価されていませんでした。
原著でも義歯の適合は重要な要素として挙げられ、不適合な義歯では食べられる食品や栄養摂取に影響する可能性があること、歯科医院で義歯を調整して適合を改善することで咀嚼能力が改善する場合があることが論じられています。
ですから、「入れ歯だから硬いものが噛めなくても仕方ない」と最初から決めつける必要はありません。
- 以前は食べられたものを避けるようになった
- 左右どちらか一方ばかりで噛むようになった
- 入れ歯が動く・浮く
- 噛むと痛い
- 入れ歯の下へ食べ物が入りやすくなった
- 金具のかかっている歯が痛い、または揺れる
- 作った頃より明らかに噛みにくくなった
こうした変化があれば、義歯だけでなく、残っている歯、粘膜、噛み合わせ、口腔機能も確認した方がよいことがあります。
顎の骨や粘膜、残っている歯の状態は年月とともに変化します。そのため、入れ歯も「一度作れば、その形のまま一生使える」とは限りません。
入れ歯は作った後も、残っている歯や顎の変化に合わせた管理が必要です。

「今ある歯と奥歯の噛み合わせを守る」ことにも意味がある
今回の297人研究は横断研究です。そのため、「奥歯の咬合支持を失った結果、その後に咀嚼能力が低下した」という時間の流れまでは証明できません。
ただし、この疑問については別の日本の縦断研究があります。
SONIC研究では、地域で暮らす72〜74歳の高齢者のうち488人を追跡し、奥歯の咬合支持の変化と客観的な咀嚼能力との関係を調べました。追跡期間の中央値は5.92年です。
その結果、性別、咬合力、補われていない欠損歯数、加齢などとともに、後方の咬合支持がどのように変化したかも咀嚼能力の変化と有意に関連していました。
もちろん、この研究からも「一本歯を失えば必ず咀嚼能力が低下する」と単純には言えません。
それでも、ある時点だけを比べた研究だけではなく、時間を追った研究でも、奥歯の咬合支持の変化と咀嚼機能との関連が示されています。
歯の本数だけではなく、「どこに残っているか」も大切
歯を一本失ったとき、「あと何本残っているか」に目が向きがちです。
でも、同じ本数でも、残っている場所によって奥歯の噛み合わせは違います。
虫歯や歯周病を放置しないこと。歯肉からの出血や歯の動揺をそのままにしないこと。治療が終わった後も定期的に清掃や歯周組織の状態を確認すること。
こうした予防やメインテナンスは、単に「残存歯数を多く保つ」ためだけではありません。将来も自分の歯を使って奥歯で噛み合える場所をできるだけ保つことにもつながります。
部分入れ歯を使い始めた後こそ、残った歯が大切
部分入れ歯になった後も同じです。
「もう入れ歯になったから、残った歯を守っても意味がない」ということはありません。
部分入れ歯は、残っている歯へ金具などをかけて支えを得ることがあります。その歯が虫歯や歯周病で弱くなれば、入れ歯を支える条件も変わります。
だからこそ、入れ歯そのものを清潔にするだけでなく、入れ歯を支えている天然歯を守ることも重要です。
部分入れ歯の金具まわりに汚れが残りやすい理由と、残っている歯を守るケアについても、以前詳しく紹介しています。
「天然歯を残す」と「失った歯を補う」は二者択一ではありません
今回の研究を読んで、「何が何でも天然歯を残せばよい」という話になるわけでもありません。
保存することが難しい歯を無理に残すことが、その人にとって最善とは限りません。
逆に、歯を失った後、「どうせ天然歯と同じではないなら、何も入れなくていい」と考えるのも違います。
守れる歯はできるだけ守る。失った機能は必要に応じて補う。補った後も、入れ歯と残っている歯の両方を管理する。
この3つは競い合う治療ではなく、つながっています。

今回の297人研究を読むときに忘れたくないこと
今回の研究には、とても興味深い結果があります。一方で、数字だけを取り出して一般化しないことも大切です。
- 横断研究なので、「歯を失ったから、その後噛めなくなった」という原因と結果は証明できない
- 調査は2016年5月に行われており、対象者は愛知県の一地域で自立して生活する高齢者だった
- 評価した食品は6種類で、毎日の食生活全体を調べたものではない
- 咬合力や客観的な咀嚼効率を測定していない
- 義歯の適合状態を評価していない
- 「6食品すべて」と「5食品以下」の2群に分けた解析で、噛みにくさの程度を細かく分類したものではない
- 社会経済的状況、喫煙、認知機能、うつなど、咀嚼に関係し得るすべての要因を解析できたわけではない
これらを考えると、「入れ歯では噛めない」「天然歯なら何でも噛める」「入れ歯を使うと栄養状態が悪くなる」といった結論まで広げることはできません。
今回の研究は、「天然歯数」「奥歯の咬合支持」「可撤性義歯」と「本人が噛めると感じる食品」との関係を考える一つの研究として読む必要があります。
よくある質問
Q. 入れ歯を入れたら天然歯と同じ力で噛めますか?
一概には言えません。今回の297人研究は最大咬合力を直接比較した研究ではありません。
入れ歯の種類、残っている歯、顎の骨や粘膜、義歯の適合、舌や頬の動きなどによっても噛みやすさは変わります。「入れ歯が入っている」という一つの条件だけで、その人の咀嚼能力を判断することはできません。
Q. では、入れ歯を作らない方がよいのでしょうか?
いいえ。今回の研究でも、可撤性義歯による接触まで含めると、7〜8 POPsと評価される参加者は多くなっていました。
また、可撤性部分床義歯に関するシステマティックレビューでも、義歯治療後の咀嚼機能改善を報告した研究が複数あります。失った歯を補い、口腔機能を回復させることには大切な意味があります。
Q. 何本歯が残っていれば大丈夫ですか?
今回の研究から、「○本残っていれば十分」という境界を決めることはできません。
歯の本数だけではなく、どこに歯が残っていて、上下の奥歯がどのように噛み合っているかも重要です。同じ本数の歯が残っていても、咬合支持の状態は同じとは限りません。
Q. 入れ歯で硬いものが噛めないのは年齢のせいですか?
年齢だけとは限りません。義歯の適合、残存歯、噛み合わせ、口腔乾燥、舌や頬などの口腔機能も関係します。
以前より急に噛みにくくなった場合や、入れ歯が痛い・動く・外れやすいなどの変化がある場合には、自己判断で我慢せず歯科で確認してください。
Q. 今は入れ歯で困っていなくても、定期的に見てもらった方がよいですか?
おすすめします。
確認するのは、入れ歯が割れているか、痛いかだけではありません。残っている歯の虫歯や歯周病、金具がかかる歯、粘膜、義歯の安定性、噛み合わせなども見ていきます。
「困ってから直す」だけではなく、困りにくい状態を維持するための確認という意味があります。
入れ歯が急に噛めなくなったときはご相談ください
入れ歯が急に割れた、強く痛む、外れて使えない、支えている歯が痛いなど、急な変化がある場合には早めに歯科医院へご相談ください。
広島市中区立町のブランデンタルクリニックは、立町駅徒歩1分、立町中央ビル4階にあり、4階までエレベーターでお越しいただけます。
急な入れ歯の破損や強い痛みなどは当日電話受付可です。診療状況によりますが、急患同日可の場合がありますので、WEB予約の空きがないときもまずはお電話でご相談ください。
まとめ|入れ歯で補うことと、天然歯を残すことはどちらも大切
今回の日本の研究では、自立して生活する高齢者297人について、天然歯数、天然歯・固定性補綴による奥歯の咬合支持、可撤性義歯まで含めた咬合支持と、6種類の食品を噛めるかが比較されました。
天然歯・固定性補綴による奥歯の咬合支持が多い人ほど、6食品すべてを噛める傾向が認められました。
一方、天然歯・固定性補綴だけで数えると7〜8 POPsだった人は22.6%でしたが、可撤性義歯による接触まで含めて評価すると70.7%でした。
これは治療前後の改善率ではありません。それでも、入れ歯が失われた奥歯の接触を補う役割を担っていることを考えるうえで重要な結果です。
同時に、今回の研究だけから「入れ歯で奥歯が接触すれば天然歯とまったく同じ」と結論づけることも、「入れ歯では噛めない」と結論づけることもできません。
可撤性部分床義歯に関するシステマティックレビューでは、義歯治療後の咀嚼機能改善を報告した研究が複数あります。日本の高齢者を対象とした研究でも、義歯治療を含む介入後に咀嚼能力の改善が確認されています。
さらに別の日本の縦断研究では、約6年間にわたる奥歯の咬合支持の変化と、客観的な咀嚼能力の変化との関連も報告されています。
今ある天然歯をできるだけ長く守ること。失った歯は必要に応じて補うこと。入れ歯を使い始めた後も、残っている歯と義歯を一緒に管理すること。
どれか一つではなく、その全部が、年齢を重ねても自分の口で食事を楽しみ続けるために大切です。
参考文献
- Hashimoto H, Dewake N, Nonoyama T, Saito M, Muto A, Shimazaki Y. Association Between Oral Health and Chewing Ability Among Independent Older Adults. Journal of Oral Rehabilitation. 2026. doi:10.1111/joor.70306
- Yaparathna N, Hettiarachchi RM, Tadakamadla SK, Love R, Robb ND, Abuzar M. Impact of Removable Partial Dentures on Masticatory Performance in Partial Edentulism: A Systematic Review. International Journal of Prosthodontics. 2024;37(3):327-338. doi:10.11607/ijp.8278
- 山本龍生,遠又靖丈,田中直人,西澤昭人,玉置勝司.高齢者への義歯治療とオーラルフレイル改善プログラム・栄養指導が口腔機能と栄養状態に与える効果.老年歯学.2023;38(2):48-55. doi:10.11259/jsg.38.2_48
- Higashi K, Hatta K, Mameno T, et al. The relationship between changes in occlusal support and masticatory performance using 6-year longitudinal data from the SONIC study. Journal of Dentistry. 2023;139:104763. doi:10.1016/j.jdent.2023.104763
