2026年6月14日

(院長の徒然コラム)

はじめに:Grade Cを「若年者の歯周病」と訳した瞬間に、診断は雑になります
2018年のAAP/EFP新分類を臨床で使うとき、最も誤解されやすい概念の一つがGrade C歯周炎です。
旧分類でいう侵襲性歯周炎、とくに限局型侵襲性歯周炎に近い臨床像を含むため、Grade Cを「若い人に起こる歯周病」と説明したくなる場面はあります。しかし、それは説明としては簡単でも、診断としては危険です。Grade Cは年齢で決まる病名ではありません。若年者だからGrade Cなのではなく、年齢に対して歯周組織破壊が大きい、または実際に進行速度が速い、あるいは治療反応性が悪い可能性があるからGrade Cとして扱うのです。
ここを取り違えると、二つの誤診が起こります。一つは、若年者の重篤な歯周炎を「まだ若いから歯周病ではない」と見逃す誤診です。もう一つは、若年者の局所的なアタッチメントロスを、矯正性歯肉退縮、咬合性外傷、歯内病変、破折、補綴物不適合などと鑑別しないまま、安易にGrade Cと呼んでしまう誤診です。
2018年分類の本質は、病名の貼り替えではありません。慢性歯周炎と侵襲性歯周炎を「歯周炎」という箱にまとめたうえで、現在の破壊量と治療複雑度をStageで、進行速度・将来リスク・治療反応性をGradeで評価する枠組みに変えた点にあります。旧分類では慢性歯周炎と侵襲性歯周炎が別疾患として扱われていましたが、細菌、遺伝子、宿主応答などの面から両者を明確に分ける診断基準が確立できなかったため、現在はperiodontitisとして統合し、StageとGradeで記述する体系になりました。
したがって、Grade Cは「旧侵襲性歯周炎の新しい名前」と単純化すべきではありません。むしろ、Grade Cは速く壊れる患者、治療反応性が読みにくい患者、通常より密な再評価とSPTが必要な患者を拾い上げるための臨床言語です。

まず「歯周炎である」ことを確認しなければ、Grade Cの議論は始まりません
Grade Cを論じる前に、まず確認すべきことがあります。それは、観察しているCALや骨吸収が、本当に歯周炎によるものかどうかです。
2018分類では、歯周炎の症例定義として、隣接しない2歯以上に歯間部CALが存在する場合、あるいは2歯以上で頬側または舌・口蓋側に3mm以上のCALと3mm以上のPPDが存在する場合が示されています。ただし、外傷由来の歯肉退縮、歯頚部う蝕、第三大臼歯の位置異常や抜歯に伴う第二大臼歯遠心部のCAL、歯内病変による排膿路、垂直性歯根破折など、歯周炎以外が原因のCALは除外されます。
これはGrade C診断で非常に重要です。
例えば、20代の下顎前歯部に歯肉退縮と唇側骨の菲薄化がある症例を、年齢が若いという理由でGrade Cと呼ぶのは乱暴です。矯正既往、唇側傾斜、thin phenotype、ブラッシング圧、舌側歯石、咬合性外傷を読まずにGrade Cへ飛ぶべきではありません。
また、単独歯に深いポケットがある症例でも同じです。垂直性歯根破折、歯内歯周病変、穿孔、セメント質剥離、補綴物辺縁不適合、根分岐部病変、食片圧入などを除外せずに「Grade C」と診断すると、患者単位のリスク診断と歯単位の局所診断が混同されます。
Grade Cは、一本の歯が壊れていることを表す言葉ではありません。患者単位で、歯周炎の進行速度、進行リスク、治療反応性を読むための言葉です。ここを外すと、分類を使っているようで、実際には分類に使われているだけになります。

2018分類で失われたものと、得られたもの
旧分類の「侵襲性歯周炎」という言葉には、臨床家に危機感を与える力がありました。若年者、急速進行、家族内集積、第一大臼歯・切歯部を中心とした骨吸収。これらが揃う症例を見たとき、「通常の慢性歯周炎とは違う」と直感させる名称でした。
しかし、旧分類には限界もありました。早期発症型歯周炎という概念は、発症時期を知る必要があります。しかし日常臨床で、患者の歯周炎がいつ発症したかを正確に把握できることはほとんどありません。1999年分類で早期発症型歯周炎が侵襲性歯周炎へ変更された背景にも、年齢や発症時期に基づく分類の曖昧さがありました。
さらに、慢性歯周炎と侵襲性歯周炎を病態生理学的に明確に分けるバイオマーカーは確立されていません。新分類の臨床的意義を論じた関野は、Gradeは骨吸収の状態だけではなく進行リスクや治療反応性を評価する治療指標として有効になり得る一方で、Gradeの違いを分かつバイオマーカーは確立されていないと述べています。
ここに、2018分類の割り切りがあります。
疾患名で分けるのではなく、患者単位で、現在どれだけ破壊されているか、治療はどれだけ複雑か、どの速度で進行している可能性があるか、標準治療にどれだけ反応しそうかを記述する。この方向転換は、臨床的には極めて重要です。
ただし、失われたものもあります。Grade Cという言葉は、旧「侵襲性歯周炎」ほど直感的な危機感を持ちません。Grade Cと書くと、分類表の中の一項目に見えます。しかし実際には、Grade Cは「この患者を通常の歯周炎と同じ感覚で扱ってはいけない」という警告です。
Grade Cを軽く扱う臨床家は、分類表を読んでいても分類の思想を読んでいません。
Grade Cの中核は「直接証拠」と「間接証拠」です
Grade C判定で最も強い情報は、過去資料との比較です。つまり、過去5年間で骨吸収またはCALが2mm以上進行しているかどうかです。これが直接証拠です。一般に、5年以上進行がなければGrade A、5年で2mm未満ならGrade B、5年で2mm以上ならGrade C方向に評価されます。
しかし、初診患者で5年前の全顎デンタルX線写真や歯周組織検査がきれいに残っていることは多くありません。そこで使われるのが間接証拠、すなわち最大骨吸収率を年齢で割る、%RBL/ageです。0.25未満でGrade A、0.25〜1.0でGrade B、1.0を超えるとGrade C方向に評価されます。
この指標は非常に便利です。同じ30%の骨吸収でも、30歳で30%と70歳で30%では意味が違います。30歳で30%なら%RBL/ageは1.0、70歳で30%なら約0.43です。若年者で「年齢の割に骨が減っている」という臨床感覚を、ある程度数値化できる点に価値があります。
しかし、便利な指標ほど危険です。
%RBL/ageは、実際の進行速度そのものではありません。累積的に生じた破壊量を、現在の年齢で割っているだけです。30歳で30%の骨吸収がある患者が、本当に直近5年間で急速に進行しているのか、10代後半に急速に進行してその後は停滞しているのか、局所因子によって一部の歯だけ壊れているのか、この計算式だけではわかりません。
Bummらの2024年研究では、非外科治療を受けた84名を対象に、直接証拠と間接証拠によるGrade判定の一致が検討されています。その結果、両者の一致はκ=0.070と低く、間接証拠は実際の進行を13%で過小評価、51%で過大評価、36%で正しく評価していました。つまり、%RBL/ageだけでは、過去の進行も将来の進行も正確に読めない症例が相当数存在します。
ここから導かれる結論は明確です。
Grade Cは、計算式で決めるものではありません。計算式を入口にして、経年的資料、分布、表現型、プラーク量との不釣り合い、喫煙、糖尿病、家族歴、治療反応性を統合して読むものです。

%RBL/ageは有用ですが、万能ではありません
%RBL/ageは、初診時に過去資料がない症例でGradeを推定するための現実的な指標です。しかし、その使い方を誤るとGrade C診断は一気に雑になります。
まず、局所的な高度骨吸収では過大評価が起こります。例えば、下顎第一大臼歯遠心に深い垂直性骨吸収があり、そこに不良補綴物、近心傾斜、食片圧入、根分岐部病変、歯内病変、破折疑いが絡んでいる症例を考えます。その一本の最大骨吸収率だけを用いて%RBL/ageを計算すると、患者全体の進行リスクを過大評価する可能性があります。
逆に、広汎型の中等度〜高度骨吸収では過小評価が起こることもあります。高齢者では年齢で割るため、かなり広範囲に破壊されていても%RBL/ageが1.0を超えないことがあります。進行速度はすでに鈍化しているかもしれませんが、「広範囲に壊れた患者」としての治療複雑度やSPTリスクは残ります。
Bummらも、孤立性の高度欠損や局所因子を伴う病変では%RBL/ageが進行速度を過大評価し得る一方、広汎型の進行症例では過小評価し得ると考察しています。
したがって、%RBL/ageは「Grade Cを決定する神の式」ではありません。臨床家が用いるべき態度は、%RBL/ageでGrade Cが疑われたら、そこで診断を終えるのではなく、むしろそこから診断を深掘りすることです。
この患者はなぜGrade Cなのか。
過去資料で進行が確認できるのか。
局所因子で説明できるのか。
Molar-Incisor patternなのか。
広汎型なのか。
喫煙や糖尿病でGradeが押し上げられているのか。
治療反応性は本当に悪いのか。
SPTで安定するのか。
ここまで分解して初めて、Grade C診断は治療計画に接続します。

若年者では「若いから」ではなく「年齢に対して壊れているか」を見ます
若年者のGrade Cを診るとき、最も重要なのは暦年齢そのものではありません。その年齢で、その破壊量が妥当かどうかです。
20代で第一大臼歯と切歯に明らかなアタッチメントロスと骨吸収がある。プラーク量は破壊量と不釣り合いである。全身的には健康である。家族にも若くして歯を失った人がいる。このような症例では、Grade C、特にMolar-Incisor patternを強く疑います。
一方で、25歳であっても全顎的にプラークコントロールが極めて不良で、BOPが広範に陽性で、歯肉縁下歯石も多く、破壊量が局所因子と整合する場合、若いという理由だけでGrade Cとするのは短絡です。若年者の歯周炎であっても、進行速度、表現型、リスク因子、治療反応性を読み直す必要があります。
Molar-Incisor patternは、第一大臼歯と切歯を中心に病変が出現し、罹患歯が30%未満にとどまる表現型です。Generalized Grade Cでは30%を超える歯に病変が広がります。
Stolfらの2026年研究では、PerioC-MIPを第一大臼歯や切歯を中心に罹患し30%未満の歯に限局する表現型、PerioC-Gを30%を超える歯に広がる表現型として扱い、MIPとGeneralizedでは細菌叢や歯肉溝滲出液中の炎症マーカーに違いがある可能性を示しています。
ここで重要なのは、MIPを「旧LAgPの名前を変えたもの」とだけ考えないことです。歴史的連続性はあります。しかし、現在の分類では、MIPもStage、Grade、範囲・分布の中で記述される表現型です。したがって「Molar-Incisor pattern、Stage III、Grade C」のように、重症度、分布、進行リスクを併記して初めて臨床的な情報量を持ちます。


家族歴は正式なGrade modifierではありません。しかし、無視する臨床家は危ういです
2018分類の表を厳密に読むと、Grade modifierとして明記されているのは喫煙と糖尿病です。家族歴は、喫煙や糖尿病のような正式なGrade modifierとしては扱われていません。
だからといって、家族歴を軽視してよいわけではありません。若年発症、急速進行、Molar-Incisor patternを疑う症例では、家族歴は非常に重要な問診情報です。
ただし、「家族に歯周病の人はいますか」と聞くだけでは足りません。この質問では、多くの患者は「よくわかりません」と答えます。臨床的には、もっと具体的に聞く必要があります。
「親御さんは若いころに歯を失っていますか」
「30代、40代で入れ歯やインプラントになったご家族はいますか」
「兄弟姉妹に、若いうちから歯周病が進んでいる方はいますか」
「歯磨きをしているのに、歯がぐらぐらになりやすい家系と言われたことはありますか」
このように聞くと、初めて家族内集積が見えてくることがあります。
ただし、ここでも飛躍してはいけません。家族歴があるからGrade C、家族歴がないからGrade Cではない、という話ではありません。家族歴は、若年発症、破壊量の不釣り合い、MIP、治療反応性の悪さを解釈する補助線です。
また、細菌検査や遺伝子検査でGrade Cを一発診断できる段階でもありません。関野が述べるように、Gradeの違いを分けるバイオマーカーは確立されていません。
Grade Cの本質は、特定の細菌名や遺伝子名ではなく、宿主・細菌・環境因子が組み合わさった結果として、通常より速く支持組織が破壊される患者を見逃さないことです。
細菌叢と宿主応答は、Grade Cを理解する補助線になります
Grade Cを語るとき、A. actinomycetemcomitans、とくにJP2 cloneの話題を避けて通ることはできません。しかし、臨床家はここでも慎重であるべきです。
Stolfらの2026年研究では、Molar-Incisor型とGeneralized型のGrade C歯周炎において、細菌叢と炎症マーカーの違いが検討されています。PerioC-MIPではAggregatibacter actinomycetemcomitansとStreptococcus sanguinisが関連し、PerioC-GではTannerella forsythia、Filifactor alocis、Porphyromonas gingivalis、Fretibacterium fastidiosum、Treponema denticolaが有意に多く認められ、Generalized型ではIL-1β、IL-6、IL-10が高いと報告されています。
これは非常に興味深いデータです。MIPとGeneralized Grade Cが、同じGrade Cという箱に入っていても、異なる病態段階または感受性パターンを持つ可能性を示唆します。
しかし、症例数はPerioC-MIP 18名、PerioC-G 20名であり、MIPは北米、Generalizedはブラジルという異なる集団から構成されています。したがって、これをそのまま日本の一般臨床へ外挿し、「A.aがあればMIP」「red complexが多ければGeneralized」と診断するのは危険です。
細菌叢データは、Grade Cを「単なる若年者歯周炎」ではなく、宿主応答と微生物叢の相互作用として理解するためには有用です。しかし、現時点でのGrade C診断の中心は、あくまで臨床所見、X線所見、経時的資料、リスク因子、治療反応性です。

喫煙は、Grade判定を変えるほどのリスク因子です
喫煙は、歯周病の単なる悪化因子ではありません。2018分類では、喫煙本数によってGrade modifierとして扱われます。1日10本未満の喫煙はGrade B方向、1日10本以上の喫煙はGrade C方向に評価されます。糖尿病についても、HbA1c 7.0%未満はGrade B方向、HbA1c 7.0%以上はGrade C方向に扱われます。
ここは臨床上、非常に重要です。
喫煙者の歯周病は、炎症が見えにくいことがあります。BOPが少ない、歯肉発赤が強くない、患者も痛みを訴えない。にもかかわらず、骨吸収とアタッチメントロスが進んでいる。これは喫煙関連歯周炎の厄介さです。
BOPは有用な指標です。しかし、喫煙者におけるBOP陰性を「炎症がない」と読んではいけません。喫煙は血管収縮、免疫応答、好中球機能、線維芽細胞機能、創傷治癒、細菌叢に影響します。つまり、炎症がないのではなく、炎症の見え方が変わっている可能性があります。
ここで避けるべき誤りは二つあります。
一つ目は、喫煙者であることだけを理由に機械的にGrade Cとすることです。喫煙本数はGrade modifierですが、最終的なGradeは、骨吸収量、年齢、直接証拠、間接証拠、糖尿病、プラーク量、炎症所見、治療反応性を総合して判断します。
二つ目は、喫煙を軽視してGrade Bに据え置くことです。特に1日10本以上の喫煙者で、%RBL/ageがGrade BとCの境界に近い症例、あるいは標準治療への反応が鈍い症例では、Grade Cとして管理する臨床的妥当性は高くなります。
喫煙を生活習慣の一項目として問診票に埋めるだけでは足りません。Grade C診断では、喫煙は治療計画、再評価、SPT間隔、予後説明を変える因子です。

日本の一般歯科でも、Grade Cは机上の分類ではありません
Grade Cを若年者や侵襲性歯周炎の文脈だけで語ると、特殊症例の話に見えます。しかし、日本の一般歯科臨床にも、Grade CやStage III・IVの患者は普通に存在します。
山口らの多施設共同断面研究では、日本臨床歯科学会東京・北陸支部所属の12施設の一般歯科医院に初診来院した35歳以上の患者344人を対象に2018分類を適用しています。その結果、歯周炎有病率は75.9%、重度歯周炎であるStage III・IVの割合は歯周炎患者中48.3%でした。さらに歯周炎患者261人のGrade分類では、Grade Aが24.9%、Grade Bが47.1%、Grade Cが28.0%でした。
もちろん、この研究は一般人口を対象とした疫学調査ではなく、一般歯科医院に初診来院した患者を対象とした断面研究です。受診者バイアスはあります。それでも、一般歯科の初診患者に重度歯周炎やGrade Cが相当数含まれることは、臨床上の重要な事実です。
このデータを見ても、Grade Cは机上の分類ではありません。むしろ、日常臨床で拾い上げるべき患者群です。
ただし、ここでも重要なのは、Grade Cと分類したあとにもう一段階読むことです。そのGrade Cは、直接証拠に基づくGrade Cなのか。%RBL/ageによるGrade Cなのか。喫煙によって押し上げられたGrade Cなのか。糖尿病によるGrade Cなのか。MIPなのか。広汎型なのか。治療反応性が悪いのか。
この分解をしないGrade C診断は、臨床では弱いです。

Grade Cと診断した後、治療計画はどう変わるべきか
Grade Cと診断しても、歯周基本治療を飛ばして特殊治療へ進むわけではありません。口腔衛生指導、リスクファクターコントロール、専門的機械的プラーク除去、歯肉縁下インスツルメンテーション、再評価、必要に応じた外科治療、SPT。この流れ自体は変わりません。
EFPの診療ガイドラインに基づく整理では、歯周治療はステップ1、ステップ2、ステップ3、SPCという流れで構成されます。ステップ1は口腔衛生指導、動機づけ、歯肉縁上バイオフィルム除去、リスクファクター管理。ステップ2は歯肉縁下インスツルメンテーション。ステップ3は必要に応じた外科治療。最後に支持的歯周治療へ移行します。
Grade Cで変わるのは、基本治療そのものではなく、基本治療に対する緊張感と再評価の密度です。
Hoshiの非外科治療に関する整理では、Grade Cは進行しやすく治りにくい歯周炎であり、通常の非外科治療に加え、抗菌薬の併用やリスクファクターコントロールが必要になる場合があると説明されています。また、歯周治療において日常的な全身抗菌薬投与は推奨されませんが、若年者の広汎型Stage IIIなど特定症例では、歯肉縁下インスツルメンテーションの補助療法として全身抗菌薬投与が考慮されます。
ここで重要なのは、「Grade Cだから抗菌薬」と単純化しないことです。抗菌薬は、機械的デブライドメントの質が担保され、適応が吟味され、患者背景、病型、重症度、年齢、A. actinomycetemcomitansの関与、薬剤耐性、副作用、コンプライアンスを踏まえたうえで考慮すべき補助療法です。低品質なSRPを抗菌薬でごまかすのは治療ではありません。
再評価後の残存ポケットへの対応も同じです。深い残存ポケット、特にPPD 6mm以上ではフラップ手術が推奨され、中等度の残存ポケット、PPD 4〜5mmでは再度の歯肉縁下インスツルメンテーションが推奨されます。
Grade C症例で残存PPD 6mm以上を「様子見」で長期放置するのは、分類の意味を捨てているのと同じです。Grade Cとは、進行しやすく治療反応性が読みにくい患者を拾い上げるための言葉です。その患者に対して、再評価を甘くし、残存ポケットを放置し、喫煙指導を雑談で終わらせるなら、Grade Cと診断した意味はありません。
【Stage III・IV歯周炎と包括治療の考え方はこちら】
レーザーやAPDTは「切り札」ではなく、補助療法として読むべきです
Grade C、とくに若年者のGrade Cに対するレーザーやAPDTは、近年研究が増えています。レーザー補助療法には、術後不快感の軽減、浮腫の抑制、局所的な抗菌効果、薬剤耐性リスクの回避といった利点が期待されています。
しかし、ここでも冷静であるべきです。
Liuらの2025年レビューでは、Grade C若年者に対するレーザーやAPDTの研究進展が整理されていますが、同時に、分類用語の変化、疾患タイプの複雑性、レーザー波長やエネルギー密度など技術条件の多様性、長期有効性・安全性データの不足、研究資源の制限により、結果の比較や標準化が難しいことが指摘されています。
ブルーラジカルなどのAPDTについても、SRP単独よりCAL改善に有利だった研究、BOP改善に限られた研究、開放掻爬との比較でポケット深さにより結果が分かれる研究などがあり、結果は一貫していません。
したがって、レーザーやAPDTをGrade C治療の主役にするのは現時点では早いです。Grade C診療の中心は、あくまで診断、原因除去、リスク因子管理、再評価、必要な外科介入、SPTです。レーザーやAPDTは、適応を選んだ補助療法として扱うべきであり、「Grade Cに効く新兵器」として語るべきではありません。
我々臨床家は流行っている治療を持ち上げるより、どこまでわかっていて、どこから先が未確定なのかを明確にすべきです。

メインテナンス期にこそ、Grade Cの意味が現れます
Grade Cは初診時につけて終わるラベルではありません。むしろ、メインテナンス期にこそ意味を持ちます。
Stageは、基本的には一度進行した破壊量を反映します。治療によって炎症が制御されても、過去にStage III・IV相当の破壊を経験した患者は、その既往を持つ患者として管理すべきです。一方、Gradeは将来の進行リスクや治療反応性に関わる概念であり、治療後の安定性、禁煙、糖尿病管理、BOP、残存ポケット、骨吸収の進行の有無によって、実質的なリスクは変化し得ます。
島袋らの2022年研究では、60〜143か月、中央値97か月のメインテナンス治療を受けた328人を対象に、歯周炎新分類と歯の喪失発生率との関連が検討されています。その結果、Stage IV、Grade C、広汎型の97か月TLPD累積発生率は、それぞれ6.6%、3.4%、2.8%であり、分類群間に有意差が認められています。また、歯周炎新分類は性別、年齢、メインテナンス開始時の現在歯数とは独立してTLOAおよびTLPD発生率と関連していました。
同研究では、TLOAについてもGrade Bが0.8%、Grade Cが4.1%で、Grade分類間に有意差が示されています。
これはGrade Cが単なる分類表の記号ではなく、長期予後に関わる可能性を持つ臨床情報であることを示しています。
ただし、過剰解釈は禁物です。Grade Cだから必ず歯を失うわけではありません。逆にGrade Bだから安全でもありません。残存PPD、BOP、根分岐部病変、咬合、補綴設計、清掃状態、SPT遵守、喫煙、糖尿病、歯内疾患、歯根破折などが絡みます。
それでも、Grade C患者をGrade B患者と同じ間隔、同じ再評価密度、同じ緊張感で管理するのは合理的ではありません。
Grade Cは、SPT間隔を短くする理由になります。
再評価を厳密にする理由になります。
BOPの持続を軽視しない理由になります。
残存PPD 6mm以上を放置しない理由になります。
喫煙指導を「できれば」ではなく治療戦略として扱う理由になります。
糖尿病管理を医科連携の対象として考える理由になります。

Grade C診断で最も危険なのは「分類表を覚えたから診断できる」という錯覚です
Grade Cを語るとき、臨床家が最も陥りやすいのは、分類表を覚えたことで診断できた気になることです。
5年で2mm以上。
%RBL/age > 1.0。
喫煙10本以上。
HbA1c 7.0%以上。
大臼歯/切歯パターン。
標準治療への反応不良。
これらは重要です。しかし、これらを暗記しても、Grade Cを診たことにはなりません。
本当に必要なのは、患者の破壊の履歴を読むことです。年齢に対する破壊量を読むことです。局所因子で説明できる破壊と、説明しきれない破壊を分けることです。家族歴を聞き取ることです。喫煙で炎症所見が隠れていないかを見ることです。糖尿病が治療反応性を落としていないか考えることです。非外科治療後の反応を見て、診断を再解釈することです。SPTで本当に進行が止まっているか追うことです。
つまり、Grade Cは初診時の分類名ではなく、長期的に患者をどう監視するかを決める臨床言語です。
ここを理解していないと、「Stage III Grade C」とカルテに書いても、治療は何も変わりません。治療が変わらない診断は、臨床では半分しか意味がありません。
終わりに:Grade Cは、速く壊れる患者を見逃さないための警告灯です
Grade C歯周炎は、「若い人の歯周病」ではありません。
「旧侵襲性歯周炎の言い換え」だけでもありません。
「%RBL/ageが1.0を超えたら終わり」という計算問題でもありません。
Grade Cとは、通常より速く歯周組織が破壊されている可能性があり、標準治療への反応が読みにくく、メインテナンスでも通常以上の注意を要する患者を拾い上げるための診断概念です。
直接証拠があれば、過去資料から進行速度を読みます。
直接証拠がなければ、%RBL/ageを用います。
しかし、それだけで終わらせません。
年齢、分布、Molar-Incisor pattern、広汎性、プラーク量との不釣り合い、家族歴、喫煙、糖尿病、BOP、残存ポケット、治療反応性、SPTでの安定性を合わせて読みます。
Grade Cと診断したなら、その診断は治療計画に反映されるべきです。再評価を甘くしない。残存ポケットを放置しない。喫煙を雑談で終わらせない。糖尿病を問診票の一項目で終わらせない。SPT間隔を惰性で決めない。
歯周病は、いま何mmのポケットがあるかだけを見る時代ではありません。
どの速度で壊れてきたのか。
なぜその速度で壊れたのか。
これから同じ速度で壊れ続けるのか。
治療介入によって、その速度を変えられるのか。
Grade C歯周炎を診るとは、そこまで読むことです。

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