子どもの歯科トラブルで救急へ 1,108件中73%が歯科の通常診療時間外だった豪州研究|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

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子どもの歯科トラブルで救急へ 1,108件中73%が歯科の通常診療時間外だった豪州研究

子どもの歯科トラブルで救急へ 1,108件中73%が歯科の通常診療時間外だった豪州研究|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

2026年9月17日

子どもの歯科トラブルで救急へ 1,108件中73%が歯科の通常診療時間外だった豪州研究

(受付さんの備忘録)

はじめに

子どもが夕方になって「歯が痛い」と言い始めた。

まだ食事はできている。熱もない。顔も腫れていない。それでも、このまま夜まで様子を見てよいのか、それとも今のうちに歯医者へ連絡した方がよいのか――。

お子さんの歯の症状では、こうした判断に迷うことがあります。

では実際に、子どもの歯科トラブルで病院の救急部を受診したケースは、どのような時間帯に起きているのでしょうか。

2026年、オーストラリアの研究グループが、0〜17歳の子ども・青少年について、南東クイーンズランドにある5つの病院救急部を約6年間調べた研究を報告しました。[1]

研究で、「身近な歯科医院や地域の歯科サービスへ適切な時期につながっていれば、病院救急部への受診を避けられた可能性がある」と分類された非外傷性の歯科関連救急受診は1,108件でした。

そのうち、73.1%が豪州の公的な歯科サービスの通常診療時間外90.9%が本人・家族からの受診80.5%が救急部から帰宅していました。[1]

さらに0〜3歳が33.6%、4〜9歳が37.7%で、9歳以下だけで約7割を占めています。

数字だけを見ると、「やはり歯医者が閉まっているから、子どもが救急へ行くことになるのか」と考えたくなります。

しかし、この論文を詳しく読むと、話はそこまで単純ではありません。

「73%が通常診療時間外だった」ことと、「通常診療時間外だったことが救急受診の原因だった」ことは同じではないからです。

年齢、地域の社会経済状況、病気が進むまでの経過、利用できる歯科医療、家庭が動ける時間などまで考えると、「夜に突然歯が悪くなった子どもが救急へ行った」という説明だけでは足りません。

今回は受付さんの備忘録として、この1,108件を入り口に、子どもの歯科トラブルが病院救急部へたどり着くまでの「その手前」を考えてみます。

まず、この1,108件はどのような研究だったのか

今回紹介するのは、2026年にBMC Oral Healthで公表されたオーストラリアの小児歯科救急に関する研究です。[1]

調査期間は2018年5月1日から2024年6月30日。

南東クイーンズランドの一つの医療圏に属する5つの病院救急部が対象で、0〜17歳の子ども・青少年の診療記録を過去にさかのぼって調べています。

歯をぶつけた・抜けたといった外傷は対象外です

今回の研究は、すべての小児歯科救急を調べたわけではありません。

転倒、スポーツ、事故などによる歯の破折・脱臼といった歯科外傷は除外されています。

対象となったのは、う蝕、歯髄や根の先の病気、歯肉や歯周組織の病気、歯や歯を支える組織のその他の病気、口内炎や口腔粘膜の病気などに分類された非外傷性の歯科関連受診です。[1]

「1,108人」ではなく「1,108件」です

この研究では匿名化された診療データが使われていました。

そのため、同じ子どもが別の日に再び救急部を受診していたとしても、それを同じ人として追跡できませんでした。

したがって、この記事でも「1,108人」ではなく「1,108件の受診」として扱います。

「予防可能」は「親が防げた」という意味ではありません

今回の研究でいう「予防可能」は、「親がもっと早く歯医者へ連れて行けば防げた」という意味ではありません。

歯科医師が1件ずつカルテを詳しく読み、「これは家庭の責任」「もっと早く連れてくればよかった」と判定した研究ではないからです。

診断コードなどを使い、身近な歯科医院や地域の歯科サービスへ適切な時期につながっていれば、病院への受診を避けられた可能性がある状態として分類しています。[1]

つまり、ここでいう「予防可能」は、保護者を責める言葉ではなく、医療の仕組み側から見た分類です。

1,108件中73.1%が「歯科の通常診療時間外」でした

今回の研究で最も目を引くのは、この数字です。

約4件に3件です。[1]

ここでいう「通常診療時間外」とは?

原著でいう「通常診療時間外」は、オーストラリアの公的な歯科サービスが通常診療を行っていない時間帯を指します。

地域にある民間歯科医院すべてが閉まっていたという意味ではありません。

その時間に民間歯科医院が診療していたか、家族が電話をしたか、当日の受け入れを断られたか、そもそも民間歯科を探したか、といったことは調べられていません。

したがって、「73%は歯医者が全部閉まっていた」とは言えません。

73%が「深夜」だったわけでもありません

原著の時間帯別グラフを見ると、受診は深夜だけに集中していません。

平日では16時〜19時59分の区分が大きく、本文でも、午後遅くから夕方早い時間帯に受診件数の山があったと説明されています。[1]

さらに、原著本文には、公的な歯科サービスの「通常診療時間内」と「時間外」を具体的に何時で区切ったのかという時刻は明確に示されていません。

そのため、この記事では「17時以降が73%」「夜間が73%」「深夜救急が73%」とは書きません。

73%だったのに「時間外」は独立した関連因子ではなかった

ここからが、この研究の特に重要なところです。

単純集計では、73.1%が通常診療時間外でした。

ところが、年齢、性別、地域の社会経済状況、病院、受診時の緊急度など、ほかの条件も考えて比較すると、通常診療時間外だったこと自体は、「予防可能」と分類された受診との統計学的に明確な独立した関連を示しませんでした。

通常診療時間外の調整オッズ比は1.21、p値は0.176。

週末の受診も調整オッズ比1.10、p値0.490でした。[1]

「73%」と「明確な関連なし」は矛盾しません

「73%も時間外なのに、どうして時間外との関連がはっきりしないの?」と思うかもしれません。

これは、2つの数字が別の質問に答えているからです。

73.1%は、「この1,108件が、いつ受診したか」という分布を表した数字です。

一方、調整オッズ比1.21は、年齢や地域背景などほかの条件も考慮したあとで、「時間外であること自体が『予防可能』という分類と独立して関連していたか」を見ています。

つまり、「時間外の受診が多かった」ことと、「時間外であること自体が独立した関連因子とは確認できなかった」ことは両立します。

ここを混同すると、「夜間歯科を増やせば、この73%は全部防げる」と話が飛んでしまいます。

今回の研究は、そこまでは示していません。

ほかの条件も考えると、年齢・性別・地域背景との関連が残った

では、ほかの条件を考慮した比較では、どの項目との関連が残ったのでしょうか。

0〜3歳を基準にすると、10〜14歳は調整オッズ比0.54、15〜17歳は0.58でした。

女性は男性と比べて調整オッズ比1.56でした。

また、地域の社会経済状況を5段階に分けて比べると、最も不利な地域に住む子どもは、最も有利な地域と比べて調整オッズ比1.66でした。[1]

「調整オッズ比」とは、年齢や性別など、ほかの条件の影響も考えながら2つの群を比較するための値です。

ただし、「女の子の方が歯科救急になりやすい」と一般化することはできません。

この研究では、なぜ女性で値が高かったのかは明らかにされていません。

また、調整オッズ比1.66を「救急受診率が1.66倍」と読み替えることもできません。

関連がみられたことと、原因が証明されたことも別です。

9歳以下が約7割――豪州全体でも5〜9歳の「予防可能な歯科入院」の人口あたり率が最も高い

今回の1,108件では、0〜3歳が372件・33.6%、4〜9歳が417件・37.7%でした。

合わせると789件で、約71.2%が9歳以下です。

平均年齢は6.83歳、中央値は6歳でした。[1]

では、今回の5つの救急部だけに、小さい子どもの歯科問題が集中していたのでしょうか。

オーストラリア保健福祉研究所の最新全国統計では、2024〜25年に、歯科疾患による「適切な早期治療で防げた可能性のある入院」が約89,200件ありました。[2]

人口1,000人あたりの率が最も高かった年齢層は、5〜9歳の12.5件でした。

ただし、これは人口1,000人あたりの「予防可能な歯科入院」の率です。

今回の1,108件は救急部への受診なので、同じ指標ではありません。

「今回の研究と豪州全国統計で同じことが証明された」とは言えませんが、5〜9歳の歯科疾患が病院医療につながる問題は、今回の一医療圏だけに限られたテーマではないことが分かります。

海外では以前から、子どもの歯科トラブルが救急部に現れている

カナダ・モントリオールの小児病院で、2004〜2013年の10年間を調べた研究では、1〜17歳の歯科関連救急受診10,905件が分析されました。[3]

受診者は6歳未満が多く、歯科受診理由の約43%がう蝕関連でした。

また、今回と同じ南東クイーンズランドでは、2008〜2010年に公的な口腔保健クリニックへ来た子どもの急患を調べた研究があります。

そこでは月平均196件の急患があり、その74〜75%がう蝕関連でした。[4]

ただし、こちらは病院救急部ではなく、歯科クリニックの急患です。

数字を直接比較することはできませんが、南東クイーンズランドでは以前から、小児のう蝕やその関連病態が急患歯科医療の大きな負担となってきた背景があります。

歯科へ行きにくくなると、病院救急部へ患者が移ることはあるのか

今回の73.1%を見ると、「歯科の通常診療が終わっていたから病院へ流れたのでは?」という疑問が浮かびます。

今回の豪州研究だけでは、その因果関係は証明できません。

ただし、歯科診療へのアクセスが実際に大きく制限された前後を比較した別の研究があります。

米国の小児病院で、0〜17歳の歯科関連受診811人を調べ、新型コロナウイルス感染症によって大規模な小児歯科診療所が閉鎖された前・閉鎖中・再開後を比較した研究です。[5]

病院救急部の全受診に占める歯科関連受診の割合は、閉鎖前0.4%、閉鎖中0.7%、再開後0.6%でした。

閉鎖中には閉鎖前より明らかに高くなり、原著では約2倍と報告されています。[5]

ただし、この時期には関連する急患診療所の一部でも閉鎖や診療体制の変更がありました。

したがって、この研究も小児歯科診療所の閉鎖だけが受診増加の原因だったと証明したものではありません。

それでも、通常の歯科診療へつながりにくくなったとき、歯科関連患者が病院側へ移る可能性を考えるための重要な資料です。

そして今回の豪州研究では、通常診療時間外での受診が多かった一方、時間外であること自体は調整後の明確な独立関連因子ではありませんでした。

両方を合わせて考えると、歯科へのアクセスは重要ですが、「診療時間」一つだけで歯科救急を説明することもできないと考えるのが適切です。

今回の6年間には新型コロナによる医療の混乱も含まれています

今回の調査期間は2018〜2024年です。

つまり、新型コロナウイルス感染症による歯科診療の制限や、患者さんの受診行動が大きく変わった時期をまたいでいます。

原著でも、感染拡大期に歯科関連の救急受診が増え、その後も明確に元へ戻らなかった可能性について考察しています。[1]

ただし、これも新型コロナだけが原因だったと証明したものではありません。

診療所の休止、受診控え、治療の延期、家族の生活環境の変化など、複数の要因が重なった可能性があります。

90.9%は本人・家族からの受診でした

紹介元を見ると、本人・家族からの受診が1,007件・90.88%、一般医からの紹介が55件・4.96%、その他が46件・4.15%でした。[1]

来院手段では、徒歩・自家用車などが1,064件・96.03%で、救急車は43件・3.88%でした。

しかし、「90.9%=歯医者を探さず直接救急部へ行った」ではありません。

その前にどこへ電話したのか、歯科の予約が取れなかったのか、民間歯科を利用できなかったのか、家族が最初から病院を選んだのかは、この研究では分かりません。

「なぜ病院を選んだのか」を保護者に聞いた研究もあります

カナダでは、10歳未満の子どもの非外傷性歯科トラブルについて、実際に病院救急部を選んだ保護者15人へ詳しく聞き取った研究があります。[6]

そこでは、家庭の考え方、社会経済的な困難、地域で子どもの歯科診療を探す際の障壁などが浮かび上がりました。

著者らは、病院救急部が「歯科治療に最適だから選ばれた」というより、地域でほかの選択肢を見つけられず、最後の受け皿になっていたと報告しています。[6]

もちろん15人への聞き取り研究なので、すべての家庭に当てはめることはできません。

それでも、「病院へ来た=保護者が歯医者を選ばなかった」と単純化しないためには重要な資料です。

80.5%が帰宅――でも「救急へ行く必要がなかった」とは言えません

1,108件の転帰を見ると、帰宅892件・80.51%、短期滞在病床143件・12.91%、入院54件・4.87%、他院への転送12件・1.08%でした。[1]

「8割が帰れたなら、救急へ行く必要はなかったのでは?」と思うかもしれません。

しかし、その解釈はできません。

救急部で使われた5段階の緊急度分類では、カテゴリー2が73件・6.59%、カテゴリー3が546件・49.28%、カテゴリー4が443件・39.98%、カテゴリー5が46件・4.15%でした。

研究者が2群にまとめた分類では、「緊急度が高い群」が619件・55.87%でした。[1]

つまり、「帰宅した」ことと「最初から緊急性がなかった」ことは別の情報です。

また原著では、帰宅した892件が、具体的にどのような診察や処置を受けたうえで帰宅したのかを一件ずつ示していません。

80.5%という帰宅率から「80.5%は救急受診不要だった」と逆算することもできません。

原著の中にも、緊急度をめぐる読み取りにくさがあります

ここは論文を読むうえで見落としたくない点です。

先ほどの表では、研究者がまとめた分類で55.9%が緊急度の高い群です。

ところが論文の考察部分では、高い本人・家族受診率と低い入院率などを理由に、「多くは緊急性の低い状態だった」という趣旨の説明もされています。[1]

この2つは、少なくとも数字だけを見れば素直には完全に一致しません。

そのため本記事では、著者の考察文だけを取り上げて「多くは救急へ行く必要がなかった」とは解釈しません。

救急部での滞在時間は中央値2時間18分でした

今回の1,108件では、救急部での滞在時間は中央値2時間18分、平均2時間43分でした。[1]

救急部は、歯科医院の予約診療とは役割が違います。

命や全身状態に関わる患者さんも含めて緊急度を判断し、必要性の高い医療を優先して提供する場所です。

ニュージーランドでも73%が通常勤務時間外でした

ニュージーランドのクライストチャーチ病院で、2020年の非外傷性歯科関連救急931件を調べた研究では、73%が通常勤務時間外でした。[7]

さらに、歯そのものへの根本的な処置まで受けたケースは5人に1人未満でした。

ただし、この研究の中央値年齢は31歳で、成人が中心です。

したがって、「豪州小児研究の73.1%が別の小児研究でも再現された」とは言えません。

言えるのは、歯科の通常診療時間外に非外傷性の歯科トラブルが病院救急部へ現れる現象は、今回の豪州小児研究だけで報告されているわけではないというところまでです。

約半数を占めたのは「歯髄・根の先の病気」と「歯・支持組織のその他の病気」

診断分類を見ると、K08「歯および歯を支える組織のその他の障害」が288件、K04「歯髄および根尖周囲組織の疾患」が260件でした。

合わせると548件で、1,108件の49.5%です。

一方、K02「う蝕」は66件でした。[1]

著者らは、この分布について、単純な初期う蝕そのものより、膿瘍や強い痛みなど、急性化・進行後に現れやすい状態が救急部へ多く現れていると解釈しています。

ただし「49.5%が重症虫歯」ではありません

K04は歯髄や根の先の病気なので、深いう蝕から歯髄炎や根尖周囲の炎症・感染へ進んだ状態なども含まれます。

しかしK08は、「歯および歯を支える組織のその他の障害」という幅の広い分類です。

したがって、「K04+K08=49.5%だから、半数が重症虫歯だった」とは言えません。

また対象には、口内炎関連疾患や口唇・口腔粘膜の病気も含まれています。

「歯科関連救急=全部虫歯」と考えるのも正確ではありません。

社会経済的に不利な地域からの受診が多かった

今回の研究では、患者さんの居住地域を社会経済状況によって5段階に分けて比較しています。

最も不利な地域からの受診は468件、最も有利な地域からは116件でした。[1]

ほかの条件も考慮した比較でも、最も不利な地域は最も有利な地域と比べて調整オッズ比1.66でした。

しかし、これを「低所得家庭は1.66倍救急へ行く」と書くことはできません。

この研究で使われた社会経済指標は、個々の家庭の年収ではなく、郵便番号をもとにした地域全体の特徴を表すものだからです。[12]

オーストラリア統計局も、この指標を一人ひとりの経済状況へそのまま当てはめるべきではないと説明しています。[12]

地域の数字と、その地域に住む一つの家庭の事情は同じではありません。

西オーストラリアの351件でも地域による違いがみられた

西オーストラリアの小児病院で、予定外の歯科受診351件を調べた別研究があります。[8]

社会経済的に不利な地域から来た子どもの予定外受診では、約3分の2が歯性感染を理由としていました。

一方、より社会経済的に有利な地域では、外傷が主な受診理由でした。

また、不利な地域から来た子どもでは、以前に同じ病院を別の医学的問題で利用していた割合も高くなっていました。[8]

今回の1,108件とは、病院も対象疾患も分類方法も異なるため、割合を直接比較することはできません。

それでも、地域の社会経済的背景と、歯科疾患が感染・急性症状として病院へ現れることとの関係は、別の豪州小児研究でも問題になっています。

治療費への支援は受診を後押しする可能性がある

オーストラリアには、対象となる子どもの歯科治療費を公的に支援する制度があります。

豪州の長期追跡データを用いた研究では、この制度の導入は、低所得世帯群の子どもの歯科受診率が8%増加することと関連していました。95%信頼区間は1〜15%でした。[9]

これは8ポイント増えたという意味ではありません。

また、この研究も観察研究なので、制度だけが受診増加の原因だったと断定することはできません。

それでも、費用面の支援が歯科受診を後押しする可能性を考える材料にはなります。

一方で、歯科へのアクセスは費用だけで決まりません。

通える場所に歯科医院があるか。家庭が動ける時間に開いているか。予約が取れるか。子どもが診察や治療を受けられるか。保護者が仕事を休めるか。交通手段があるか。利用できる制度を知っているか。

こうした条件も重なります。

今回の問題は、「夜間診療を増やせば全部解決」「保護者の意識だけの問題」「治療費だけの問題」のどれか一つでは説明しにくいのです。

5病院のうち1施設だけで約60%を占めていた

今回の1,108件は、5つの病院へ均等に分かれていたわけでもありません。

5病院のうち1施設だけで662件、59.75%を占めていました。[1]

著者らは、この病院が担当する地域に、経済的困難、失業、住居の不安定さなどを抱える家庭が比較的多いことを背景の一つとして挙げています。

しかし同時に、この病院は研究対象地域の中で小児医療を最も多く担う病院でもありました。

つまり、「社会経済的に不利な地域だから60%集まった」とだけ説明することもできません。

病院の規模、小児診療機能、地理、交通、地域の医療配置などによっても、一つの施設へ患者さんが集まりやすくなることがあります。

「受診が遅れた=親が放置した」とは考えない

歯科疾患がかなり進んでから子どもが受診すると、「どうしてもっと早く歯医者へ連れて行かなかったのだろう」と思ってしまうことがあります。

しかし、子どもの歯科受診には家庭の生活背景が影響します。

日本の小児歯科学雑誌に掲載された症例報告でも、多数のう蝕がある子どもの背景として、保護者がう蝕に気づいていても、仕事や家庭の事情で歯科医院を受診することが難しい場合があると論じられています。[11]

また、2005年の日本の全国調査データを用いた研究でも、口腔の健康格差を本人の努力だけで考えず、生活環境や社会的な背景を含めて考える必要性が示されています。[10]

今回の豪州研究でも、保護者の仕事、家庭環境、子どもの歯科への恐怖、民間歯科の利用歴、なぜ病院救急部を選んだのか、といった情報は取得されていません。

ですから、「受診が遅れた」ことと「保護者が放置した」ことは同じではありません。

「連れてこない」と「連れてこられない」の違いやデンタルネグレクトについては、小児の多発う蝕はデンタルネグレクトのサインか?未治療歯・受診中断・養育環境から考える児童虐待の境界でも詳しく整理しています。

この73%を日本や広島へそのまま当てはめてはいけない

今回の研究は、オーストラリア全体を対象とした研究ではありません。

クイーンズランド州南東部の一つの医療圏を対象としています。

研究地域には、病院、地域、学校、移動診療車を合わせて17の公的な歯科診療拠点があり、子どもが利用するための制度もあります。[1]

日本では国民皆保険制度があり、多くの民間歯科医院が地域の歯科医療を担っています。

診療時間、保険制度、子どもの医療費助成、休日診療体制も異なります。

したがって、「日本でも73%」「広島でも73%」とは言えません。

豪州の数字をそのまま日本へ移すのではなく、「歯科へつながれる時間や制度が違えば、歯科トラブルがどこへ流れるかも変わる」という問題として読むべき研究です。

原著を読むうえで、さらに注意したい点があります

比較解析の対象人数が本文から追いにくい

論文本文では、研究期間中の救急部受診280,786件から、1,108件の「予防可能な可能性がある小児歯科関連受診」を抽出したと書かれています。[1]

ところが比較解析を示した表2では、性別の総数が男性854件+女性705件=1,559件、診療時間でも437件+1,122件=1,559件となっています。

年齢区分を合計すると1,558件です。

つまり表2には、1,108件以外の比較対象群も含まれています。

ただし、その比較対象群がどのような流れで抽出されたのかは、論文の研究方法の記載だけでは十分追いやすいとは言えません。

これは「論文の誤り」と断定する話ではありません。

ただ、調整オッズ比を必要以上に精密な因果関係として扱わない理由の一つにはなります。

豪州の全国統計で使われる診断コードとも完全には同じではない

今回の研究で対象にした診断コードは、K02、K04、K05、K06、K08、K12、K13です。[1]

一方、豪州の全国的な「予防可能な歯科入院」の定義には、これらに加えてK03、K09.8、K09.9、K14.0も含まれています。[13]

原著がなぜ今回の一部のコードだけを採用したのかは、本文からは明確ではありません。

さらに、豪州の全国指標は本来「入院」を対象とする指標です。

今回の研究では、その考え方を病院救急部への受診にも広げて使っています。

この違いも、豪州全国統計と今回の1,108件を同じ指標として直接比べない理由です。

それでも、日本の私たちがこの研究から学べること

豪州の73.1%を日本へそのまま当てはめることはできません。

では、日本の患者さんには関係のない研究なのでしょうか。

そうではありません。

受付の立場から最も大切だと思うのは、「症状がかなり強くなってからでないと歯科へ相談してはいけないわけではない」ということです。

例えば日中に、「少し痛いと言っている」「片側でしか噛まない」「昨日から歯ぐきが少し腫れている」「冷たいものを嫌がる」「食べるのが遅くなった」と気づいたとします。

その時点で、「今日受診すべきか」「明日でもよいのか」「そもそも歯科なのか」を、ご家庭だけで完全に判断する必要はありません。

歯科医院へ相談できる時間帯なら、現在の症状を伝えて受診時期を相談するという選択肢があります。

これは、「少しでも変化があれば救急受診してください」という意味ではありません。

通常の歯科へ相談できる時間に相談できるものは相談しておき、本当に夜間・休日に急変した場合には、その時間帯と症状に合った医療を利用する。

その使い分けが大切です。

子どもの予約では、詳しい診断名が分からなくても大丈夫です

「虫歯だと思います」「神経までいっています」「膿がたまっています」と、ご家庭で診断する必要はありません。

受付では、お子さんの年齢、どのあたりを痛がっているか、いつからか、腫れや発熱があるか、食事や睡眠に影響しているか、ぶつけた・転んだなどの外傷があったか、といった分かっている事実が重要です。

子どもの歯科予約で伝えていただきたい内容は、子どもの歯医者予約で何を伝える?年齢・症状・泣きやすさを受付に伝えるコツでも詳しくまとめています。

ブランデンタルクリニックでは、急な症状は電話でご相談ください

ブランデンタルクリニックは、広島市中区立町、立町駅徒歩1分の立町中央ビル4階です。

4階まではエレベーターをご利用いただけます。

通常のご予約はWEB・LINE・電話から受け付けていますが、急な歯痛、歯ぐきや顔の腫れ、子どもが急に食べられなくなった、「今日診てもらった方がよいか分からない」といった場合は、電話でのご相談をおすすめしています。

当日電話受付が可能で、急患の同日相談にも可能な範囲で対応しています。

ただし、その日の予約状況や症状によっては待ち時間が生じたり、まず応急的な処置を優先したりすることがあります。

「今日電話すれば、必ずその日のうちにすべての治療が終わる」という意味ではありません。

それでも、「まだ我慢できるから連絡しない」ではなく、「この症状ならいつ受診した方がよいか分からない」という段階で相談していただいて大丈夫です。

広島市中区で当日診てもらえる歯科を探すときの考え方は、広島市中区で「今日診てもらえる歯医者」を探す方へでも整理しています。

日曜・祝日に歯科トラブルが起きたら

日曜・祝日でも通常診療している歯科医院や、かかりつけ歯科医院へ連絡できる場合は、まずその日の受け入れが可能かを確認しましょう。

通常の歯科医院へつながらない場合の休日歯科急患診療として、広島市では広島口腔保健センターが案内されています。[14][15][16]

現在の案内では、相談受付時間は9時〜15時です。

広島県歯科医師会は、ここで行われるのは緊急的な応急処置であり、その後はかかりつけ歯科医院を受診するよう案内しています。[16]

診療日や体制は変更されることがありますので、受診前には必ず最新情報を確認し、可能な範囲で電話確認をしてください。

日曜・祝日の受診先については、広島市中区で日曜・祝日に歯医者を探す方へ|受診前に確認したい注意点でも詳しくまとめています。

夜間に「今すぐ受診か、朝まで待てるか」で迷ったら

広島市では、救急相談センター#7119が毎日24時間対応し、現在受診できる医療機関の案内などを行っています。[14]

また、お子さんの夜間の急病については#8000があります。

現在の相談受付時間は、平日が19時〜翌朝8時、土曜・日曜・祝日・年末年始が17時〜翌朝8時です。[14][15]

相談後に医療機関を受診する場合も、可能な範囲で事前に電話確認をしてから向かいましょう。

歯科の通常予約だけでなく、緊急対応も考えたい症状があります

歯が原因と思われる症状でも、顔や首の腫れが急速に広がる、強い顔面腫脹がある、唾液を飲み込みにくい、飲み込むと強く痛む、呼吸が苦しい、舌や口の底が大きく腫れているといった場合は、通常の歯科予約だけで考えない方がよいことがあります。

クイーンズランド州保健当局の歯性感染に関する診療資料でも、著しい顔面腫脹、首の腫れ、嚥下困難、唾液を飲み込めない状態、呼吸困難、舌の挙上、気道への影響などが重い所見として挙げられています。[17]

特に呼吸が苦しい、意識状態がおかしい、急速に全身状態が悪くなっているといった場合には、119を含む緊急対応も検討してください。

「救急車を呼ぶべきか」「今すぐ受診すべきか」で迷う場合は、地域の救急相談も利用できます。

また、今回紹介した1,108件の研究は歯科外傷を除外しています。

歯が抜けた、歯が大きく折れた、顔面を強く打ったといった外傷は、今回の73.1%とは別に緊急度を判断する必要があります。

今回の研究の限界

今回の結果は興味深いものですが、「1,108件を調べたから結論は確定」と考えてはいけません。

過去の診療記録を使った観察研究なので、原因と結果を証明することはできません。

行政・電子カルテデータには、診断コードの誤り、記録漏れ、分類のずれが含まれる可能性があります。

同じ子どもの再受診を識別できず、社会経済状況も個々の家庭の所得ではなく、居住地域から割り当てています。

保護者の仕事、家庭環境、民間歯科の利用、過去の歯科受診、子どもの歯科への恐怖、なぜ病院救急部を選んだのか、といった情報もありません。

一つの都市圏医療システムの5病院を対象とした研究であり、新型コロナウイルス感染症による医療の混乱期も含まれています。

また、事前に必要症例数を計算した研究ではなく、結果が条件を変えても同じように出るかを確かめる追加解析も行われていません。[1]

さらに、先ほど触れた比較解析の対象人数や診断コードの範囲など、原著の記載だけでは読み取りにくい点もあります。

だからこそ、「73%」という一つの数字だけを切り出して、日本の夜間歯科や保護者の行動を評価しないことが大切です。

よくある質問

Q. 73%ということは、日本でも子どもの歯科救急の多くが夜間なのですか?

いいえ。

今回の73.1%は、オーストラリア・南東クイーンズランドの一つの医療圏で観察された数字です。

しかも「夜間」ではなく、豪州の公的な歯科サービスの通常診療時間外です。

日本や広島へ73%をそのまま当てはめることはできません。

Q. 73%が時間外なら、夜間歯科を増やせば解決するのでは?

夜間の歯科アクセスは重要な論点です。

ただし今回の比較解析では、通常診療時間外そのものは、ほかの条件を考慮した後の明確な独立関連因子にはなりませんでした。

したがって、「夜間診療を増やせば73%を防げる」とは言えません。

Q. 80.5%が帰宅したなら、救急へ行かなくてもよかったのですか?

そうとは言えません。

帰宅したという転帰と、受診時に医療的な評価が必要だったかどうかは別です。

今回の研究では、緊急度が高い群に分類された受診も55.9%ありました。

Q. 約半数が重症虫歯だったのですか?

正確には違います。

49.5%は、K04「歯髄・根尖周囲組織の疾患」とK08「歯・支持組織のその他の障害」を合わせた割合です。

K08は幅の広い診断分類なので、「49.5%が重症虫歯」と言い換えることはできません。

Q. 子どもが少し歯を痛がる程度でも電話してよいですか?

受診時期をご家庭だけで判断しにくい場合は、診療時間中に歯科医院へ相談して構いません。

詳しい診断名を考える必要はありません。

年齢、どのあたりを痛がるか、いつからか、腫れ・発熱・外傷の有無など、分かる範囲で伝えてください。

Q. 夜に子どもが歯を痛がったら、必ず病院救急部へ行くべきですか?

症状によって異なります。

歯の痛みだけなのか、急速な顔面・首の腫れ、発熱、飲み込みや呼吸への影響、外傷などがあるのかで緊急度は変わります。

広島では、夜間の子どもの急病について#8000、受診先などの相談について#7119という窓口もあります。

まとめ 重要なのは「73%」より、その前に何が起きていたか

今回の豪州研究では、0〜17歳の非外傷性歯科関連救急受診のうち、身近な歯科医院や地域の歯科サービスへ適切な時期につながっていれば病院受診を避けられた可能性があると分類された1,108件について、73.1%が歯科の通常診療時間外90.9%が本人・家族からの受診80.5%が救急部から帰宅していました。

そして約71%が9歳以下でした。

しかし、ほかの条件まで考慮した比較では、通常診療時間外だったこと自体だけで説明できる結果ではありませんでした。

別の研究を重ねると、歯科へつながりにくくなった時期には病院側の歯科関連受診が増えること、社会経済的に不利な地域では歯性感染による予定外受診が多いこと、治療費への支援が受診を後押しする可能性があることも分かっています。

子どもの歯科救急は、「夜に突然痛くなった」だけの問題ではありません。

病気が進むまでの時間。

歯科へつながれる時間。

家庭が動ける時間。

地域の医療資源。

利用できる制度。

子どもの年齢。

そうしたものが重なった先で、病院救急部が最後の受け皿になることがあります。

受付からお伝えしたいのは、子どもの歯の症状は、限界まで強くなってから初めて相談するものではないということです。

「今日診てもらうほどなのか分からない」という段階でも、歯科医院へ相談できる時間なら、まず状況を伝えて受診時期を相談できます。

そして本当に夜間・休日に急変したときには、その時間帯に使える医療を利用する。

今回の1,108件から考えたいのは、「救急へ行くか、行かないか」という二択だけではなく、その前に子どもを歯科医療へつなげられる機会をどう作るかということです。

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