Sjögren病(シェーグレン病)の口腔ケア:朝・食前・就寝前に分けるドライマウス対策|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

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Sjögren病(シェーグレン病)の口腔ケア:朝・食前・就寝前に分けるドライマウス対策

Sjögren病(シェーグレン病)の口腔ケア:朝・食前・就寝前に分けるドライマウス対策|広島市中区立町の歯医者(紙屋町、八丁堀、袋町からすぐで通いやすい)|ブランデンタルクリニック|土曜日、日曜日、祝日診療

2026年8月03日

Sjögren病(シェーグレン病)の口腔ケア:朝・食前・就寝前に分けるドライマウス対策

(歯科衛生士さんのある日の日誌)

はじめに

メンテナンスをしていると、Sjögren病の患者さんから、こんな相談を受けることがあります。

「夜中に何度も口が乾いて、水を飲むんです」

「朝は舌が上顎にくっついて、すぐには話せません」

「パンやお肉が口の中に張りつくので、食事のたびに水で流し込んでいます」

「寝る前は、歯磨きと保湿ジェルのどちらを先にすればよいのでしょうか」

水分補給も保湿剤も続けているのに、朝の張りつき、食べにくさ、夜間の乾燥が十分に改善しない方は少なくありません。

そのようなとき、私はまず、

「Sjögren病の口腔ケアは、一日中同じ方法を繰り返せばよいわけではありません。朝、食事の前、寝る前では、ケアの目的が少しずつ違うんです」

とお話しします。

対策のポイント

朝は、夜間に乾いた粘膜を傷つけず、口を動かせる状態へ戻します。

食前は、食べ物を湿らせ、噛んで一つにまとめ、飲み込む準備をします。

就寝前は、歯垢を落としてフッ化物を歯へ残し、その後に保湿剤で粘膜を守ります。

同じ「口が乾く」という症状でも、必要な対策は時間帯によって異なります。

Sjögren病では、唾液の量だけでなく「口を守る働き」も低下します

Sjögren病は、以前から「シェーグレン症候群」とも呼ばれてきた全身性の自己免疫疾患です。

免疫の働きが自分自身の涙腺や唾液腺などへ向かうことで、目や口の乾燥をはじめ、さまざまな症状が現れます。

口の中では、唾液腺の働きが低下することによって、口腔乾燥、食べにくさ、飲み込みにくさ、味覚の変化、むし歯、口腔カンジダ症などが起こりやすくなります。

ただし、唾液は単に口の中を濡らしている水分ではありません。

唾液には、次のような働きがあります。

  • 舌や頬を滑らかに動かす
  • 食べ物を湿らせ、一つの塊にまとめる
  • 会話や飲み込みを助ける
  • 歯や粘膜に残った食べかすを洗い流す
  • 口の中の酸を中和する
  • カルシウムやリン酸を供給し、歯の再石灰化を助ける
  • 細菌や真菌が増えすぎるのを抑える
  • 味の成分を溶かし、味を感じやすくする

Sjögren病では、唾液の量だけでなく、このような「口を守る働き」も弱くなります。

水分補給は、口の不快感を一時的に和らげるために役立ちます。しかし、水だけでは、唾液が持つ潤滑、洗浄、酸の中和、再石灰化、抗菌といった働きを完全には補えません。

また、水分補給は、フッ化物配合歯磨剤によるむし歯予防の代わりにもなりません。

そのため、Sjögren病の口腔ケアでは、

  • 水分を補給する
  • 唾液を出せる方は分泌を促す
  • 足りない潤いを保湿剤で補う
  • フッ化物で歯を守る
  • 粘膜の病変を見逃さない

という複数の対策を組み合わせます。

Sjögren病の唾液腺で起きている免疫反応については、院長の徒然コラム[唾液腺は自己免疫の現場です――Sjögren病の口腔乾燥をRo60とT細胞・B細胞の連鎖から考える]でも詳しく解説しています。

朝のルーティン――乾いた口を傷つけずに目覚めさせる

朝の口腔ケアの目的は、夜間に乾燥した口を、食事や歯磨きができる状態へ戻すことです。

唾液の分泌量は、睡眠中に少なくなります。

そこへ、Sjögren病による唾液分泌の低下、口呼吸、鼻づまり、暖房や冷房、寝室の乾燥などが重なると、起床時の口は一日の中でも特に乾きやすくなります。

起きたら、すぐに磨く前に口の状態を確認します

起床時の乾燥が強い方は、歯ブラシを口へ入れる前に、舌、頬、唇を確認してみてください。

  • 舌が上顎へ張りついている
  • 頬の内側が歯へ張りついている
  • 唾液が泡状になっている
  • 唾液が糸を引くように粘ついている
  • 唇や口角が切れている
  • 舌や口蓋が赤くなっている
  • 舌の表面が平らになっている
  • 舌に深い溝ができている
  • 白い膜や苔のようなものが付いている
  • 朝に強い苦味や口臭を感じる
  • 義歯が粘膜に当たって痛い
  • 夜中に何度も水を飲んでいる

毎朝、すべてを詳しく確認する必要はありません。

「いつもより張りつきが強い」

「口角がまた切れている」

「舌のヒリヒリが数日続いている」

といった変化に気づくだけでも、歯科医院や主治医へ相談するときの重要な情報になります。

乾いた粘膜へ、いきなり歯ブラシを当てないようにします

乾燥した粘膜は、摩擦に弱くなっています。

舌や頬が張りついたまま、硬い歯ブラシを勢いよく動かすと、粘膜に小さな傷ができたり、ヒリヒリ感が強くなったりすることがあります。

起床時の乾燥が強い方は、まず少量の水を口に含み、舌と頬をゆっくり動かします。

張りつきが強い場合は、低刺激の保湿スプレーや液体タイプの口腔保湿剤を少量使用してもよいでしょう。

口が動かしやすくなってから、朝食や歯磨きへ進みます。

大量の水で何度もうがいする必要はありません。大切なのは、乾いた粘膜を急にこすらず、少しずつ動かせる状態へ戻すことです。

朝食前は「食べる準備」、朝食後は「歯を守るケア」

起床直後に口が乾いている方は、朝食前の保湿と、朝食後の歯磨きを分けて考えると分かりやすくなります。

朝食前には、少量の水や口腔保湿剤で口を湿らせ、舌や頬が動く状態へ整えます。これは、食べ物を噛んで飲み込むための準備です。

朝食後には、フッ化物配合歯磨剤を使用して、歯垢を落としながら歯を守ります。

つまり、

朝食前は、食べるための保湿。
朝食後は、むし歯を防ぐための歯磨き。

という役割分担です。

起床後すぐに歯を磨く習慣があり、無理なく続けられている方は、必ずしも順番を変更する必要はありません。

ただし、成人では、就寝前を含めて1日2回、1400~1500ppmFのフッ化物配合歯磨剤を適量使用し、磨いた後にすすぎすぎないことが大切です。

朝の乾燥が強いときは、眠っている間の環境も確認します

Sjögren病があっても、朝の強い乾燥をすべて病気だけで説明できるとは限りません。

次のような要因が重なると、夜間の乾燥がさらに強くなります。

  • 鼻づまり
  • 花粉症やアレルギー性鼻炎
  • いびき
  • 睡眠中の口呼吸
  • 睡眠中に口が開いている
  • CPAPや口腔内装置の使用
  • 寝室の低湿度
  • 暖房や冷房の風
  • 就寝前の飲酒
  • 口腔乾燥を起こしやすい薬剤

特に、

  • 朝だけ極端に口が乾く
  • 夜中に何度も乾燥で目が覚める
  • 家族から大きないびきや呼吸停止を指摘される
  • 起床時に頭痛がある
  • 日中の眠気が強い

という場合は、保湿剤を増やすだけでなく、鼻呼吸や睡眠の状態も確認したほうがよいことがあります。

ただし、朝に口が乾くという症状だけで、睡眠時無呼吸症候群と診断することはできません。

食前のルーティン――食べ物を噛み、まとめ、飲み込める口を作る

食前の口腔ケアは、むし歯予防を主な目的とする時間ではありません。

この時間の目的は、食べ物を口へ入れたときに、噛み、舌でまとめ、喉の奥へ送りやすい状態を作ることです。

唾液が少ないと、食べ物を一つの塊にまとめにくくなります

唾液が十分にあると、噛み砕かれた食べ物は湿り気を帯び、一つの塊になります。この塊を舌で喉の方向へ運ぶことで、滑らかに飲み込めます。

ところが、口が乾いていると、食べ物がばらばらのまま残りやすくなります。

パンやクラッカーは上顎へ張りつき、肉や焼き魚は口の中でまとまりにくくなります。ご飯が頬の内側へ残り、何度も水で流し込まなければ飲み込めないこともあります。

その結果、食事時間が長くなり、味を楽しみにくくなり、食事そのものが疲れる時間になってしまうことがあります。

Sjögren病の口腔ケアは、歯を守るだけでなく、「食べる楽しみを守るケア」でもあります。

食事の前に、口を少し湿らせます

食事前には、少量の水で口を湿らせ、舌と頬を動かしてみましょう。

乾燥が強ければ、液体タイプやスプレータイプの口腔保湿剤を少量使用します。

食べ物の味を妨げたり、口の中がべたついたりしない量から試してください。

食事前の基本的な流れは、次のようになります。

  1. 舌や口角に傷や痛みがないか確認する
  2. 少量の水や保湿剤で口を湿らせる
  3. 舌を前後左右へゆっくり動かす
  4. 頬を膨らませたり、顎を軽く動かしたりする
  5. 食事中に使う汁物や飲み物を準備する

頬や舌を大きく動かすのが難しい場合は、無理に運動する必要はありません。

痛みが出ない範囲で口を開閉し、舌を軽く動かすだけでも構いません。

「唾液を出すケア」と「唾液を補うケア」は違います

Sjögren病の口腔乾燥対策には、大きく分けて二つの考え方があります。

一つは、残っている唾液腺の機能を刺激して、唾液を出すケアです。

もう一つは、不足している潤いを、人工唾液や口腔保湿剤で補うケアです。

唾液を出すケアには、次のようなものがあります。

  • よく噛む
  • 無糖ガムを噛む
  • シュガーレスタブレットを利用する
  • 唾液腺をやさしくマッサージする
  • 医師から処方された唾液分泌促進薬を使用する

唾液を補うケアには、次のようなものがあります。

  • 人工唾液
  • 保湿スプレー
  • 液体タイプの口腔保湿剤
  • 保湿ジェル

ただし、刺激すれば全員の唾液が十分に増えるわけではありません。

唾液腺の機能がある程度残っている方では、咀嚼や味覚刺激によって唾液が増えることがあります。一方、唾液腺機能が大きく低下している方では、何度刺激しても十分な唾液が出ず、人工唾液や保湿剤で補うほうが実用的なことがあります。

保湿スプレー、液体保湿剤、保湿ジェル、人工唾液には、それぞれ使用感や持続時間の違いがあります。

すべての患者さんに最適な一つの製品が決まっているわけではありません。刺激の少なさ、味、粘度、持続時間、持ち運びやすさなどを見ながら選びます。

唾液腺が腫れているときは、強く揉まないでください

唾液腺マッサージは、唾液腺の機能が残っている方に役立つことがあります。

ただし、

  • 耳の前や顎の下が腫れている
  • 強く痛む
  • 熱を持っている
  • 発熱がある
  • 片側だけ腫れが続いている

という場合は、自己流で強く揉まないでください。

唾液腺の炎症や感染などが起きている可能性があるため、歯科または主治医へ相談します。

唾液分泌促進薬は、自己判断で増減しません

Sjögren病では、ピロカルピンやセビメリンなどの唾液分泌促進薬が処方されることがあります。

これらの薬は、唾液腺の機能がある程度残っている方では、口腔乾燥の改善に役立つことがあります。

一方で、効果には個人差があり、

  • 発汗
  • ほてり
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 下痢
  • 頻尿
  • 動悸

などが問題になることもあります。

服用回数や服用時間を自己判断で変更せず、乾燥が強い時間帯や副作用の内容を処方医へ伝えてください。

酸っぱい飴を、一日中なめ続けないようにします

「レモン味の飴をなめると唾液が出るので、いつも口に入れています」

Sjögren病の患者さんから、よく伺うお話です。

酸味によって一時的に唾液が出ることはあります。しかし、唾液が少ない口では、酸を洗い流して中和する力も弱くなっています。

酸っぱい飴、柑橘類、梅干し、酢を使った食品、酸性飲料などを頻回に口へ入れると、歯が酸へさらされる時間が長くなります。

糖分を含む飴であれば、むし歯のリスクも加わります。

大切なのは、

唾液が出ることと、歯に安全であることは同じではない

という点です。

歯への影響を考えると、摂取した量だけでなく、糖や酸が口へ入る回数も重要です。

乾燥を感じるたびに糖入りの飴や酸性飲料を口へ入れると、歯が酸性環境へさらされる機会が増えてしまいます。

普段の水分補給は、水や無糖で酸性度の低い飲み物を基本にします。

ガムやタブレットを使う場合も、無糖で、酸味の強すぎないものを選びましょう。

無糖だからといって、酸性の製品が歯へ全く影響しないわけではありません。

無糖飲料と酸蝕症の関係については、[無糖炭酸飲料でも歯は溶ける?プレーン炭酸水との違いと酸蝕症を防ぐ飲み方]も参考にしてください。

口だけでなく、料理の側も湿らせます

口が乾いているとき、食事のたびに大量の水で流し込むことだけが対策ではありません。

食べ物そのものへ水分を加えると、口の負担を減らせます。

  • パンはスープ、牛乳、ヨーグルトなどと組み合わせる
  • 肉や魚にはソース、あん、煮汁を加える
  • ご飯は汁物と一緒に少量ずつ食べる
  • パサつく食品は一口を小さくする
  • 熱すぎる物を避ける
  • 辛い物や塩味・酸味の強い物を控える
  • 粘膜が痛む日は、硬い物や尖った食品を避ける

ただし、次のような症状がある場合は、単なる口腔乾燥だけでなく、飲み込みの機能も確認する必要があります。

  • 食事中によくむせる
  • 飲み込んだ後に咳が出る
  • 食後に声が濁ったように変わる
  • 食事に極端に時間がかかる
  • 食べる量が減った
  • 体重が減ってきた
  • 錠剤が飲み込みにくい

水で流し込めば食べられるから大丈夫、と考えず、歯科や医科へ相談してください。

味が薄くても、すぐに塩や砂糖を増やさないようにします

唾液が少なくなると、味の成分が溶けにくくなり、味を感じにくくなることがあります。

Sjögren病では、口腔乾燥だけでなく、舌の炎症、口腔カンジダ症、服用薬などが味覚へ影響している場合もあります。

  • 味が薄い
  • 苦味が続く
  • 金属のような味がする
  • 甘味や塩味が分かりにくい

というとき、調味料を増やせば一時的に味は強くなります。

しかし、塩分や糖分を増やす前に、舌の状態、口腔カンジダ症、服用薬などを確認したほうがよい場合があります。

就寝前のルーティン――フッ化物で歯を守り、保湿剤で粘膜を守る

就寝前は、一日の中で最も丁寧に歯を守りたい時間です。

眠っている間は唾液が少なくなり、口の中に残った糖や酸を洗い流す力が低下します。

Sjögren病では、その影響がさらに大きくなります。

そのため、寝る前は、保湿剤を塗るだけでは十分ではありません。

まず歯垢を減らし、フッ化物を歯へ残します。その後、乾燥しやすい粘膜を保湿します。

就寝前は、歯と歯の間から清掃します

就寝前の基本的な順番は、次のようになります。

  1. フロスまたは歯間ブラシを使用する
  2. フッ化物配合歯磨剤で歯を磨く
  3. 泡を軽く吐き出す
  4. すすぐ場合は少量の水で1回程度にする
  5. その後の飲食を避ける
  6. 必要な粘膜へ保湿剤を少量使用する

成人では、1400~1500ppmFのフッ化物配合歯磨剤を、歯ブラシ全体と同じくらいの長さ、約1.5~2cm使用することが基本です。

就寝前を含めて1日2回使用し、磨いた後は軽く吐き出します。

すすぐ場合も少量の水で1回程度にとどめ、歯へ届けたフッ化物をすぐに洗い流しすぎないようにします。

「何分磨いたか」だけでなく、

  • 歯と歯の間
  • 歯と歯ぐきの境目
  • 歯ぐきが下がって露出した根元
  • 詰め物や被せ物の境目

へ歯垢を残さないことが重要です。

口腔乾燥とフッ化物、根面う蝕の関係については、[口が乾く人はフッ素ケアを強めたほうがいい?口腔乾燥で虫歯・根面う蝕が増える理由と正しい使い方]でも詳しく解説しています。

家庭での歯磨きに、歯科医院でのフッ化物管理を加えることがあります

短期間にむし歯が増えている方、歯ぐきが下がった部分に初期むし歯がある方、唾液分泌が著しく低下している方では、家庭での歯磨きだけでは十分にリスクを抑えられないことがあります。

その場合は、口腔状態に応じて、

  • 歯科医院でのフッ化物歯面塗布
  • フッ化物洗口
  • メンテナンス間隔の調整
  • 飲食回数の見直し
  • 歯間清掃用品の変更

などを組み合わせます。

全員へ一律に同じ方法を行うわけではありません。

過去のむし歯、唾液の状態、露出した根面、洗口液を安全に吐き出せるかなどを確認して決めます。

フッ化物は歯を守り、保湿剤は粘膜を守ります

フッ化物配合歯磨剤と口腔保湿剤は、役割が異なります。

フッ化物配合歯磨剤は、歯の脱灰を抑え、再石灰化を助けるために使用します。

口腔保湿剤は、頬、舌、口蓋、唇などの乾燥や摩擦を和らげるために使用します。

保湿剤には、フッ化物配合歯磨剤の代わりになる働きはありません。

一方、フッ化物配合歯磨剤だけで、粘膜の乾燥や張りつきが十分に改善するとも限りません。

二つを競わせるのではなく、それぞれの役割を生かします。

歯磨きと保湿ジェルは、どちらを先にすればよいのでしょうか

すべての口腔保湿剤に共通する、絶対的な順番が決まっているわけではありません。

しかし、むし歯リスクが高いSjögren病の方では、まず歯間清掃と歯磨きを済ませ、フッ化物を歯面へ残し、その後に乾燥する粘膜へ保湿剤を使用する流れが実践しやすいでしょう。

歯磨き後に何度もうがいをしたり、液体保湿剤で強くすすいだりすると、歯面に残したいフッ化物も流れやすくなります。

ジェルを使う場合は、歯全体を覆うほど厚く塗る必要はありません。

  • 頬の内側
  • 上顎
  • 口角
  • 義歯が接触する粘膜

など、乾燥する場所へ少量ずつ薄く広げます。

喉の奥へ大量に塗ることは避け、むせや異物感がない量から始めます。

量を増やせば、必ず朝まで長持ちするわけではありません。べたつき、異物感、むせる感じがある場合は、量や製品を見直します。

液体・スプレー・ジェルは、目的で使い分けます

液体タイプやスプレータイプは、口全体を短時間で湿らせやすく、

  • 起床直後
  • 食事前
  • 外出先
  • べたつきが苦手な方

に使いやすい製品です。

ジェルタイプは粘度があり、水分の蒸発を抑えやすいため、

  • 就寝前
  • 頬や舌の張りつきが強いとき
  • 口呼吸があるとき
  • 義歯による摩擦が気になるとき
  • 液体ではすぐに乾いてしまうとき

に向く場合があります。

ただし、ジェルのべたつきが苦手な方もいれば、液体では効果が短いと感じる方もいます。

「人気の商品だから」ではなく、自分が困る時間帯と症状に合わせて選びます。

入れ歯は、入れ歯側と粘膜側の両方を確認します

義歯を使用している方は、歯科から特別な指示がない限り、就寝前に義歯を外して清掃します。

義歯の表面だけでなく、歯ぐきや口蓋へ接触する内面も丁寧に洗います。必要に応じて、義歯の材質に合った義歯洗浄剤を使用してください。

義歯を外した後は、口蓋や歯ぐきに赤みがないか、傷や痛みがないかを確認します。

乾燥した粘膜は摩擦に弱く、合わない義歯が小さな傷を繰り返すことがあります。

また、義歯の清掃不良や就寝中の装着は、義歯性口内炎や口腔カンジダ症の一因になることがあります。

寝室と鼻の状態も、就寝前ケアの一部です

夜間の乾燥が強い方は、保湿剤だけでなく、眠る環境も見直します。

寝室が乾燥していれば、適切な加湿を検討します。エアコンや暖房の風が、顔へ直接当たらないようにします。

鼻づまりが続いている場合は、耳鼻咽喉科へ相談します。

カフェイン、飲酒、喫煙、刺激の強い食品などが乾燥や粘膜症状へ影響している場合もあります。就寝前だけでなく、一日の摂取量や摂り方も確認してみましょう。

口がヒリヒリする原因を、すべて乾燥と決めつけないでください

口が乾いていると、舌や頬が擦れ、ヒリヒリすることがあります。

しかし、保湿剤を増やしても痛みが続く場合は、乾燥以外の原因も考える必要があります。

Sjögren病の方に起こる口の痛みには、次のような原因があります。

  • 乾燥した粘膜の摩擦
  • 紅斑性口腔カンジダ症
  • 口角炎
  • 義歯性口内炎
  • 歯磨剤や洗口剤による刺激
  • 舌や頬の小さな傷
  • 鉄、ビタミンB12、亜鉛などの不足
  • 胃酸逆流
  • 舌痛症や神経障害性疼痛

カンジダ症は、白い苔が見えないこともあります

口腔カンジダ症というと、白い苔が口の中へ付く病気を想像するかもしれません。

しかし、紅斑性口腔カンジダ症では、目立つ白い苔がなく、

  • 舌や口蓋の赤み
  • 舌表面の平滑化
  • 口が焼けるような痛み
  • 味覚の変化
  • 繰り返す口角炎
  • 義歯の下の赤み

として現れることがあります。

熱い物、辛い物、酸っぱい物、塩味の強い物を食べたときに、痛みが強くなることもあります。

一方、Candidaは健康な方の口にも存在する菌です。

検査で菌が見つかったことだけで、必ず治療が必要なカンジダ症とは判断できません。

症状、粘膜の見た目、義歯の状態、必要に応じた検査を合わせて診断します。

赤く痛い舌の原因については、[赤く、平滑で、痛い舌をどう診るか?――萎縮性舌炎、口腔カンジダ症、栄養欠乏、舌痛症を分ける]も参考にしてください。

歯磨剤や洗口液が刺激になることもあります

Sjögren病の方では、歯磨剤の強い香味や発泡成分、アルコールを含む洗口液などが刺激になる場合があります。

ただし、特定の成分をすべての方が避ける必要があるわけではありません。

歯磨き後に、

  • 頬の粘膜がむける
  • 舌や歯ぐきが痛む
  • 赤みが強くなる
  • 口内炎を繰り返す
  • 味や刺激がつらくて十分に磨けない

という場合は、使用している歯磨剤や洗口液を歯科医院へ持参してください。

フッ化物濃度を確保しながら、より刺激の少ない製品へ変更できることがあります。

Sjögren病では、むし歯だけでなく歯の酸蝕にも注意します

唾液が少なくなると、歯に付いた酸を洗い流して中和する力が低下します。

そのため、Sjögren病ではむし歯だけでなく、飲食物や胃酸が歯を直接溶かす酸蝕症にも注意が必要です。

むし歯は、口腔細菌が糖を利用して作った酸によって歯が溶ける病気です。

酸蝕症は、次のような酸が歯へ直接触れることで進みます。

  • 炭酸飲料
  • スポーツ飲料
  • 栄養ドリンク
  • 柑橘類
  • 酸っぱい飴
  • 胃酸

糖質ゼロや無糖の飲料であっても、酸性であれば酸蝕症の原因になる可能性があります。

酸性の物を摂った後は、水を飲むか、軽く口をすすぎます。直後に強い力で歯をこするのではなく、歯の状態や飲み方について歯科医院で相談してください。

また、口腔乾燥がある方では、歯ぐきが下がって露出した根元にもむし歯ができやすくなります。

根面は歯冠部のエナメル質より酸に弱いため、歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨き、フッ化物を活用することが大切です。

短期間で新しいむし歯が増えた場合は、磨き方だけの問題と考えず、

  • 唾液の状態
  • 飲食回数
  • 飴やタブレットの種類
  • 酸性飲料
  • 服用薬
  • フッ化物の使用方法

まで一緒に見直します。

乾燥感の強さだけで、ケア方法を決めないことが大切です

患者さんが感じる口の乾きと、実際の唾液分泌量は、必ずしも一致しません。

同じSjögren病でも、

  • 刺激すると唾液が出る方
  • 安静時の乾燥が強い方
  • 夜間だけ乾燥が強い方
  • 粘膜の痛みが中心の方
  • 短期間にむし歯が増える方
  • 食べにくさが中心の方

では、必要な対策が異なります。

そのため、保湿剤の種類や使用回数だけでなく、

  • 唾液の分泌状態
  • むし歯の発生部位
  • 露出した根面
  • 歯肉の炎症
  • 舌や頬の粘膜状態
  • 義歯
  • 食事内容
  • 睡眠
  • 服用薬

まで確認しながら、一人ひとりのルーティンを調整します。

自分に合うルーティンを作るため、3日間だけ記録してみましょう

「口が乾きます」と伝えるだけでは、どの対策を優先すべきか分かりにくいことがあります。

そのため、患者さんへ3日間だけ、口の状態を記録していただくことがあります。

難しい数値を測る必要はありません。

  • 起床時に舌や頬が張りついたか
  • 夜中に乾燥で何回目が覚めたか
  • 夜中に水を飲んだ回数
  • 食べにくかった食品
  • 食事中に必要だった飲み物の量
  • 保湿剤を使った時間
  • どのくらい楽な状態が続いたか
  • 舌や口角に痛みがあったか
  • 飴、ガム、酸性飲料を摂った回数
  • 朝と夜に使用した歯磨剤
  • 鼻づまり、いびき、口呼吸があったか

こうした記録があると、

「朝は液体タイプの保湿剤が使いやすい」

「食前に口を湿らせると、パンが食べやすい」

「夜にジェルを増やしても、目が覚める回数は変わらない」

「乾燥対策として使っている酸っぱい飴の回数が多い」

「保湿だけでなく、鼻づまりの相談が必要かもしれない」

といった傾向が見えてくることがあります。

その結果に合わせて、ケア用品、使用する時間、食事、寝室環境などを調整します。

Sjögren病の口腔ケアに関するよくある質問

Q1.水をこまめに飲んでいれば、保湿剤は使わなくてもよいですか?

水分補給は大切ですが、水だけで十分とは限りません。

水は口を一時的に湿らせますが、唾液が持つ潤滑、洗浄、酸の中和、再石灰化、抗菌などの働きを完全には補えません。

水分補給、フッ化物による歯の保護、必要に応じた粘膜保湿を役割分担させましょう。

心臓病や腎臓病などで水分制限を受けている方は、自己判断で飲水量を増やさず、主治医の指示に従ってください。

Q2.朝は、朝食前と朝食後のどちらに歯を磨けばよいですか?

起床時の乾燥が強い方は、朝食前に少量の水や保湿剤で口を整え、朝食後にフッ化物配合歯磨剤で磨く方法が分かりやすいでしょう。

すでに朝食前に磨く習慣があり、無理なく続けられている方は、必ずしも変更する必要はありません。

重要なのは、就寝前を含めて1日2回、1400~1500ppmFのフッ化物配合歯磨剤を適量使用し、磨いた後にすすぎすぎないことです。

Q3.寝る前は、歯磨きと保湿ジェルのどちらを先にすればよいですか?

基本的には、歯間清掃とフッ化物配合歯磨剤によるブラッシングを先に行い、その後、乾燥する粘膜へ保湿ジェルを少量使用する流れが実践しやすいでしょう。

ジェルを歯全体へ厚く塗る必要はありません。頬、舌、上顎、口角など、乾燥する場所へ薄く広げます。

製品によって使用方法が異なるため、説明書や歯科医院からの個別指示がある場合は、そちらを優先してください。

Q4.無糖ガムを噛めば、唾液は増えますか?

残っている唾液腺機能があれば、咀嚼刺激によって唾液が増えることがあります。

ただし、すべてのSjögren病患者さんで十分な効果が得られるわけではありません。

顎関節の痛み、義歯の不安定、ガムを安全に噛むことが難しい状態などがある方には、適さない場合もあります。

糖入りではなく無糖の製品を選び、長時間噛み続けないようにしましょう。

Q5.酸っぱい飴で唾液を出してはいけませんか?

たまに少量食べることまで、一律に禁止するものではありません。

しかし、酸っぱい飴を一日中なめ続けると、酸を中和する唾液が少ない口では、歯が溶ける酸蝕症のリスクが高まります。

糖入りであれば、むし歯リスクも加わります。

唾液刺激を目的に常用することは避け、無糖で酸味の強すぎない選択肢を歯科医院で相談してください。

Q6.アルコール入りの洗口液は使わないほうがよいですか?

使用すると口がヒリヒリする、乾燥感が強くなるという方は、アルコールを含まない低刺激タイプが向いていることがあります。

ただし、洗口液は歯ブラシや歯間清掃の代わりにはなりません。

殺菌成分を含む洗口液を長期間自己判断で使用せず、目的と使用期間を歯科医院で確認してください。

Q7.口腔乾燥を起こしそうな薬を、自分で減らしてもよいですか?

自己判断で中止したり、服用回数を減らしたりしないでください。

抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、抗不安薬、降圧薬など、口腔乾燥へ関係する可能性のある薬は多数あります。

しかし、治療上必要な薬を急に中止すると、全身状態へ影響することがあります。

歯科を受診するときは、お薬手帳またはスマートフォンの薬剤情報をお持ちください。必要に応じて、処方医と情報を共有します。

Q8.寝るときに口閉じテープを使えば、乾燥は改善しますか?

すべての方に安全な方法とは限りません。

鼻づまりがある方、睡眠時無呼吸症候群が疑われる方、吐き気や胃酸逆流のある方などでは、自己判断で口を閉じることが適切でない場合があります。

まず鼻呼吸ができる状態か、いびきや呼吸停止がないかを確認し、使用を検討する場合は医療機関へ相談してください。

Q9.赤い舌や口角の亀裂は、保湿を続ければ治りますか?

乾燥が原因であれば、保湿によって改善することがあります。

しかし、赤く平らな舌、食事中の灼熱痛、味覚異常、繰り返す口角炎は、紅斑性口腔カンジダ症や栄養不足などでも起こります。

数日から1週間程度で改善しない、痛みが強い、食事ができない場合は、保湿剤だけで様子を見続けず、受診してください。

Q10.歯科医院でのフッ化物塗布やフッ化物洗口も必要ですか?

全員に同じ方法が必要なわけではありません。

短期間にむし歯が増えている方、根面う蝕がある方、唾液分泌が著しく低下している方では、フッ化物配合歯磨剤に加えて、歯科医院でのフッ化物歯面塗布やフッ化物洗口を組み合わせることがあります。

現在の口腔状態と、洗口液を安全に吐き出せるかなどを確認して選びます。

Q11.歯科医院には、どのくらいの間隔で通えばよいですか?

適切な間隔は、唾液量、むし歯の発生状況、歯周病、根面露出、粘膜症状、義歯、セルフケアの状態によって異なります。

Sjögren病だから、全員が同じ間隔になるわけではありません。

短期間にむし歯が増えている方、根面う蝕がある方、口腔カンジダ症を繰り返す方、セルフケアが難しい方では、通常より短い間隔での確認が必要になることがあります。

Q12.どのような症状があれば、早めに歯科や主治医へ相談すべきですか?

次のような変化がある場合は、次回の定期検診まで待たずに相談してください。

  • 数か月でむし歯が急に増えた
  • 歯の根元や先端が欠けた、軟らかくなった
  • 舌や口蓋が赤く、強くヒリヒリする
  • 白い膜や苔のようなものが付く
  • 口角が繰り返し切れる
  • 義歯の下が赤く痛む
  • 食事や錠剤を飲み込みにくい
  • むせや体重減少がある
  • 唾液腺が腫れ、痛みや発熱がある
  • 耳の前や顎の下の腫れが片側だけ続く
  • 痛みがなくても唾液腺の腫れが引かない
  • 首、わきの下、足の付け根などにしこりを触れる
  • 原因の分からない発熱や体重減少がある
  • 口内炎、白い病変、しこりが2週間以上治らない

これらの症状があるからといって、必ず重大な病気があるという意味ではありません。

ただし、Sjögren病の定期管理では、口の乾燥だけでなく、唾液腺や全身の変化も主治医へ共有することが大切です。

朝・食前・就寝前では、ケアの目的が違います

朝は、夜間に乾いた口を傷つけずに目覚めさせる時間です。

食事の前は、食べ物を噛み、まとめ、飲み込める口を準備する時間です。

就寝前は、歯垢を減らしてフッ化物を歯へ残し、保湿剤で粘膜を守る時間です。

同じ「口が乾く」という悩みでも、必要なケアは全員同じではありません。

唾液腺の機能がどれくらい残っているか、朝と夜のどちらが乾くのか、むし歯と粘膜痛のどちらが問題なのか、口呼吸や服用薬が関係していないかによって、適した方法は変わります。

乾燥の状態を数日間記録してみると、

「食前に口を湿らせた日は、パンが食べやすかった」

「夜にジェルの量を増やしても、目が覚める回数は変わらなかった」

「乾燥対策として、酸っぱい飴を何度も口にしていた」

など、自分では気づかなかった傾向が見えてくることがあります。

その場合、食前の保湿は続けながら、夜はジェルを増やすだけでなく、鼻づまりや口呼吸、寝室環境を確認する、といった調整ができます。

「乾いたら、とにかく水を飲む」

それだけだった一日が、

「朝は口を起こす」
「食前は食べる準備をする」
「就寝前は歯と粘膜を分けて守る」

という、その方自身のルーティンへ少しずつ変わっていきます。

私たち歯科衛生士も、歯を磨けているかだけを見るのではありません。

食事を楽しめているか、会話がつらくないか、夜に眠れているか、口の痛みを我慢していないかまで確認しながら、その方に合った口腔ケアを一緒に調整していきます。

参考文献

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  2. 日本リウマチ学会.シェーグレン病.患者・一般向け疾患情報.
  3. 日本口腔衛生学会,日本小児歯科学会,日本歯科保存学会,日本老年歯科医学会.フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法,2023.
  4. Zero DT, Brennan MT, Daniels TE, et al. Clinical practice guidelines for oral management of Sjögren disease: Dental caries prevention. J Am Dent Assoc. 2016;147(4):295-305.
  5. Ramos-Casals M, Brito-Zerón P, Bombardieri S, et al. EULAR recommendations for the management of Sjögren’s syndrome with topical and systemic therapies. Ann Rheum Dis. 2020;79(1):3-18.
  6. Khavandgar Z, Warner BM, Baer AN. Evaluation and management of dry mouth and its complications in rheumatology practice. Expert Rev Clin Immunol. 2024;20(1):1-19.
  7. National Institute of Dental and Craniofacial Research. Sjögren’s Disease/Dry Mouth.
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  9. Sjögren’s Foundation. Clinical Practice Guidelines for Oral Management.

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