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セラミックの歯は10年もつ?206本の追跡で見えた成功率85.92%と虫歯リスク

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2026年10月24日

セラミックの歯は10年もつ?206本の追跡で見えた成功率85.92%と虫歯リスク

(院長の徒然コラム)

はじめに

「セラミックの歯は、何年くらいもちますか?」

セラミック治療を考えている患者さんから、よく聞かれる質問の一つです。せっかく時間と費用をかけて治療するのですから、できるだけ長く使いたいと思うのは当然でしょう。

セラミックの耐久性というと、材料の硬さや強度、割れにくさ、接着方法などが話題になります。ジルコニアと二ケイ酸リチウムの違いについて、患者さん自身が調べてから相談に来られることもあります。

もちろん、材料の選択や接着操作は重要です。しかし、セラミックで歯を覆ったからといって、その歯に二度と虫歯ができなくなるわけではありません。被せ物の周囲には、もともとの天然歯が残っています。その部分に虫歯ができれば、セラミック自体が割れていなくても、修復物を外したり、作り直したりする必要が生じることがあります。

では、実際にセラミック修復物を10年ほど使用すると、どのような問題が起きるのでしょうか。

2026年10月19日、歯科医学の学術誌『BMC Oral Health』に、興味深い研究が公開されました。中国・武漢大学のZhouらの研究チームは、根管治療を受けた歯に装着された206個のセラミック修復物について、10年後の状態を調べました[1]。

その結果、研究で定めた基準による10年後の臨床的成功率は85.92%でした。また、10年後の診察時に虫歯リスクが高いと評価された群では、修復物の成功率が低い結果でした。失敗に関係する問題として多く記録されていたのは、セラミックそのものの破折ではなく、二次虫歯と脱離でした。

二次虫歯とは、詰め物や被せ物の周囲にできる虫歯のことで、専門的には「二次う蝕」と呼びます。

ただし、この研究には数字を読むうえで重要な注意点があります。虫歯リスクを評価したのは、セラミックを装着した10年前ではなく、10年後の診察時点だったのです。「最初から虫歯リスクが高かった人ほど、セラミックが失敗した」と証明されたわけではありません。

今回は、この研究の数字を丁寧に読み解きながら、セラミックの10年後の成績、二次虫歯や脱離、ほかの長期研究との違い、そして治療後の天然歯をどう守るかについて解説します。

セラミックは10年もつ?新しい研究が示した85.92%

丈夫な材料でも、10年間トラブルがないとは限らない

セラミックは、歯の色や透明感を再現しやすく、現在の歯科治療で広く使われている修復材料です。近年は材料自体の改良も進み、二ケイ酸リチウムやジルコニアなど、強度と見た目の自然さを兼ね備えた材料が利用されています。

Laumbacherらが2025年に公表した研究では、天然歯やインプラントに装着された二ケイ酸リチウム系の単冠について、28件の系統的レビューをまとめて検討しています[5]。短期から中期の生存率は95〜100%と良好でした。

ただし、研究対象には天然歯に装着した冠とインプラントに装着した冠が含まれ、修復物の種類や評価方法にも違いがありました。また、5年を超える長期的な資料には限界が指摘されています。この95〜100%を「天然歯のセラミック冠が10年間、問題なく使えた割合」として扱うことはできません。

そもそも、研究でいう「生存」と「成功」は、同じ意味とは限りません。例えば、被せ物が一度外れて再装着された後も使えていれば「生存」と数える研究があります。一方、脱離した時点で「成功ではない」と評価する研究もあります。

セラミックが何年もつかを考えるときは、数字だけでなく、何を成功と判断した研究なのかを確認する必要があります。

根管治療済みの206修復物では、成功率85.92%だった

今回のZhouらの研究は、186人の患者さんに装着された206個のセラミック修復物を対象としています[1]。10年後の診察時点では、177個が臨床的に成功、29個が失敗と判定されました。

つまり、成功率85.92%、失敗率14.08%です。

さらに10年後の虫歯リスク別に比べると、高リスク群の成功率は74.47%でした。失敗した29修復物には延べ34件の問題が記録され、そのうち13件が二次虫歯、12件が脱離や接着の喪失でした。

「セラミックが割れたから失敗した」という単純な話ではないことがわかります。ただし、ここでいう85.92%は、すべてのセラミックに共通する10年生存率ではありません。まず研究の対象を確認しましょう。

206本のセラミック修復物を、どのように調べた?

2015〜2016年に装着された、根管治療済みの歯が対象

研究が行われたのは、中国の武漢大学口腔医学院・附属口腔病院です。2015〜2016年に根管治療済みの歯にセラミック修復物を装着し、その後約10年の診察を受けた患者さんの記録を調べました。

根管治療とは、歯の内部にある歯髄が感染した場合などに、根管内を清掃・消毒して封鎖する治療です。一般には「歯の神経を取る治療」と呼ばれることもあります。

根管治療を受けた歯では、治療前の虫歯や過去の修復処置などによって、すでに歯質が大きく失われている場合があります。残っている歯の量や形、噛み合わせなどを考慮し、被せ物などで形と機能を回復させます。

今回の修復処置は、コンピューターによる設計・加工技術について訓練された歯科医師が、定められた手順に沿って行いました。10年後の評価には、最初の治療を担当していない2人の評価者が参加し、比較的高い一致が得られています(一致度を表すκ=0.792)。

ただし、研究のために食生活や治療方法を無作為に割り付けた試験ではありません。過去の診療記録と追跡診察を利用した後ろ向きの観察研究です。観察された関連だけで、原因と結果の関係を証明することはできません。

最初の2,533記録から、最終的に206修復物を解析

研究では、最初に2,533件の修復物記録が抽出されました。記録不備766件を除外して1,767件となり、連絡先不明などの534件を除くと1,233件になりました。その後、参加辞退921件を除外して312件となり、重度の歯周病や噛み合わせに関する除外条件などで106件が除かれました。

こうして最終的に206修復物が解析対象になっています。

最初の2,533件から206件に減ったからといって、残りの修復物が失敗したわけではありません。診療記録の不足、連絡が取れないこと、研究への参加辞退なども含まれます。

一方、10年後の診察に参加した患者さんと参加しなかった患者さんでは、口腔内の状態や受診行動が異なっていた可能性があります。こうした対象の選ばれ方による偏りは、結果を読むうえで重要です。

また、活動性で十分に管理されていない重度の歯周病や、臨床的に問題となる強い歯ぎしりなどが認められた症例は除外されています。今回の数字をすべての患者さんに当てはめることはできません。

エンドクラウン153個と、全部被覆冠53個

206修復物の内訳は、エンドクラウン153個、全部被覆冠53個でした。

エンドクラウンは、根管治療後の歯の歯冠部と、もともと歯の神経や血管が入っていた髄室の形を利用して維持を得る修復方法です。必ず根管の奥までポストを差し込むわけではありません。

一方、全部被覆冠は、形成した歯の歯冠部を覆って形態や機能を回復させる被せ物です。どちらを選ぶかは、残っている歯質、歯の位置、髄室の形、噛み合わせなどによって検討します。

エンドクラウンの設計や材料、接着方法については、以前の院長コラム「エンドクラウンの最適な選択を求めて――材料、セメント、そして成功への鍵」で詳しく解説しています。

使用材料はIPS e.max CAD――ジルコニアの研究ではない

今回使用されたのは、二ケイ酸リチウム系のガラスセラミック、IPS e.max CADです。CERECという仕組みでコンピューター設計・加工され、樹脂系の接着用セメントで歯に装着されました。

セラミックの内面には所定の酸処理や、歯と接着しやすくする薬剤による処理が行われ、歯の側にも接着操作が行われています。可能な場合はラバーダムというゴム製のシートで唾液などを遮断し、難しい場合も水分の管理が行われていました。

研究では、材料と処置手順をある程度そろえています。しかし、この結果はジルコニア冠や保険診療のCAD/CAMレジン冠を含むものではありません。

同じ「白い被せ物」でも材料や接着方法は異なります。今回の研究から「二ケイ酸リチウムはジルコニアより長持ちしない」といった材料間の優劣は判断できません。

10年後の成功率85.92%は、何を意味する?

成功177個、失敗29個の「臨床的成功率」

206修復物のうち、成功177個、失敗29個。割合はそれぞれ85.92%と14.08%です。

ここでいう成功は、研究者が定めた臨床的な評価基準を満たした状態です。修復物の破折、被せ物の境目の適合、色の違い、歯ぐきの炎症、脱離、歯質の破折、二次虫歯などが評価されています。

軽度の摩耗や小さな色の違いなどは、基準の範囲内なら成功に含まれます。一方、セラミックがまだ口の中に残っていても、二次虫歯や脱離などが認められれば失敗になります。

今回の「失敗」には、修復物そのものを失うことだけでなく、明らかな歯ぐきの炎症や著しい色の不一致なども含まれます。そのため、29個すべてが交換や抜歯を必要としたことにはなりません。

エンドクラウンと普通の被せ物に、有意な差はあった?

エンドクラウンは153個中133個が成功し、成功率86.93%。全部被覆冠では53個中44個が成功し、83.02%でした。

数値上の差は約3.9ポイントですが、補足表S1での検定結果はP=0.481でした。研究で設定された5%の有意水準では、統計学的に意味のある差は確認されていません。

この数字だけで「エンドクラウンのほうが長持ちする」とは言えません。選ばれた修復方法の違いだけでなく、もともと残っている歯の状態が異なっていた可能性もあるからです。

「成功」「生存」「再治療」は同じではない

修復物の長期成績を読むときには、「成功」「生存」「再治療」を区別する必要があります。

例えば、被せ物が外れて再装着された後も使われていれば、研究によっては生存と評価されます。しかし、脱離が起きた時点で成功ではないと扱う研究もあります。小さな欠けを整えて使い続けた場合も、研究によって判定が変わります。

今回のZhouらの研究では、二次虫歯や脱離などが失敗判定に含まれました。さらに、いつ失敗が起きたかという正確な日付を取得できませんでした。

そのため、時間の経過を考慮して生存率を計算するカプラン・マイヤー法は使われていません。85.92%は「10年後の診察で、この研究の基準を満たした割合」であって、「10年の推定生存率」ではありません。

「10年で14.08%が抜歯になる」という意味でもないのです。

虫歯リスクが高い人では、10年後の成功率が低かった?

低・中・高リスクの3群を比較すると

今回の研究では、10年後の診察時に米国歯科医師会(ADA)の評価票を用い、患者さんの虫歯になりやすさを低・中・高の3群に分類しました[7]。

  • 低リスク群:33/37個が成功、89.19%
  • 中リスク群:109/122個が成功、89.34%
  • 高リスク群:35/47個が成功、74.47%

低リスク群と中リスク群はほぼ同じ成功率でしたが、高リスク群では低い値でした。中リスク群と高リスク群の差は約15ポイントです。

ただし、この数字だけで「虫歯リスクが原因でセラミックが失敗した」と結論できるわけではありません。

有意な関連が確認されたのは、中リスク群と高リスク群の比較

補足表S1では3群の単純な比較でP=0.037でした。さらに、年齢・性別を含めて解析した原著表3では、高リスク群を基準とした中リスク群の失敗オッズ比が0.391(95%信頼区間0.154〜0.989、P=0.047)でした。

オッズ比とは、群間の失敗の起こりやすさを統計的に比べる指標で、実際の失敗確率そのものの倍率ではありません。95%信頼区間は、推定された値の不確実性を考えるための範囲です。

一方、低リスク群を高リスク群と比べたオッズ比は0.437(95%信頼区間0.131〜1.462、P=0.179)で、統計学的な有意差は確認されませんでした。

「有意差がなかった」とは、2群が完全に同じだと証明されたという意味ではありません。特に低リスク群は37修復物と比較的小さく、差を十分に検出できなかった可能性もあります。

虫歯リスクに比例して、成功率が順番に下がったわけではない

低リスク群89.19%、中リスク群89.34%という結果からわかるように、リスクが低・中・高と上がるたびに、成功率が規則正しく下がったわけではありません。

「虫歯リスクが1段階上がると成功率が何%下がる」といった予測もできません。今回の高リスク群の74.47%を、一人の患者さんの将来の成功確率としてそのまま使うことも適切ではありません。

直接言えるのは、10年後の虫歯リスク分類と、同じ時点での修復物の状態に関連がみられたということです。

セラミックが失敗した原因は、破折だけではなかった

29個の失敗修復物に、34件の問題が記録された

206修復物のうち失敗と判定されたのは29個ですが、問題として記録された事象は延べ34件ありました。

これは一つの修復物に複数の問題が認められた場合があるためです。ただし、どの修復物にどの問題が重複していたかをすべて確認できるわけではありません。

そのため、失敗修復物数29と、失敗事象数34を分けて扱うことが重要です。

最も多かったのは二次虫歯13件

34件の失敗事象のうち、二次虫歯は13件(38.24%)、脱離や接着の喪失は12件(35.29%)でした。2種類を合わせると25/34件、73.53%です。

この73.53%は、あくまで失敗事象34件を分母とした割合です。失敗した29修復物の73.53%という意味ではありません。

その他には、明らかな歯ぐきの炎症3件、修復物破折2件、被せ物の境目の高度な不適合・著しい色の不一致・歯質破折・抜歯がそれぞれ1件ありました。

セラミックの失敗と聞くと、硬いものを噛んで割れる問題を想像するかもしれません。しかし、この研究では二次虫歯と脱離が多く記録されていました。

もちろん、破折への対策が不要という意味ではありません。研究対象から、臨床的に問題となる強い歯ぎしりなどが除外されていたことも考える必要があります。

脱離・接着の喪失も12件あった

セラミック修復物の脱離には、接着部分の状態、修復物の形、残っている歯質、噛む力、水分など、さまざまな条件が関係します。

今回の研究でも、セラミック内面や歯質への接着操作は統一されていました。それでも12件の脱離・接着の喪失が記録されています。

適切な接着操作は重要ですが、それだけで将来の脱離を完全に防げるわけではありません。一方で、12件すべてが最初の接着操作の不良によって起きたと判断することもできません。

接着修復物の問題については、以前の院長コラム「接着修復の限界をどう読むか:CR・CAD/CAMレジン冠・二ケイ酸リチウム・ジルコニアの失敗様式と臨床判断」でも詳しく解説しています。

セラミック自体は虫歯にならなくても、天然歯には虫歯ができる

セラミックは、天然歯のエナメル質や象牙質のように、細菌が作る酸によって脱灰して虫歯になる材料ではありません。

しかし、修復物の周囲や下には天然歯が残っています。被せ物と歯の境目、歯ぐきに近い部分、歯間部などに細菌性の歯垢が蓄積し、糖分が供給されると、天然歯の虫歯が進む場合があります。

Askarらの2020年の総説でも、二次虫歯には修復物と歯の境目の状態に加え、患者さん側の虫歯リスクなどが関係すると説明されています[11]。

ただし、二次虫歯が見つかったことだけで、最初から接着が不良だったと断定することはできません。修復物の周囲に残っている歯の表面で新しく虫歯が始まる場合もあるからです。

セラミックを丈夫に作ることと、周囲の天然歯を虫歯から守ることは、別の問題なのです。

糖分・歯根面・年齢は、セラミックの失敗とどう関係した?

今回の研究では、虫歯リスクの分類に加え、食生活や歯の状態、年齢などと修復失敗との関係も検討されました。ここでは原著の表3・4と補足表S1・S2を確認します。

ただし、すべてのオッズ比が同じ解析から得られたわけではありません。年齢・性別は表3、糖分摂取や歯根面の露出などは表4の結果です。

食間に糖分を頻繁・長時間摂取していた群

主に食事の時間に糖分を含むものを摂取していた群では、182修復物中21件が失敗し、失敗割合は11.54%でした。

一方、食間に頻繁、または長時間にわたって糖分を摂取していた群では24修復物中8件が失敗し、33.33%でした。

補足表S2での単純な比較はP=0.010。選択されたほかの要因を考慮した解析では、調整後オッズ比5.947(95%信頼区間1.944〜18.191、P=0.002)でした。

興味深い結果ですが、「食間の糖分摂取が原因で失敗確率が約6倍になった」「間食を減らせば失敗が6分の1になる」とは言えません。食習慣を調べたのも10年後の時点であり、装着時から同じ習慣だったかは確認できないからです。

一方、虫歯の発生に糖分が関係することは、ほかの研究から知られています。van Loverenの2019年のレビューでは、糖分の摂取量だけでなく、摂取頻度も重要な検討事項とされています[8]。

飴を長時間なめ続ける、甘い飲み物を何度も少しずつ飲む、といった習慣は見直す価値があります。ただし、今回の研究は「1日何回以下なら安全」という基準を示していません。

日常の糖分摂取については「仕事中の飴・カフェラテ・夜食はなぜ虫歯リスクになる?」でも詳しく解説しています。

歯ぐきが下がり、歯根面が露出していた群

歯ぐきが下がると、それまで覆われていた歯根面が見える場合があります。歯根面と歯冠部のエナメル質では組織の性質が異なり、虫歯へのなりやすさも同じではありません。

今回、歯根面の露出があった群では49修復物中11件が失敗し、露出がなかった群では157修復物中18件が失敗しました。

S2の単純な比較はP=0.054で、通常の5%水準では有意ではありませんでした。一方、表4の調整後オッズ比は2.637(95%信頼区間1.028〜6.763、P=0.044)でした。

統計学的な関連は認められましたが、P=0.044は有意水準に近い値です。歯ぐきが下がったこと自体が修復失敗の直接原因だったと証明したわけでもありません。露出した歯根の状態や清掃のしやすさも含めて考える必要があります。

65歳以上の群でも関連が認められた

65歳以上では22修復物中7件が失敗し、65歳未満では184修復物中22件が失敗しました。

S1ではP=0.027、表3の調整後オッズ比は3.536(95%信頼区間1.227〜10.189、P=0.019)でした。

この結果から「65歳になれば急にセラミックが失敗しやすくなる」という説明はできません。年齢とともに歯ぐきの状態、口腔乾燥、過去の修復歴、全身状態なども変わり得ますが、それらが今回の関連を生じさせた仕組みまで証明されたわけではありません。

年齢という数字だけで治療の見通しを決めず、実際の口腔内の状態を確認することが重要です。

性別の差は、ほかの要因を考慮すると有意ではなかった

補足表S1では、男性70修復物中5件、女性136修復物中24件が失敗していました。単純な比較はP=0.040でした。

しかし虫歯リスクや年齢を含めた解析では、男性対女性の調整後オッズ比が0.340、P=0.051となり、5%水準では有意ではありませんでした。

このため「女性であること自体が独立した失敗原因」とは言えません。単純な群間比較と、ほかの条件を考慮した解析は、結果が異なることがあります。

数字が大きくても、症例が少ない項目には注意

化学療法・放射線治療歴のある群は4修復物中2件が失敗し、歯科・矯正装置を使用していた群も4修復物中3件が失敗していました。

調整後オッズ比はそれぞれ13.539と20.622でしたが、どちらも該当する修復物がわずか4個です。推定値の95%信頼区間も非常に広く、結果は不安定です。

著者自身も慎重な解釈を求めています。「化学療法を受けると13倍失敗する」「矯正装置を使うと20倍失敗する」というような言い方は避けるべきでしょう。

「虫歯リスクが高いから失敗した」と断言できない理由

この章は、今回の研究を正確に理解するために特に重要です。高リスク群で成功率が低かったのは事実ですが、その理由まで確定したわけではありません。

虫歯リスクを調べたのは、装着前ではなく10年後

今回の虫歯リスクは、約10年後の診察時に評価されました。2015〜2016年の修復物装着時に測定されたものではありません。

装着前に低・中・高リスクの患者さんを分け、それから10年間、どの群で失敗が多かったかを調べた研究ではないのです。

例えば、10年間の途中で生活習慣や服薬状況、歯ぐきの状態が変化することがあります。以前は高リスクだった患者さんの口腔内が改善している場合もあれば、その逆も考えられます。

修復物に問題が起こった結果、10年後のリスク評価が高くなった可能性もあります。現在の虫歯リスクと修復物の状態が関連したことは、10年前のリスクが将来の失敗を予測したことと同じではありません。

二次虫歯が起きたこと自体が、高リスクの判定に影響した可能性

米国歯科医師会の虫歯リスク評価票には、糖分摂取やフッ化物の利用といった習慣の項目に加えて、過去36か月の新しい虫歯や修復歴、修復物の境目の不良など、最近の口腔内の状態に関する項目もあります[7]。

一方、今回の修復物の失敗判定にも、二次虫歯や境目の適合不良が含まれます。

つまり、修復物が失敗と判定される所見が、そのまま虫歯リスクを高く判定する理由にもなり得るのです。これは研究で評価基準の重複と呼ばれる問題で、著者も限界として認めています。

例えば、二次虫歯ができたことで修復物が失敗と判定され、同じ二次虫歯の存在によって高リスクにも分類された可能性があります。その場合、先にリスクが高かったから虫歯ができたのか、虫歯ができたことでリスク評価が高くなったのかを区別できません。

補足表では、ほかの要因を考慮すると結果が変わった

補足表S1・S2には、各項目を一つずつ取り出して失敗との関連を調べた結果が掲載されています。その後、選ばれた複数の項目を考慮した解析が行われました。

例えば、隣接面に修復物が1個以上あるという項目は、S2ではP=0.042でしたが、調整後はオッズ比0.992、P=0.988となりました。

性別はS1でP=0.040でしたが、調整後はP=0.051でした。反対に、歯根面の露出は単純な比較でP=0.054、調整後にP=0.044となりました。

一つのP値だけで原因が決まるわけではありません。また、単純な比較でP<0.20となった項目を追加解析の候補にしており、多数の検定に対する補正は行われていません。偶然に意味のある差が出たように見える可能性も考える必要があります。

虫歯リスク評価そのものも、将来を完全には予測できない

2026年9月にオンライン先行公開されたHasyimらの系統的レビューでは、虫歯リスク評価の予測精度について30研究を採用し、うち16研究の結果を統合しています[6]。

評価方法や対象となる集団によって予測精度は異なり、全体として中程度の精度でした。

虫歯リスク評価は、現在の状態を整理して予防方針を考えるうえで役立ちます。しかし、高リスクと判定された人が必ず虫歯になるわけではなく、低リスクなら絶対に虫歯にならないわけでもありません。

また、このレビューの数値をそのまま、今回使用された米国歯科医師会の成人用評価票の固有の精度とみなすこともできません。

虫歯になりやすさについては、以前のコラム「虫歯になりやすいのはどんな人?歯磨きしているのに虫歯ができる原因・体質・唾液・食生活と予防法」でも詳しく説明しています。

対象の選ばれ方、失敗29件、検査方法にも限界がある

今回の研究は一つの大学病院で行われた後ろ向きの研究です。最初に抽出した2,533記録から206修復物に絞られており、参加できた人とできなかった人の違いが結果に影響した可能性があります。

失敗は29修復物と比較的少なく、複数の要因を扱う解析では数値が不安定になる場合があります。著者が研究終了後に計算した統計的な検出力も0.48で、中程度以下の関連を十分に見つけられなかった可能性が指摘されています。

また、一部の患者さんでは10年後のエックス線画像が得られず、小さな二次虫歯の検出に差が生じた可能性があります。食習慣などは診療記録や自己申告による部分があり、記憶違いや報告の偏りも考えられます。

さらに、206修復物は186人から得られており、一部の患者さんは複数の修復物を提供しています。著者は同じ患者さん内の結果の関連を考慮した統計処理を行いましたが、それだけで対象選択の偏りや、調べていない要因の影響が解消するわけではありません。

患者さん本人の満足度や、使い心地は調べられていない

もう一つ見落としたくない限界があります。今回の研究では、患者さん自身が感じている噛みやすさ、見た目への満足度、使い心地などは評価されていません。

研究上の「臨床的成功」と、実際に患者さんが満足しているかどうかは、必ずしも同じではありません。歯科医師による検査結果に加えて、患者さん自身の感じ方も、長期的な治療結果を考えるうえで大切な要素です。

以上を踏まえると、今回の結論は「10年後に虫歯リスクが高いと評価された群では、修復物の臨床的成功率が低かった」というところまでです。「装着前の高リスクが失敗を引き起こした」とは言えません。

ほかの長期研究と比較すると、セラミックの寿命はどう見える?

今回の85.92%という数字は、ほかの研究の結果とどのように違うのでしょうか。同じ二ケイ酸リチウム系セラミックを扱った研究でも、対象や評価方法によって数字は異なります。

426冠の10年研究では、成功率は90%を超えていた

Azizらの研究では、二ケイ酸リチウム系のCAD/CAM冠426個を10年間評価しています[3]。

そのうち153冠では、歯ぐきより深い位置にある修復物の境目を樹脂で歯冠側へ移動する処置が行われていました。これはDMEと呼ばれる方法です。残る273冠には行われていませんでした。

DMEあり群では10年生存率95.8%、成功率94.1%、DMEなし群では生存率94.7%、成功率93.0%でした。

今回のZhouらの85.92%より高く見えますが、Azizらの研究は根管治療済みの歯だけを対象にしたものではありません。また、成功の判定基準や患者さんの選ばれ方も異なります。数字の違いだけで、治療や材料の優劣は決められません。

1,146修復物の研究でも、虫歯リスクとの関連が報告された

Bresserらが2025年に公表した研究では、260人に装着された1,146個の二ケイ酸リチウム系部分修復物が評価されました[2]。平均観察期間は7.5年で、累積生存率97.3%、成功率95.3%と報告されています。

この研究でも、高い虫歯リスクや根管治療済みの歯などが修復失敗と関連していました。

ただし、Bresserらの高リスク判定には、一定期間に新しい二次虫歯が生じたことや、二次虫歯によって修復物が交換されたことが含まれています。そのため、虫歯リスクと失敗の判定が一部重なるという問題は、Zhouらの研究と共通しています。

複数の研究で似た関連が報告されていても、「装着前の高リスクから将来の失敗を正確に予測できる」とまでは言えないのです。

17,725修復物の研究では、長期解析の対象は4,635修復物

Wierichsらが2025年に報告した研究では、12,468人・17,725修復物という大規模な歯科診療所のデータが用いられました[4]。

ただし、17,725修復物すべてを長期間追跡したわけではありません。全体の平均追跡期間は3.3年です。

さらに研究者らは、5年以上追跡された修復物と失敗例を含む4,635修復物について別の長期解析を行っています。こちらの平均追跡期間は8.6年でした。この4,635という対象数を示さず、17,725修復物すべての平均追跡期間が8.6年だったかのように説明してはいけません。

長期解析では、根管治療済みの歯であることが修復失敗の危険度の高さと関連しており、その比は1.6(95%信頼区間1.4〜1.9)でした。

ただし、根管治療そのものが失敗の直接原因だと証明したものではありません。根管治療が必要になった歯は、大きな虫歯や以前の修復によって、治療前から歯質が少なくなっている場合もあります。

材料の強度だけでなく、修復物を支える元の歯がどのような状態なのかも考える必要があります。

生存率や成功率を、数字だけで順位づけできない理由

ここまでの研究には85.92%、90%台、95%以上など、さまざまな値が出てきます。

しかし、研究ごとに対象となる歯の状態、修復物の種類、観察期間、成功・失敗の判定方法が異なります。失敗までの時間を考慮した推定生存率と、10年後の診察時点で判定された成功率も同じ数字ではありません。

Laumbacherらの総括でも、研究間の条件の違いと長期資料の不足が指摘されています[5]。成功率が高い研究だけを並べて「この材料が最強」と決めることは適切ではありません。

材料の違いについては、以前の院長コラム「ジルコニアと二ケイ酸リチウムセラミック(IPS e.max)の耐久性比較」でも解説しています。

セラミックの境目が黒いと、二次虫歯なのか?

境目の着色と、二次虫歯は同じではない

「セラミックの境目が黒くなってきました。これは虫歯でしょうか?」

このような相談を受けることがあります。もちろん、修復物の境目に二次虫歯が発生する場合はあります。しかし、黒く見える部分があるからといって、必ず虫歯とは限りません。

修復物の境目には、着色、変色、段差、適合不良など、いくつか異なる所見が生じ得ます。Hickelらが2023年に公表した国際的な修復物評価基準でも、境目の着色と二次虫歯は別の項目として扱われています[13]。

色だけで虫歯と決めつけないことは、必要のない修復物の交換を避けるうえでも重要です。

視診・触診・エックス線検査を組み合わせて判断する

二次虫歯の診断では、目で見て確認する視診、器具を使って慎重に調べる触診などが基本になります。必要に応じてエックス線画像も利用し、直接見えない歯間部などの状態を確認します。

しかし、どの検査にも限界があります。Kuらが2025年に発表した25研究の系統的レビューでは、奥歯の直接詰めるタイプの修復物周囲にできる二次虫歯について、さまざまな検査法の精度が比較されました[12]。

例えば、口内法エックス線検査の統合感度は0.59、特異度は0.82でした。感度は実際に病変がある場合に見つける程度、特異度は病変がない場合に「ない」と判定する程度を表します。

ただし、この数字は主として直接修復物に関する結果です。セラミック冠の周囲にも同じ感度・特異度が当てはまると説明してはいけません。

Zhouらの研究でも、一部の患者さんでは追跡時のエックス線画像が得られず、微細な二次虫歯を検出する能力に差が生じた可能性が指摘されています。

着色だけを理由に、すべて削って交換する必要はない

二次虫歯の診断では、虫歯を見逃すことに加え、虫歯ではないものを虫歯と判断する「偽陽性」にも注意が必要です。

Schwendickeらの2020年の国際専門家合意文書では、患者さんの虫歯リスクに合わせて検査し、過剰な診断や治療を避けることの大切さが示されています[14]。

小さな着色だけですぐ修復物を外すとは限りません。一方、実際に進行している二次虫歯が認められれば、病変の範囲や歯の状態に応じた対応が必要になります。

修復物の周囲に黒い線が見える場合については「詰め物の周りが黒いとき、虫歯かどうかを考えるポイント」も参考になります。

二次虫歯や脱離が起きたら、セラミックは全部交換になる?

研究上の「失敗」は、必ずしも抜歯や全部交換ではない

今回の研究で失敗と判定された29修復物のすべてが、抜歯や作り直しになったわけではありません。

原著では二次虫歯や脱離などの問題が記録されていますが、それぞれの修復物が実際に再装着、部分修理、再製作などのどの処置を受けたかについて、詳しい集計はありません。

したがって、「29個が失敗した」を「29個を全部作り直した」と読み替えることはできません。

経過観察・再封鎖・修理・再装着・再製作の違い

修復物の問題が見つかった場合、その対応は状態によって変わります。

小さな着色や臨床的に問題のない変化なら、経過観察を行う場合があります。境目の一部に問題がある場合には、適応があれば隙間の再封鎖や修理を検討します。

脱離した修復物でも、修復物と残っている歯の状態が良好なら再装着できる場合があります。一方、進行した二次虫歯や歯質破折、大きな修復物の破損などがあれば、再製作や別の治療が必要になることもあります。

Hickelらの評価基準とSchwendickeらの専門家合意文書でも、症例に応じて再評価・再封鎖・修理・交換を考える方法が示されています[13,14]。

ただし、すべてのセラミック冠が部分修理できるわけではありません。また、コンポジットレジンの修理研究の結果を、二ケイ酸リチウム系セラミック冠へそのまま当てはめることもできません。

被せ物が外れたら、捨てずに歯科医院へ

もしセラミックの被せ物が外れた場合、手元にある修復物は捨てずに保管し、歯科医院へ持参してください。

自分で市販の接着剤を使って戻すことは避けてください。内部の虫歯や破折などを確認しにくくなり、適切な治療を妨げる可能性があります。また、外れた状態の歯で硬いものを噛むことも避けたほうがよいでしょう。

再装着できるかどうかは、外れた修復物の適合、残っている歯質、虫歯や破折、噛み合わせなどを確認して判断します。外れたことだけで歯が使えなくなったとは限りませんが、原因を確認せずに戻せばよいというものでもありません。

セラミックを入れたあと、周囲の天然歯をどう守る?

ここからは、今回の206修復物研究で直接検証された予防の効果ではなく、別の虫歯予防研究や診療指針に基づいた説明です。

甘いものの量と、何度も口にする習慣を考える

糖分を含む食品や飲み物を口にすると、歯垢の中の細菌が酸を作り、歯が脱灰しやすい状態になる場合があります。一方、唾液による酸の中和や再石灰化も起こります。虫歯の発生には、このバランスが関係します。

甘い飲み物を何時間もかけて飲み続けたり、間食を繰り返したりすると、糖分が口の中に供給される機会が増えます。ただし、虫歯は摂取頻度だけで決まるものではなく、摂取量、歯垢、フッ化物、唾液なども関係します。

今回の研究では食間の頻繁・長時間の糖分摂取と失敗に関連が認められましたが、何回以下なら安全かという基準は示されていません。生活習慣を振り返る際には、甘いものをどの程度、どのような頻度で口にしているかを一緒に考えることが大切です。

フッ化物配合歯磨剤を適切に使う

日本の歯科関連4学会は、2023年にフッ化物配合歯磨剤の使い方をまとめています[9]。

6歳以上の成人・高齢者には、1,400〜1,500ppmFの歯磨剤を歯ブラシ全体(約1.5〜2cm)使用し、就寝前を含めて1日2回磨く方法が推奨されています。

「ppmF」はフッ化物の濃度を表す単位です。歯磨き後は軽く吐き出し、うがいをする場合は少量の水で1回にする方法も示されています。口腔機能や全身状態により、使い方の調整が必要な場合もあります。

これはセラミック材料そのものの虫歯を防ぐためではなく、周囲に残っている天然歯の虫歯予防を考える方法です。今回の206修復物研究が、この歯磨剤の使い方で成功率が何%改善するかを検証したわけではありません。

セラミックの境目・歯間部・露出した歯根面を確認する

修復物と天然歯の境目や歯間部は、患者さん自身には見えにくく、清掃状態を確認しにくい場合があります。歯ぐきが下がって歯根面が露出していれば、その部分にも注意が必要です。

歯ブラシに加え、必要に応じてデンタルフロスや歯間ブラシなどを使用します。ただし、道具の選び方や使い方は歯間部の形、歯周組織の状態などによって変わります。

詳しい清掃方法については、歯科衛生士コラム「セラミックや詰め物の境目はなぜ磨きにくい?二次虫歯を防ぐ清掃ポイント」をご覧ください。

歯ぐきが下がった場所の虫歯は、必ず削るのか

露出した歯根面に虫歯が見つかっても、必ずすべて削って詰め直すというわけではありません。

日本歯科保存学会は2026年に「根面う蝕の診療ガイドライン-非切削でのマネジメント-CQ4追加版」を公開しました[15]。初期の根面う蝕では、深さ、硬さ、表面の状態、進行しているかどうかなどを評価し、適応があれば削らずに進行を抑える管理も検討されます。

一方、歯質の欠損が大きい場合などには修復処置が必要になることもあります。

この指針にはフッ化物バーニッシュという歯面に塗る製剤の推奨もありますが、2026年版の記載では、日本国内で虫歯の進行抑制を目的とする使用は承認された適応ではありません。海外の方法をそのまま国内の標準的な処置として紹介することはできません。

口腔乾燥と根面の虫歯については「口が乾く人はフッ素ケアを強めたほうがいい?」でも紹介しています。

今回の研究では、歯磨きやフッ化物の効果は確認できた?

補足表S1では、歯磨きの頻度と失敗との関連はP=0.722、デンタルフロスの使用頻度はP=0.299でした。また、S2でのフッ化物への曝露の有無はP=1.000でした。

S1の歯磨き回数の分類には「1日1回」「1日2回」「1日3回超」があり、1日ちょうど3回の扱いは表の記載だけでは明確ではありません。したがって「1日3回以上」と勝手に言い換えません。

これらの解析で統計学的な有意差がなかったことは、歯磨きやフッ化物の予防効果がないことの証明ではありません。歯磨きの回数だけで、磨き残しや清掃の質まで評価できるわけではありませんし、フッ化物の濃度や使用期間ごとの効果を調べた試験でもないからです。

一方、今回の研究だけで予防方法によってセラミックの10年成功率が改善したと断定することもできません。虫歯予防の根拠と、今回の修復物の観察結果は分けて考える必要があります。

セラミックを入れたあとの定期検診は、何を調べる?

セラミックだけでなく、残った歯や歯ぐきも確認する

セラミック装着後の診察では、修復物の欠け・破折、境目の適合、脱離を疑う所見、二次虫歯、歯根面の露出、歯ぐきの状態などを確認します。食生活や清掃状況、服薬などが変わった場合は、その変化も口腔内の状態を考える材料になります。

ただし、すべての患者さんに毎回同じ検査が必要なわけではありません。現在の状態や治療歴、虫歯・歯周病のリスクに合わせて内容を考えます。

補足表S1では、定期受診の3群に有意差がなかった

今回のS1では、定期受診に関して次の3群が掲載されています。

  • 原著の「1年以内」の群:69/79個が成功、87.34%
  • 原著の「3年以内」の群:41/51個が成功、80.39%
  • 原著の「修復後に定期受診なし」の群:67/76個が成功、88.16%

3群の比較はP=0.420で、統計学的な有意差は確認されませんでした。

ただし、これは原著の分類名をそのまま紹介したものです。「3年以内」という表現だけでは「1年以内」との境界が曖昧で、具体的な受診回数や受診間隔まで明確に示されているわけではありません。こちらで「1年超〜3年以内」などと勝手に補いません。

数字だけを見ると「修復後に定期受診なし」の群の成功率が高く見えますが、そこから「受診しないほうが長持ちする」とは言えません。

定期受診をする人としない人では、最初の虫歯リスクや治療を必要とする程度などが違う可能性があります。今回の研究は受診間隔の効果を確かめるために患者さんを無作為に分けた試験ではないからです。

この研究だけで「定期受診がセラミックの寿命を何%延ばす」と証明することも、「定期受診は不要」と結論することもできません。

半年ごとの定期検診が、すべての人に最適なのか

Feeらの2020年のコクランレビューでは、定期歯科健診の受診間隔を比較した2試験、計1,736人が検討されています[10]。コクランレビューとは、複数の医療研究を体系的に整理し、証拠の確かさを評価する資料です。

成人を対象とした試験では、半年ごとの受診と、患者さんのリスクに応じて受診間隔を決める方法などが比較されました。4年間の虫歯経験や歯ぐきの出血、口の健康が生活に与える影響について、両者に大きな違いは示されませんでした。

ただし、このレビューも根管治療済みのセラミック冠の10年成績を直接調べたものではありません。また、定期的に健診を受けている成人を中心とした研究であり、完全に受診を中断してよいと証明したわけでもありません。

「3か月ごとなら必ず安全」「半年ごとなら十分」と一律に決めるのではなく、患者さんの口腔内の状態に合わせて、何をどのくらいの間隔で確認するかを考えることが重要です。

セラミックの寿命と虫歯リスクに関するよくある質問

セラミックは10年経ったら交換したほうがいい?

10年が経過したという理由だけで、すべてのセラミックを交換する必要はありません。二次虫歯、破折、適合不良などがなく良好な状態なら、そのまま使える場合があります。反対に、数年しか経っていなくても問題があれば対応が必要です。大切なのは年数だけでなく現在の状態です。

セラミックにした歯は、もう虫歯にならない?

セラミック材料自体が天然歯と同じ仕組みで虫歯になるわけではありません。しかし、被せ物の周囲や下に残っている天然歯には虫歯ができる場合があります。

虫歯リスクが高いと、セラミック治療は受けられない?

今回の研究だけで、虫歯リスクが高い患者さんはセラミック治療を受けられない、あるいは避けるべきだとは言えません。残っている歯質、虫歯の活動性、噛み合わせ、清掃の状態などを確認して治療方法を考えます。

神経が残っている歯にも、成功率85.92%を当てはめられる?

当てはめられません。今回の研究は根管治療済みの歯だけを対象にしています。神経が残る歯やほかの修復材料に、同じ数字が当てはまるとは言えません。

セラミックが外れたら、必ず作り直す?

必ずしもそうではありません。修復物と残っている歯の状態が良ければ再装着できる場合もあります。ただし、二次虫歯や破折などがある場合は、再製作や別の治療が必要になることもあります。

歯磨きをしていれば、セラミックの寿命は保証される?

保証されるわけではありません。口腔清掃やフッ化物の使用は虫歯予防に重要ですが、長期成績には残っている歯質、接着、噛み合わせ、二次虫歯など複数の条件が関係します。

院長のまとめ――セラミックを長持ちさせるために考えたいこと

今回紹介したZhouらの研究では、根管治療済みの歯に装着された206個のセラミック修復物について、10年後の臨床的成功率が85.92%と報告されました[1]。

10年後に虫歯リスクが高いと判定された群では成功率が低く、失敗事象では二次虫歯13件と脱離12件が多く記録されていました。

しかし、虫歯リスクを調べたのは装着前ではなく10年後です。リスク判定と失敗判定の項目にも一部重複があり、虫歯リスクが高いこと自体が失敗の原因だったとは断定できません。

また、今回の研究だけでは、日常の予防や定期受診によってセラミックの10年成功率がどれほど改善するかもわかりません。

それでも、患者さんにとって考える価値のある結果だと思います。

セラミックは、失われた歯の形や機能を回復させるための人工材料です。しかし、その修復物を支えているのは、もともとの天然歯です。

私が大切だと考えているのは、丈夫なセラミックを選ぶことと、残っている歯を守ることを別々の問題として考えないことです。

治療時には歯の状態に合った修復方法を検討し、治療後には口腔内の変化に合わせて必要な管理を考えていく。「高価で丈夫な材料だから安心」という単純な話でもなければ、「10年経ったら必ず交換する」という話でもありません。

今回の206修復物の研究は、セラミックが長持ちすることと、それを支える天然歯が健康な状態であり続けることは、必ずしも同じではないという大切な視点を示しています。

参考文献

[1] Zhou L, Gu F, Pan L, et al. (2026). Caries risk assessment associated with 10-year outcomes of CAD/CAM all-ceramic restorations in endodontically treated teeth: a retrospective cohort study. BMC Oral Health. https://doi.org/10.1186/s12903-026-10195-8 (主論文の表1〜4、補足表S1・S2を参照)

[2] Bresser RA, Hofsteenge JW, Buijs GJ, et al. (2025). Partial glass-ceramic posterior restorations with margins beyond or above the cemento-enamel junction: An observational retrospective clinical study. Journal of Prosthodontic Research. 69:49–57. https://doi.org/10.2186/jpr.JPR_D_23_00219

[3] Aziz AM, Suliman S, Sulaiman TA, Abdulmajeed A. (2025). Clinical and radiographical evaluation of CAD-CAM crowns with and without deep margin elevation: 10-year results. The Journal of Prosthetic Dentistry. 134:1125–1132. https://doi.org/10.1016/j.prosdent.2024.04.017

[4] Wierichs RJ, Kramer EJ, Reiss B, et al. (2025). Practice-Based Study on CAD/CAM Inlays, Onlays, and Crowns: Longevity and Risks. Journal of Dental Research. 104:1218–1227. https://doi.org/10.1177/00220345251332882

[5] Laumbacher H, Scholz KJ, Knüttel H, Rosentritt M. (2025). Clinical outcomes and complications of tooth- and implant-supported lithium (di)silicate based single crowns: an overview of systematic reviews. Journal of Dentistry. 162:106004. https://doi.org/10.1016/j.jdent.2025.106004

[6] Hasyim R, Eburne P, Dwiandhany WS, et al. (2026年9月オンライン先行公開/2027年1月号収載). Predictive accuracy of caries risk assessment: A systematic review. Journal of Dentistry. 176:107016. https://doi.org/10.1016/j.jdent.2026.107016

[7] American Dental Association. Caries Risk Assessment and Management. 6歳超のう蝕リスク評価票を含むADA公式案内ページ。https://www.ada.org/resources/ada-library/oral-health-topics/caries-risk-assessment-and-management

[8] van Loveren C. (2019). Sugar Restriction for Caries Prevention: Amount and Frequency. Which Is More Important? Caries Research. 53:168–175. https://doi.org/10.1159/000489571

[9] 日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会(2023).う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(4学会合同・普及版).https://www.jspd.or.jp/recommendation/article22/

[10] Fee PA, Riley P, Worthington HV, Clarkson JE, Boyers D, Beirne PV. (2020). Recall intervals for oral health in primary care patients. Cochrane Database of Systematic Reviews. CD004346. https://doi.org/10.1002/14651858.CD004346.pub5

[11] Askar H, Krois J, Göstemeyer G, et al. (2020). Secondary caries: what is it, and how it can be controlled, detected, and managed? Clinical Oral Investigations. 24:1869–1876. https://doi.org/10.1007/s00784-020-03268-7

[12] Ku JCK, Lam WYH, Li KY, et al. (2025). Accuracy of detection methods for secondary caries around direct restorations: A systematic review and meta-analysis. Journal of Dentistry. 153:105541. https://doi.org/10.1016/j.jdent.2024.105541

[13] Hickel R, Mesinger S, Opdam N, et al. (2023). Revised FDI criteria for evaluating direct and indirect dental restorations—recommendations for its clinical use, interpretation, and reporting. Clinical Oral Investigations. 27:2573–2592. https://doi.org/10.1007/s00784-022-04814-1

[14] Schwendicke F, Splieth CH, Bottenberg P, et al. (2020). How to intervene in the caries process in adults: proximal and secondary caries? An EFCD-ORCA-DGZ expert Delphi consensus statement. Clinical Oral Investigations. 24:3315–3321. https://doi.org/10.1007/s00784-020-03431-0

[15] 日本歯科保存学会(2026).根面う蝕の診療ガイドライン-非切削でのマネジメント-CQ4追加版.https://www.hozon.or.jp/member/publication/guideline/file/guideline_2026.pdf

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