2026年8月12日

(歯科助手さんの治療見学ノート)

はじめに
抜歯の準備をしていると、先生から「エレベーターお願いします」「次、鉗子お願いします」と声をかけられることがあります。
エレベーターは、持ち手の先に細い金属部分がついた器具。抜歯鉗子は、患者さんから見ると大きなペンチのような形をしています。
治療を横から見ていると、最初は細い器具で歯を少しずつ動かし、その後ペンチのような器具で歯をつかんでいるように見えることがあります。
「最初に使っていた細い器具と、最後に使っているペンチのような器具は何が違うんだろう?」
私も歯科助手として抜歯を見学するようになってから、気になったことの一つでした。
先に簡単に答えると、エレベーター(抜歯挺子)は歯や歯根へ適切な方向の力を伝えて、歯を動きやすくするために使う器具、抜歯鉗子は歯をしっかり把持しながら脱臼をさらに進め、歯槽窩から取り出すために使う器具です。
ただし、「エレベーターで歯を揺らして、最後に鉗子で引っこ抜く」と完全に役割が分かれているわけではありません。
鉗子でも歯を少しずつ動かしますし、すべての抜歯で「エレベーター→鉗子」という同じ順番になるわけでもありません。
そして、抜歯で大切なのは「どれだけ強く引っぱるか」ではなく、歯根の形や周囲の骨との関係を確認しながら、適切な方向へ適切な力を伝え、歯が抜ける条件を少しずつ作っていくことです。
今回は「歯科助手さんの治療見学ノート」として、抜歯でよく登場するエレベーターと抜歯鉗子が何をしているのか、なぜ歯を揺らすような操作をするのか、そして治療中に器具を何度も持ち替えるのはなぜなのかまで、診療室で見える光景と一緒にお話しします。
まず知っておきたい|歯は顎の骨に直接くっついているわけではありません
エレベーターと鉗子の違いを知る前に、そもそも歯が顎の骨の中でどのように支えられているのかを知っておくと、抜歯で行っていることがぐっと分かりやすくなります。
通常の天然歯では、歯根が顎の骨へ直接くっついているわけではありません。
歯根の表面にはセメント質があり、その周囲には歯根膜(しこんまく)という組織があります。そして、その外側を歯槽骨が囲んでいます。
大まかに表すと、
歯根 → セメント質 → 歯根膜 → 歯槽骨
という関係です。
歯根膜は、噛んだときに歯へ加わる力を受け止めたり、その力を周囲の骨へ伝えたりする重要な組織です。
そのため抜歯は、イメージとして「顎の骨に刺さった棒を腕力で引き抜く」という処置ではありません。
歯根膜を少しずつ離断・伸展させ、歯根と歯槽窩との抵抗を減らしながら、歯が取り出せる方向へ動かしていく処置と考えた方が実際に近いのです。

抜歯で「歯を揺らす」のは何のため?
抜歯を受けたことがある方なら、「歯を左右へ押されている感じがした」「グイグイ動かされた」と感じたことがあるかもしれません。
あの動きは、単に歯をグラグラさせているわけではありません。
歯を適切な方向へ少しずつ動かすことで、歯根膜との抵抗を減らしながら、歯を歯槽窩から少しずつ動かしていきます。
歯根膜が離断・伸展し、歯槽窩を囲む骨にもわずかな変形が生じることで、最初はほとんど動かなかった歯が徐々に動きやすくなります。
このように、歯を歯槽窩から動かしていくことを「脱臼」といいます。
ケガで歯が抜けかける「歯の脱臼」と同じ言葉ですが、抜歯では術者がコントロールしながら、意図的に歯を取り出せる状態へ近づけていくという意味です。
つまり、先生が歯をゆっくり動かしている時間そのものが、無理なく歯を取り出すための大切な工程でもあります。
エレベーターとは?歯が動き始める「きっかけ」を作る器具です
抜歯のときに最初の方で登場することが多い細長い器具が、エレベーターです。
日本語では「抜歯挺子(ばっしていし)」と呼ばれることもあります。
名前だけ聞くと、エレベーターなので「歯を上へ持ち上げるための器具なのかな?」と思いますよね。
もちろん歯や歯根を動かすために使いますが、単純に下から上へ持ち上げているだけではありません。
エレベーターでは「楔」「挺子」「回転」などの力を利用します
エレベーターの先端を適切な位置へ入れていくと、細い先端が入り込むことで楔(くさび)のように働き、歯や歯根が動くためのわずかなスペースを作ることがあります。
また、器具の形やかける場所によっては、挺子、いわゆる「てこ」の作用を利用して歯や歯根を脱臼させます。
さらに、状況によっては回転方向の力を利用することもあります。
そのため、「エレベーター=歯を持ち上げる棒」と覚えるより、
「歯や歯根へ適切な方向の力を伝え、歯が動き始めるきっかけを作ったり、脱臼をさらに進めたりする器具」
と考えると分かりやすいと思います。

エレベーターは強くこじればいい器具ではありません
ここがとても大切です。
エレベーターは「てこの原理を使う器具」だからといって、大きな力でこじればよいわけではありません。
歯の周囲には歯槽骨があり、その近くには隣の歯があります。部位によっては神経や上顎洞などの重要な解剖学的構造との位置関係も考える必要があります。
だからこそ、どこへ器具をかけるのか、どちらへ力を向けるのかが重要になります。
診療を見ていると、先生がエレベーターを入れてすぐ大きく動かすのではなく、少し動かしては位置や歯の反応を確認し、また少し操作することがあります。
一見すると地味な動きですが、そうした細かな操作にも理由があります。
抜歯鉗子とは?歯を「つかんで引く」だけのペンチではありません
次に登場するのが抜歯鉗子(ばっしかんし)です。
見た目は確かに大きなペンチに似ています。
そのため、「最後にこれで歯をつかんで、一気に引っぱって抜くんだ」と思われやすい器具です。
でも、実際の役割はもう少し繊細です。
鉗子は歯をしっかり把持しながら、歯根の形や周囲の骨に合わせて、頬側・舌側や口蓋側への動き、回転、牽引などのうち、その歯に適した動きを使って脱臼を進めます。
つまり、鉗子も「歯を動かす器具」なのです。
鉗子でも歯を少しずつ動かすことがあります
意図的再植という、いったん歯を抜いて口の外で処置をし、その歯を元の場所へ戻す特殊な治療があります。
このような治療では、抜いた歯を再び利用するため、歯根膜や周囲の組織をできるだけ傷めずに歯を取り出すことが特に重要になります。
報告されている症例の中には、エレベーターを使わず、鉗子で歯を把持したまま歯軸を中心とした動きや頬舌方向への動きを少しずつ加え、時間をかけて歯根膜をゆるめてから抜去したものもあります。
もちろん、これは意図的再植という特殊な治療の症例であり、「普通の抜歯も鉗子だけで行う」という意味ではありません。
ここから分かるのは、「エレベーター=揺らす器具、鉗子=引っぱる器具」と完全に役割を分けることはできないということです。
鉗子は歯をつかむための器具であると同時に、適切な方向へ動かしながら脱臼を進め、最終的な抜去につなげる器具でもあります。

「エレベーターの次に鉗子」と必ず決まっているわけではありません
では、抜歯は必ず「エレベーター→鉗子」の順番なのでしょうか。
いいえ。すべての抜歯が同じ手順になるわけではありません。
一般的な抜歯では、まずエレベーターなどで歯を動かしやすくしてから鉗子を使うことがあります。
しかし、歯の動揺がすでに大きい場合、歯冠がどの程度残っているか、歯根の形、歯周組織の状態、歯が生えている位置などによって、使用する器具も順番も変わります。
エレベーターを複数種類使い分けることもあれば、比較的早い段階で鉗子を使うこともあります。
反対に、歯冠を鉗子で安全に把持できない状態であれば、別の方法で歯根へアプローチする必要が生じることもあります。
ですから、患者さんが抜歯を受けたあとに「前に抜いたときとは使った器具が違った」「今回は鉗子が出てくるのが早かった」と感じても、それだけで処置方法がおかしいということではありません。
歯ごとに抜ける条件が違うため、治療手順も歯ごとに変わるのです。
先生が歯を左右に動かしているとき、歯だけが動いているわけではありません
抜歯を見ていると、どうしても「歯が動いている」ことに目が行きます。
でも、変化しているのは歯だけではありません。
歯を適切な方向へ少しずつ動かしていくと、歯根膜が離断・伸展し、歯槽窩を囲む骨にもわずかな変形が生じます。
こうして歯と歯槽窩の間の抵抗が少しずつ小さくなることで、最初はほとんど動かなかった歯が、次第に動きやすくなっていきます。
その段階まで脱臼が進むと、鉗子で加えるコントロールされた動きによって、歯をさらに取り出しやすい状態へ近づけることができます。
つまり、抜歯で時間をかけて歯を動かしているのは、なかなか抜けずに困っているからとは限りません。
歯根膜・歯根・歯槽窩の関係を少しずつ変え、安全に取り出せる条件を作っている時間でもあるのです。

前歯と奥歯では、同じように揺らせばよいわけではありません
抜歯で力の方向を考えるうえで重要なのが歯根の形です。
口の中から見える歯冠だけを見れば似ている歯でも、顎の骨の中にある歯根の形はかなり違います。
歯根が1本でも、すべて同じ形ではありません
前歯などには、基本的に1本の歯根を持つ歯があります。
しかし、「1本だから単純」とは限りません。
歯根には丸みに近いものもあれば、扁平なもの、途中から湾曲しているものなどがあります。
そのため、ある歯では利用しやすい回転方向の力が、別の歯では適していないことがあります。
奥歯では複数の歯根があることがあります
大臼歯などでは、複数の歯根を持っています。
それぞれの歯根が比較的平行に近いこともあれば、外側へ開くように離れていることもあり、根の先が曲がっていることもあります。
複数の根が異なる方向へ広がっていれば、一本の棒を穴からまっすぐ引き抜くようには取り出せません。
歯軸を中心とした回転を利用しやすい歯もありますが、複数の歯根がある歯、扁平な歯根、湾曲した歯根などでは、同じ回転操作を一律に行うわけではありません。
だから抜歯前には、口の中だけでなくレントゲン画像などから歯根の数や形、周囲の骨との関係を確認します。
以前の「歯科助手さんの治療見学ノート」でも、抜歯前に薬・血圧・レントゲン・体調などを確認する理由をご紹介しましたが、レントゲンには「本当に抜く歯かどうか」だけでなく、こうした歯根形態や周囲組織との位置関係を確認する意味もあります。

抜歯中に何度も器具を持ち替えるのは「抜けないから」?
歯科助手として治療を見ていると、抜歯中は器具の受け渡しが意外と多いことがあります。
エレベーターを渡して、別の形のエレベーターへ交換して、今度は鉗子を渡して……という具合です。
患者さんからすれば、「何回も道具が変わっているけれど、なかなか抜けないのかな?」と感じるかもしれません。
でも、器具を持ち替えることと、抜歯が失敗していることは同じではありません。
抜歯が進むにつれて、歯の状態は刻々と変わります。
最初はほとんど動かなかった歯が少し動くようになると、今度は別の場所へ器具をかけられることがあります。歯がさらに脱臼すると、鉗子で安定して把持できるようになる場合もあります。
つまり先生は、同じ操作をただ繰り返しているのではなく、その時点で残っている抵抗と、次に安全に動かせる方向を見ながら器具を選び直しているのです。
私たち歯科助手が必要な器具を準備し、適切なタイミングですぐ渡せるようにしておくことにも、治療をスムーズに進める意味があります。

なぜ最初から鉗子で強く引っぱらないのでしょうか?
ここまで読むと、一つ疑問が出てくると思います。
「最後は歯を取り出すのだから、最初から鉗子でつかんで強く引っぱれば早いのでは?」
抜歯で重要なのは、単純な腕力ではありません。
どの方向へ、どの器具を使って、どのくらいの力を伝えるかが重要です。
まだ歯根膜との抵抗が大きく、歯根が歯槽窩にしっかり保持されている段階で無理に大きな力を加えれば、歯冠や歯根が破折したり、周囲の歯槽骨や隣在歯などへ不必要な負担を加えたりする可能性があります。
だからこそ、エレベーターなどで少しずつ動きを作り、鉗子を使う段階でもいきなり上へ引き上げるのではなく、歯根形態に応じた方向へ動かしながら脱臼を進めます。
抜歯というと豪快な治療に見えるかもしれませんが、実際に横から見ていると、むしろ細かな力の調整を何度も繰り返す処置だと感じます。
それでも動かない歯は?「もっと強く」ではなく方法を変えることがあります
もちろん、エレベーターや鉗子を使えば、すべての歯が同じように抜けるわけではありません。
歯根が大きく湾曲していたり、複数の歯根が大きく開いていたり、歯が骨の中に埋まっていたりすると、一本の状態のまま安全な方向へ取り出すことが難しい場合があります。
そのような場合に大切なのは、「動かないなら、さらに強い力を加える」と単純に考えないことです。
必要に応じて歯の一部を分割したり、歯を取り出すために必要な範囲の骨を削ったりして、抵抗そのものを減らす方法へ切り替えることがあります。
以前の記事「横向きの親知らずを分割して抜くのはなぜ?一本のまま抜けない理由と歯冠・歯根を分ける目的」でも詳しくご紹介しましたが、横向きの親知らずなどでは、歯を分けることで必要な移動量を小さくし、少しずつ取り出す方法があります。
これは「抜けないから歯を壊した」のではなく、一本のまま無理に動かすより、分けて取り出した方が合理的だから行う処置です。
抜歯では、「強い力を使う」ことよりも「必要な力を減らせる条件を作る」ことが大切な場面があるのです。
抜歯に使うエレベーターや鉗子は、全部同じ形ではありません
抜歯の準備をするとき、器具トレーには似たような金属製の器具が何本も並ぶことがあります。
でも、よく見ると少しずつ形が違います。
エレベーターは先端の幅や角度、柄との位置関係などが異なり、鉗子にも上顎用・下顎用、前歯部や臼歯部など、対象となる歯に応じたさまざまな形があります。
なぜ、そんなにたくさん必要なのでしょうか。
それは、口の中で歯が生えている場所も、歯冠・歯根の形も、器具を入れられる方向も違うからです。
- 上顎の歯か、下顎の歯か
- 前歯か奥歯か
- 歯根が1本か複数か
- 歯根がまっすぐか、湾曲・離開しているか
- 歯冠がどの程度残っているか
- 歯がどの程度動いているか
- 歯と周囲の骨がどのような位置関係にあるか
こうした条件を見ながら、使用する器具を選びます。

エレベーターと抜歯鉗子の違いを整理してみましょう
ここまでの内容をまとめると、エレベーターと抜歯鉗子の違いは次のようになります。
見た目
エレベーター(抜歯挺子):柄の先に細いブレードがある
抜歯鉗子:ペンチのような形
主な使い方
エレベーター(抜歯挺子):歯・歯根へ適切な方向の力を伝える
抜歯鉗子:歯を把持して適切な方向へ動かす
代表的な作用
エレベーター(抜歯挺子):楔・挺子・回転など
抜歯鉗子:頬舌的な動き・回転・牽引など
大きな目的
エレベーター(抜歯挺子):脱臼を始めたり進めたりする
抜歯鉗子:脱臼を進め、最終的な抜去につなげる
必ず使用する?
エレベーター(抜歯挺子):すべての抜歯で必須とは限らない
抜歯鉗子:症例や術式によって異なる
使用順序
症例によって変わり、「エレベーター→鉗子」が絶対的な順番ではありません。
大きな違いはありますが、共通しているのは、できるだけ不要な力を避けながら、歯を安全に取り出せる状態へ近づけるための器具だということです。

抜歯中の「押される感じ」と「痛み」は同じではありません
エレベーターや鉗子で歯を動かしていると、麻酔が効いていても「押される」「動かされる」「強く圧迫される」といった感覚を感じることがあります。
局所麻酔は処置中の痛みを抑えるために行いますが、触られている感覚や圧迫される感覚まで完全に同じように消えるとは限りません。
そのため、歯を動かされている感覚があるだけで「麻酔が効いていない」とは限りません。
一方で、明らかな鋭い痛みや強い痛みを感じた場合は、我慢せずに歯科医師やスタッフへ伝えてください。必要に応じて麻酔の状態を確認し、追加などを検討します。
治療中に感じていることを伝えるのは、決して治療の邪魔ではありません。
そもそも「本当に抜く歯なのか」は、器具を使う前に判断しています
今回の記事ではエレベーターと鉗子についてお話ししていますが、それ以前にとても大切なことがあります。
それは、その歯が本当に抜歯を必要とする状態なのかという判断です。
歯が大きく壊れている、重度の歯周病がある、歯根破折が疑われる、根管治療などを検討しても保存が難しいなど、抜歯を考える理由はさまざまです。
レントゲンや歯周組織の状態、残っている歯質、感染、歯根の状態、今後の補綴まで確認し、「残せるのか」「残した場合にどのような予後が考えられるのか」を評価したうえで抜歯を判断します。
詳しくは、同じ「歯科助手さんの治療見学ノート」の「歯を抜くと言われたとき、診察では何を確認している?歯を残せるか判断するポイント」で解説しています。
今回の記事はその続きとして、「では、抜歯をすることが決まったあと、実際にはどうやって歯を取り出しているの?」を担当する記事だと思ってください。
歯が抜けたあとは「抜歯窩」が残ります
歯を取り出したあとには、それまで歯根が入っていた歯槽骨の中に抜歯窩(ばっしか)というくぼみが残ります。
抜歯が終わったあとには、出血や抜歯窩の状態を確認し、必要に応じて止血処置や縫合などへ進みます。
その後、血のかたまりである血餅ができ、抜歯窩は少しずつ新しい組織へ置き換わって治っていきます。
抜歯後の穴がどのように治るのかについては、「抜歯後の穴はいつふさがる?血のかたまりから歯ぐき・骨へ変わる治り方と上顎・下顎の違い」で詳しく説明しています。
また、抜歯後しばらくして強い痛みが出た場合には、通常の抜歯後痛だけでなくドライソケットなどの確認が必要になることがあります。ドライソケットの診察・洗浄・鎮痛処置についてはこちらをご覧ください。
出血について不安がある場合は、「抜歯後に血が止まらないときはどうする?歯医者へ電話する目安・伝えること・自宅での止血方法」でも受診・連絡の目安をまとめています。
よくある質問|エレベーター・鉗子と抜歯について
エレベーターと抜歯鉗子は何が違うのですか?
エレベーターは、歯や歯根へ力を伝えて脱臼を始めたり進めたりするために使う器具です。抜歯鉗子は、歯をしっかり把持しながら脱臼をさらに進め、最終的な抜去へつなげる器具です。ただし役割は完全に分かれているわけではなく、鉗子でも歯を動かします。どの器具をどの順番で使うかは、歯根の形や歯の状態によって異なります。
エレベーターを使わずに抜歯することはありますか?
あります。歯の状態や術式によって、使用する器具や順番は異なります。一般的にはエレベーターで歯を脱臼させてから鉗子を使う流れがありますが、すべての抜歯が同じ手順になるわけではありません。
鉗子だけで歯を抜くこともありますか?
歯の状態や治療目的によってはあります。鉗子は単に歯をつかんで上へ引っぱるだけの器具ではなく、歯を把持しながら脱臼を進める役割も持っています。
抜歯で歯を左右に揺らされるのは普通ですか?
歯根膜との抵抗を減らし、歯を歯槽窩から脱臼させるために、歯を適切な方向へ動かす操作が行われることがあります。ただし動かす方向や大きさは歯根形態や周囲組織の状態によって異なります。
抜けにくい歯は、もっと強く引っぱるのですか?
必ずしもそうではありません。一本の状態では安全に取り出しにくい場合には、歯を分割したり、必要な範囲の骨を削ったりして抵抗を減らす方法へ切り替えることがあります。「抜けない=さらに大きな力」という考え方ではありません。
細い金属の器具は全部エレベーターですか?
いいえ。抜歯ではエレベーター以外にも、歯根膜の切離などを主な目的とするペリオトームなど、細い器具を使用することがあります。見た目が似ていても、先端の厚さや形、目的、力の加え方は同じではありません。
抜歯中に押される感じがするのは、麻酔が効いていないからですか?
必ずしもそうではありません。麻酔が効いていても、圧迫されたり動かされたりする感覚を感じる場合があります。ただし、鋭い痛みや強い痛みを感じる場合は我慢せず、治療中でも歯科医師やスタッフへ伝えてください。
歯科助手から見ると、抜歯は「力」より「方向と順番」を考えている処置でした
歯科助手になる前の私が「抜歯」と聞いて想像していたのは、歯をつかんで、そのまま引っぱって抜く治療でした。
でも、実際の治療を横から見ていると、そのイメージとはかなり違いました。
レントゲンで歯根の形を確認して、エレベーターを選び、少し動かして、また方向を確認する。
歯が動き始めたら別の器具へ替え、鉗子で把持してからも、いきなり上へ引っぱるのではなく、歯根の形に合わせて少しずつ動かす。
それでも一本のままでは難しいなら、ただ力を増やすのではなく、歯を分けるなど別の方法へ切り替える。
こうして見ていると、抜歯器具は大きな力を出すための道具というより、必要な力を必要な場所・方向へ伝えるための道具なのだと思います。
エレベーターと鉗子も、一方が「揺らす係」、もう一方が「引っぱる係」と単純に分かれているわけではありません。
どちらも、歯根膜や歯槽窩との抵抗を少しずつ減らしながら、安全に歯を取り出せる状態へ近づけるために使われています。
もし今後、抜歯を受ける機会があって、治療中に細い金属の器具やペンチのような器具が出てきたら、「今、力任せに歯を引っぱっているのではなく、抜ける条件を少しずつ作っているんだ」と思い出していただければ、治療の見え方も少し変わるかもしれません。
広島市中区・立町で抜歯について相談したい方へ
ブランデンタルクリニックは、広島電鉄「立町」電停から徒歩1分、立町中央ビル4階にあります。4階まではエレベーターをご利用いただけます。
「歯を抜くと言われたけれど、本当に残せないのか確認したい」「親知らずの抜歯について相談したい」「抜歯後に強い痛みや出血がある」など、症状や治療内容について気になることがあればご相談ください。
通常のご予約はWEB・LINE・電話から受け付けています。強い痛みや腫れ、抜歯後の出血など急な症状については、当日の診療状況を確認しながらご案内しますので、電話でのご連絡をおすすめしています。急患の同日診療にも可能な範囲で対応しています。
今回ご紹介したエレベーターや鉗子の使い方を含め、実際の抜歯方法は、歯の位置、歯根形態、周囲の骨や重要な解剖学的構造との関係、全身状態などによって異なります。
抜歯について分からないことや不安なことがあれば、診察時に遠慮なくお尋ねください。
